猫の恩返し-または、ある日突然に九人の美少女たちのご主人様になった話【短編】 作:ドン・ドナシアン
「えっ、これで全部ですか? 荷は後から届くのだと思っていました」
三朗を部屋に案内してきた管理人の女性が愉快そうに笑った。
歳の頃なら三十前後だろうか。
長い黒髪の美しい女の人だ。
妖艶という言葉がぴったりで、なんだか仕草や表情が、とても色っぽい。
この管理人の女性は一階の一号室に住み込みだそうだ。
部屋は違えど、こんなきれいな人と、ひとつ屋根の下で暮らすと思うと、少しどきどきする。
「両手で抱えられるくらいしかありませんが、これで俺の全財産というわけで」
運んできた荷は、背に負った大きなリュックと旅行用のカバン。そして、寝袋だ。
さらに、持ち運び用のケースに入った小さなメスネコ一匹。
それだけだ。
貯金もない。
なけなしの貯えは、正月早々、前のアパートを追い出されたときに、使い果たしてしまった。
契約に違反して、ペットを飼っていたことがばれて、違約金として、ハウスクリーニング代をごっそりととられてしまったのだ。
相場よりもかなりの上乗せがされていたが、こちらに落ち度かあるので仕方がない。
三朗は貯金をはたいて違約金を払ったうえに、三年ほど暮らしていた独り暮らしのアパートを追い出されてしまった。
しかし、どうしようかと途方に暮れかけていたところで、思わぬ幸運で新しいアパートがすぐに見つかった。
アパートというよりは、玄関と台所や洗面が共有の下宿屋といったところだが、とにかく、家賃が安い。
敷金も不用とのことであり、無一文に近かった三朗には、あり得ないほどの好条件だ。
「三十近くの男の持ち物がこれっぽっちとは、情けないことなのですが……」
三朗は自嘲気味に言った。
しかし、すぐにはっとした。
「……も、もちろん、家賃はちゃんと月々に払います。ご心配なく」
慌てて付け加える。
余計なことを言って、入居早々、要注意人物の貧乏人だと思われるかもしれないと思ったのだ。
もっとも、貧乏なのは本当だし、仕事に必要な物を買うために、いままでついつい家賃を滞納しがちだったのは事実だ。
だが、まだなにかを起こす前に、目をつけられるような言動をすることはなかった。
しかし、よく考えれば、なにも言われてないのに、こっちから「家賃はちゃんと払います」など、そっちの方が不自然だっただろうか……?
三朗は後悔した
すると、なにがおかしかったのか、管理人さんがころころと声をあげて笑った。
三朗は戸惑ってしまった。
「……お仕事はなにをされているのですか?」
ひとしきり笑ったあとで、管理人さんが不意に訊ねた。
「カメラマンです。フリーの……」
三朗は言った。
ただし、実際にはカメラで飯を食っているとは言い難い。懸賞コンテストに参加しては、しばらくずっと佳作止まりでしかなく、時折わずかな賞金をもらうか、あとは知り合いのつてで、ちょっとした半端仕事を回してもらうかだ。
実際には、フリーターというのが正解だろう。
「……ふふふ、だったら、お家賃を滞納したときには、罰として、わたしの写真を撮ってもらおうかしら。もちろん、ただよ。撮影代は払わないわ」
三朗は驚いてしまった。
目の前の女性は、モデルかと思うような美女だ。
こんな女性を撮影できるのであれば、逆に支払えるものは幾らでも払う。
支払えるのであればだが……。
もちろん、この管理人さんのいまの発言が冗談というのはわかっている。
「そ、そんなこと言われたら、毎月滞納しちゃいますよ」
三朗は軽口を言った。
「決まりですね。では、今夜、伺います……」
管理人さんが妖しく微笑んだ。
そのとき、飼い猫のキュートが怒ったように、ケースの中で大きく鳴いて暴れ始めた。
「……その子は、ケースに入れておいてくださいね……」
管理人さんが言った。
「ネコはお嫌いですか?」
「いいえ。大好きです。でも、この子はわたしが嫌いかもね。あなたを食べちゃおうとしてるから……」
管理人さんが腰を屈めて、ケースの中を覗き込む。
キュートが毛を逆立てて、フギーと奇声をあげた。
こんなに怒ったことのない猫なので、三朗は首を傾げた。
「普段はもっと大人しいんですよ。こらっ、キュート、静かにしろっ」
怒鳴った。
すると、キュートは見るからに、しゅんとなった。
「あらっ、ご主人様には忠実ね、
管理人さんが笑った。
暴れるのはやめたものの、キュートはなぜか、ケースを覗き込む管理人さんに、挑むようにうなり声をあげている。
それにしても、六美?
この猫の名はキュートだ。
なにを勘違いしたのだろう……。
まあ、いいが……。
「……わたしは、一条イツミと申します。どうか、イツミとお呼びください……。では、今夜……」
イツミさんは出ていった。
まるで三朗を誘うような、妖しい表情を向けながら……。
*
「捨てネコだったんです。怪我をしたうえに、飢えて死にそうになっていたのを偶然見つけて……」
三朗はなんとなく言った。
夜である。
イツミさんは本当にやって来た。
しかも、コンビニの袋に入ったビールと容器に入れた手料理を持ってきてだ。
しかも、なにもない部屋に、テーブルとストーブまで持ち運んできた。
三朗は恐縮しながらも、イツミさんの手料理に舌づつみを打った。
食事のときの話題になったのは、三朗の飼い猫のキュートのことだ。
キュートは、ここにやって来たときと同じで、ケースの中だ。
いつもはすぐに三朗の命令に従うのに、今夜は随分と嫌がった。
だが、キュートはケースに入れておいてくれというイツミさんの言葉があったので、無理矢理入れた。
キュートはさすがに三朗に捕まえられてからは暴れなかったが、ひどく不服そうにしていた。
いつも違うキュートの反応に、三朗は面食らうしかなかった。
この子猫を拾ったのは偶然のことだ。
バイト先の建物の裏で怪我をして弱って死にかけていたのを可哀想に思って連れ帰って介抱したのが縁だ。
治療も終えて元気になった子猫は、とても可愛く、汚れていたのでわからなかったが、洗って乾かした毛並みには、白地に合わせて九色の体毛がある不思議な猫だった。
だから、可愛いという意味と、九色の“九”をかけて、“キュート”と名づけた。
それから三ヶ月……。
キュートと三朗は、本当に仲のいい家族になった。
ただし、アパートがペット禁止だったこともあり、前々から家賃を滞納気味だったことも重なって、三朗は三年間暮らしていたアパートを叩き出された。
そして、途方に暮れて歩いていたところで、偶然に見つけたのが、この古い下宿屋風のアパートだ。
偶然とはいっても、行き先も思いつかずに歩いていると、いきなりキュートが暴れだして、ケースを飛び出したのだが……。
そして、追いかけているうちに辿り着いたのが、ここというわけだ。
『
それが、下宿屋の名だった。
名前に猫という文字があることから、もしかしたら、ペット許可かと思って、キュートをケースに入れ直して訪ねてみた。
中に入り、管理人室とあった一号室をノックしたのだ。そして、現れたこの妖艶の美女に、部屋が空いていないかどうか訊ねてみた。
その結果、その場で部屋が決まって、こうやって、この部屋で暮らすことになった
九猫荘には、一間の小さな部屋が九つ。
三朗は、二階の突き当たりになる九号室である。
「……知っていますよ。あなたがとてもこの子に優しかったこと……。それも、この子のために住んでいたアパートを出る羽目になったこととかとも……。ありがとうございます。この子たちを大切に想ってくれて……」
「えっ?」
三朗は彼女の不思議な物言いに驚いてしまった。
「……じゃあ、そろそろ始めましょうか。わたしの写真を撮ってくださるのでしょう」
イツミさんが立ちあがって、微笑みながら、するすると身につけているものを脱ぎ始めた。
今度こそ、三朗はびっくりした。
「どうしたのです……? わたしを撮ってくれるとおっしゃったじゃないですか」
イツミさんは笑った。
そのあいだも、イツミさんはどんどんと服を脱ぎ続けている。
あっという間に、イツミさんは三朗の前で、生まれたままの姿になった。
「お、俺は服を着たままかと……」
三朗はやっとのことで言った。
眼の前のイツミさんは美しかった。
服を着ているときも綺麗だったが、裸身はそれ以上だ。
胸は大きいが、支えるものもなく、ぴんと乳首が上を向いている。
また、ウエストはどこまでも細く、お尻は逆にぷっくりと肉がついていて丸い。
とにかく、美しいの一言だ。
三朗はごくりと唾を飲んだ。
「わたしは、最初から、裸の写真のつもりでしたよ……」
イツミさんは、すっと両手を背中に回して組むと、床に座り直して、両足を大きく開いた。
いわゆる、M字開脚だ。
三朗はイツミさんの股間に釘づけになってしまった。
うっすらとした陰毛に包まれた股間はまるで少女のそれのように、きれいな形と色をしている。
しかも、気のせいか、蜜でねらねらと濡れている気さえする。
「フギー」
そのとき、ケースのキュートがけたたましく鳴き声をあげた。
「静かにしなさい、六美。あなたの大切なご主人様なのはわかるけど、お母さんも、味見をするくらいはいいでしょう? あなたの願いをきいて、ここに人間が入るのを許したのよ。いいから、あんたは引っ込んで……。こういう勉強は四美じゃないの。替わりなさい」
イツミさんがさっとキュートに手を向けた。
すると、キュートがまるで魔法にでも掛かったように、急に大人しくなった。
三朗は目を丸くした。
「さあ、どんな格好になりましょう? どんなご命令にも従います……。縄で縛ってもいいですよ。以前入選された作品は、そんな写真でしたよね」
イツミさんが、まるでさっきのことなど、なにもなかったかのように三朗に視線を戻した。
三朗は今度こそ驚いた。
確かに、三朗が以前に一度だけコンテストで優勝した作品は、海の中で縛られて泳いでいる女性を描いた写真だ。
三朗がプロを目指す自信にもなった作品であり、それを機会に三朗はプロの道を選んだ。
ただ、それから鳴かず飛ばずだ。
あの作品を越える写真は、まだ撮ったことはない。
なぜ、あの作品が評価されて、それ以降の作品が評価されないのか……?
最近になって、三朗はやっとその理由がわかってきた気がする。
あれは性欲剥き出しのエロを追求した写真だ。
それがたまたま芸術的な出来映えになったために、コンテストに出品できた。
それなのに、それ以降、一端の芸術家気取りで、自分の性癖を写真に込めるのを否定し続けた。
だから、受けないのだ。
芸術とはエロだ。
しかも、剥き出しの性だ。
それを吐き出してこそ、いい写真が撮れる。
このところ、やっとそれがわかってきた気もする。
三朗の密かな性癖はSMだ。
それを表にしたことはないが、あのときの写真はその性癖を全開にしたようなものだった。
ただ、三朗のような貧乏写真家では、緊縛をさせてくれるモデルなど雇えるわけはなく、それ以来、あんな写真を撮影する機会はなかった。
「こ、こんな部屋でなければ……。い、いや、この部屋でも十分……。どんな場所でも、あなたは輝きます」
三朗は慌ててカメラを取り出して構えた。
そして、さらにイツミさんに語りかける。
「……縄はありません……。でも、縛られたと思ってください……。あなたは、身動きできなくされて、犯されようとされてます。それを想像してください」
三朗はシャッターを押し続けた。
シャカシャカというシャッター音が部屋に響く。
プロ用のデジカメだ。
できればフィルムカメラを使いたいところだが、三朗の収入では簡単にフィルムも購うことも難しい。
「あなたの命令に従いますわ……。それにしても、そのシャッター音……。まるで本当に犯されている気分になります……。ところで、場所はどんなところがご希望? なんでも、おっしゃって……。それとポーズも……。もしも、お望みならば犯してもいいのですよ。本当に犯されないと、犯される演技なんかできませんもの」
イツミさんが微笑んだ。
三朗は耳を疑ってしまったが、まずは写真だ。
なにしろ、こんな機会など滅多にない。
三朗はカメラを操りながら、やっと理想郷に辿り着いた旅人のような心地を味わっていた。
「シチュエーションは美女と野獣……。ここは野獣の古城で、あなたは仰向けにされて、見えない野獣に襲われている……。それを想像して──」
三朗はカメラを操りながら言った。
「わかりました……」
イツミさんが背中で腕を組んだまま、三朗に股間を向けたまま上体を倒す。
そのイツミさんが身体をくねらせながら艶かしい声をあげた。
これは傑作になる……。
三朗には確かな手応えを覚えた。
しかし、気がつくと、いつの間にか風景が一変している。
三朗の小さな下宿屋の部屋ではなく、本当に古城の広間を思わせる場所になっていた。
三朗は考えるよりも先に夢中になり、イツミさんにポーズの指示を送りつつ、シャッターを押し続けた。
*
「ああっ、いいい……」
イツミが髪を振り乱して、三朗の一物をぐいぐいと股間で締めつけながら身体を痙攣させた。
また絶頂を迎えたのだ。
数えてはいないが、イツミはすでに五回はいっているはずだ。
達すれば達するほど、汗にまみれたイツミは一層美しく輝いていく。
イツミが美しく絶頂するとき、三朗は一緒に果てたい衝動に襲われたが、歯を喰い縛って快感が突き抜けるままになるのを耐えた。
すでに、三朗も三度精を放っている。
あと一回出せば、もうしばらくは回復に時間がかかるだろう。
この夢のような時間が、それで終わるかと思うと、それが途方もなく惜しかったのだ。
「う、うう……。ま、まだ元気……な、なのね……。も、もうだめよ……。あ、あなた……す、凄いのね……」
快感の発作の終わったイツミが、はあはあと息を弾ませながら言った。
三朗は苦笑した。
月並みなお世辞の言葉だが、こんなことを女に言われて嬉しくない男はいないだろう。
三朗はまだ歓喜の極みから抜けていない様子のイツミに、さらに激しく腰を律動させた。
避妊具などしていない。
イツミが大丈夫だから、そのまま精を放ってくれと言ったのだ。
だから、三朗はもう何度も、イツミの中に生出しをしている。
「ふぎいいん」
イツミはまるで猫のような悲鳴をあげて、身体を弓なりにしてぶるぶると震える。
「また達したのですか、イツミさん?」
身体を密着させた三朗は、縄の掛かったイツミの身体を抱いて耳元で訊ねた。
「え、ええ……い、いったわ……。ふ、不思議……。こ、こんなに感じるなんて……。あ、あなたの体臭……。ま、まるでマタタビのよう……。お、惜しい……。キュートからの……お、お裾分け……してもらう……だけのつもりだったけど……、お、惜しい……惜しいわ……。あなたさえよければ……、わ、わたしの五十人目の夫に……し、しても……いいわ……。ま、また……またあっ……」
三朗は体位を変化させて、何度目かの後背位にしていた。
新たな体位によって、イツミは繰り返し絶頂に追いやられた感じになっていたようだ。
そのイツミが、三朗に乳房を揉まれながら、尻側から犯されて、またもや達した。
新しく越してきた九猫荘という下宿屋だ。
三朗は、そこの管理人であるいイツミという不思議な美女と、身体を交わしている。
最初は写真撮影だった。
だが、それがイツミとの濃厚なセックスに変化するのに、いくらもかからなかった。
イツミはなぜか、三朗から抱いてもらう気持ちが満々であり、性交はイツミの方から誘ってきたのだ。
そして、いまに至っている。
そのあいだ、不思議なことがいっぱいあった。
この部屋にいたかと思えば、なぜかファンタジーに出てくるような古城になっていたり、そうかと思えば、太陽の輝く白い砂浜に変わったりと、周りの情景が三朗が口を出した場所に次々に変化していったのだ。
それだけじゃなく、縄だといえば、イツミの身体に縄が出現し、柔らかな筆でくすぐり責めをしたいと言えば、いつの間にか三朗はそれを手にしているといった具合だ。
また、イツミは感極まると、おかしな言動ばかり繰り返す。
三朗の飼い猫のキュートをずっと知っているような口振りだし、しかも、意思の疎通をしているようなことを言うのだ。
とにかく、これが常識でなあり得ない状況であることは確かだろう。
三朗はもはや、驚きを通り越して、この異常さに慣れてしまっている。
いずれにしても、イツミは異常なくらいに感じやすい女性だ。
特に、イエスの処刑された荒野に立つ十字架に拘束し、筆責めをして犯したときには、乱れすぎるくらいに乱れた。
美しい外見に、淫らな心と、感じやすい肉体……。
このイツミは最高だ。
そのうち、イツミは、続けざまに連続で絶頂し始めた。
もう、制御ができなくなった感じだ。
「も、もう、終わりにして……。キュート……、キュートに返す。彼女も、あなたに感謝したがっている……。残りの恩返しはキュートに託す……。と、とにかく、あなたの精の匂いは、わたしたちメスネコを支配する魔性の香りよ──」
イツミが、またもや、おかしなことを叫んだ。
そして、再び声をあげてオルガスムスに到達すると、がっくりと脱力した。
どうやら、気を失ったようだ。
三朗はとりあえず怒張を抜いた。
すると、突然に、いきなり三朗の目の前で、イツミが白い光に包まれ始め、やがて、真っ黒い猫に姿を変えた。
三朗は呆気にとられた。
「うわっ、なんだ?」
三朗は声をあげた。
今度はケースの中でずっと大人しくしていたキュートが、白く光り始めたのだ。
三朗はたじろいだ。
次の瞬間、ケースがばちんと弾けた。
気がつくと、そこには、十五、六歳くらいの茶髪の美少女が素裸で立っていた。
「ああ、ご主人様、お母さんの力を借りたおかげで、やっと人間の姿になれました。優しいご主人様に恩返ししたかったのです。わたしのために、住んでいた家まで捨てて、それでも、世話をしてもらえるなんて、なんてお礼を言えばいいか……」
その裸の美少女が抱きついてきた。
三朗は度肝を抜かれた。
*
少女の話が終わった。
結局のところ、この裸の美少女は、三朗の飼い猫のキュートだという。
信じられないが、目の前で猫のキュートが人間の少女に変身をする光景を見てしまっては、信じるしかない。
キュート曰く、キュートの母猫はイツミらしい。
イツミは生を受けて三百年は越えるという文字通り魔性の猫なのだそうだ。
長く生きることで魔術のような神通力も使えるようになり、普段は人間の姿になり、ああやって普通の人間に混じって暮らしているとのことだった。
管理人とか言っているが、この下宿屋もイツミの力で建てたものであるらしい。
イツミの子は、キュートを含めて数百匹になるそうだ。
キュートはいまのところ最後の子供とのことだが、兄弟姉妹たちはすべてひとりだちをしていて、天寿を全うしたものもほとんどのはずで、キュートは会ったことがないという。
とにかく、キュートはまだ神通力を覚えぬままに外に出て、うっかりと自転車に跳ねられて怪我をして動けなくなり、そこを三朗に助けられたということだったようだ。
いつか恩を返したいと願っていたが、三朗がキュートのために家を失ったことで、母親のイツミに連絡を取り、ここに案内したのだそうだ。
神通力も、イツミと再会することで、やっと使えるようになったらしい。
三朗はキュートの告白を呆然と聞いていたが、この話が真実である証拠に、たったいままで濃厚なセックスを続けていたイツミが猫に戻って、部屋の片隅で寝息をたてている。
「とにかく、ご主人様……。わたしの姫初めをしてください。まだ、未熟なわたしには、これくらいしか、恩返しができませんが、命を助けてくれたご主人様には、どんなことをされてもいいです。ご主人様が時折見ておられるような写真や雑誌のようなこととか……」
裸の美少女……すなわち、キュートがちょっと怯えたような表情ながらも、必死の口調で言った。
三朗は苦笑するしかなかった。
キュートが言及した写真や雑誌とは、三朗のオナニーネタのSM物のことだろう。
三朗は、それを片手に自慰をしている姿をなんどもキュートに見られている。
この少女がキュートなら、三朗の性癖は隠すだけ無駄だし、格好つけても仕方がない。
そもそも、これはおそらく夢だろう。
飼い猫が人間の少女になって裸で迫ってくるなど、現実にあるわけないし、そうだとすれば、折角の夢だし、愉しまなければ損なのは間違いない。
三朗は大胆な気持ちになった。
「左右の手でそれぞれの足首を持つんだ、キュート」
三朗が命令すると、キュートは顔を赤らめながらも言われた通りの格好になる。
つまりは、脚を少し開いた体育座りの体勢で身体を屈めて、左右の手でそれぞれの足首を掴んだ体勢だ。
三朗は、イツミが出したものの、猫に戻ったためにほどけてしまった縄を手に取ると、キュートの手首と足首をそれぞれ左右で縛り、キュートの身体を仰向けに倒した。
「あっ」
ばっくりと脚が開いた羞恥の格好に、キュートは恥じらって腰をもじもじとする。
元は猫でも、人間になったら、やはり恥ずかしいのだろうか?
そんなことを考えながら、三朗はキュートの股間に顔を埋めると、ぴったりと閉じている亀裂をぺろぺろと舐め始めた。
「あんっ」
キュートの肢体がぴくりと跳ねあがる。
いずれにしても、このキュートが生娘であることを三朗は確信している。
キュートの股は陰毛が産毛程度であり、はっきりと股間の状態が見える。
この股で一度も男のものを受け入れたことがないのは明らかだし、自分から迫ってきたわりには、三朗の愛撫へのうぶな反応でそれがわかる。
「あ、ああっ、ご、ご主人様、き、気持ちいいっ。そ、それに……ご、ご主人様の唾液……へ、変です……。む、むず痒くて……、そ、それに匂いが……」
キュートが拘束された身体を弓なりにした。
がくがくと震え、早くも達したようだ。
イツミもそうだったが、このキュートもとても感じやすい。
そういえば、三朗の体臭や体液には、イツミも翻弄されるという意味合いのことを口走っていた。
三朗はセックスについては、猫と相性がいいのだろうか?
「あ、あんっ、あんっ、ご、ご主人様……、ご主人様……す、好きです……。ご主人様が好き……。ど、どうか、わたしの姫初めを……。い、一生……いえ、すべての命でご主人様にお仕えします……ああっ、や、やああっ」
キュートが拘束された身体を激しくよじらせながら言った。
それにしても、キュートは「姫初め」という言葉を自分の初体験の意味で使っているようだ。
まあ、まだ年の初めなので、三朗にとっての「姫初め」が今日というのは間違ってはいないが……。
「今度は揉むよ。身体を楽にしてな……」
「は、はい……。ら、楽にします。な、なんでも命令してください。ご主人様の調教、う、嬉しいです……。ふわああっ」
キュートの秘裂を這い回っていた三朗の舌が、秘部の入り口の奥に差し入ったのだ。
それにしても、意味がはっきりとわかっているかどうか怪しいが、キュートが懸命に三朗が嬉しがるようなマゾ言葉を選んで使っているのがわかる。
前のアパートで猫のキュートは、三朗が見ていたSM物の雑誌などを一緒になって食い入るように眺めることがあったのを思い出した。
それで、さっきのような「姫初め」とか、さ「調教」とかいう言葉を覚えたのかもしれない。
しばらくのあいだ、舌の愛撫をしていた三朗は、挿入するものを舌から指にして、舌をキュートのまだ発達しきっていない乳房に移動する。
キュートの声がいよいよ色っぽいものになった。
やがて、指は一本から二本になる。
それがねちゃねちという水音をキュートの股間でたてる。
「そろそろいくよ、キュート……」
三朗は指を抜いた。
最初は固く閉じていた亀裂がぽっかりと開いて、自然に戻る力を失っていた。
「は、はい、わたしの姫初めを……」
「そうだな。じゃあ、キュートの姫初めをもらおう……」
三朗は怒張の先端をキュートの秘裂にゆっくりと当てた。
そして、キュートの反応を見ながら、静かに肉棒を進めていく。
「い、いたい──。いたい──。あ、ああっ、で、でも大丈夫です……う、ううっ」
三朗の怒張にキュートの処女膜を破った感触がかすかに伝わる。
これも人間と同じなようだ。
身体を二つに裂くような激痛だというが、キュートは健気にも気持ちいいと口に出し続ける。
そっちの方が三朗を悦ばせると思ってのことかもしれない。
三朗は、キュートの健気さに、思わず力一杯にキュートを抱きしめた。
ともかく、最初から無理はできない。
三朗は律動もそこそこに、キュートの中に精を放った。
「終わったよ、キュート……」
三朗はゆっくりと一物を抜いた。
キュートの股間からは、生娘だった証の鮮血が白濁液とともに、垂れ落ちてきた。
キュートはほっとしたように微笑んだ。
眼に涙を浮かべて、三朗をいとおしそうに見つめてくる。
「……ひ、姫初め……、あ、ありがとうございます……。こ、今度は調教してください……。み、未熟なわたしですが、ちゃんと躾を覚えます」
キュートが、左右の手首と足首をまとめられて脚を開いた破廉恥な格好のまま、荒い息をしながら言った。
三朗は苦笑した。
キュートが使った言葉が、最近のズリネタのSM小説のヒロインのセリフそのものだったからだ。
なんだか、心の秘部そのものをさらけ出されたようで恥ずかしい。
三朗は、返事の代わりに、そっとキュートに口づけした。
すると、キュートが、まるで猫のように三朗の舌をぺろぺろと舐め返してきた。
*
朝の日射しで目が覚めた。
一瞬、ここがどこだかわからなかったが、すぐに昨日越してきた下宿屋だと思い出した。
「夢……?」
三朗は寝袋のまま身体を起こし、部屋を見渡して、思わず呟いた。
おかしな夢だった。
猫が変身した美女の管理人のイツミや、美少女になった飼い猫のキュートに迫られて、欲望のすべてを発散するほどに愛し合った……。
しかも、そのイツミとキュートは母娘だった。
まずは娘のキュートの前でイツミを抱き潰し、その横たわるイツミの横で娘の処女を奪った……。
そんな夢を見たのだ。
溜まっているのかなあ……。
苦笑した。
もちろん、いまの部屋には、三朗のほかには誰もいない。
三朗のそばでまだ寝ている猫のキュートがいるだけだ。
そして、はっとした。
昨夜、イツミが部屋に持ち込んだ小さなテーブルとストーブがそのまま置いてあったのだ。
もしかして、あれは本当……?
慌てて、デジタルカメラの記録を確かめる。
イツミをモデルにした写真がそのまま残っている。
しかも、場所はあの古城だ。
ほかの場所の写真もしっかりとある。
三朗は首を傾げた。
ならば、どこまでが現実であって、どこからが夢なのだろう?
とりあえず顔を洗おうと思い、一階の共有の洗面所に向かう。
そこには、先客がいた。
痩せて背の高い男と、小柄の太った男だ。
いずれも五十前後だろうか。
三朗を認めると、値踏みするようにじろりと睨んだ。
「今度、九号室に入ることになりました石川三朗です。独り者です。よろしくお願いします」
急いで頭を下げる。
しかし、ふたりは渋い表情を崩さなかった。
「この九猫荘に人間を認めるとはねえ……」
「なんだかんだで、そのうち手のひらを返すんじゃねえか? 返す手はただだというのが、人間だからな」
ふたりが言った。
まるで、自分たちは人間ではないような物言いだ。
三朗は当惑した。
「こらっ、五十郎に四太──。イツミさんのすることに文句あるのかい? 不満だったら、お前らが出ていきな」
すると威勢のいい女の声がした。
三朗は声の主に振り返り、口をあんぐりと開けてしまった。
やって来た女は四十くらいだと思うが、下着一枚も身につけていない全くの全裸だったのだ。
水商売を思わせる容貌だったが、なかなかの美人でもある。
それが堂々と陰毛まで丸出しにして歩く姿に、三朗は目を見張った。
ふと見ると、横の先客のふたりの中年も、しっかりと鼻の下を伸ばして相好を崩している。
「
また声がした。
イツミだ。
八つ尾娘と呼ばれた女性が、やっと自分の状態に気がついたように、身体を両手で隠して、ぱたぱたと逃げていった。
三朗は男二人とともに、しっかりと二階に駆け昇っていく白いお尻を目に焼きつけた。
「気に入ったのなら紹介するわよ、三ちゃん。いまのは八号室の八つ尾娘ね。人間としての名はやつ子だったかな……。彼らは四号室の四太に、五号室の五十郎……。こっちは紹介しなくても知ってるね。キュートのご主人様の三朗さんよ」
イツミは言った。
三ちゃんというのは、三朗のことのようだ。
やはり、まだ夢の続き……?
三朗は困惑した。
「なあ、それだけど、本当に、娘さんをキュートって名に変えるのかい、イツミさん? なんだか、洋物の名じゃないか」
「まったくだよ。お嬢ちゃんたちが戻ってきたのは嬉しいけど、名前が変わってしまってはやりにくいさ」
五十郎と四太が不満そうに言った。
三朗はますます混乱した。
「仕方ないでしょう。あの子たちがそれが気に入ってるんだから……」
イツミは首を竦めた。
そして、改めて三朗に頭を下げる。
「……それよりも、三ちゃん、キュートのことよろしく頼むわね。あの子たちは、とても甘えん坊だから、大変だと思うけど、しっかりと躾てやって……。それと、たまにはわたしの相手もしてよ」
イツミがつんと三朗の横腹をつんと突く。
それを見た四太と五十郎が、またもや面白くなさそうに顔をしかめた。
だが、三朗はすっかりと動転してしまった。
どうやら、昨夜のことは夢でもなんでもなく、現実のことのようだ。
そして、ここは化け猫たちが暮らす「九猫荘」であり、三朗はそこの女主人のイツミと仲良くなり、さらに三朗の飼い猫のキュートは、実はそのイツミの娘であって、三朗は一晩のうちに、母娘どもども、続けて抱いたということだ。
三朗は呆気にとられた。
「どうやら、まだ半信半疑の顔ね、三ちゃん。だけど、そのうち気持ちも慣れると思うわよ……。それよりも、しばらくの大変よ。あんたが寝てから、キュートは、皆で姫初めの順番決めだと言って、随分と全員で話し合っていたからね。まだ、ひとり終わっただけでしょう? あと八人……。ちゃんと相手をしてやってよ。その代わり、食事だけは、毎日運んでくるから」
イツミが笑った。
しかし、なんのことか、さっぱりとわからない。
キュートが実は化け猫だったことは、もはや受け入れるしかないが、順番決めだの、残り八人だというのは、なんのことだろう……?
そう言うと、イツミが逆に驚いた顔になった。
「ええっ? 知らなかったの? まあ、そう言われれば、キュートは、これまで三ちゃんの前では猫だったから、わからなくても当然か……。じゃや言うけど、あの子は特別なのよ。ひとつの身体に九つの命を持っているの。その九人というか……九匹が、交代でひとつの身体を使っているというわけね……。まあ、心配しなくても、九匹が九匹とも、あんたをご主人様と認めているようよ。よほどに好かれたのね」
イツミが言った。
驚いて部屋に戻った。
そこには少女がいた。
しかし、明らかに夕べのキュートとは違う。
年齢は同じくらいだと思うが、髪がショートで、しかも赤毛だ。
顔も全然違う。
ただし、美少女にはかわりない。
裸ではないが、素裸に三朗のTシャツだけを着ていた。
とても、エッチだ。
むしろ、完全な裸よりもエロチックかもしれない。
「ご主人様、お帰り──。今日はあたしの番さ。これでも度胸だけはあるからね。体力も夕べの
最後でちょっと不安そうな顔になったが、確かに夕べの茶髪の少女とは姿だけでなく、性格も別人だ。
三朗はやっと理解した。
キュートは、ひとりではなく、ひとつの身体に九つの人格……いや、猫格、とにかく、いわゆる、人間でいう「多重人格」のように、一個の身体でころころと九人が入れ替わって生きているということなのだろう。
人間の多重人格と異なるのは、人格が変化すれば、性格だけでなく外見も一変するようだ。
さすがは、化け猫の娘だ。
「四美というのは、キュートの中で呼び合っている夕べの人格の名か。じゃあ、お前は?」
訊ねると、この元気娘は「
そして、やはり、キュートの身体の中には、
その九人を合わせたのが、キュートということになるらしい。
三朗は、ほかのキュートは、どういう女なとかと訊ねてみた。
「
「性奴隷?」
露骨な煽り言葉に、三朗は思わず繰り返した。
「えっ? ご主人様はそういうのが好きなんだろう? 四美が皆に一生懸命に教えていたよ。ご主人様のそばで、ご主人様の好みを覚えたって言ったけど、違うの?」
五美のキュートがきょとんとした顔になった。
どうやら、三朗のSM趣味のことは、昨日の四美のキュートが言いふらしたようだ。
「違わない……かな……」
三朗はそう言った。
すると、五美はほっとした顔になった。
「
五美が喋り続ける。
ひとつだけわかったのは、この五美はとてもお喋りだということだ。
ほとんど、三朗が口を挟む間がないほどに喋り続けている。
三朗は苦笑するしかなかった。
いずれにしても、イツミの言葉の通り、この九人を相手にするのは大変なのかもしれない。
しかも、まだ八人の処女喰いが残っている。
ともかく、こうなったら、全力で三朗はキュートたちを愛することにした。
三朗のやり方で……、ということになるが……。
「……じゃあ、お喋りは終わりだ。五美にはなにをやってもらおうかな……。とりあえず、目の前でオナニーをしてもらおう。ただし、いっては駄目だ。いきそうなったら、手をとめろ。お前には寸止め奴隷になってもらう。ハードなのが好みだったようだしね」
三朗は言った。
五美が顔を赤くし、ちょっとだけ躊躇した仕草になったが、すぐにTシャツの下から指を差し込んで、クリトリスをいじり始めた。