ーーソウヤが”ミーティア”と呟いたことで、その戦は幕を上げた。
瞬間、姿を現したばかりのものベーに向けて流星群と見間違うような神剣魔法が降り注ぐ。
「っ……今のって」
「ソウちゃん、だよね……」
「ものベーごと消し飛ばすことに成功すれば御の字。それができなくても、これを防げばそれだけでかなりの力を使用することになるから殺しやすいってことだろう」
「本気で殺す気なのね……」
「あとは、この力を見て逃げ帰ってくれるのではないか、というのもありそうですね」
「まあ、こんなところで何を言っていても現状が変わるわけでもない。私たちが外に出てしまえばもしもの場合に追い返すために必要なものベーを狙うことはないだろう。行くぞ!」
全力で防ぎながらも衝撃までは殺すことができずにものベーが揺れて、地面に不時着のような形で落ちた。そんな中、作戦会議を行う場として使用されていた生徒会室から飛び出す神剣使いたち。
「邪魔だっ!」
ものベーから繋がる地上への魔法陣、そこから飛び出た瞬間に待機していたミニオンたちの
「こいつら、これまでのミニオンに比べて強くない!?」
「これはただのミニオンじゃなくてエターナルアバターよ! あたしやユーフィーならともかく、他の連中には厳しいかも、ねっ!」
沙月が切り結びながら疑問を口にすれば、その答えを知るナルカナがこのミニオンが何者なのかを答え、同時に周囲の奴らを一気に吹き飛ばす。
「やっぱり、あれじゃ殺しきれないか」
そんな光景を、少し離れたところから宗弥は見ていた。戦場ではユーフォリアとナルカナが中心となってエターナルアバターを吹っ飛ばしながら先へと進んでいる。それを見て”あいつら俺の居場所わかってんの?”と思いながら、銃を二つ組み合わせてライフルへと変化させる。
「『オーラフォトンコメット』!」
そのライフルの先に現れた魔法陣から、
それだけではなく、ライフルをもう一度二丁の銃へと戻し
「『オーラフォトンメテオ』!」
流星。そう形容するしかない一撃として、地中から襲い来る彗星を防いだ神剣使いたちに此度は宇宙から墜ちる。
「さて、移動移動」
このまま残っていればバレてしまう可能性もある。今のうちに少しでも離れておいた方がいいだろう。そう判断して宗弥は動き始める。
「逃がしません!」
「!?」
そうして動こうとした直後、悪寒を感じてその場から全力で、それこそ銃状態の『境界』、その銃口からマナを噴射させて飛び退く。次の瞬間には先ほどまでいた場所に何者かが着弾しているのが見えた。土煙で隠れてはいるが、先の声から大体誰がやってきたのか宗弥には予測がついている。
「ユーフォリア……!」
「一緒に帰りましょう、お兄ちゃん……」
そこにいたのは、思っていた通りユーフォリア。どこか悲しそうな瞳で、懇願するような声を出す彼女に対して憎悪が溢れ出るのを宗弥はどうにかして歯軋り程度に抑えて、ただ銃を構えるのだった。
………………
…………
……
「はっ、帰ろうっていう割にはいきなりご挨拶だったよね」
「え……?」
彼女が着弾した地点はクレーターになっている。
「お前、どうやってここまできた? あの場所で今も望たちはエターナルアバターの対応をしているってのに、ここに来るまでにも大量のアバターが配置されてるってのに、ここまでこんな短時間で来られるはずがない」
「それは、あの神剣魔法が終わった後に『ルインドユニバース』で空から一直線に突っ込んできたんですけど……」
「つまり、俺の対応が一瞬でも遅れていればその瞬間にはお陀仏になってたようなことをして、それでよくもまあ、『帰りましょう』なんて言えたもんだよ。あれはどっちかっていうと『逝ってらっしゃい』だろ」
正直に言って、あれを見てまだ『一緒に帰る』なんてことを受け取れると思われているなら、それこそ頭がおかしい。殺そうとしたんだから、殺される覚悟をしろという話だ。俺はこいつらと別れた時に警告をして、それでもこの世界に入ってきたから殺そうとして、そして殺される可能性も……考えたくはないけど、最悪の場合は殺される可能性も考えている。それなのに、殺そうとして『一緒に帰りましょう』は『お前じゃ勝てないんだから従え』と言われているようでムカつく。
「最初から殺すつもりでやってきて、口にする言葉がそれとか舐めてんのか」
少なくとも、最初に言葉ではなく攻撃を使用している時点で信用などできるはずもない。本当に共に帰りたいというならミニオンたちを乗り越えて真正面から言葉を尽くすべきだったのだ。その場合はミニオンが全滅しそうな時点で逃げるけど。
「だから死ね」
口ごもっているユーフォリアに対して銃口を向けて、その引き金を引いた。
「っ!」
多分、今の俺は冷たい目をしている。殺すことへの躊躇はない。さすがにこの距離では死の属性を乗せて放つには時間がかかりすぎてその間に何をされるかわからないため、当たれば確実に殺せるであろうそれは使えないが、それでも今の発言に動揺しているユーフォリアはただのマナでできた銃弾への対処もワンテンポ遅れた。
「わざわざまともに戦ってやる義理もない。お前らは永遠にこの世界で遊んでろ」
さすがにエターナルアバターをただ召喚するのでは戸惑っていたとは言えユーフォリアも食い止めて来るだろうと考えて、アリアに身体制御を任せて銃弾をばら撒きながら、その隙にエターナルアバターを召喚する。
「天輪!」
「クォン!」
そして同時に召喚した天輪がバッタバッタとなぎ倒されるエターナルアバターたちのマナを吸収し四つの尾を起点に巨大な火球を生み出していく。火球は天に向けて放たれ、ある程度の高さになると小粒──とは言っても人間大ではあるのだが──の火球になって望たちが戦っている場所に降り注ぐ。
「そんな!?」
「お前が俺に追いつこうとエターナルアバターを殺そうとするたびに、あいつらは死に近づくってわけだ」
今もエターナルアバターの召喚は止まっていない。つまり、望たちが合流するまでは心優しいユーフォリアにはこの軍勢を倒すことはできない。ユーフォリアの動きが鈍ったことを確認してから俺は飛び立つ。
【ちょっと待ってもらえるかしら、宗弥】
(アリア? どうかしたのか)
【ええ。彼女に一つ言わないといけないことがあるから】
(アリアが言うならいいけど……)
俺が許可を出すと共に、見慣れた姿のアリアが俺に抱きつくようにして出現する。
「お兄ちゃん、その子誰ですか?」
俺に抱きついているのを見たユーフォリアが、少し俯いて尋ねて来る。微妙に声が震えているような気もするけど、多分気のせいだろう。
「私はアリア。貴方のお兄ちゃんの恋人なの。……今、私たちは幸せだから、貴方たちが私たちのことを思うなら帰ってくれないかしら?」
ふふふと笑うアリアはどう見ても煽っているようにしか見えない。
「ゆーくん、やるよ」
「おい、アリア!?」
【ごめんなさい。思っていたのとは違う結果になっちゃった】
一瞬で騎乗形態になった『悠久』に、ユーフォリアが飛び乗るのが早いか、アリアもすぐに銃へと変化する。宇宙へと飛び立った『悠久』とユーフォリアだが、気を抜くことなんてしない。ゲームをしていた時にはエフェクトとしてあっただけだが、この世界ではどうやら本当に宇宙へと飛び、そこからの墜落による威力を上乗せしているらしい。
「『ドゥームジャッジメント』!!」
「こん、のォ!」
その墜落に対して『オーラフォトンバリア』だけでは足りないと思い、
「『オーラフォトンアステロイド』ォォォォ!!」
放たれた神剣魔法は、数多の流星と化して地上に向けて宇宙から墜ちて来るユーフォリアを撃墜するために向かう。威力、速度の両方である程度の減衰に成功したが、それでもアリアに展開してもらった『オーラフォトンバリア』を揺るがした一撃は、どちらも俺がやっていたら多分防ぎきれずに死んでいただろう。
「最大の力を、最高の速度で……」
「アリア、形状変化……」
地上に着地した直後のユーフォリアは、周囲のエターナルアバターを無視して俺に突っ込んで来る。攻撃もほとんどを防ぐのではなく躱して、最小限のマナ消費で近づいて来た彼女はその視界に俺だけ映している。そうして振るわれる剣状態の『悠久』に合わせるようにして銃状態だった『境界』の形も変化していき、俺の肉体の主導権が俺からアリアに移っていく。
「最善のタイミング!」
「『ディバインエッジ』!」
接近戦なんて全く心得のない俺にはできるはずもないのでアリアに体を任せマナを練ることに集中する。双剣と化したアリアで『プチコネクティドウィル』の初撃を弾いて、そのまま弾いたのとは逆の剣でユーフォリアの体を切り裂こうとしたのは『ウォーターシールド』で防がれる。
双剣のままでは取り回しが面倒なので一度銃にして肉体の主導権を俺に戻してからすぐに引き戻し、そのまま至近距離から銃撃を浴びせもう一度距離を取る。
「『フレアアックス』」
斧へと変化した『境界』を地面に叩きつけひび割れを作り、そこから赤属性のマナを活性化したことによって『フレイムタワー』が噴き上がる。
「成敗です!」
が、その炎の塔をウォーターシールドで身を守りながら最短距離で突き抜け、『ルインドユニバース』で俺へと激突しようとする。正面から突っ込んで来るだけなので全体を守るバリアである必要はなく、ただの『オーラシールド』で正面から向かって来るユーフォリアを防ぐ。
「ロープ!」
「えっ、きゃあ!?」
そして、その攻撃をしている間は『悠久』に乗っているユーフォリアは完全に無防備なので、狙うなら今しかない。俺がマナを練って『オーラシールド』に回している間に、俺の体を操るアリアが両手の銃を縄へと変化させてユーフォリアを縛り上げてぶん投げる。
「『オーラフォトンメテオロイド』!」
そしてユーフォリアが墜ちたことで失速した『悠久』を防ぐために使用していた『オーラシールド』を解除して、そちらに回していたマナを
「っぅ……塵は塵に、灰は灰に、声は事象の地平に消えて!」
「アリア、ここで一気に決めるぞ。この一撃を確実に通す!」
その声から、ユーフォリアが何をしようとしているのか把握して、それに対抗するための技の用意をする。
「『ダストトゥダスト』!」
「『マナブースト』!」
この空間から一時的にマナを喪失させる『ダストトゥダスト』で『オーラフォトンメテオロイド』を防ごうとするユーフォリアに対して、『境界』の能力でこの一帯にマナを生み出す『マナブースト』で対抗。『悠久』の守護神獣たる”青の存在、光の求め”のブレスとして放たれたその一撃は、長時間の効果とはならないので、少し疲れる程度で長時間の使用そのものは不可能ではない。
「あ……」
そして、それを使用するユーフォリアはそちらに意識を集中していて、メテオロイドに対する防御スキルの使用は間に合わない。たとえ間に合ったとしてもこれを防げるだけのものにはならないだろう。故に、これでユーフォリアは撃破したと判断したところで
「どうにか、間に合った……!」
「ユーフィーちゃん、大丈夫!?」
「望、希美……!」
『オーラシールド』となんだろうか。緑属性のディフェンススキルであるとはわかるけど『○○ブロック』の○○に入る部分はわからない。まあとりあえず二重のディフェンススキルで俺のメテオロイドを防いだ望と希美がそこにはいた。
主人公:ガチで殺す気
原作勢:殺す気なし(なお、普通に殺せる威力は出す模様)
ユーフォリア:恋人がいることに我を忘れて『お兄ちゃんどいて。そいつ殺せない』状態