望と希美がやってきたところでやることは変わらない。反動も弾切れもない銃なので初心者の俺が使うにも楽だ。
「死ね」
だから、銃弾をばら撒くなんて漫画みたいなこともたった二丁の銃でできるわけだが、そんな程度で怯んでくれるほど甘い相手ではないだろう。
「ユーフィーちゃんは休んでて!」
「こっからは俺たちが相手だ!」
「うるさい、黙れ、死ね」
無駄に熱いこいつらのテンションに合わせると疲れる。だから、ただ単純に俺の目的を告げて殺しにかかる。こいつらの思いとやらを聞いて感化される危険性をわざわざ残して置く必要性などない。
ばらまかれた銃弾は大気の壁によって全て弾かれ、その隙に望が突っ込んでくる。振るわれる双剣に対してもわざわざ打ち合う必要性もない。銃口からのマナの噴射で距離を取りそのままーー
「逃すか!」
「チィッ!!」
逃げるよりも先に望が
「てやあぁぁぁあ!!」
「アリア、形状変化」
そして、望の攻撃に注視し力を傾けていた俺に対して、頭上から希美が『清浄』を振り下ろす。普通に考えれば防げない攻撃だがーー
「嘘っ!?」
『境界』が変化したことでその攻撃は防がれる。今回変化した形はなんと、ヘルメットとシャツ。最初から攻撃をするつもりがない、動きを阻害しないことを大堰堤とした身を守るための携帯である。
「吹き飛べ」
手から生み出したマナの奔流によって言葉通りに希美を吹き飛ばし、望の『オーバードライブ』の剣が当たっている部分にマナを圧縮することで、本来の『オーラシールド』よりも使用するマナの量が減った状態で防ぐことに成功する。
「なっ!?」
「爆ぜろ」
希美に対してはマナの奔流で相手をしたが、望に対しては圧縮したマナ爆弾とでもいうべきものをヘルメットから銃に戻した『境界』によって発射し、望の顔面で爆発させる。
「ノゾムゥ!」
「レーメ!」
「任せろ! 『ライトバース』……」
「『オーラフォトンバリア』」
『ライトバースト』の魔法陣ごとレーメを隔離し、その内側でライトバーストが発動したことでレーメはその直撃を受けて気絶してしまう。
「レーメ!?」
「死ね」
レーメに気を取られた隙に、もう一度銃弾をばらまく。今度の銃弾はただの銃弾ではない。先までのただのマナ弾に慣れきったあいつらは絶対に一回は引っかかってくれるだろう。
「っ!?」
【宗弥、チャージが終わったわ!】
『バーストレイン』という技名のそれは相手の防御に当たるとともに爆発して、衝撃をもって行動を阻害する。そうして稼いだ時間のうちに、俺はもう一度、今度はアリアにチャージしてもらっていた精霊光の一撃を放つ。今度の技も、宇宙を冠する一撃ではあるが、先ほどまでとは毛色が違う。
「『オーラフォトンエクリプス』ゥゥゥゥ!!」
マナの砲撃ではなく、マナの弾丸でもなく、ただそこに召喚されただけのマナの塊。ただし、『
エクリプスは制御をミスしたり、長時間の使用によっては俺自身も危険になる技だが、未だに技の内容がバレていないやつで、対処法がわかっていても力技しかない技はこれ以外は思いつかない。故にこれを選択した。
「『浄戒』の一撃で決める!」
生み出された塊はブラックホールのように周囲のマナを吸収して肥大化する。至近距離にいた希美がそれにより大ダメージを受けて、マナも吸収されるのを見て、それをそのままにしたら自分たちを構成するマナまで吸われると感じたのか、余力が残っているうちにこれを砕いてしまおうと望は『黎明』を一つにして、先ほどまでよりも膨大な力を吐き出し始めた。
「『ネームブレイカー』!」
それらが全て、エクリプスを砕くためだけに解放される。大半はエクリプスに吸われていくが、未だに完成していない技ということもあってか、ぶつけられる破壊のマナに吸収が追いつかず、たっぷり10秒近くかけて破壊された。
「くっ……」
だが代償に望も力を使い果たして、倒れるのを気力だけで防いでいる状態。もはや、邪魔する輩は誰もいないとそのまま撃ち殺そうとしたところで
「させません!」
「ちっ!」
エターナルアバターを倒し、天輪がマナを吸うよりも先に自分の回復に使用していたユーフォリアが、『悠久』を持って突貫してきた。
「望、希美、ユーフォリア!」
しかもそこに、天輪がエターナルアバターを使用しての援護ができなくなったことで順当に向かってきていたエターナルアバターを倒すことができていた旅団の残りメンバーもやってきた。
「あら、結構好みのタイプ」
見たことない相手──原作のメンバーと照らし合わせればナルカナだろう。ルプトナとそっくりだし──が何か世迷言を言っているようだが、『全員合流した』とわかってしまえば話は早い。
「アリア!」
【ええ、わかっているわ!】
『境界』の能力を使用する。この世界にいたままではリンチされるだけだ。ゲーム上の設定でしかないとはいえ、下位神剣の集団に一位と三位が一人ずつ混じっているだけであるにも関わらずエターナルを数体倒している集団に相手に、戦闘経験が少ないまま真正面から戦いを挑むほど間抜けではない。
「逃すか!」
故に、俺の肉体は境界を超えて別の分枝世界へと移動する。そうしてこの世界の体が解けていく直前に、それに気がついた旅団の面々は各々が持つ最大の攻撃を放ってくる。
『ネームブレイカー』『スターストーム』『ディスインテグレート』『ランページブルー』『布都御霊の太刀』『スターザッパー』『コズミックテンペスト』『エレメンタルブラスト」『ヘイルストーム』『降天昇地無拍』『オブリテレイト』『無明の太刀」『プライモディアルワン』『ドゥームジャッジメント』
それらの技が一斉に殺到するも、すでにこの分枝世界から半分以上離れている身には、互いに傷つけ合わないように制限している状態であることも合わせて通用しない。が、そうとわかっていてもこのリンチが恐ろしいものではないとは口が裂けても言えない。
「もう二度と会わないことを祈ってるぜ」
するりと解けていき、俺の視界も先ほどまでいた世界ではなく、また別の世界に移っている。これで逃げ切れたかとホッとしたところで
「逃がしません!」
「!?」
最初と同様に、けれど今度は正面から声をあげてユーフォリアが突っ込んできた。
………………
…………
……
「まだ追ってくるかよ。……いい加減にしつこいんだよ、消え失せろ!」
銃弾を放つが、今度はシールドで防ぐだけで攻撃をしてこない。疑問に思ってさらに銃弾を放ち、挙げ句の果てにはオーラフォトン系の攻撃もいくつか放ってみるが反撃する気配すらない。
「……どういうつもりだユーフォリア」
俺の戦闘経験はどうしようもないほど少なく、自分でも攻撃に転じるだけの隙はかなりあると思っている。だからこそ反撃する系統の攻撃もいくつか用意してあるし、最悪の場合はアリアに体を預けて対処するという方法も用意してある。
そして、攻撃に対処するだけの余裕もあるはずなのにそれらをせずにただ防いでいるだけの幼女は不気味だ。舐めているのか、それとも作戦があるのか。先は戦いの中で攻撃を仕掛けていたことを考えれば作戦だろう。答えるつもりはないだろうとわかっていても聞かずにはいられない。
「簡単です。お兄ちゃんがさっき言ったじゃないですか『殺す気か』って。だから、お兄ちゃんが諦めるまで防ぎ続けることにしました」
「ふざけやがって……!」
それは『お前程度の攻撃では殺しきれるはずもない』っていう挑発のようにも思える。が、直後に気づいた。
「ああ、いや違うか。そういえばお前はエターナルだもんな。殺しても神剣の本体が別にある以上は復活できるわけだし、こんなところで死んだところで何も痛手ではないってことか」
「っ……!」
ユーフォリアが思いもよらなかったと言わんばかりの顔になるが、それが演技だろうとそうでなかろうとどうでもいい。こいつがこう言った以上は、ここから一度でも反撃をしてしまえばそれで最後。信用など得られるはずもなく、俺が戻ることはないとわかるだろうし、それを心配する必要はないだろう。
「だったら殺しはしない。殺しても殺しても向かってくるなら、お前の心が折れるまで続けるだけだ」
攻撃してこないのであれば、取り回しの楽な代わりに威力に難のある銃でなくてもいい。破壊力を求めるために二つを合わせた巨大な斧に変化させる。
「
その文言とともに、巨大な斧がさらに変化していく。より破壊に特化した形ではあるが、巨大かつ重量に難があるために、それこそ使い道がほとんどないとすら思えた無意味だった形態に。もっとも破壊に適した二つの属性を組み合わせた、精霊光を纏う焔の斧へと。
「
柄の部分を持って振り回すと刃の部分から漏れ出たマナの焔が空間を焼く。柄だけで俺の2倍近くの大きさがあるが、神剣による強化がある以上は扱うことに支障はない。
漏れ出た焔はそれだけで空間から青属性が跋扈する余地を奪い、ユーフォリアの力の半分を削いでいく。白属性がある以上はそれだけでは完全に防ぐことなど不可能だが、それでも今から行うことを考えればこれにはちゃんと意味がある。
「ブチ抜け」
音速を超えて回転し、もはやただの炎の輪にしか見えない斧を速度はそのままにユーフォリアに叩きつける。『ウォーターシールド』では防ぎきれないと思ったのか、彼女の有する最大の防御技である『オーラフォトンバリア』が展開されたが、一瞬で叩き割る。そのまま構えていた『悠久』に叩きつけられた一撃に小さい悲鳴を漏らしたユーフォリアだが、これで十分にダメージを与えられることさえわかればいい。
「
漏れ出る焔に二つの精霊光の属性が追加される。ただそこにあるだけでマナを吸っていくエクリプスと膨大な破壊を撒き散らすメテオロイド。それらが混じり合い、斧は破壊の嵐と成り果てた。
一つ一つですらユーフォリアに大ダメージを与えられるものを三つ同時に重ね合わせて放つ。防御しかしない以上は反撃など気にする必要もない。
「『クリムゾンブレイザー』」
ブラックホールがエネルギー源となって輝く天体の名前を冠する一撃が、焔を纏いてちっぽけな少女の全てを焼き尽くすためだけに放たれる。しかも、『マナブースト』を常にかけているために、マナが切れて攻撃が中断されることなんてありはしない。
周囲の全てを焼き尽くしていく焔の天体は、世界そのものを飲み込んでいき、『マナブースト』によって滅びに瀕した状態から最善に近い状態まで回復していた世界を、もう一度完膚なきまでに滅ぼし尽くす。周囲は荒廃し、焦熱地獄を騙るには十二分な有様となったそこには、生命が存在する余地などない。
「……驚いた」
だから、そこで未だに生き残っている生命がいるのであれば、それは驚嘆に値する。『限界まで強化しての最強の一撃でも殺し切れない』ということになるので最悪な事態ではあるのだが、それよりも先に驚きを口にしてしまう程度には。
「こんな程度じゃ、私は諦めませんよ!」
「面倒だな」
ボロボロではあるし、マナもほとんど残っていないから意地だけで立っているのだろうが、それでも当人の言うとおり未だその目に諦めの色はないということは、攻撃で心を折るのは不可能ということなのだろう。最強の一撃でもダメならどうにかして新しくさらなる最強の一撃を作ったり、仲間と協力して敵を排除するのが王道だろうが、俺にはそんなポンと新技を思いついてブッツケ本番で成功させるだけの脳みそや度胸もないし、仲間に関してはそもそも同じような力を持ってる奴が怖いから逃げてるのに、こんなところに関わってくることができるほどの力を持つ仲間がいるわけがない。
【うーん。ここまでやってダメなら、最後の手段ね】
(最後の手段?)
しかし、俺にはアリアがいる。唯一の味方、彼女以外の味方は俺には存在しないからこそ、彼女に策があると言うならそれに賭けてみるのもいい。実際、これまでは俺でどうにかなってきたわけだし。
【攻撃じゃ心は折れない。心を折れずに殺しきったら、いつか時間樹から出ないといけないことになった時に、もしも出会ったらまた追いかけてくるかもしれない。だから絶対に心を折るか、最低でも貴方に関わろうという気をなくしておかないといけない。そして、あの子と貴方は女と男。なら、女の子の心を折るためにやることは一つでしょ】
そうして斧状態になっている、脳裏には紅いドレスと金赤の髪色になった状態として写っているアリアは自信満々に告げた。
【強姦よ。………好いてる男にされて効果があるかは知らないけど】
最後にこっそり何か言ったような気もするが、発言が衝撃的すぎてそこまで聞き取れなかった。