数秒程度だけど途中で投稿してしまった。申し訳ない。
「私との出会い、ですか?」
「そうそう。ユーフィーと会ったのはナーヤたちと出会った次の世界……『魔法の世界』だからさ」
膝の上で俺に背中を預けるように座っているユーフィーがこちらを振り向いて尋ねてくる。外の雪景色には似合わない、薄手の白いワンピースに蒼いカーディガンを羽織っているユーフィーだがそこまで寒そうな気配は感じない。俺は基礎体温の高いユーフィーを抱きしめて暖をとり、ユーフィーは俺に抱きしめられて俺の体温で暖をとる。互いが互いの湯湯婆代わりになっているおかげで、少しの暖房があれば十二分に過ごしていけるのだ。以前、ミューが『絶炎』の神剣魔法で暖をとろうとしたこともあって家を燃やされないために導入した暖房だが、こうして本来なら薄い服を着用するのに合わない冬でもユーフィーのそんな姿を見られるので、そういう意味でも導入した甲斐があったと言える。
「正直に言って、この世界でのことって特に語ることはないんだよなぁ。だってユーフィーもこの世界から参入してるわけだし。知らないことを聞きたいっていうなら特に」
「でも、僕たちはまだユーフィーとの馴れ初めを聞いてないよ?」
背中にへばりついていたミューからはそんな発言が出る。彼女は契約している神剣の性質かユーフィーよりも体温が高く、それに伴ってノースリーブシャツにショートパンツという余計に露出の多い涼しそう……この場合は寒そうという言葉の方が似合いそうだが、まあそんな格好をしている。
まあ、そんな格好で互いの体温で暖をとろうとぐらいならもっとちゃんとした服を着ろと言われるかもしれないが。一応もう一つ暖をとる手段は用意していて、それに合わせた格好ではあるのだ。この「お前らだけ夏場だと勘違いしてるんじゃね?」と言われそうな格好も。具体的には床暖房の代わりとして床下に『絶炎』が仕込まれている。
まあ、今のところはそんなことはどうでもいい。俺たち二人だったら語るようなことでもないが、ミューも加わると確かに話さないといけないだろう。それに、ユーフィーも話に加われるというのは俺の記憶違いがあったときにわかりやすいってことだし。
「うーん。そうだなぁ。確かにミューからすれば知らないことだしね。ーーうん、語ろうか」
………………
…………
……
今のユーフィーなら覚えていることだが、当時のユーフィーは『魔法の世界』にやって来たばかりで暁が望の力を利用して放った一撃が反射されて返って来たものを防いだことで記憶がすっ飛んでいた。そんな彼女の記憶が飛んでいることが発覚するまでーーつまり彼女の意識が戻るまでの間、俺はユーフィーが目覚めるのを待ち、目覚めたら報告するように言われていた。
無論、この理由は俺が「神剣使いに初対面では好意的に思われる」からで、目覚めた時に俺単体だったらいきなり殺されることはないだろうと踏んでのことだった。
実際、その考えはあたりで
「お兄ちゃんお兄ちゃん」
「どうした、ユーフォリア?」
「えへへ……なんでもないです」
目が覚めた後のユーフィーはカルガモの雛のように俺の後をついて来た。しかもなぜか「お兄ちゃん」呼びをされるので周囲からの目線は嫉妬マスクを被っているとしか言い様がなかった。それでもクラスメイトだけは「ちっちゃな護衛だな」なんて笑って言っていたので、少しばかり救われはしたが。
その当時は宿屋に泊まっていたわけだが、眠る時も俺の部屋にやってきて、常に俺が一人になれる時間はなく。これまではクラスメイトが共にいた時間も、常にユーフィーが付いてくるようになったことでどちらかというと監視されているような気分に陥っていた。
ただそれでも、見た目や性格の問題か他の面々に比べれば微妙にユーフィーには甘かったのだが。
会長たちの考えは、俺がユーフィーと一緒にいることで、いつ殺されるのかわからない恐怖に常に怯えながらそれを表に出さないように過ごすという一点を除いて──つまり俺以外には誰も殺される恐怖に心削られることがないので──何も問題はなかった。
………………
…………
……
「ユーフィーは、最初からこんな感じだったの?」
「あー、うん。もう少し恥じらいはあったけど、だいたいこんな感じだった」
さすがにその当時はまだ恋人ではないので、今みたいなイチャコラはできなかったが、それを除けばほとんどその時点で完成しきっていた。……とは言えない。こんな感じだったのはだいたいユーフィーだけで、当時の俺は神剣使いに対する恐怖があったので、、ユーフィー側からのスキンシップには何もされたりしないように応えるけれど自分から何かすることはなかったのだ。その当時は”ユーフォリア”と呼んでいたことからもその辺りはわかってもらえるかもしれない。
「私が本当の意味でイチャイチャできるようになったと思うのは『枯れた世界』ーー暁さんの故郷で起きた事件が解決したあとですよ」
「うん、あの後になって、ようやく神剣使いに対する恐怖が取れたんだよね」
正直に言えば黒歴史と言いたくなるようなこともあったし、『魔法の世界』の直後、『未来の世界』でのことはだいたい……というか関われる部分がないので原作通りに進んだのでここで大きく語るようなことではない。さらにはユーフィーの一言もあってミューの興味も『未来の世界』よりも『枯れた世界』での出来事に移っていたので、『未来の世界』での出来事は本当に最低限。誰がどういう経緯で仲間になったか、程度の話で終わった。ごめんな、スバル。
「ちょっと話が雑な気もするんだけど……」
「最初に言ったけど、僕が聞きたいのは宗弥とユーフィーの馴れ初めだから」
そんなこんなで迎えた『枯れた世界』で、ついに俺の限界が来たのだ。
………………
…………
……
『枯れた世界』では暁と望の戦いの他にもう一つの戦いがあった。それが『光をもたらすもの』との決着。本来ならものべーが狙われることなどなかったのだが、この世界では人質を取ろうとものベーを狙って来たのだ。まあ、そっちの方が普通だろう。
「ひぃっ!」
「に、逃げろーー!」
ミニオンから逃げ惑う学生の中に、俺の姿も当然あった。今回に関しては完全に調整されているのか、俺のことを見たとて、特にお辞儀して素通りするなんてこともない。向こうは無限に
「あ……」
そして、そんな逃走劇もいずれ終わりは訪れる。相手がそこまで本気ではなかったから、そしておそらく人質として利用するために殺してはならないから、俺たちは誰も殺されていない。
『そうね、そいつらのうち何人か見せしめに殺しなさい』
俺たち全員捕まって体育館に押し込められた後、ものベーに責めて来たミニオンたちは体育館の入り口に陣取り、それらはエヴォリアの命令に従って数人程度が前に出てくる。
そんな時、恐怖も抱いたが、それと同時に怒りも湧いて来た。
(ふざけんな……! なんでこんなことに巻き込まれなきゃならないんだ! 俺が何か悪いことしたのかよ!)
だいたいの内容は、「死にたくない」という思いと「なんで俺たちが」という嘆きと、何よりも「てめえら全員死にやがれ」という怒り。それらが重なって今の状況に対する怒りとなって燃えていた。
(どうにかして生き残らないと……!)
そのための力のある場所については知っている。というか『どうにもならないようなタイミングになったら名前を呼べ』と言われている。今がその時ではないだろうかと思い、こんなぶっつけ本番でどうにかなるのかと一瞬冷静になり、
ーーあら、今呼ばなくていつ呼ぶの?
一瞬でその辺りの悩みが吹っ飛ぶ。結果残ったのは純粋な怒り。『どれもこれも全部神剣使いなんてものがいるからだ』なんて思いに染まり、『これ以上こんなところに居られるか!』という思いが強くなった。
「来てくれ、『境界』」
声は静かに。本気で怒ると人は静かになるなんて聞いたけど、それって本当なんだなとどこか他人事なまま、夢の中で話をしていた彼女を呼び出した。
その神剣が召喚された瞬間、周囲の、俺のことを見える位置にいた面々が息を飲むのを感じたが、今の俺は体をマナ存在に作り変えられる違和感で気にするだけの余裕がない。
ーーええ、これでようやく貴方と会えたわね、宗弥。
その身体中をかき混ぜられる感覚も『境界』のーーアリアの声が聞こえたことで気にならなくなる。互いの真の名を呼んだことで、契約は交わされ、マナ存在に作り変えられたと同時に神剣使いとしての身体能力強化が行われる。周囲が驚くのも構わずに全力でミニオンに向かって突貫しながらも、その思考は混沌としていてどう戦うのかなんて一切考えていない。
そもそも、前世が神様だったりしないただの一般人である俺にそんな戦闘の技法なんて求めないでほしい。ぶっちゃけた話、刃物なんて包丁しか持ったことないし、喧嘩になれば殴られそうになるたびに反射的に目を閉じてしまう程度にはクソザコナメクジなのだ。そんな俺が何か小難しく考えても戦い方なんてわかるわけがないし、アリアに体を任せる方が断然強い。
「お前ら全員消えてくれよっ!!」
手に生み出されるのは二丁の拳銃。白と黒の対照的な色合いのそれらは、白が『生』を、黒が『死』を司る武器。生死を司る二つの同じ武器として顕現させるこの永遠神剣は、それこそ俺が望んだ形の武器で二刀流──剣以外でも二つ同時に同じ武器を扱うがわかりやすく二刀流としておく──を実行できる。
「なんで俺がこんなことをしないといけないんだ!」
放たれた銃弾はミニオンの体に当たった部分から『死の概念』を侵食させて、その体を崩していく。それを確認して奴らが全員体育館の入り口側に集まっていたことを感謝する。おかげで俺が後ろに向けて撃ったりしなければクラスメイトや同級生、後輩に当てる心配はない。
「神剣使いなんて消えちまえっ!」
それが自分のことを守ってくれていた望を始めとした面々を全否定するどころか、『生きる』という目的を果たすために契約した今の自分をも否定することだと理解していながらそう口にせざるを得ない。正直に言って、これまで神剣使いと過ごす中で大きくなった、幾度となく感じることになった恐怖もその原因ではあって。それを叫びの節々から感じられるクラスメイトからすれば何も言えない。
ミニオンたちがその武器の特性上接近してくると身が竦み、剣を振り上げれば恐怖から目を閉じてしまうが、そこに関しては相棒が優秀。アリアは目を瞑っている状態の俺の体を勝手に動かして近づいてきたミニオンを撃ち抜く。たっぷり10秒かかっても痛みどころか衝撃すら来ないことで俺はそのことを理解して、心の中でアリアに感謝を告げる。
「もう、これ以上俺に関わるんじゃねぇぇ!!!」
奥で赤属性のミニオンたちが神剣魔法を大量に、多重に展開していることが確認できた。それを確認した瞬間、俺の手の中で
次の武器はもはや武器と呼ぶことすら憚られる、白と黒の扇風機。ミニオンたちの放った神剣魔法を左腕に持つ黒の扇風機から放たれる死の風によって周囲のマナごと削り飛ばし、弧を描くようにして放たれた旋風が残っていたミニオンの体を崩壊させた。
「お前かぁぁ!!」
そして、こちらの様子を『光をもたらすもの』が確認するために使っていた何かをそこから感じる視線から把握し、『境界』の能力を使用。『境界』の名の通りに物事の境界を弄る彼女の力であれば
両手に持った扇風機を合わせることで生死の概念を分けて使用していた武器が一つと化していく。完成したのは巨大なマグナム。そこから放たれた白と黒が入り混じった銃弾は、『光をもたらすもの』エヴォリアが監視するために使用していた物質を通ってエヴォリアの体内に。
俺はあとで他の人物に聞くまで知る由もないが、これによってエヴォリアはその内側に放り込まれたマナが消滅するまで、『死の概念を内包したマナによって死ぬ→生の概念を内包したマナによって死んだ部分が逆再生のような形で復活する→また死の概念で死んでいく』を延々と繰り返し続けることになる。
「はぁ……はぁ……悪いけど、俺はもうこれ以上こんなところにいたくない。別に戻れなくてもいいから、もう神剣使いは俺に関わらないでくれ……」
そんなことを今の俺は知らず、ただその一言を残してこの学園を去ることにした。
そもそも、初戦闘で一切身を竦ませることもなくちゃんと戦って、戦闘用に調整された兵士を倒せる奴なんているわけねーんだよオラァ!!