1.金狐と青狐 (キュウコン♂♀
アローラ地方のある畑農家の家で、二人の若い幼馴染みでトレーナーのルイとエレが久々の再開を果たしていた。二人とも11歳で、ルイはアローラ島巡りを、エレはカントー地方のコンテストを一通り終わらせて故郷に戻りその冒険談を互いに聞かせているところだった。
「…それでね、向こうのナッシーには首が無いの!ほら!」
エレが図鑑を見せるとルイも驚く。
「うわっ変なのー。実物見たかったなー。」
「ロコンも違うのよ。ナッシーは持ってないけど、ほらっ…」
エレがモンスターボールを起動させて茶毛のロコンを出した。
「キャン!」
「炎タイプなのよ。」
「へぇ、実物は初めて見たな。」
なら、とルイもモンスターボールを起動させて、白色の、微かに水色がかったロコンを出す。
「どっちも可愛いわね。」
「アイスのほうが尻尾が多いからアイスが年上だな。」
アイスは4本、エレのロコンは3本。図鑑にある通りロコンは産まれたばかりの時は真っ白で尻尾は1本。その後毛に色がつき、2~3年ごとに尻尾が増えていくのでそれくらいの年差があるということだ。
ちなみに炎の石(アローラは氷の石)を使わなくても成長して尾が6本になれば尾が熱を持ち(アローラは下がる)始め、燃えそうなほど熱く(アローラは凍りつくほど冷たく)なると進化する。
「アイス?名前付けたの?」
「だってロコンって一般名称だろ?」
「イッパンメーショー?」
「…まぁいいや、ロコンが2匹以上いたら困るだろ?」
「そうね。でも…」
エレはクスクスと笑いながら、
「…他の名前なかったの?アイスって氷じゃん。そのまんまじゃん。」
「う、うるせー!こいつメスだし、気に入ってくれたし、お前こそそいつに名前くらいつけてやれよ。」
若干顔を赤くしながらそう言い返すとエレは少し考えた。
「そうねぇ…男の子だし、ルイのアローラロコンがアイスなら、ファイヤーとか?」
「いやいや、いるよそのポケモン。ていうか合わなさすぎ。」
えー、物知りなのね、と言ってまた考えると閃いた。
「じゃあフレア!フレアでどう?なんかの技の名前にあったでしょ。」
「ゴッツ…」
「え?」
「いや……いんじゃね?」
「じゃあ今日からフレアね!」
元気よく返事をしたフレアに、アイスが話しかけた。
"よろしくねフレア!"
"よろしくアイス!"
"君の体の色綺麗だね!早く進化したいなぁ。"
"キュウコンになったら何色になるの?"
"白だよ。真っ白じゃないけど。"
"へぇ、私は水色よ。"
同族でありながら違う姿と性質の2匹は互いに興味津々で、すぐに打ち解けた。
「あら仲良しね。」
「折角だし、遊んでこいよ。」
その言葉を聞くや否や外に飛び出し、その後夕食の時間になって呼ばれるまでじゃれ合っていた。
夜になり、エレの父親が彼女を迎えに来たのでルイのアシレーヌと遊んでいたリザードをボールに戻し、フレアも戻そうとするがアイスと寄り添って毛繕いをしているのを見てこう言った。
「フレア、アイスといたいならお泊まりする?」
数秒迷って、アイスに頬を舐められて頷いた。
「わかった。ルイのお母さん、良い?」
「もちろん良いわよ。」
こうして2匹はしばらく一緒に過ごすことになった。
"みんなは?"
寝る時間になるとルイのアシレーヌを残してゴローニャやサンドパンがいなくなったのでアイスに聞いた。
"外に小屋があって、そこで寝ているわ。大きいから。私達はこっち。特別に私の寝床で寝させてあげる。"
家の一階には扉のない小さめの部屋がひとつあり、そこはさらに段ボールで2つに区切られていて片方がアシレーヌの、もう片方がアイスの部屋となっている。寝床は干し草で出来ていた。
"お、おじゃまします。"
1匹用の寝床なのでぴったり身を寄せる。
"フレアあったかい。"
"う、うん…こんな風に寝るのは久しぶりだよ。アイスもあったかいね。"
氷ポケモンと言えど力を練っていない時は普通の温もりがあるし、炎ポケモンも体から火を放っている者を除けば他のポケモンより少し体温が高いくらいなのだ。
"おやすみフレア。"
"おやすみアイス。"
それから2週間ほど2匹は一緒に過ごし、周りのポケモンからは「可愛い番だね」とよく言われた。
"ふぁー、疲れた。"
"私も。"
この日も散々はしゃぎ回り、毛繕いしてから眠ろうとする2匹。
"ねぇフレア、"
"うん?"
"キュウコンになったら番になろうよ。私フレアと子供つくりたい!"
"う、うれしい…ありがとう。"
はにかみながら返すとアイスはフレアに口付けした。
"じゃあ約束よ!"
"わかった。約束する。"
"フレア大好き。"
"ぼ、僕も…好きだよ。アイスのこと。"
その日の夜は、それまでとは違った気がした2匹だった。しかしそれから2日後、朝になって部屋が出るとちょうどエレがやって来る。
「おはようフレア!じゃあ行こっか。」
「?」
「ん?あっフレアはずっとここにいたから言ってなかったんだっけ?今日船に乗って、こないだ行ったカントーの隣にあるジョウト地方ってところに行くのよ。じゃ、お別れしててね、私ルイのお母さんにお礼言ってくるから。」
ルンルン気分で去っていくトレーナーとは真逆に2匹の空気は凍りつく。
"ま、また会えるわよフレア!"
無理に笑うアイス。
"ルイさんとエレさん幼馴染みって言ってたし、フレアがここに来たのだって旅が終わったからでしょ?その旅が終わったらまた会えるわよね…?"
"うん多分…"
アローラ地方には保守的な人が多いかエレは小さいときから外の世界に興味を持っている上行動力もあり、いつか他の地方に住みたいと日頃から言っていることをフレアは知っていた。
"フレア…?"
"あ、いや、きっと次のところを回ったら戻ってくると思うよ。"
"うん…それじゃあ、ね…?"
"うん。僕、きっと立派なキュウコンになるから。"
"えぇ待ってる。"
こうしてフレアとアイスは別れ、ジョウトへ旅立った。
────────────────
「フレア鬼火!」
「コオォンッ!」
高温の火の玉が相手のミルタンクに深い火傷を負わせ、その痛みで繰り出そうとしていた技がキャンセルされた隙に火の粉を浴びせ戦闘不能にした。
「やったぁ!フレアありがとう!!」
「キャン!」
「お見事…その実力を称えて、レギュラーバッジを授けます…ぐすっ…」
多くの町を転々とする中、コンテストの合間にジムにも挑戦したエレ一行。コガネジムを制覇するとポケモンセンターへ行き、手持ちのポケモン達を診てもらっている間に家を継ぐことを決めたルイへ自慢のテレビ電話をかける。
「ほらっみてみてー」
『うわー、マジかよお前なに目指してんの?』
バッジを見せられると呆れ気味にそう言うルイ。
「いやー、バトルも楽しい!」
『全く好奇心旺盛というか貪欲というか…ん?どうした?』
「何?」
『あぁいや、アイスがなんか構ってくれって。そんじゃーほどほどになー。』
プツ、と切れるとエレはラウンジに戻って行き先を決める。
「そうだなー…次はキキョウシティのコンテストに出るから…あ、この道だと自然公園ってところがある。みんな喜ぶかな。」
独り笑いをしながら呼ばれるのを待っていた。
◯◯◯
『──でね、コンテストは2回準優勝、バッジは6個集めたわ。』
エレの自慢話は、最初は付き合うのがめんどくさかったが、知らない世界の話を聞くのは意外と面白いので今では日課になっている。
「ジム巡りのほうが捗ってるじゃないか」
『うぅっ……っちょっと、なにフレア?』
キャンキャンと騒ぐフレア。アイスに会わせてとエレの足元で鳴いていたが伝わらなかった。するとルイ側でもアイスがその声を聞き付けて鳴き始めた。
"フレア?フレアなの!?"
"アイス!聞こえる!?僕───"
うるさい、とボールに戻されたフレア。エレは話を続けた。
『それでね、次はホウエンって所に行くのよ。』
「帰らないのか?」
『うん。お母さんにも言ったし、じゃあまたね。』
全くすごいやつだと感心しながら、呆然とするアイスを素通りして仕事に戻った。
それから週1のペースで連絡を取り合う2人。時はあっという間に過ぎ去り、二人のトレーナーも成長していった。
『みてー!、シンオウコンテストヨスガ大会で優勝したの!!』
「おぉ!おめでとう!」
リボンをみて素直な歓声を上げる。
「誰で出たんだ?」
『リーフィアとフレアで迷って、フレアで出たの。見た目も良いし、バトルも強いからね。もーフレアったらモテモテで色んなメスに求愛されて困ってたわ。コンテストの度に人間のファンも増えてるしね。』
「ハッハ、そりゃ羨ましい。フレアはキュウコンになったのか?」
『うん。たくさんバトルさせたせいか尻尾増えるのが結構早くて、もうちょい時間かかるかと思ったけど進化したわ。炎の石を使っても良かったけど自然のほうが良いってナナカマド博士は言ってたし。』
「なるほどね。次はまたどっか行くのか?」
『行きそびれたオレンジ諸島に行こうかと思ってるわ。』
「さすが飛び回るなぁ。気を付けてな。たまには帰ってこいよ。」
『楽しいよぉ~。またね。』
電話を切り、ルイはリビングで本の続きを読む。ふと近くにいたアイスを見て、
「お前も自然にキュウコンになったことだし、子作りできる年だろ?アローラキュウコンの雄は結構少ないから探してきたらどうだ?」
「…」
「なんだ、まだ嫌か?お前なら雄の方から寄ってくると思うけどな。」
「…」
「……繁殖期の前に反抗期?」
無視して行ったアイスにそう呟くと本に視線を戻した。
───────────────────
「ま、さすがに20歳になったら帰らないとね。」
アローラへ向かう船の甲板でそう呟くエレ。今の彼女の手持ちはキュウコンのフレアの他にリザードン、ラプラス、ムクホーク、リーフィア、レントラーだ。家にはピジョット、コータス等がいる。
20歳の誕生日くらい帰ってこいと両親に呼び戻されて実に9年近くぶりの帰路につく。港から離れると辺りは一気にのどかな風景になるのでエレはポケモン達を外に出した。
「みんなの中じゃここを知ってるのフレアくらいじゃない?みんな元気かなー。そういえばフレア、アイスってロコンいたの覚えてる?今はキュウコンだけど。」
「…」
「どぉおぉ?写真見せてもらったけど綺麗な子よ?フレアとアイスならきっと可愛いロコンが産まれだろーなぁー。」
フレア完全無視。
「あれ?忘れちゃった?まぁだいぶ会ってないから仕方ないか。」
フレアは主人のことが大好きだったが、このときばかりは嫌気がさした。
(ずっと会わせてくれなかったくせに今更…それに1週間でまた別のところ行くって言ってたじゃないか。)
隣を歩いていた雌のリーフィアにどうかしたのかと聞かれて慌てて誤魔化す様子をレントラーがじっと見ていた。リーフィアとレントラーは結ばれていて、それ故にフレアの気持ちがよくわかるのだ。リーフィアも深く聞くことはなくその場は終わった。
ゆっくり歩いて実家に着き、エレの両親やそのポケモン達、そしてエレが地方を移る際に預けていたポケモン達に出迎えられる。
「すっかり大人だなぁエレ。」
「そう言う父さん、前より頭が寂しくなってない?」
「うっ…」
ぐさりと刺された父親に、母親が追い討ちをかけた。
「育毛しようとしてやり過ぎて、かえって減ったの。」
その後しばらく休み、夕方になってルイがやって来る。そしてその隣を同族の中でも美しい部類に入るアローラキュウコンと2尾のアローラロコンが歩いていた。
「あら可愛いロコン!」
エレが撫でると嬉しそうに鳴くロコン。フレアとアイスは目を合わせると、
"フ、フレアね?久しぶり。"
"久しぶり。"
ぎこちなく挨拶を交わして距離をとる。夕食中もそのあとも2匹の間には気まずい雰囲気が漂い、お互いがお互いを避けていた。そしてルイは自宅に戻り、エレ達は寝る準備をしていた。
「ねぇフレア?さっきルイからメール来たんだけど、」
「クゥ…?」
「あなたとアイス、避けてたみたいだったじゃない?それで気がついて教えてくれたんだけど、あのロコン、アイスの子じゃないって。」
「…!」
「群れからはぐれてルイの農場に迷い込んだんだって。また明日会いに行きましょ?フレアなら同族だしきっと受け入れてくれるだろうってルイも言ってたわ。」
"うん…"
早とちりしたな、と思いながら明日彼女に何て言おうか考えるフレアだった。
翌朝、エレはフレアを連れてルイの家へ。すでにルイとアイスが待っていた。
"フレア!"
"アイス…"
"昨日はごめんね。あれからだいぶ経ったし、フレアとっても立派になったからてっきり…あの子の事も言わなくてごめん。そうよね、誤解するわよね。"
"僕のほうこそ何も聞かなくてごめん。"
"フレア…ずっと待ってた…本当に立派な雄になったわね……でもお願いがあるの。"
"お願い?"
"あの子の群れを探してるんだけど、見つかるまで一緒に面倒見て欲しいの。……フレア?"
擦り寄ろうとするがフレアは軽く後ずさって接近を許さない。重い空気が流れ、フレアは決心したように口を開いた。
"アイス、僕らは番にはなれない。"
"何を…言ってるの……?"
"あと1週間で、今度はイッシュってところに行くんだ。"
"え…え……で、でも……!"
"もちろん僕も行く。だから番にはなれない。"
「ちょ、ちょっと?どうしたの?」
異変に見かねてエレが間に入るが、彼女を押し退けてフレアは続ける。
"僕はトレーナーのポケモン。エレと一緒に行動してるわけでもない君とは無理だよ。"
"でもっ…そ、その気になれば私達はずっと長生きできるのよ…?だから──"
"それにエレは他の地方に住むのが夢だってよく言ってるんだ。そうじゃなくてもエレが死ぬまで待つなんて無理だよ。"
アイスは涙目で食い下がる。
"そんな…一緒に…いなくても良いから……あ、違うそういう意味じゃないわ…!あなたが旅に出てて良いから帰ってきたときに──!"
"あのロコンが君の子じゃなくてがっかりしたよ。君の子供だったら何も言わずに済んだのに。"
"そんな…酷い………私は……私は……"
"…僕はいなかったことにしてくれ。"
アイスはしばらく絶句し、ルイが様子を見に来る音で我に返ると叫び声に近い雄叫びを上げて氷の[[rb:礫 >つぶて]]を放つ。これをフレアの火炎放射で溶かされると農場へ向かって一目散に走り出す。フレアも踵を返そうとした。
「おいアイス!どうしたんだ待てって!」
「フレア待って!アイスに何を言ったの!?フレア!謝りなさい!!フレア!!…もー……ちゃんと家にいるのよーー!!!」
エレは走っていくフレアにそう叫んでルイの後を追った。
「ハァッ…ハァッ…ルイ、アイスは?」
「ハァ…小屋の方に…行っちまった…フレアのやつ何を言ったんだ?」
「わからないけど…前は仲良かったわよね?」
「よく覚えてない…でも俺ん家に泊まってったよな?」
「そうよ。どうしてこんなことに…」
ひとまずその日は別れ、ルイ泣き続けるアイスをなんとかなだめようと試み、エレはすねたままのフレアを叱った。
2日後、エレはアイスの様子を見にルイ宅へ。
「おはよう。アイスは?」
「あれ以来すっかりしょげちまって、食欲も落ちてるし一日中ボーッとしてるんだ。ロコンの相手はちゃんとしてるみたいなんだが…そっちは?」
「禁句になってるみたいで、その話題を振ると完全に無視されるの。」
ううむ、と二人は考える。
「雄が番うのを断るなんてな。他にいるのか?」
「いや、そんなことないと思うけど…」
「ロコンがいるのが気にくわなかったとか?」
「聞いたけど、それだけは否定するのよ。」
「そうか…何なんだろうな。」
季節も悪くない上アイスが一度も子供を産んでいないので会わせればすぐに番になると思っていた二人は予想外の出来事に頭を悩ませていた。
それからさらに3日、イッシュ地方に行くのが2日後となった日の夜。エレはフレアとリーフィア、レントラーのブラッシングを終えてコータスの甲羅を磨いていると、レントラーが背中をツンツンとしてくる。
「なぁにレントラー。」
「グルゥウ。」
「ん?」
数歩進んで振り返る。お馴染みの付いてこいジェスチャーだ。
「わかったわ。コータスごめん、ちょっと待ってて。」
レントラーに続いて2階へ。階段を上りきる前にレントラーが前足の指を口元で立てたので頷くと、エレの部屋の扉に耳を当てたのでエレも同じようにする。
「…っ!」
扉越しに聞こえてきたのは人のものではない嗚咽。フレア以外は下にいるので彼のものだと分かる。
(どういうこと…?)
レントラーと目が合えば彼は考えろ、と言うように目を細めた。フレアが泣いているところを見たことがない彼が今泣く理由があるとすれば、やはりこの間の出来事だろう。しかしあれの原因は明らかにフレア。頭がゴチャゴチャになる中、アイスを傷つけたのは本意ではないとだけ結論付けると敢えてノックをせずに部屋に入った。
「ヒック…グゥッ!?」
「ごめんフレア。話をしたいの。…怒ったりしないわ。」
「…」
ベッドの上にいたフレアの前でしゃがんで目線を合わせ、そっと撫でる。
「フレア、アイスに何を言ったのか知らないけど、本当は仲良くしたいんでしょ?」
フレアは黙ったまま動かない。
「前のことはあんまり覚えてないけど、確かずっと一緒にいたよね?」
「ウゥ…」
沈黙になるがその間にエレは思考を巡らせる。
「フレア、本当のこと言って。アイスのこと、好きじゃないの?」
「…」
「好きなんでしょう?」
「…」
「そうなのね?」
ロコンがいるから駄目なのかと聞いたときははっきりと否定していたが、今はもう耳も垂れている。
「もしかして、イッシュに行くから?」
「…」
過去に行ったことは、今まで気にも留めなかった事は特に、一度客観的に振り返らないとその時の間違えに気づかない。
「思い出したわ…そういえば、元々ジョウトを回ったら帰る予定だったのよね。やっぱり帰らないって連絡したのを覚えてる。そのまま8年…ずっと会いたかったのね?」
成長したから分かる恋の問題。あのときのエレ達はフレアとアイスが本気だったなんて想像どころかそもそも真剣な恋自体知らなかった。知能が高いキュウコン故に相手への想いも複雑になるのだと今気づく。
「でも私は電話で会わせることもしなかった…よく考えればずっとアピールしてたもんね。それで飛び回って…あなたはコンテストでもバトルでもエースだからずっと連れてきてるし…それで私を気遣って、付いてくるためにアイスと縁を切ろうとしたのね?」
また涙を溢すフレアを抱き締めた。
「ごめんね…私鈍感で…回り見えてなくて…」
そんなことない、と鳴くフレアをまっすぐ見て言った。
「フレア、明日謝りに行きましょう。私も一緒に。ね?」
「…」
「でも、じゃない。」
思っていたことを言い当てられてハッとエレを見る。
「アイス、食欲も落ちて一日中しょげてるって。とても傷ついてるわ。そのままは駄目よ。」
「…」
「フレア、私、あなたのこと大好きよ。どしゃ降りの雨の日、私と、ヒトカゲだったリザードンが小さな洞穴で雨宿りしてたらずぶ濡れのあなたが来たのをよく覚えてる…あなたが大好きだからこそ、アイスが許してくれたらここに残りなさいね。」
「クゥ…!?」
「連絡するわ。」
エレは笑ってそう言った。
「レントラーとリーフィアは置いていくし、それであなたがいないのは寂しいし心細いわ。でもこのまま連れていくのはもっと辛い。だから良いわね?謝りに行くわよ?」
あくまで優しく、しかし有無を言わさない口調にフレアはゆっくり頷いた。
◯◯◯
翌朝、ルイの案内で農場にあるポケモン小屋のアイスのスペースに行くと、ここ数日でやつれ毛も乱れているアイスが入り口に背中を向けて丸くなっていた。まずエレが話しかけた。
「アイス、」
ゆっくり振り向いたアイスはフレアを見て少し動揺するが先を促す。
「アイス…ごめんなさい。フレアはね、私を気遣っただけなの。本当はあなたと暮らしたかったのに、私が自然にプレッシャーをかけちゃったみたいで…私、トレーナーなのに自分のことしか考えてなかった。本当にごめんなさい。」
そして部屋の外に出て、フレアと入れ替わる。フレアは恐る恐る切り出した。
"アイス…"
"どういうこと?"
"そ、その…僕は…会えない……なら…離れる…なら…僕も君も…その……か…関わらない……方が………楽だと…思って…それで……"
"それ以上何か言ってみなさい。絶対零度撃つわよ。"
アイスは立ち上がって臨戦態勢になる。
"アイス…本当に…ご…ごめんなさい……僕が……馬鹿だった…"
"出ていって。"
"アイス───"
"消えて!!今すぐに!!!"
アイスはそう吠えると飛びかかり、氷の牙でフレアの脇腹に噛みついた。
"うぐっ……"
"消えて!!もう関わらないで!!あんたなんか、あんたみたいな異種なんか2度と会いたくない!!"
この狭い、しかも木造の部屋で炎技は使えないので浴びせられた氷の礫を「守る」で防ぐ。フレアはなんとか話を続けようとしたが本気で絶対零度を溜め始めたのでエレが止めに入り、長居は逆効果と判断しもう一度謝ってその場を後にした。
「…よしと。これでいいでしょ。」
噛まれた場所を消毒し、包帯を巻く。本気で噛んだらしく傷はそこそこ深かった。
「フレア…どうする?…ギリギリまで迷って良いからね。船代変わる訳じゃないし。」
「クゥン…」
うなだれるフレアにそれ以上話題を振ることができず、その日は嫌な空気のまま日中を過ごした。
「レントラー…どうしよう、私、トレーナー失格だわ。」
「グゥル?」
夕食後、独り庭の真ん中で座っているとそれに気がついたレントラーがやってくる。
「綺麗な月ね。」
「ヴルル…」
「なーに?」
クイックイッと袖を引っ張られて家の中に入るとレントラーは壁に飾ってあった写真を見上げた。エレの両親が結婚式を挙げたときの2ショット写真だ。
「なに…?」
続いてレントラーは番の相手であるリーフィアを呼んで、訳を話すと同じように並んだ。
「あはは、そっくりね。…ん?」
分かったか?と言うように首をかしげる2匹。
「そっくり?それが?」
グフゥー、とため息をついて今度は別の写真を指す。小さい頃のエレとルイがふざけて抱き合っている写真だ。
「あらこんなのあったのね…あ、分かった!わからないけど、思ってることは同じってこと?人間もポケモンも。」
こっくり頷く2匹。
「なるほど、じゃあ今は人間で言う倦怠期のケンカってことね。…ちょっと待って、いつから私とルイが結婚することになってるのよ!レントラァー?」
そっぽを向くレントラー。時々彼は、メタグロスとは違う意味で人間より賢いと思わせるような一面がある。
「まぁ良いわ。じゃあ私はフレアの恋愛相談相手になれば良いのね。ありがとう2匹とも。」
少し晴れた気分になるとフレアがいるであろう場所に向かった。
「フレアー…やっぱりいた。甘えん坊さんだもんね。」
予想通りエレの部屋のベッドの上で寝そべっていたフレアの隣に座って、上目で天井を見ながら人差し指で顎を指し、砕けた調子で言った。
「もし私がアイスちゃんだったら、きっと今は一番好きなフレア君にいてほしいなーって思うけどなぁー。」
えっと見上げるフレアに、羞恥心を堪えて続ける。
「女は単純じゃないの。私が言うのもなんだけど、ああ言うときに『どっか行って』とか『2度と会いたくない』とかって女的フラグだと思うのよねー。」
「…?」
「ようするに来てほしいってこと!だってフレアが番にならないってことを酷い感じで言ったんでしょ?それであんなにショックを受けたってことはあなたのことが大好きだってことじゃない。もちろん今は怒ってると思うし、アイスから見てあなたは最低な雄なんでしょうけど好きでいてくれる間は許してくれるわ。気持ちを伝えられればね。」
「ウゥ…」
「早くしないと他の雄に盗られちゃうわよ?ポケモンってそういうとこ自由なんでしょ?アイスは美人さんだから声かけられるだろうし、傷ついてる分そっちに行っちゃうかもよ…?」
それを聞いてビクッと体を震わせると立ち上がり、外へ向かう。
「ちゃんとみんなにお礼言うのよー?みんな心配してたんだから。特にレントラー。」
返事を置いていくとルイの農場まで突っ走る。小屋にはおらず、隣のゴローニャに聞くと野原にいるだろうと言われて教えられた方向にまた走る。農場から少し離れたところにその影があった。勇気を出してソロリソロリと近づき、4m位のところから声をかける。
"ア、アイス…起きてる?"
"フレア?"
"うん…"
"関わらないでって言ったわよね?"
"うん…その…謝りに来た…"
"声も聞きたくないの。だから早くどこか行って。"
フレアはしばし黙るが、さらに歩み寄って続けた。
"本当にごめん…僕が馬鹿だった…君のことを何も考えてあげられなかった…ごめん…"
"…"
"アイス…本当は、本当は君のことが好きなんだ。本当はずっと一緒にいたいんだ。…許してくれ…"
"ふざけないでよ……"
"アイス…"
"ふざけないでよっ!!"
接近していたフレアに飛びかかって押し倒す。
"私の気持ちも知らないであんな…あんなこと…あんまりよ…あんまりよ!!"
いくら流したかわからない涙をフレアに落としながら叫ぶ。
"せめて…せめて普通に言えばいいのに…あの子が私の子じゃなくてがっかりですって…!?だったらあなたがさっさと他の雌と子作りすれば良かったじゃないこの馬鹿!!いなかったことにしてくれ?望むところよ!!誰があなたなんかと…!"
右前足を振り上げてフレアの顔を思いきり殴る。爪は出ていなかった。
"最悪よあなた…最低…"
そう言ってフレアから離れて戻ろうとしたので慌てて呼び止めた。
"待って!待ってくれアイス!"
"…"
しつこく呼び掛けるとアイスはその場で腹這いになった。
"…そっちに行って良い?"
返事は返って来ず、傍に寄ると
"来ないでよ…"
と言ったがフレアは黙って身を寄せた。
"本当に、後悔してる。"
"…"
"毛繕いしても良い?"
無視されたが舐めても抵抗しなかったので、そのままボサボサになってしまったアイスの毛を整える。そうされている間に彼女も少し落ち着いたようで深くため息をついた。
"アイス…綺麗だね。"
"口説くつもり?"
"え、ま、まぁ…"
"そんなの…欲しくない…"
アイスはそう言うとフレアの胸に顔を埋める。
"アイス…"
"どういう考えであんなこと言ったのよ…本当に…本当に……辛かった…悲しかった……"
"ごめんよ…"
かすれた声で訴えるアイスをなんとかなだめようとその頭を舐める。
"酷すぎよ……私あなたのことが怖い…"
"2度と傷つけるようなことはしない。約束する。次こんなことがあったら絶対零度撃って良い。でも絶対ない。信じて…欲しい。"
沈黙の後、アイスはその体勢のまま深呼吸した。
"私はずっと、こうやって静かに寄り添って欲しかった。"
"うん…"
フゥー、とため息をついてフレアを見上げるとようやく笑みを浮かべる。
"来てくれてありがとう。楽になった。"
"本当に──"
"もうやめて。思い出したくない。"
"うん…"
しばらくの間、無言で久しぶりの温もりを噛み締める。
"たくましくなったわね。"
"バトル頑張ったもん。"
"そう…"
フレアはもう一度勇気を出して、そっと彼女に口付けをする。口先だけを重ねる優しいキスにアイスも応えた。
"アイス…僕、アイスと暮らしたい。"
アイスの目を真っ直ぐ見て言うと彼女は少し黙り、ぐし、とフレアに顔を押し付けた。
"…旅は?"
"エレが気がついて、残っていいって言ってくれた。…きっと前もそうだったんだ…君の尻尾を噛んででも行きたくないってアピールすれば……"
"こんなに会えないなんて思えなかった。"
"うん…"
アイスはフレアに体重を預け、2匹は久しぶりの温もりを噛み締める。
"許した訳じゃないから。"
"うん…"
"子供が産まれるとき、ちゃんと側で励ましてくれたら許してあげる。"
"で、出来ることは全部する!"
"約束よ?"
"もちろんだよ!"
アイスはフレアの顔を一舐めして立ち上がり、辺りに甘い匂いが漂う。尻尾をヒラヒラとさせながらフレアの前に来れば彼も立ち上がって、言葉を交わすこともなくアイスにマウントすると彼女を捕らえようと下腹部で連続して叩いた。
キュウコンやゾロアーク、グラエナ等のようなポケモンの雌の生殖器は2段に分かれている。秘裂に入ってすぐは同種の雄の生殖器が挿入された後に根本付近が膨らんでできるコブを受け止める空間になっていて、その奥に膣口がある。ここに入れるのは少々難しいため、よほど慣れていない限り雄は半ばやみくもに突いてそこを目指す。
「ん…んん…」
「ハァ…ハァ…」
じれったい快感に歯痒さを感じていた2匹だが、時々雄槍の先端がめり込む。フレアはその辺りに集中して押し付け、アイスも腰の位置を調節して手伝っていると不意に肉棒が膣口に突き刺さって一気に根本まで貫いた。
「クアァッ!!」
"うく…アイス大丈夫?"
"平気…ンンッ…"
雌を貫いたと感知した肉棒の大きさと質量は更に増していき、狭く温かいアイスの膣を押し広げる。膨張が治まったところでフレアは腰振りを再開した。
「クゥンッ…!アウゥッ…!アウッ…!」
「ハァッ…ハァッ…」
前足で柔らかなアイスをしっかり抱き、乱れる彼女に頬擦りしながら激しく腰を振る。欲望のまま動くのは気分が良かった。弾力のあるアイスの膣は欲しがるように締め付けていて心地良く、寄り添うだけでは味わえない温もりを感じながら快楽を貪った。
パンパンという音は粘質な音へと変わっていき、さらに濃い匂いが2匹を包む。
"ハァッ…アイス…出すよ…"
"うん……クアッ…!"
フレアは1回、2回と強く突いてキツく押し付けると射精し、自分よりも高い体温の精液が流れ込んできた衝撃でアイスも絶頂する。フレアはアイスの口を奪いマズルごとくわえるような熱いキスを交わして夢中で舌を絡めた。
"ハァ…アイス…"
"分かってる…"
射精が終わる少し前に既に次の段階へ入っている。フレアの雄槍の根本が膨らみ始めたのだ。実は先程出した精液には子種はほとんど含まれておらず、これから完成する亀頭球で栓をすると共に雌を固定してから本命の射精をする。ちなみに雌に子宮口はなく、膣の奥が子宮となっていてるので、フレアはこれからアイスの子宮に向けてじっくりと注ぐということである。
「ん…ハァッ…」
"アイス大丈夫?"
アイスの腰や後ろ脚がガクガクと震え始めたので心配になったフレアが声をかけた。
"フレア…ごめん…伏せても良い…?"
"良いよ。大丈夫?"
"き、気持ちよくて力が入らないの…!"
体温差のせいで余計に熱く感じる肉棒と精液の感触からの快感に許容範囲を越えたらしい。気持ち良いと聞いて少し安心したフレアだった。
アイスが腹這いになり、フレアがその上から覆い被さるような体勢になってしばらくするとコブの大きさが最大となってアイスを完全に固定した。圧迫感からくる快感に息を熱くしながらアイスはフレアに甘える。
"これで私はあなたのものね。"
"きっと大事にするよ。"
"うん……んんっ…おっきい…形が分かるくらいだわ。"
"苦しい?"
"少し…すぐ馴れるわ。"
立派なのは体はだけじゃないのね、と笑われて嬉しいのか恥ずかしいのか分からなくなるフレア。中身はまだまだあどけなく頼りない感じではあるものの、体毛のせいで外側からはよく分からないたくましい体に抱かれ、何より彼に抱かれてほんの少し前まであったフレアに対する恐怖心が洗い流されていく。
(もう私より大きいのね…)
抱いてる雌を気遣える心があるなら何故あんなことを言ったのかとも思ったが、彼は彼で苦しんだのだからと考えないことにした。
"アイス…大好きだよ…"
"えぇ。ありがとうフレア。"
少し経ち、アイスの波打つ膣から与えられる快感が積み重なって再び2匹の息は熱くなり、フレアの下半身のじんわりとした快感が徐々に強くなっていく。
"アイス…そろそろ…"
"いいわ…ずっと、待ってたんだから。"
ギュッとアイスを抱く力を強めた刹那、ビクンと肉棒が震えてアイスが声を上げる。そして激しい脈動と共に熱い子種を送り始めた。
"ンッ…!アァッ…!"
"アイス…アイス…"
ただでさえ大きい上本能的に締め付けられている肉棒が暴れればその快感は計り知れない。もはや恥ずかしさなど吹き飛んで、アイスは淫やかな声を少しの間我慢すると同じく快感に喘ぐ夫となったフレアに今まで出したことがないような声で甘えた。空白の時間とできてしまった溝を埋めるように互いを求め、数十分にも及ぶ長い快楽に浸った。
「ハァ…ハァ…」
"ハァ…ハァ…あと一回……だっけ…?"
"大丈夫…?"
"溶けそう……"
何度も絶頂し、酒に酔ったようにトロンとした顔のアイスがとても可愛らしく見えたフレア。彼女の胎は既に熱く張っているがまだ終わらない。最後は膣部部分や子宮部分にある今さっき注いだ子種を卵巣付近まで押し上げる、ポンプのような役割の射精だ。痙攣する彼女への精一杯の気遣いに顔や首周りを毛繕いする。
"アイス…"
"うん。"
先程よりは穏やかな快感を、なるべく長くと祈りながら互いに身を委ねた。
◯◯◯
「おー、やってるやってる。」
「ちょっと、あんまり近づくと気づかれるわよ!」
フレアがアイスに殺されていないか心配になって見に来た2人は愛を営んでいる2匹を見て安心した。
「やるなぁフレア、アイスのやつすっかり虜になってる。あいつのあんな顔見たことない。」
「ちょっ双眼鏡まで…全く…」
「まぁまぁ。でももし炎タイプのロコンが産まれたら…」
ここでは独り立ちできない、と言おうとしたがエレが遮る。
「それはないわ。同じ種で姿が違うポケモンは、お母さんのお腹にいるときの環境でどっちになるか決まるんだって。だからここで暮らせばアローラロコンが産まれるだろって、ウツギ博士が言ってたわ。」
「いつ聞いた?」
「さっき。」
「流石の行動力だな。」
「あの子達のためだもの。戻りましょ。」
〇〇〇
"フゥ……アイス平気?"
"平気…とっても良かった…幸せな気分。"
"僕もだよ。"
2匹並んで寄り添い余韻に浸る。一段落つくとアイスが立ち上がった。
"私の寝床に来て。一緒にいたい。"
"うん。"
頷いてフレアも立ち上がり、2匹で寝床へ向かった。
◯◯◯
"あっという間だなぁ…"
"そうね…あの子も元の群れが見つかって良かった。"
"そうだね。みんなも喜んでくれたし。"
ルイの農場の小屋の、アイスとフレアの部屋では大きなお腹を抱え産気づいたアイスが横たわっていた。交わって半年、エレはイッシュ地方で順調に実績を上げているらしく週に1度は連絡をくれる。アイスのお腹の子も順調に育ち、長かったようであっという間に誕生の瞬間がやって来る。痛みと不安から気をまぎらわすために会話を続けていたが、いよいよ本格的になるとその余裕もなくなった。
「クゥッ…ウゥ…クウゥッ…!」
"頑張れ…!"
アイスの背中に寄り添い励ましの言葉をかけながらせめてと顔を舐めるフレア。苦痛の声を上げながら、時々フレアに顔を埋めながら1匹目を産んで血と羊水の混ざった液体を舐めとる。母親の特権なので最初は見守っていたフレアだが、次の波が来て譲り受けた。
「ハァッ…ハァッ……」
"やった…!お疲れさまアイス…!"
ごくごく軽いオーバーヒートでアイスの背中と腰を温めつつ子供のために室温を上げていたフレアは2匹目が産まれて歓声を上げた。アイスも嬉しそうに笑ってそれに応え、せっせと我が子を、産まれたばかりの純白のロコンを舐める。
"可愛い…ありがとうフレア…"
"そ、それは僕が言うことだよ…"
遅いのが悪い、とでも言うように悪戯っぽく笑う妻に少し安心した。
"フレア、喜んでくれるのは嬉しいんだけど暑くなってきてる。"
"あ、ごめん。"
急いで力を調節するフレアに、相変わらずねと笑った。
"フー…あなたが炎タイプでよかった。ありがと、もう休んで。後は──ンンッ…クウゥッ…!"
"ア、アイス!?"
"ハァ…ハァ…フレア…今の取り消し…まだお腹にいる……"
再びいきみ始めるアイス。しばらくそのままいきみ続けるとやがて次の胎膜が見えてくる。
"頑張れ…もう少し…"
頭が出て少し休むと、最後の力を振り絞って一気に産み出した。
"ハァッ……フレアお願い…休ませて…"
"分かった。ありがとうアイス。"
脱力した妻の代わりに我が子を舐めて乳房へ導いてやる。
"ちゃんと飲んでるよ。ルイに伝えてって言ってくる。"
"うん…ありがとう…"
そして近くで待機していたリーフィアにその役目を託すとすぐに家族のもとへ戻ったのだった。
〇〇〇
「うわぁー真っ白だー!」
押し殺した声で歓声を上げるエレ。アイスの出産から3日後、連絡を受けて帰ってきたのだ。アイスに促されてミューミューと鳴く3匹の小さなロコンを撫でてまた歓声を上げた。
「おめでとう2匹とも。私、ルイのご両親にまだ挨拶してないから行ってくるね。」
邪魔をしないようにとささやかな嘘をつくと置いていったポケモン達の様子を見に行った。
"体はどう?"
"だいぶ良いわ。…フフッなんだかお腹が寂しい気もするわ。これから大変になるわね。"
"そうだね。でも楽しみだなぁ。"
"そうね…どっちのロコンだと思う?"
真っ白のロコンはまだアローラなのかノーマルなのか分からない。
"みんな君と同じだと思うよ。君の中で育ってここで産まれたんだし、お母さんから聞いたんだけど僕が産まれて少し経ったら熱くなったって。"
"へぇ、不思議ね。"
納得して、少し子供を見つめてから甘えた声で夫を呼ぶと毛繕いし合う。
"忘れてた。許してあげる。前のこと。"
"うん……愛してるよアイス。"
"私もよ。これからもよろしくね。"
その後も2匹は末長く穏やかに、幸せに暮らしたのだった。
おわり
これからも気ままに頑張っていくのでよろしくお願いします。