ライオンは発情期(約1週間)になると起きている間は15〜30分に1回のペースで、トラは1度の発情期(数日)に2日で100回以上交尾するそうです。
本作は「策略に誤算はつきもの」で登場するレントラーの物語です。尚、単品で読んでいただいても十分お楽しみになれます。
モヤモヤとした暗闇から、ゆっくりと意識が戻ってくる。
「起きた…?」
「アリーさん……」
目を開けるとミミロップの膝に抱かれていた。
「うぅ…」
起き上がろうとして、ベチョリとした感触に下半身を見る。汚れてくすんだ銀色の9本の尻尾の付け根からももの下辺りまでが白濁に汚されている。気を失ってどれくらい経ったのだろう。
「可哀想に…」
「いつものことよ…みんなも同じでしょ……」
戦争。その戦火から逃れるため、この国の王女であるということを隠してこの村に疎開したのだが、敵は私たちの国を包囲するつもりなのか彼らの国とは真反対にある小さなこの村を攻め、占領した。
母を含む激しく抵抗した者は殺され、私たち雌は1ヶ所に集められた。その目的は"戦力補填。"
敵国は狂っているとしか思えない。聞けば兵ではない民全員は兵力生産用としか見られておらず、兵は幼いうちから愛国と彼らの"信念"だけを叩き込まれるのだという。
「体は大丈夫?」
「多分……」
そして私のお腹には、既に子供ができていた。体は明らかにふっくらしていて時折ピクピクと動くまでに成長している。私が今いるこの牢は、身籠った雌用の牢。敵は私たち妊娠した雌を"芽"と呼んでいた。
反乱を起こさぬよう徹底的に痛め付けられたあと、ひたすら犯され続けてこの子はできた。彼らからの恥辱ぶりは酷かった。だから妊娠したと分かったとき、ようやく強姦地獄から解放されるんだ、という嬉しささえ感じ、その希望は見事に打ち砕かれた。彼らにとって戦力補填は建前に過ぎなかったのだ。
ただ、気絶されるまで犯されても、対格差がありすぎるポケモンの巨根で腹が突き出るほど犯されていた妊娠前よりはマシだった。
けれどもそれは五十歩百歩といったところで。これが母親の性なのか、多少恥辱が和らいだ代わりに日々流産の恐怖と戦わなければならなかった。
「ほらこれ、きっと雄達が作ってくれたのよ。」
戦力補填だけあって、食事は摂ることができている。こんな状況でも日に一度の木の実を見ると腹の虫が鳴く。
私の分の木の実が残されているということは、私が気絶して一晩経っていたらしい。
「おい、お前ら。」
私がイアの実を半分ほど食べ進めていた時、敵であるカエンジシが現れた。私は彼にも散々犯された。このお腹の子が彼の子だという可能性もあるわけで、私の胸がキリキリと痛む。
「今日、領主様が変わる。後でいらっしゃるだろうが、礼儀は覚えているな?」
牢の中のポケモン達は必死で頷いた。その礼儀とやらに少しでも反せばどうなるかは骨の髄まで染み付いている。
カエンジシは去り、それから数時間経つと何やらドタバタ走り回る音、部下に指示をする声などが牢まで届く。
「領主様、雌だと良いね。」
サーナイトが力無く笑う。今までの領主様は何日かごとに雌を自分の部屋に連れ込んでもはや性行為の域を越えたことをしていた。
妊娠している自分達にはもう関係のないことだ。
「───しかしここは芽の牢ですよ?」
「目に留まるやつがいなかったんだ。しかたないだろう。」
領主様と部下と思われる声が聞こえて牢は一気に静まり返る。そして若い雄のレントラーが入ってきた。首と片前足にはいかにも地位を誇示するものと思われるベルトがつけられていた。実力主義の彼らのことだ。相当な強さを持っているのだろう。そしてここに来るということは彼もまた───
「そこの銀毛のキュウコン。」
頭が真っ白になった。部下のバンギラスに怒鳴られ、やっとのことで返事をする。
「前に出ろ。」
いつの間にか抜けていた腰を引きずって、言われるがまま格子のそばへ。領主様に凝視されて震えが止まらなくなる。
「汚いが、顔立ちは良いな。」
「まぁこいつならムート様も満足できるかもしれねぇです。容姿もそうだが最近じゃ使い込まれて中々の名器になりやした。お気に召したならこいつの腹の子、潰しましょうか?」
ぎゅううとお腹を捕まれたような感覚になる。しかしレントラーの意向にはそぐわなかったらしく彼はそれまでの冷徹さを一変させて苛立ちを露にした。
「…芽の腹の子は何になる?」
「え…あ…我が国の…守護者に……」
「そうだ。我々と同じ守護者になる。」
レントラーの威圧に他の部下たちも焦りの色を見せる。
「その守護者を潰したら、潰したやつはどうなる。」
「は…叛逆罪…?」
「よく分かってるじゃないか。分かってるならそいつを洗って俺の部屋に連れてこい。俺の部屋に、余計なことはせず、直ちに、連れてこい。」
失言をした部下よりもレントラーの方が明らかに年下だが、部下は震え上がっていた。
「しょ、承知しました!おい、来い!」
私は鎖で繋がれると乱暴に水場まで連れていかれて入念に洗われた。
「お前、くれぐれも無礼を働くなよ?」
よほどあのレントラーが恐ろしいのか、頭や首は乱暴に掴まれ痛いほど擦られるもお腹だけは壊れ物を扱うような手つきで、私に何度も言いつける。
もちろん向こうの機嫌を損ねて痛い目をみるのは他ならぬ私なので言われるまでもない。
洗い終わり、先のカエンジシの火炎放射で乾かされ、以前はこの村のポケモンが住んでいた家に連れてこられる。
私はもう諦めていた。苦痛も辱しめも当たり前の日常。お腹の子を殺されないと分かっただけで、もう十分だった。
それでも、部下に呼ばれて出てきたレントラーと再び対面するとまともに歩けなくなるくらい体が震える。
「入れ。お前達は下がっていい。」
引きずるように中に入れられ扉を閉められた。心臓が私から逃げたいと言わんばかりに激しく脈打っていた。
「名前は?」
「シルクと申します…」
シルク。身分を隠すための偽名だ。
「そこに寝てろ。」
顎で干し草の寝床を指され、私はその中に入る。寝床に入るなんていつぶりだろうか。領主様、確かムートという名のレントラーは前足の爪にインクを着けて、手紙らしきものに文字を書いていた。終えると着けていたベルトを外し、続いて私の首輪を外す。行為の邪魔になるからだ。鎖で繋がれてなくとも逃げる気力がでないように私たちは調教されている。調教の際は首輪を外されていたのでこれがないとむしろ体が恐怖で強ばってしまう。
「さっきよりマシにはなったか。」
領主様は品定めをするように前足で私の顔を触り、視線が私の体を撫で回す。
唐突に顔を近づけると私の匂いを嗅いで顔をしかめた。
「雄臭い。やはり不快だ。…まぁこればかりは仕方ないか。」
領主様も寝床に入って寝転ぶと私を抱き締めて体を擦り付ける。
「力を抜け。お前とお前の子供に危害は加えない。妙な真似をしなければ、の話だが。」
何となく領主様の目的が分かった気がしたが、逆らう余地はない。
「ご温情に感謝いたします…私はどうすれば……」
「そのまま楽にしていろ。」
しばらくの間、私は全身を揉まれ続けた。強引ではあったものの手つきは優しく、体の強ばりは少しずつ解れていった。
「辛かっただろう。」
「え……」
領主様は私に顔を近づけてふっと微笑んだ。
「若いのに。いや、俺よりは歳上か?雌と夜を共にするのは久しぶりなんだ。素直に楽しもう。」
私の首の後ろに前足を回して引き寄せ、私の顔をたてがみに埋めさせる。
「深呼吸しろ。」
領主様の匂いと雄特有の匂いが鼻腔を満たす。私たちキュウコンは嗅覚に優れていて単純な匂いだけでなく微妙な匂いの変化をかぎ分けることができるため、それによって相手の感情まで読み取ることができる。領主様からは温かい、何かを喜んでいるような匂いがして、本能が彼を自らに危害を加えない味方と判断したのか私の体は急速にリラックスしていった。
「嗅がせたのは正解だったか。」
「う…え……」
領主様は私を少し離すと私のマズルの先に熱く口付けをした。
「ん……む……」
入ってきた舌の感触に体がぞわりとする。まともなキスなんてしたことがない。私はほぼ無意識に彼と舌を舐め合い、口をさらに押し付けた。舌を相手の口に入れるなんて、信用していないと出来ないこと。それを何の脅しもなくやって来た彼に既に心を開きつつあった。
体が欲しがっている。自分に優しくしてくれる存在を。子供を育てている真っ最中だというのに私の下腹部は湿り気を帯び始めていた。
接吻を解いて見つめ合う。
「大分落ち着いたな。じゃあ、舐めてくれ。」
「は、はい。」
横になっている領主様の股間には体格相応の雄槍がいきり立っていて、私はそれを口に含んだ。
「んぐ……」
「良いぞ。」
なんとか根本まで飲み込むと先端が喉を突くがそんな感覚はもう慣れている。すべてを口で包むことは出来ないのでマズルの横からよだれを垂らしつつ丁寧に顔を前後させた。
すると太もも辺りにポン、と彼の前足が添えられて労うように愛撫を始める。逆らえないとはいえ大切な生殖器を、嫌がるところを顔を鷲掴みにして無理矢理突っ込むのではなく私に委ねて舐めさせる、というこの状況が傷ついた私の心を支配していく。愛撫に釣られて私も肉棒をしゃぶりながら領主様のもも周りを擦り彼に気に入られようと必死になっていた。
「上手いな。そろそろ出るぞ。」
さすがに喉奥で出されると悲惨なことになることは経験で知っているし、このままでは出された精液が全てマズルの横から出て彼の機嫌を損ねかねないので半分ほど口から出して余った根本を前足で擦る。少しして肉棒がびくりと震えると口のなかに勢い良く粘液が吐き出された。
「ん…ぐ……はぁ…はぁ…」
「飲んだか。吐いても咎めはしなかったが。」
量は予想よりも少なく、少し頬を膨らませれば口の中に収められる程度だった。
だが大量に出されれば口の容量の問題で嫌でも吐き出してしまうため結局は余り多く飲み込めない。今のように一口で飲み込める量を出された方が飲み辛かった。
そして普通、射精後すぐは硬度を失うはずの肉棒が変わらず保っているのを見て、私は更なる諦観の念にかられた。
肉棒の大きさは体格相応、量は少なめ、しかし何度射精しても一向に衰えない種族。あのカエンジシに犯されたときにそんな種族のことを身を持って知った。あのときは何度も気絶しては目が覚め、を繰り返し、日没前から日の出まで犯され続けた。
そしてきっと領主様もといレントラーもそういう生殖方法をとる種族なのだろう。その証拠にすぐに口淫の再開を求められ、数分後には先程と全く変わらない量を出し、全く衰えていない。
口から引き抜かれて向きを正し、横向きなれと指示され覆い被さられると、私は目をつぶってこれからの地獄に備えた。
「はう……」
優しく入れられた肉棒はキュウコンである私には少し大きかったが、使い込まれた秘裂は難なく受け入れた。
「奥、か。」
「それ……以上は……」
「わかっている。この先に子供がいる。だろ?」
「はい……」
「そうだ、お前、あのカエンジシに犯されたことはあるか?」
「あります…」
「そうか……嫉妬するな。まぁいい。なら気づいてるかもしれないが俺達レントラーも、要するに数で稼ぐ種族だ。心配するな。加減する。」
言葉通り、彼は私のお腹に体重をかけないように私と密着しながらゆっくりと腰を動かし始めた。
「ここが良いのか?」
「あ…ん……」
私は感じていた。膣をえぐられると快感だけが体を駆ける。
「こういう交尾は初めてか?」
「はい……」
耳元で喋られただけで興奮が高まる。答えに満足したのか私を両前足でギュッと抱く。
「気持ち良いか。」
「はい…」
「そうか。お前の中もずいぶんと良いぞ。全部入れられないのが、妊娠してるのが残念だ。……誤解するな。約束は守る。」
彼の体温、鼓動すら快楽に変換されていく。頬を舐められ頬擦りされ、私の恐怖心は完全に消えていった。
「辛い目に合ったお前が俺を欲しがるのは当然だし、今は俺たちだけ。恥ずかしがらなくて良いんだぞ。」
甘い言葉が呪いのように私の頭に響き、さらに肉棒の先端で膣肉を強めに突かれると電撃のような快感で頭が真っ白になった。
「良い子だ。少し待ってやる。」
絶頂なら何度もしたが、こんなに穏やかなのは初めてだ。気分が一気に高揚し、無意識に領主様に口づけしてしまうと熱く応えてくれてそれが嬉しかった。
「そんなに良かったか。俺も嬉しいぞ。それにしても確かに名器だな。このままでも果ててしまいそうだ。あいつらにはもったいない。これからは俺だけに抱かれるんだ。良いな?」
「はい……領主様……」
「ムート、で良いぞ。」
「ムート様……」
彼の笑みは温かい。恐らく彼の狙いは私を妻にすること。何があっても隷属する従順な雌に仕立て上げることだろう。そして死ぬまで彼の子を産まされるのだ。そこに優しさの欠片もなく、私はただ依存するしかない道具になる。分かってはいるけれど。
「あっ……んっ……」
「シルク…やっと受け入れてくれたな。お前の中がさっきとは大違い、まとわりついてくる。これなら一晩中続けられるな。」
思考が鈍ってくる。快楽に加え今まで感じたことのない安心感に包まれた私の心はあっという間に彼に蝕まれていく。王女としてのプライドがなんとか自分を保っているがそれも溶けていく。彼の雌でありたいという欲が大きくなり、なにもかも放棄しようとする自分に恐怖する理性も削られていく。
「シルク……」
奥に押し付けられ、脈動と共にそこが熱くなる。私の意思とは関係なく雌の部分は彼により気持ち良くなってもらおうとねっとり締め付けた。
射精が終わると直ぐにまた私をかき混ぜた。こんなのを夜明けまで続けられたら、きっと私は堕ちてしまうだろう。
彼の熱い息を浴びる。愛撫を受けキスされる。私の思い描いていた理想の交尾が私を壊していく。
これが初めてだったら良かったのに。そうだったらなんの障害もなく彼の子供を産めたのに。そんな考えさえ浮かぶ中、私は欲のまま甘えた声で鳴いて口付けをせがむ。貪るように重ね、奥に打ち付けられた子種の感触にまた果てた。
「フゥ……フゥ……」
「大丈夫か?やり過ぎたな、悪かった。」
「いえ……」
私が堕ちることはなかった。彼は2回で止めたのだ。
「十分満足した。もう休め。」
彼は大きく欠伸をして、私の毛繕いを始めた。
「お前、母親は?」
「母は………」
「いや、いい。愚問だった。」
表情で察してくれたらしく、彼は話題を変える。
「ずっとここに住んでいるのか。」
「いえ……」
それ以上聞かれると困ったが、幸い深くは聞いてこなかったので安心する。
「んん……」
「どうした。」
いつものように唐突に始まる胎動。思わず変な声を出してしまった。
「いえ……動いただけです……」
「そうか。きっと、お前に似て可愛い子になるだろうな。」
それからしばらく黙ったまま毛繕いされ、余韻も徐々に引いてくる。雌の扱いを良く知っているらしく、時々私を抱き寄せたり頬擦りしたりと体を気遣ってくれていた。
「くあ……」
「ゆっくり眠れ。叩き起こしたりはしないさ。」
そして私はついさっきまでいた牢を顧みることもなく、柔らかい寝床と彼の温もりに寄り添われて深い眠りに落ちていった。
────────────────────
「んん……」
目が覚めた。随分と心地良い目覚めだ。一瞬、何が起こったのか分からず数秒後に思い出してため息をついた。
明るさからするに結構寝過ごしたらしい。領主様の姿はなく、いつのまにか私は鎖で繋がれていた。といっても部屋の中を動き回るのには十分な長さの鎖で、簡潔な置き手紙と共に用意されていた木の実を食べた。
「はぁ……」
なにやら忙しい音が聞こえるが、外の様子は分からない。楽にしていろ、と手紙に書かれていたので私はまた寝床に入った。
柔らかい寝床で寝られたとはいえさすがに一日では今までの疲労はとれない。すぐにうつらうつらとしていると、唐突に扉をノックする音が響いた。
「は、はい。」
「入ります。」
クセのある雄の声がそう告げると扉が開いてドクロッグが入ってくる。この雄の相手もしたことがある。
「お目覚めでしたか。あ、どうかそのままで。これ片付けますね。」
別のポケモンなのかと思わせるほど態度が違う。木の実の入っていたカゴを持つと点検でもしているのか部屋の中を見渡した。
「シルク殿、お体はお変わりないですか?」
「は、はい……」
「近くに医療班が待機しているので何かございましたら声を出してください。それと、もうしばらくすればムート様がお戻りになられます。そうしたら水浴びができますので、それまでお待ちください。では。」
私が呆然とする中ドクロッグは軽く会釈をして家から出ていった。匂いからしても確かに同じドクロッグのはずだ。上司が変わっただけでここまで部下も変わってしまうとは、改めて敵国は恐ろしいと感じたのだった。
「シルク、入るぞ。」
レントラーが戻ってきて私の緊張は一気に解れた。
「水浴びに行こうか。」
牢に入れられていたときも数日おきに水浴びできたが、その時とは違う水場、村の近くの浅い川まで2匹だけで歩いていった。
「よく眠れたか。」
「はい。」
なら良かった、と彼は濡れた私の体を優しく擦り始める。自分はもう水浴びを済ましたらしい。さすが同じ4足のポケモン、川の中独りでは洗いにくい場所を洗ってくれていた。私も前足で顔や首周りを洗い、胴体を揺らした。
「便利だな、炎タイプは。」
自分に軽い炎を纏わせて乾かすとそう言って、濡れたから自分にもやってくれと言われたので彼の近くに鬼火を浮かべた。
「うん、もういい。」
満足げに身震いすると村へ向かう。
「散歩でもするか。それとも休むか?」
「…できれば休ませていただきたいです。」
毛繕いもしたかった。彼は頷くと家に向かい、私を寝かせる。そして私を抱き寄せると丁寧に毛繕いを始めた。
「早く俺の匂いに染めたいからな。」
顔周りを舐められるついでに口付けもされ、胸が高鳴る。
「惜しいな。俺の国に生まれていれば、迷わず妻にしたのに。」
「ムート様…」
「忘れろ。」
お腹も舐められ、ちょうど胎動が起きると撫でられる。親しい友人にもあまり触られたくない場所なのに、抵抗感が全くない。じわりと体が熱くなって、後ろ足の太ももを舐められたときに秘部が濡れ始めてしまった。
「なんだ、欲しかったのか?それなら言ってくれれば喜んで応じるぞ。」
舌先で秘裂をなぞられて尻尾がピクリと反応する。
「ふあ……」
彼は舐めるのを止めて横になっていた私に覆い被さり、その自然な流れで彼の雄が私に埋められる。そして私はしばしの間、頬を舐められながら快楽を与えられるのだった。
それからというものの私は特に苦痛を味わうことなくのんびりと過ごす。彼との性交の頻度は低く、十日に一度くらいのペースで短い時間交わった。その代わりなのかスキンシップはかなり増えて、私は毎日彼に毛繕いされ、キスは日に何度もした。
「最近元気ないな。どうした。」
何ヵ月か経ち、お腹は大きくなり始め胎動も盛んになってきた頃。水浴びしているとそう声をかけられた。
「いえ……」
「本当か?仲間に会わせてやるって言っても妙に頑なに断るし。悩みなら聞くだけ聞くぞ。今暇だしな。」
言って良いと言われてはいそうですかと吐けるようなことではない。どう返そうか困っているとムート様は距離をそっと詰める。
「子供の父親のことか?」
「……。」
「図星か……戦争がはじまって以来、俺達の国では子供が産まれるとすぐ1ヶ所に集められて、愛国と王族への忠誠、戦いだけを教え込まれるんだ。それまでに生まれていた者達も徹底的に教育された。洗脳、といった方が正しいかもしれない。」
それは何となく察している。
「でも本能を抑えることは難しい。それに、今の軍にいるやつらの大部分は戦争前のことを知ってるんだ。俺達の国は確かに前から非道と言われてきたし否定はしないが、戦争前は家庭を持つくらいは自由にできたんだ。普通はな。」
ムート様は一度言葉を切り、うつむく。
「お前が嫌がるから無理強いはしない方が良いと思ってたんだがな。」
ついて来い、と言われてついていくと村に出る。占領される前にはなかった畑やら建物があるが、変わったのはそんなものではなかった。
「良いもんだろ。」
聞こえてきたのは子供の笑い声。
「今までは知っての通り雄、雌、子供は分けて牢に入れていた。だがやめた。そして自由時間も作った。」
子供達が走り回って遊んでいた。
「ここはな、俺たちの中でも特に酷いって有名だったんだ。前の領主が悪趣味で厄介者扱いされていて、だからここみたいなところに飛ばされたのさ。でもあまりに秩序が乱れていたから俺が来た。」
兵達はいたって真面目な顔で外に出ているポケモン達を監視している。
「まず、のべつまくなしに犯すことを止めさせた。今は決まった日、決まった時間に希望者は子供が出来ない異族と交わらせている。お前からしたら雌を娼婦扱いしないでほしいってのが本音だろうが、それだと不満が溜まるやつが出てくる。とはいえあのままじゃ役目を放棄してるも同然だからそうしたのさ。」
同じ牢にいたミミロップが生まれて間もないミミロルを抱いて、サーナイトと立ち話をしている。他にも家族でいる者、中には敵兵らしきポケモンと話している者もいた。
「違う村に来たみたい……」
「だろ?少し変えるだけでこうだ。」
彼は私に頬擦りする。
「本当は、静かな暮らしを望んでるんだ。教育で押し潰されて、もうそれを自覚する者は少ない。でもみんな、俺達みたいに気に入った異性とのんびり暮らしたいのさ。本能を押さえ込まれて、さらにはいつ死ぬかも分からない状況で、だからねじ曲がった方法で発散していた。それがこの間までのあいつらだ。その子の父親も、戦争さえなければお前とその子とで幸せに暮らしたいと思うはずだ。」
もちろん、と彼は強調する。
「それで許せとは言わない。お前達がされたことは、お前達にとって死んでも許せないことだろう。でも…そうだな…その子はきっと丈夫で良い子に育つ。ここにいるのは少数精鋭だからな……お前だって最初に俺と交尾したとき、子供の心配してただろ。それに、今ならお前の仲間と話ができる。俺もできることはする。だからお前は子供の名前の候補でも考えてればいいんだ。余計な心配は無用だ。……おっ、」
お腹の子がポコンポコンと蹴り始める。その振動が寄り添っている彼にも伝わったようで、
「ほらほら、その子もしっかりしろって言ってるぞ。」
うつむく私の額を彼は舐める。敵であるのに、彼はあまりに優しすぎてそれが辛くもあった。
「おまえの母さん、お前を守ろうとして殺されたんだろ?報告書に、抵抗し続けた者は見せしめに殺したとあった。」
「はい……」
「この村の雄達に慰霊碑を作らせた。孫が生まれるんだ。行ったらどうだ。」
「どうして……」
「うん?」
「どうしてそんなに…私に優しくするのですか……?」
彼は少し照れくさそうにしながら答えた。
「なんというか…レントラーはな、異性に弱いんだ。俺がとかじゃなくて種族的に。とくに雄は雌に弱い。強姦なんてできたもんじゃない。俺達の国には当然俺以外のレントラーがいるが、みんなそうだ。優しくせずにはいられないのさ。……不服か?冗談ではないんだが。」
私とは対照的に、彼は愉快そうに笑った。そして何か言いかけようとして、部下のガオガエンが近づいてきたのに気がついて止める。
「どうした。」
「いえ特に。ムート様も結婚式挙げないんですか。」
彼直属の部下で、彼とは親しいらしい。
「フン……」
彼はなにも言わずに私の顔を引き寄せ軽く口付けをした。
「これで満足か。」
「いいえ、将軍様の挙式なら全員を集めないと。」
「悪いなこいつの体調があんまり安定しないんだ。そのうちな。」
「へーい。じゃあその代わりと言ったら何ですが。」
ニヤニヤしながらガオガエンは紙を差し出した。
「…なんだそれは。」
「ラルム第2王子が番をお持ちになったとお手紙が。先を越されましたね。」
ゾロアークである第2王子とはタメ口をきけるほど仲が良いと聞いたことがあった。
「フン、俺はあいつと違って慎重なんだよ。」
彼は手紙を口で受け取ると前足でしっしとガオガエンに合図し、ガオガエンはニヤニヤしながら去っていく。私は彼に連れられ家へと戻った。
「なるほど……うまくいってるのか。」
手紙に目を通し、何やらぶつくさ呟くと電撃で手紙を丸焦げにした。
「あぁいや、別にイラついてやった訳じゃない。驚かせてすまん。」
彼は私には詰め寄ると口を重ねる。2匹だけだからか唾液が漏れるほどの熱いキスだった。
口元から唾液を垂らしながら離れると彼は私の頭を撫で、耳の後ろを撫でる。彼の綺麗な瞳に見つめらると私も視線を外すことができず、吸い込まれそうな感覚になった。
「もう10年近く前か。俺はまだコリンクだった。」
「え?」
「あの頃は戦争していなかったから、子供は自由に遊べた。俺は国境近くの村出身でな。俺もまだ幼かったからしょっちゅう近くの村に遊びにいった。友もたくさんできた。」
額を合わせ、彼の前足はそのまま私の頬へ。
「初恋もした。ガキなりに本気で、迎えにいくみたいなこと言ってた。今じゃ懐かしい思い出だ。ハイルって名前の、金毛のロコンだった。」
私の心臓が跳ね上がった。ハイルは私の本名だ。そして色違いの私がロコンだったとき、毛の色は金色だった。母が国境近くの村出身で、昔は時折そこを訪れていた。
若き将軍である彼が、王女の名前を知らないはずがない。
「ムート様…それ…」
「誰にも言ってないから心配するな、お姫様。」
つまり彼は最初から私が国王の娘だということを知っていたということになる。
「私……ごめんなさい……覚えてないです………」
「当然だ。だから言わなかった。俺もまた会えるとは思っていなかった。ここに銀毛のキュウコンがいるって聞いたときは───っと、口が滑ったな。忘れてくれ。」
言いかけた言葉から察するに私は人質になったのだろう。素性がばれても殺されないということはそういうことだ。
「ムート様、」
「うん?」
「ムート様にとって私は……何なのですか。」
「難しい質問だな。」
彼は思慮深げな顔をする。どう言えば私を傷つけずに済むか言葉を選んでいるようだった。
「そうだな…ひとつ言えるのは、お前が芽になっていると知って、嫉妬したことだ。」
彼はにこりと笑う。
「さっきガオガエンが言ったことだが、今はお前を妻にするつもりはない。俺達の国が勝って、いよいよお前の首が危ないってなったらお前を妻にしよう。だがそれまでは、主と主に気に入られた娼婦の関係で良いと、お前にとってその方が良いと思ってる。」
それはつまり、彼らが負ける可能性があるということ。確かにそうなった時に王女の私が敵の将軍と愛し合う関係だったら、きっとろくなことにならないだろう。
だが、王女の私が強姦で誰とのかも分からない敵の子を身籠っている時点で既に大問題なのだ。それと比べれば今さら誰と番になろうが大して気にならない。
「……シルク?」
私が彼の胸に額を付けると彼は体勢を変えず私からの言葉を待つ。
「でも、これからも私をお側に置いてくださるなら、この子にとってはあなたが父親になるんじゃないでしょうか。」
「……俺の読みは外れたということか?」
「娼婦は……もう嫌なんです……」
「確かに例えが悪かった。だがなシルク…いやハイル、俺はお前の仲間を何匹も殺した。お前は母親も殺されてる。惚れてくれるのは嬉しいが、ちゃんと分かっているのか。」
「カエンジシなのか、ゴウカザルなのか、ドクロッグなのか、ルガルガンなのか、ヘルガーなのか、それ以外なのか……分からないんです。」
「うん?」
「だからせめて……」
上手く言えないが、彼にその気があるのなら番として側にいてほしかった。私は疎開しただけでこの村とは元々何の関係もない上、みんなは私の身分を知らない。彼は私が心をさらけだすことのできる唯一の存在。その彼と体の関係を持つなら癒み者としてではなく番としてがよかった。
「ムート様…」
「ん?」
「抱いてください。」
私が唐突に寝床に入って横たわると彼は少し驚いた顔をする。私から誘うのは初めてだった。
「今日はあまり体調が良くないって今朝言ってなかったか。」
「今が良いんです。」
彼は少し迷って、ため息をついて寝床に足を踏み入れる。
「どうしても、そっちの方が良いのか。」
「し、失礼でしょうか。」
「いや………」
彼はもう一度ため息をついて私の頬を舐める。
「分かった。あいつに従うようで癪だが…明日、みんなを集めてお前を妻だと宣言しよう。もう様付けしなくて良いからな。」
私が答える前に口を塞がれる。彼を私に覆い被さるように抱き、全身で愛撫するように体を擦り付けた。
「むはぁ……」
「今さら余計なことは言うなよ。」
私が口を開こうとするとそう釘を刺されて閉じる。内もも辺りに熱い肉棒を感じながらいつになく熱心な愛撫を受けた。
「あと少し来るのが早ければなぁ。そうすればお前は最初から俺の子を孕んだだろうに。」
「ムート様…」
「まぁでも、散々俺の精液浴びてるんだ。もうほぼ俺の子だな。」
「ムートさ…あぁ……」
肉をかき分けて入ってくる。奥に軽く触れると彼は私の耳元でそっと愛の言葉を囁いて腰を動かし始めた。
「動いてる。文句言われてるのかもな。」
子供がお腹を蹴り始めると愉快そうに言って私に少し体重をかける。その重みが私に幸福を感じさせる。胎動の振動が余計に快感を増幅させて私は達し、彼は息を荒げた。
「ハイル……」
肉棒が震え、奥に熱いものが当たる。最近では頻度も大分減り、やったとしても1回なのだが今日だけは5回ほど中で出されて久々に秘裂から白濁がこぼれた。
「すまん、やり過ぎた。」
「いいえ、気持ち良かったです。」
彼に後ろから抱かれながら余韻に浸る。交尾後に背中を温められるのはとても心地良い。
「ムート……」
「なんだ。」
試しに呼び捨てで呼んでみると、彼はむしろ嬉しそうな顔をする。
「この子を産むときも、こうしてて……」
「良いとも。」
彼はグリグリの私の額に顎を擦り付ける。私より一周り大きく、強くたくましい体で、私に優しく初恋相手が私という、本能的にも私的にも彼は夫になる条件を兼ね備えていた。そのせいなのか、こうして抱かれるとすぐに眠くなってしまう。
「おやすみ。まだ昼だが、将軍とお姫様なら少しくらいだらけたって良いだろ。」
「うん……」
彼に笑いかけようとして、鉛のように重くなった瞼に邪魔される。彼に可愛いと言われたのを最後に、私は半ば強引に眠りに落ちた。
─────────────────────
大きな城の敷地内、若いレントラーは鍛練と称し部下の相手をしていたが誰も彼に敵わなかった。
「休憩にするか。」
「はっ。流石ムート様、我々では足元にも及びません。」
「まぁ血筋が血筋だし……俺も努力したからな。精進していれば強くなれるさ。」
今訓練場にいるポケモンの中では彼が一番若く、一番地位が高い。彼は国境近くの基地で、近親相姦によって生まれた。理由は単純、優秀な血筋だったからだ。彼は戦士になるために生まれ、育てられ、今に至る。
「ムート様、ラルム陛下が───」
「おーいムートーー!」
別の部下が報告する前に、陽気な声が彼を読んだ。若い雄のゾロアーク、この国の第2皇子だ。
「ラルム陛下。お手合わせですか。」
「相変わらずくそ真面目だなぁ。」
「部下の手前、そう馴れ馴れしくは───」
「んじゃ、ちょっとこいつ借りるから。お前たちはそのまま続けてくれ。」
ヘラヘラと告げてムートを連れ出すこのゾロアークは非常に高い戦闘力を持っており、軍の中で彼に勝てる者はいないとまで言われている。
「どうした。訓練中に俺を呼び出すなんて珍しいな。」
そしてこのレントラーとゾロアークは歳が近いこともあってとても仲が良く、この国では皇族を崇拝しているにも関わらずラルムはムートにタメ口を許していた。
「ちょっとな。まぁ要するに密命ってやつだ。」
それを廊下で言ったら密命でなくなるじゃないかと言って笑い合う。彼の直属の部下であり召し使いであるルカリオの案内で軍幹部以上の者しか入れない分厚い扉の部屋に案内された。ルカリオが外から扉を閉めるとラルムはリフレクター、光の壁、守る、を重ねてかけた。これならルカリオの波動でも感知できない。
「厳重だな。」
「あぁ。戦争の勝敗が決まることだ。」
「何……?」
隣国と続く戦争は、もう7年も続いている。
「お前さ、確か昔、金毛のロコンに初恋したって言ってたよな。」
「………は?」
さっぱり訳が分からない、という顔のムートをよそにラルムは続けた。
「今はどうだ。まだ気になるか。」
「おま……何を言ってるんだ…?」
「偶然入ってきた情報なんだが、占領地のひとつに銀毛のキュウコンがいるらしい。雌のな。」
ムートは息を飲んだ。
「お前が恋したっていうロコンの名前は?」
「……ハイル。」
「銀毛のキュウコン、ハイルはあっちの国の王女だ。」
「んなっ……!」
「そして見つかったキュウコンはシルクと名乗っているらしいが、一緒に母親らしきキュウコンがいたこと、どうやら元々その村に住んでいた訳ではなく疎開してきたこと、こっちのスパイの情報では相手国王の妃と娘が疎開したらしいこと、これらからそのキュウコンはハイルで間違いないだろう。」
ムートはしばらく黙った。
「……殺すのか?」
相手の王族の血筋を絶やす。基本である。
「その話の前に、ムート、お前は俺たちの国について、父上……国王についてどう思う。」
ムートはさらに戸惑った。
「ど、どうって………」
「今なら第2皇子の権限において、一切の無礼を許す。誰にも漏らさない。だから正直に言え。」
ラルムは真剣だった。ムートは目を泳がせて口ごもる。ほんの少しでも皇族を否定すれば重罪、国王相手となれば処刑対象である。それを分かってか、ラルムが先に言った。
「俺はな、正直間違ってると思うよ。」
「ラルム……!」
「何が間違っているか、お前なら分かるだろう?お前もその犠牲者のひとりだ。でもお前は知っている。好きな相手に恋できる自由を。」
幼いムートはよく近くの村に遊びにいっていた。優秀な戦士でもあり、国の為に近親相姦までしてムートを作った両親がそれを許したのは心のどこかで後悔し、縛られた範囲の中でなるべく外を知って自分達と同じ道を歩まないでほしいという想いからだった。
「…クーデターでも起こすつもりか。民の…自由のために。」
「少し違う。」
ラルムはムートと距離を詰める。
「父上は停戦を考えている。これ以上の被害拡大と国力低下を懸念してな。」
「……それで?」
「父上直属の部下が相手の将軍の妻子の居所を探ってる。誘拐するつもりだろう。そうすれば将軍の妻子と王女、2枚の強力なカードを手に入れたことになる。」
「質にして交渉を有利に進めるつもりか。でも終わった後に返したら……」
「そう。返したら意味がない。返さないのさ。命の保証と引き換えなだけで、返しはしないつもりだそうだ。いや、返せなくする。俺達の子供を産ませてな。」
ようやく、ムートにも彼の言いたいことが理解できた。
「俺にハイルの…王女を孕ませる種役になれと。」
「そうだ。王女の種役は俺が決めて良いと父上に言われて、お前を推薦したわけだ。」
「レントラー族の性格、知ってるだろ。」
「あぁ。だからこそさ。…王女は例の占領地にいる。」
「例のってまさか…ガマゲロゲに任せてるあそこか?」
「そうだ。」
ムートは再び黙った。いくら敵国の雌とて我らが国王の守護者として恥ずかしい、と周りに言われるほど悪趣味な幹部だ。そんなのが統治する土地の雌がどうなるかは想像に容易い。
「手段は問わない。孕ませろ。」
「俺に……そんなこと……」
「手段は問わない。停戦後も好きにして良い。要は向こうに返さなければ良いのさ。使い捨てにしようが生殖用奴隷にしようが、玩具にしようが愛する妻にしようがお前の勝手だ。」
「妻……だと……?そんなの選択肢を与えないで無理矢理そう名乗らせるだけ───」
「繁殖用奴隷より良いと思うぜ。脅迫するのか出来る限り優しくするのかもお前の勝手だしな。」
「……」
「やっぱりお前は優しいな。実力と俺の推薦があったとはいえよくこの国の将軍を続けられたな。」
ラルムは意味ありげに笑う。
「まだあるのか。そういえばクーデターの話がまだ終わってない。」
「そうだ。」
ふぅ、とラルムは息をつく。
「確かに今言った計画が成功すれば、有利な条約を結べる。でもそれで良いのか?相変わらず雌は繁殖用、雄は種兼兵力としかみず、一部の高位の者だけが楽しく暮らす。そんな国のままで良いのか?」
「…続けろ。」
「俺たちでその計画を書き換えるんだ。お前は王女を助けろ。俺は将軍の妻子を助ける。ただし関係はもってもらう。そして───」
ムートはゴクリと唾を飲んだ。
「俺は敵にこの城の地図を渡す。隠し通路も含めた皇族用の地図を。そして将軍の娘と王女が手に入って停戦協定の準備が進んで油断しているところを、敵に攻めてもらう。」
「そんなことを……」
「王女と娘には犠牲になってもらうが…そうすればこの国は終わりだ。それに彼女らを手懐けておけば、俺達の命乞いをしてくれるかもしれないぞ。俺がお前を例の占領地の統治者に任命するからお前はとにかくその王女を助けてやれ。そして敵国に近く俺達の国から遠い、という条件を生かして密書の中継点になってほしい。」
「……どうやって送る、遠いぞ。」
「お前も気づいてるだろ?お前みたいに優しいやつはお前だけじゃない。」
「……分かった。でもハイルは孕ませない。事が終わったら返す。」
「それで構わないさ。でも、」
ラルムは緊張をといてにんまりと笑う。
「ちゃんと行為はするんだぞ。怪しまれるからな。そもそも初恋相手に、ただでさえアホみたいに絶倫のお前がどれだけ我慢出来るかねぇ?結局一晩中ヤってパンパンにして孕ませちまうんじゃねーの?」
「……鍛練一筋で性に疎いお前こそ、暴走して相手を壊さないかどうか心配だな。」
「んなぁ!言ってくれるなコノヤロー!」
─────────────────────
「準備はできています。いつでも呼んでください。」
「あぁ頼む。」
日が沈んで仄かに太陽の明るさを残しつつ夜闇が空を覆った頃、ガオガエンは領主夫妻の家をなるべく音を立てないように出る。
「よーし、外の方も万全だし、なんかあっても大丈夫だから落ち着けよ。」
「うん……」
寝床でレントラーに後ろから抱かれている銀毛のキュウコンは産気付いていた。
産まれるかも、そう伝えられたムートは至って冷静にシルクことハイルを寝かせ、医療隊を外に待機させた。
「痛んできたか。」
「うん……」
ムートが片前足で彼女のお腹を擦りつつもう片方の前足で顔を引き寄せて頬擦りすると彼女もそれに甘える。彼らはもう、ただの番だった。
「キス、して。」
彼女がねだるといつものように舌を絡ませる。実は珍しく緊張しているムートも彼女を安心させようと微笑んだ。
「頑張ってな。」
「うん……」
つられてハイルも笑う。そして目を閉じ深呼吸をして来るべき激痛に備えた。
「うぅ……くぅん……」
難産だった。彼女が苦しみだしても中々破水せず、その後もお腹の膨らみ、つまり胎児が中々降りてこない。痛みの波に声を上げて身をよじり、自分を落ち着かせようとムートのたてがみに顔を埋めて息を吸う。
華奢なキュウコンは子供が少し大きかったり逆子だったりすると難産になりやすいらしい。そしてムートが透視したところ、やはり逆子で後ろ足のかかとが引っかかっている用だった。ムートは透視で体内を覗くことをとても嫌っていたが妻のため、と胎内を確認しながら少しでも手助けしようとお腹をさする。
「ムー…ト……」
「あぁ悪い。」
彼女のお腹から視線を外して、首をもたげて求めてきた彼女をそっと寝かせる。そして額や頬を舐めながら抱く力を強めた。
「大丈夫、出てきてる。その調子だ。」
数時間たってようやく彼女の秘裂が膨らみ始め、子供のお尻が見えてくる。それを見て気を持ち直したのか、ムートに押し付けるように体重を預けながら静かにいきむ。最後に、交尾時に同族の雄の亀頭球を受け止める場所に頭が引っ掛かってしまったのでムートに支えられながら立ち上がると自重で膣から滑り落ちた。
「大丈夫か?」
最後の激痛で意識が飛びそうになってよろよろと倒れこむハイル。
「こ……ども…は……?」
手っ取り早く透視で確認すると、小さな心臓は元気よく動いていた。そして今の衝撃で目を覚ましたのかモゾモゾと足を動かした。
「心配ない。よく頑張ったな。さぁ…」
へその緒を切るためハイルは向きを変えようとするが踏ん張りが効かない。
「お願い……」
「分かった。」
ハイルが見守る中、代わりにムートがへその緒を千切り、膜を食い破って最初の"お清め"をした。
「おめでとう。」
ムートは純粋に嬉しそうだった。
「うん……」
「大事に育てような。」
産まれたのは雌のロコン。彼女は娘の名前をシルクとすることにした。生まれたては真っ白だったが数日でお馴染みの赤茶色に変わった。
「おう、起きたか。」
出産から何日かが経った朝、目が覚めたハイルはまだ寝ている娘を抱き締めた。するとパッチリと目を開けた。
「あなた…!目が…!」
「おう、随分急に開くんだな。」
くりっとした目をしばたかせる幼子に、2匹はしばらく見とれていた。
「可愛い……」
「あぁ。可愛い可愛い、お前の子だ。」
「うん……ありがとう。まだ、言ってなかった。」
ハイルは疲労からか熱まで出し、昨日まで寝込んでいてそれどころではなかった。
「気にするな。体はどうだ?」
「うん……だいぶ良い……」
「みんなのお陰だな。」
ハイル達"芽"の為にムートの部下たちが村の畑で栄養豊富なラムの実やリンドの実、オボンの実を栽培しており、出産後はハイルにも毎日届けていた。良心が戻った彼らからの、せめてもの詫びだった。
「みんなに言わないと……」
「立てるか?無理するなよ。」
子供をくわえて外に出ると、心配してくれていた村のみんなに大丈夫だと伝え、水浴びをしてからまた寝床に戻った。
ハイルにとって、我が子の誕生は結局は希望になった。ムートも子供を我が子のように接してくれているし、つわりが酷いときは夜通し付き合ってくれたりと尽くしていて、ハイルは幸せに感じていた。
しかし───
「ムート…お願い……」
「ハイル、俺はな、お前に笑っていてほしいと心から思ってる。でも俺は統治者であり将軍である限り、戦わなきゃいけないんだ。もちろん努力はする。だが部下に、殺しは禁じる、なんて命令はできない。向こうは殺しに来てるんだから。」
占領地にハイルの国が攻めてきたのだ。ムート達は出撃し、ハイルは家で娘を抱きながら遠くから聞こえる戦いの音を複雑な気持ちで聞いていた。
戦いはさほど長引かず、例のガオガエンがムート側の圧勝だとハイルに知らせ、さらにムートがここに戻るまで決して家から出ず外も覗くなと言いつけた。
その翌日、大量の足音が村に聞こえた。兵と捕虜だろう。ハイルは乱れる心を落ち着かせてほしいと彼の帰りを一心に待つ。
「ハイル、俺だ。」
「ムート……良かった……」
前足で抱き合い、夫の無事を喜んだ。ムートは毛並みが少し乱れていただけで無傷だった。
「敵の、恐らく軍の幹部を捕らえた。会いに行くか?」
子供を背に乗せ彼についていくと、以前は村のポケモン達が入れられていた牢にたくさんの、ハイル側の戦士達が閉じ込められていた。
「あ……!」
見覚えのあるエンペルトを見つけたハイルは駆け寄った。満身創痍のエンペルトも驚きの声を上げる。
「あなたはまさかっ……!」
「無事だったのね!良かった…」
「お嬢様こそ……お、お嬢様、その背にいるのは…」
「あ…えっと……」
「俺の子だ。」
後ろから来たムートが助け船を出す。
「俺の子だ。ただし俺とは血はつながっていない。あとは察しろ。」
エンペルトは黙ってムートを睨む。
「違うの、彼は私を助けてくれた。ここは、今じゃ子供達も外で遊べるのよ。だから変な真似をしなければきっと悪くはされないわ。そうよね?あなた…」
「そうだな。」
ムートは牢にいるポケモン達全員に話す。
「本来なら情報を吐かせるだけはかし、あとは交渉材料にするか殺すか繁殖用にまわすかだが、俺の妻が悲しむんでね…お前達には畑をつくってもらう。当番で1から耕せ。」
牢は静まり、半分は反抗的な目で彼を見、もう半分は安堵する一方どんな重労働かと不安がる。
「……そこで採れた食物は全てお前達で消費して良い、と言ったら少しはやる気が出るか?」
捕虜の目が驚きに変わる。
「決まりだな。作業は数日後になるだろう。それまで休め。それとお前、」
ムートはエンペルトを向く。
「お前は俺の召し使いになってもらう。妙な真似をしたら、こいつがどうなるか分からないぞ。」
ハイルをアゴで指し、彼女を連れて牢を後にする。
「ムート……」
「嘘に決まってるだろ。」
「分かってる。でも私が言えば──」
「お前が俺を良く言えば、あいつはお前が俺の意のままになってるって思うだけさ。」
実際ムートの言う通りだった。今回攻めてきた軍の大将を勤めたエンペルトは、隙あらば首を掻き切ってくれると言わんばかりに警戒していて、それはハイルの気を害する程で度々彼女が注意しても反抗的だった。
ムートもムートで彼の前で敢えて透視能力を使って遠回しに牽制するなど静かな対立が続いていた。このエンペルトをあっさり下したのがムートだったので仕方がないと言えばそうだったが。
しかしそれも長く続かず、ムートが牢に寝床用の干し草を差し入れたこと、言葉通り新たにこさえた畑から採れた食物を全て牢に回したこと、何より村の雰囲気が想像とまるで違っていたことで敵ながら少しずつ信用を得るようになってきていた。
「ムート様、お手紙です。」
「おう。」
特徴的な尻尾で幼子をあやしているムートに変わってハイルがガオガエンから受け取った。随分と平和な光景である。
「ほう……」
「なんて?」
「ラルムのやつに子供ができたんだと。」
ムートの口調にエンペルトが驚いた。
「ラルム!?お前、自分の国の皇族を呼び捨てにするのか?」
「親友だからな。俺をここによこす機会をくれたのもラルムだ。…お、腹へったみたいだぞ。」
「そうみたいね。」
唐突に尻尾から離れて母親のもとへよちよちと歩き、横たわった彼女のお腹をまさぐる。
「尻尾、巻いてきたか?」
「そうねぇ確かにそうかも。」
子供の成長を喜び額を合わせるそれは仲の良い番そのもの。襲撃から1ヶ月経つとエンペルト達の態度も変わり、命令を淡々とこなすようになっていった。
「どうやら、我々の見解は間違っていたようだ。もっと、非道なところだと思っていたが。」
ある日、部下の鍛練に付き合っていたムートが戻ってくるとエンペルトがそう言った。ハイル側のポケモンということもあって、ムートは自分が側にいられないときは彼に護衛を頼んでいた。
「…それは間違っていない。国王にとって、俺達は道具に過ぎない。俺が辛うじて"普通"を少しだけ知っているだけだ。」
「…そなたほどの地位の者がそんなことを堂々と言って平気なのか?」
「ここでは俺がトップだからな。それに───」
ムートは目を逸らして一旦言葉を切り、また向き直る。
「───今さらだ。」
「そなたのようなポケモンが多ければ、我々は戦争する必要もなかったろうに。」
「仕掛けたの、俺達だもんな。まぁ無理な話だ。俺みたいなやつが多かったらこんな国にはならないさ。」
「しかし──」
今度はエンペルトが辺りを見回す。鍛練を終えたワルビアルが幼いエネコを構ってやっているのを見つけて思わず笑う。
「忘れるな。」
ムートの言葉にエンペルトは振り返る。
「こいつの母親は、見せしめに公開処刑された。他の抵抗したやつもな。そしてこいつ自身も酷い目にあった。表面上は平和だが、あいつらは俺達を許してはないだろう。」
「あなたがやった訳じゃない……」
うつむくハイルを抱き寄せながら、ムートは鋭い目でエンペルトを見た。
「勝手に洗脳されてくれるな。俺達はあくまで敵だ。」
ムートの言っていることはもっともなのだがエンペルトはますますおかしな気持ちになる。それでも彼のハイルやその子供を抱くときの顔は本物だと言おうとして、全速力で飛んできたピジョットに遮られる。
「ムート様!!」
異常な慌てぶりに聞いていた誰もが察したが、ムートは一応訊いた。
「どうした。」
「敵軍が接近しています!」
「数は?」
「およそ2500…」
「ハハッ……総力だな。この間ので駄目だったから徹底的に潰しにきたか。」
今この村を拠点にしているムートの軍は500。ここはムートの国とはハイルの国を挟んで反対側にある地。少数精鋭とはいえ地理も数も圧倒的に不利。明らかな負け戦である。
「恐らく狙いはお前の奪還だろうから手を抜くはずがない。数だけじゃないだろう。」
「ムート殿、」
エンペルトがムートを諭そうとする。
「負けると分かっているなら良いだろう。降伏すれば、命は助かる。」
「我々は降伏などしない!命尽きるまで敵を減らす!」
ガオガエンが声を張り上げた。ムートは彼を制し、エンペルトを静かに見る。
「捕まるなら自殺しろ。俺達はそう教え込まれてる。」
「それは…私も知っている。捕らえられそうになって舌を食いちぎるのは何度も見た。しかしそなた達は違うのでは?」
「そうよ!」
ハイルも続いた。
「死んじゃ駄目。私たちの側にいて。あなたのことは私が何とかする。だから駄目よ。一緒にいて……」
「お前を妻にすることを渋ったのは、そう簡単には行かないからだ。」
そうは言ったもののムートはどこか弱々しく、本当は死にたくないと告白しているようなものだった。
「王女と大将がいるのよ。それにあなたは私を助けた。」
「……おい、みんなを集めろ。全員だ。」
ムートがそう言えば数分で彼の前に隊列が組まれ、集まったところでムートは全員を注目させる。
「……戦えば恐らく、いやほぼ確実に負ける。戦死するか、捕まる前に自殺するかのどちらかだ。」
戦士の表情が全く変わらないのを確認してから、ムートはハイルを呼んでいつものような熱いキスをした。
「…俺はまだ、こうしていたい。」
戦士達の顔に衝撃が走るが、黙って耳を傾ける。
「こいつの成長も見たい。」
背中に乗っていた眠そうなロコンを舐める。
「そして…戦争なんて忘れて彼女と子作りしながら静かに暮らしたい。お前達はどう思う。俺を反逆者と呼ぶか?まぁその通りなんだが。」
「つまり……」
ガオガエンが恐る恐る声を出すと一斉に視線がそちらに移り、彼は固まって続きを言えなくなる。
「絶対とは言えない。俺達がしてきたことを振り返れば当然だ。だが、可能性はある。生かされる可能性が。」
沈黙。賛同も反論も無く、群衆は静まり返った。
「お、俺…」
ゴウカザルがその沈黙を破って視線を浴びる。
「アリーと一緒に…いたい……かも。」
彼はこの村の住人のミミロップと恋仲になっていた。
「よく言った。他は?今は相手がいなくても、生き延びればその内機会はあるかもしれないぞ。俺とこいつ、羨ましかっただろ?愛し合ってるんだぞ。」
ムートはハイルの額に軽く口付けをしてから彼女に無言で催促し、ハイルも少し躊躇しながらムートの頬に口付けをして、見せつけられた多くの戦士に羨望の色が浮かんだ。
「それじゃ……本当に……こ………降伏を……?」
誰かの言葉にムートはうつ向いた。
「あぁ、そうだな。全員、敵の正面に向かえ。先頭は俺が行く。武具は必要ない。そして命令だ。死ぬな。絶対だ。情報を隠す必要はない。俺が許可する。思い出せ、戦争の前を。俺より歳上は、俺たちの国でも子供が遊んでいた時を思い出せ。俺と同じくらいの世代は、遊んでいた頃を思い出せ。俺より若い世代は……そうだな、この村のみんなの暮らしは見ていただろう、それを羨め。」
答える者はいなかった。しかしムートが統治者として君臨してからの暮らしは彼らに強い影響を与えていたのも事実だった。
「降伏という言葉が嫌なら交渉と解釈してもらっても良い。……いくぞ。くれぐれも殺気を見せるな。俺達は負けにいくんじゃない。生き延びに行くんだ。」
それは恥だと声を上げる者は誰もいなかった。
──────────────────────
村のポケモン達はそのまま待機させ、ムートは先頭で戦士達を率いて敵の元へ向かう。隣には一緒に行くと言って聞かなかったハイルとその娘、彼女らの護衛のエンペルト、そして白旗を持ったガオガエンが付き添っていた。もちろん元々白旗なんて持っていなかったので、村のクルミル、クルマユ、ハハコモリに協力してもらい、白い糸を編んで太い枝に付けた急造品だ。
森を歩いている間、誰も口を利かなかった。皆、戦いに行くときとは比べ物にならないほど緊張していた。彼らにとって戦死は名誉。生き延びる交渉を行うということは、彼らにとって恐ろしいことだった。
一方、コジョンド率いる大軍も敵の異変に気づいた。
「将軍閣下、敵に動きが。」
「数は?」
「偵察隊によれば500前後。誰も武具を着けず、先頭を歩く者の内1匹が白旗らしきものを持っているとの報告です。」
「白旗…?馬鹿な……」
さては降伏と見せ掛け不意討ちか、とも思ったが、そうだとしたら武具を着けていないのは不自然だ。
「それと閣下、先頭を歩く者のことについてですが、ハイル王女とミクツ大将である可能性が。」
その報告がコジョンドを混乱させる。
「ミクツ大将が説得したのでしょうか…?」
「やつらは話を聞くようなポケモンじゃない。お前も分かっているだろう。交渉でもする気か……」
「何事だ。」
困惑するコジョンドの背後から、威厳のある声が響く。主は雄のバクフーン。国王だ。妻子の安否を一刻も早く確かめるため、彼も戦場に来る決意をした。安全だと思っていた疎開先が占領されていると知ったのはつい最近。1度精鋭を送ったが返り討ちにされたので、総力戦を仕掛けることを決めた。将軍の娘を拐われ、相手に停戦の動きがあることから妻子の奪還は個人的にも政治的にも最優先と判断したのだ。
コジョンドはひとまず今聞いたことをそのまま伝える。
「確かにハイルなのか?」
「はい…」
背中に子供らしきロコンがいたことは言い出せなかった。
「ならば交渉といこうか。」
「しかし罠の可能性も……」
「あいつらが、仮に我々を惑わせるためだとしても白旗を用いるとは考えにくい。彼らにとって名誉は命より大切なはずだ。質として交渉に来る可能性は十分だが、そうだとしても対応が早すぎる。あちらの国王を通していない、統治者の独断である可能性が高い。」
そう言いながらバクフーンは重い槍を受け取ってその場で軽々と振った。
「もし罠ならハイルを連れてくるはずがない。あいつが死んで困るのは向こうだ。罠だったとしても向こうに勝算はない。だろう?」
「分かりました。では警戒を解くこと無く、彼らを待ちます。」
待つこと十数分、レントラー率いる隊が現れた。
「ハイル、ミクツ、先に行け。質にとっていると思われたくない。」
「しかし……」
エンペルトは反論しようとしたが止めた。
「分かった。行きましょうハイル様。」
「でも───」
「我々が先に行って、伝えるのです。」
ハイルは不安そうな目で2匹を見比べ、頷いて彼に従った。彼らが歩み出るとハイル側の将軍のコジョンドも部下を連れて歩み出る。
「将軍、警戒を解いてくれ。彼らは降伏を決断した。争いは必要ない。」
「ミクツ大将……ご無事で何より。私が応じるので貴方は───」
「ミツク大将、よくぞ戻った。そしてハイル…」
コジョンドを遮りバクフーンが列をかき分けて娘に駆け寄る。
「ハイル、母さんはどうした。」
「それは………」
再会したとは思えない、まるで彼女を説教するかのような態度でバクフーンは問う。
「誠に残念ながら、お妃は殺されたそうです。前の統治者に。」
エンペルトが助け船を出してもバクフーンは表情を変えず、視線も外さない。
「ハイル、その背のロコンはなんだ。」
異常だということは理解しているのか怯えながら母親にしがみつく幼子を安心させようと一舐めしてから答えた。
「シルク……私の子供よ……」
「父親は。」
「……」
「まぁいい。お前は後だ。大将、後ろに支援隊が控えてる。そこまで娘を連れていけ。」
「父さん…!私は───」
「お前が統治者か。」
ムートが静かに近づいて来て、国王たるバクフーンは更に厳しい目を向ける。対するムートは全く動じること無く頭を下げた。
「降伏する。村のポケモンはそのまま待機させてある。戦士はこれで全てだ。」
バクフーンは反応せずムートに歩み寄ると彼の背を槍で殴り、強く踏みつけて伏せさせた。
「父さん!」
足に炎を纏わせムートの背が焼ける。
「父さん!止めて!」
「ハイル、下がれと言ったはずだ。俺はこいつに話がある。」
グリ、と踏みにじり、ムートが呻き声を上げた。
「誰が妃を殺した。」
「記録には……公開処刑されたとしか……書いていない……」
「あの子供の父親は誰だ。」
「分からない……俺が来たときには既に……っぐぅ……」
答えながらムートは心中で言い逃れしようとする自分を嘲笑した。
「父さん止めて!彼が私を助けたの!!彼が来なかったら───」
「黙れっ!!」
怒鳴り声にハイルは口をつぐむ。
「お前達、何をしているさっさと敵を拘束しろ。」
あらかじめ命令を受けていたムートの隊は、誰も抵抗せずに連行される。
「戦士は……王にとって駒だ……産まれたときからしつけられて……命令に逆らえない……あいつらに……罪はない……」
「立場をわかっていないようだな。」
バクフーンはムートを放すと槍の柄で横顔を殴り飛ばして部下に合図し鎖で彼を拘束する。ハイルは父親にすがり付いた。
「お願い聞いて…彼のお陰で私達は解放されたの…彼じゃなかったら今ごろここは戦場よ…?」
「ハイル、早く戻って頭を冷やせ。お前は正常じゃない。」
「そんな───」
「お言葉ですが、ハイル様のいう通りだと──」
「娘を鎖で繋げたくはないんだが。」
割って入ろうとしたエンペルトも睨まれて何も言えなくなる。
「彼を…どうするつもり…?」
「戦犯以前に国王である俺の妻を殺し、娘を拉致して強姦した。ただの処刑では済まされまい。」
「話を聞いてくれ。交渉したい。」
ハイルが涙目で反論しようとすると、その前にムートが訴える。
「交渉?」
バクフーンは止めに入るコジョンドを押し退けてズカズカとムートの元へ行くと音を立てて彼の顔を蹴る。
「この期に及んで交渉だと?笑わせるな。何を望んだ交渉だ?命か?娘か?娘が欲しいか?おめでたいやつだ。言ってみろ。何が望みだ。」
「……静かな…戦いのない…暮らし……」
バクフーンはムートの腹に拳を叩きつけ、ハイルが小さく悲鳴をあげた。
「はっ!どの口が言う!!盗人猛々しいにも程がある!!それでお前は何をくれるというんだ!?終戦か!?我々の勝利でもくれるのか!?争いのない暮らしか!!良いだろうくれてやる!!お前の両目と両耳を潰して死ぬまで独房に入れてやる!!静かで何もない、お前の望み通りの暮らしをな!!」
「俺は第2皇子と国崩しを計画していた…」
苦しげに息をしながらムートがそう言うとバクフーンは怒鳴るのをやめる。ハイルやミツクにも知らされていなかったので彼らもハッとムートを見た。
「……何だと?」
「あんたなら…分かってるだろ…王女と将軍の妻子が拉致された……そして今我らの国王は停戦に向けて動いている…その意味が。」
「…続けろ。」
「俺達はそれを利用することにした…カードが揃ったと国王が油断している間にお前達に城の設計図を渡して攻めてもらう、という計画だ。既にいくらか情報を送ったはずだ。」
するとコジョンドが口を挟んだ。
「確かに、先日捕らえた敵の内通者ですが、出所不明の密書に記されていた有力情報が決定打となりました。差し出しはラルム第2皇子と記されていました。真偽は不明ですが…」
「将軍の妻子の無事を知らせる密書も送った。」
「確かに…受け取った。」
「ここを中継にするため、そして俺がここに留まる理由を作るため、わざわざハイルを城に連れて帰らなかったんだ。……そうだ。ここが奪還されていないことにできないか。」
「何を言い出す───」
「伝達係が来るのは3日後だ。ハイルが奪還されたと国王に知られれば停戦は無くなるかもしれない。そうなれば俺たちの計画は水の泡。でもこうしてお前達と接触できた。国王と将軍、大将とだ。俺は第2皇子と親友で、今までも俺とあいつとでしか解けない暗号文を使ってやり取りをしている。俺とお前達が直接やり取りできればより確実に城の設計図を渡せる。皇族用の隠し通路も含めたものだ。」
バクフーンは鼻で笑ったが、コジョンドは違った。
「しかし陛下、それが本当で、利用できれば敵に勝算はありません。」
「そうなれば彼は勝利に大いに貢献したことになる。」
ここぞとばかりにエンペルトが付け加えた。
「お気を静め、検討されるべきでは?」
「将軍として、彼に一理あると思います。今や敵の狙いは勝利ではなく不平等条約を結ぶこと。彼の計画に乗る価値はあるかと。」
コジョンドも後押しするとバクフーンは目を瞑って腕を組んだ。
「…お前は向こうの城に連れて行かれた妻子に早く会いたいだけだろう。」
「否定はしませんが、失礼ながら今日の陛下も同じでは。」
バクフーンは答えずしばらく考え込んで、重々しく口を開いた。
「…将軍に任せる。離してやれ。」
ムートの拘束が解かれてハイルは安堵のため息をついた。
「勘違いするなよ若僧。」
「……利用されることなら慣れている。協力、感謝する。」
バクフーンは鼻を鳴らして踵を返し、コジョンドに合図した。
「では第一、第二、第三小隊は村に向かう。後は陛下と共に帰還せよ。ムート殿、案内を頼む。……担架を持ってこさせようか?」
「それはありがたいが、その前にガオガエンを返してほしい。俺の部下兼世話係だ。ガオガエンは1匹しかいないから分かるだろ。」
「良かろう。」
コジョンドは自分の部下に指示してガオガエンを連れてくると共に四足救護用の担架を持ってこさせた。
「ハイル、帰ると言っただろう。」
ハイルがムートの元へ行こうとしていたところをバクフーンが呼び止めた。
「でも……」
「駄目だ。来い。」
有無を言わせぬ口調に、ハイルは助けを求めるようにムートを見たが彼は首を横に振ったので尻尾を引かれる思いで父に従った。
「待て!」
突然ムートが叫んでバクフーンが振り返る。
「そのロコンはハイルが必死に守って、大事に育てた子だ。その子に悪くするな。」
「…お前の物差しで測るな。娘がお腹を痛めて産んだ子を奪うとでも思ったか。」
バクフーンは答えを求めずに娘達を連れてその場を後にした。
そしてムートは担架で運ばれながらコジョンド率いる戦士達と共に村に戻る。伝達係に怪しまれないようガオガエンの他に30匹ほどの部下も一緒だった。
「今、手当てします。」
家に着き、ガオガエンはチーゴの実を潰してムートの背中の火傷に塗る。
「肋骨にヒビが入った…大した怪力だ。」
透視したムートは苦笑した。殴られる寸前に電流で筋肉を活性化させ肉体防御力を上げたのでここまでやられるとは思っていなかった。
「オボンがまだ残っています。食べますか?」
「寝ればすぐ治るだろ。」
「でも、芽もシルク様…じゃなくてハイル様で最後ですし、誰も食べませんよ。」
と言って既に準備していたオボンの実を見せて、ムートはやれやれとため息をつく。結局平らげるとムートは寝床で伸びをした。
「…寝てる間にお前に殺されそうだな。」
「まさか。ムート様のご決断に異論はありませんよ。」
さてどうだかと笑って寝そべった。
「情けない…将軍とあろうものが必死になって生きようとしてしまった。望みは何だと聞かれて、俺たちの国王をぶっ潰すだけだって格好良く言えばよかったのにな。」
「吹っ切れましたね。私はまだ実感湧きませんよ。」
ガオガエンも地べたにあぐらをかいた。
「でもきっと、ムート様のご両親も誇りに思っていらっしゃると思いますよ。特にお母様にとってはムート様のことの方が大事でしたから。」
「俺の弟が早いうちに病気で死んだんだ。仕方あるまい。」
「後悔してらっしゃいました。だからこそかと。」
「レントラーは異性と子供には弱いからな。それでそれ以降兄妹の子作りに反対したせいで負け戦に狩り出されて戦死か。立派なもんだ。」
ガオガエンが何かを言おうとして、唐突に扉を叩く音が鳴った。
「良い話だ。」
コジョンドが入ってくる。
「盗み聞きとは良い趣味だ。」
「その盗み聞きのお陰で2匹のレントラーが救われるかもしれないぞ?」
「何?」
「ここにはいないが、何年か前に雌のレントラーを捕らえた。敵ながら優秀だった。再教育を受けて、監視のもと一般のポケモンとして暮らしている。何故私がそんな細々としたことを知っているか?お前達は捕らえられれば自殺する。だがそのレントラーは自殺しなかった。我々の中では大きな話題になるくらい珍しいことだ。」
「…それで、兄と子作りしてできた俺のことも話したと。」
コジョンドは頷いた。
「我々が勝利したら、会わせてやろう。話は以上だ。」
本当にそれだけだったようで、コジョンドは出ていった。
「やはりあの者達の心情は理解しかねます。」
「向こうからみた俺達も同じだろ。それにしても、強いな、あいつ。」
「はい?まぁ皇族の次に権力のある将軍ですから───」
「保護していると知らせてるとはいえまだ妻子が囚われてるってのに。」
翌日、ムートはラルム第2皇子へ密書を送り、コジョンドが彼らの王へ報告書を送るついでに母親にも簡素な文を送ってもらうと文字がぎっしり詰まった3枚の手紙が返ってきた。
ムートの国では珍しい、子想いな母だとはもちろん彼はよく知っていたが、てっきり同じような簡単な返事が来ると思っていたムートは別のポケモンになってしまったようだと笑い、コジョンドは当然の反応だと真面目に言った。
そしてそれからそう経たない内にラルムから城の設計図を預けられたスパイが無事帰還。ムートの提案も成功したようで、王女が手の内にあると思い込んでいるムートの国の王はハイルの父親に停戦の申し入れを行い、ムートにハイルを連れて城に戻るよう命令書を送ってきた。
「いよいよだ。」
ラルム皇子に向けて、将軍の妻子を城の庭園に連れて待機するよう暗号文を送るとコジョンド達はムート達を連れてバクフーンの城に戻り、すぐに出撃の準備をする。ムートがハイルを連れて帰還する予定日の夜に攻撃を仕掛けることになった。
「こんなに簡単に行くとは思わなかった。信用されなかったら困ったが、こもあっさりいくとはな。」
「これから幽閉される者の言うことではないな。」
武器を向けられ鎖で繋がれたムートはコジョンドに、成功すれば確実に処刑は免れると告げられた。
「お前が降伏しに来た時点で他の戦士とは違うと分かった。あのレントラーの息子というのもあるし、あの設計図も信憑性の高いもので他に良い案も無かったからだ。お前は自分の身でも案じていろ。」
「一生幽閉でも構わないさ。なにもせず寝ているだけで良いなんて、今考えればあの国の民の暮らしより遥かに良い。武運を祈ってるぞ。」
そしてムートは戦士に連れられるまま地下牢へ向かった。
「おかしなやつだ。だが我々はそれに頼るしかない。」
こうしてコジョンド率いる大軍はムートの国の城の隠し通路を使って内部から攻め込み、城の構造を戦士全員が頭に叩き込んでいたこともあって呆気なく陥落させた。
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「…あんたが来るってことは、勝ったのか。」
薄暗く狭い牢で拘束されてほとんど身動きのとれないムートの前に、バクフーンが黙って現れた。
「そうだ。妻と娘を疎開させていた占領地のことも全て聞いた。そしてラルム第2皇子も確保した。」
「そうか。元気だったか?」
「身籠った将軍の娘を部下から守ったそうだ。…そのザマで随分と呑気だな。」
ムートはフッフと笑う。
「お前達には考えられないかもしれないが、動けないとはいえ安定した食事と安全な寝床、重労働もなし。俺たちの国の民の暮らしに比べちゃ快適だ。」
「フン、この程度では大した罰にはならないか。なら我々に貢献したことを考慮して、公開処刑ではなく幽閉に変えてやる。」
「できれば母と会わせてくれるとありがたいんだが。兄妹で無理矢理作らされた俺を随分想ってくれているようだ。実際俺が幼い頃、母が自由を許してくれたお陰で外を知れた。でなければ裏切ろうなんて思わなかっただろう。」
バクフーンはじっとムートを見る。
「お前、本当はハイルが解放してくれることを期待しているんじゃないのか。」
「していないといえば嘘になる。だが解放されたところで俺には何もない。」
「だが残念なことに、ハイルがお前を解放してくれとしつこいのだ。解放するだけならまだしも、自分の番にすると言っている。」
ムートは視線を逸らす。そうしたい欲はもちろん大いにあるが、ハイルは王女でその番になればいずれ自分は王になるということ。ハイルが女王として実権を全て握ったとして、だとしても自分はあまりに相応しくない。自分は敗戦国の戦士達の長なのだ。
バクフーンは構わず続ける。
「お前は恐ろしいやつだ。常に冷静、その若さで数多の戦士を率いているだけでなく、俺の部下や娘の心まで射落とした。」
「…」
「出ろ、ムート。娘が、お前を解放しないなら国を出ていくと俺を脅している。俺からの言葉ではどうすることもできない。」
牢が開かれ、部下のポケモン達がムートの拘束を解いた。
「王としても、父親としても反対だ。だがハイルは、それが自分の幸せだと言っている。娘の幸せを否定するわけにはいかない。ムート、娘は部屋で待たせてある。体を洗い終えたらそこへ案内させる。非難されても番になるか、娘を想って関係を絶つか、それまでに決めろ。お前からの言葉ならあいつも聞くだろう。」
十数日動けなかったせいで体の節々に違和感を感じつつムートは彼らに従い、体を洗って部屋に向かった。
「ハイル、連れてきた。…入れ。」
ハイルは寝床で娘をあやしているところで、ムートが来たと聞くや否や娘を投げるように背中に乗せて扉に駆け寄り、開いた瞬間驚くムートに飛び付いた。
「ハイル……」
ムートも遅れて彼女を前足で抱く。背中の幼子は何事かと目をパチクリさせていたが"父親"の存在に気づいて自分にもかまってくれと鳴いた。
「シルクも元気そうだな。」
「うん……」
「なぁ、ハイル───」
「側にいて。」
抱擁を解いて顔を見合わせる。しばらく見つめ合うとムートが笑みを漏らした。
「お前には敵わないな。」
ハイルはその意味を察し、もう一度ムートのたてがみに顔を埋める。
「私のために別れるなんて言わないで。それに私はこの子の生い立ちを隠すつもりはない。だからこそあなたが必要なの。私にとっても、この子にとっても。だから良いでしょ、お父さん。」
ハイルはムート越しに、ムートは振り返ってバクフーンを見る。
「覚悟はあるんだな。」
「行動で示せば、みんなきっと分かってくれる。だって彼は優しいもの。」
バクフーンは長く息を吐いて、壁にもたれ掛かった。
「ラルム第2皇子、彼が国王になり我々の指導に従い改革することを条件に、彼らの独立を認めることにした。彼と将軍の娘との間には既に子供が出来ているし、将軍も彼らを認めた。向こうの国王とこちらの将軍の娘、向こうの将軍とこちらの王女。後付けにはなるが、これらは和平条約のための政略結婚という扱いにし、民にもそう伝える。そうすれば非難も減るだろう。ハイルへの哀れみは増えるだろうが、行動で解決するんだろう?」
なら最初から認めろよとハイルは怒り、ムートは真面目に礼を言った。
「ムート、そいつはな、俺が唯一愛した亡き妻との大切な娘だ。大事にしろよ。」
最後にぶっきらぼうに言うとバクフーンは去り、ムート達は部屋の中へ。
「疲れてるでしょ、毛繕いしてあげる。」
洗っただけでボサボサの彼にそう言って寝床に寝かせると丁寧に毛繕いを始めた。
幽閉生活が苦ではないというのは本当だったが、まともな寝床で毛繕いされていると今までの疲労が溢れてくる。
尻尾にこそばゆい感覚があったのでピュン、と動かしてみると嬉しそうな鳴き声と共に幼いロコンがじゃれついた。
「ムート、覚えてないけど…でも、迎えに来てくれて本当にありがとう。」
「礼ならラルムに言ってくれよ。俺にお前の存在を教えてくれたのはあいつだ。」
「そう……でも来てくれた。」
笑みを交わしてハイルは毛繕いを再開する。その内ムートは睡魔に襲われ、いつもの逆だが今日くらいは、と瞼を閉じた。
「…こら、お父さん寝てるから。」
寝息をたて始めた彼の尻尾に容赦なくじゃれつく娘を離して抱いてやる。
「そういえば、いつも私が先に寝て、後に起きてたのよね。」
ムートの寝顔を見るのは初めてだった。いつもは冷静沈着で、とても頼もしい彼の顔はどこかあどけなく、こうしてみるとたくましくても年下なんだとハイルは独りで笑った。
「愛してるわ…ムート……」
今日くらいは、と頬にキスをすると遊び足りなさそうな我が子の相手をしながら夫の寝顔を見守った。
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長きにわたる戦争が終わり、ムートは和平を結ぶために訪れたラルムと再開した。
「よう、元気そうだな。」
「ムート…!その様子じゃ認められたのか。」
「あぁどうにかな…こいつが俺の番。この子も、報告した通りだ。ハイル、こいつがラルムだ。見ての通りのゾロアーク。」
ハイルとラルムの番のユイは面識があるらしくお互いの無事を喜んでいた。
「あなたがラルム…彼に私のことを教えてくれてありがとう。」
「へへっ、ムートへの愚痴ならいつでも喜んで聞いてやるぜ。」
「お前なぁ……」
キュウコンとコジョンドは顔を見合わせて笑った。この2匹が祖国に革命をもたらしたとは想像し難い、と同じことを思ってのことだった。
「行けよ。呼ばれてるんだろ。」
ラルム達をバクフーンの元へ案内し、一先ず別れる。ラルム達がバクフーンから今後のことを聞かされたすぐ後に、民への披露式が行われる予定だった。
「寝癖ついてるぞ。」
「え、うそ、直して。」
俗に言うアホ毛を繕ってやり、エンペルトとガオガエン───ムートの部下も再教育の後に順次釈放されていた───の先導に付いていって城外の広場へ向かう。もちろんシルクも母の背中に乗っていた。
2匹が台に登った後でバクフーンがエスパーポケモンの力を借りて群衆全体に一通り成り行きを説明している途中、ムートは自分達に一際熱い視線を送っているポケモンを最前列に見つけて頭を下げた。
「立派な息子じゃないか。」
視線を送っていたレントラーの傍らにいたライボルトがそう言うと、レントラーは目を離さずに返す。誇らしげな顔だった。
「当たり前だ。」
政略結婚と聞いて不安に感じている民も多い中、説明の最中は静かに寄り添ったり、シルクが飽きて観客の方へ飛び降りようとするのを2匹で抑えてあやしたりと仲むつまじさを見せる。
最後に簡潔な誓いの言葉を述べて口づけをする。少し恥ずかしげに笑い合う2匹に拍手が送られ式は終わった。
「では、ご用がありましたらお呼びください。」
ラルム達も交えた食事を終えて、日暮れ頃に部屋へ戻る2匹。たくさんのポケモン達とあったせいか、シルクはあっという間に寝てしまった。
「みんな、ちょっとは認めてくれたかな。」
「さぁな。まぁ焦らなくていいだろ。」
「そうね。」
ハイルはふとムートの寝顔を思い出してクスッと笑う。
「なんだ。」
「何でもない!」
娘を起こさないように静かに立ち上がって寝床を出ると、すぐ近くにあったもうひとつの寝床に足を踏み入れる。披露式の間にいつのまにか用意されていたもうひとつの寝床、交尾用の寝床だ。
「良いのか。」
「ずっと、待っててくれたんでしょ?」
シルクが生まれてからは一度も体を重ねていなかった。
「それにもう、遠慮しなくていいから…」
ムートは妖しげに笑いながら立ち上がった。
「じゃあお言葉に甘えて。」
まずは口付け。披露式とは質という質が違う濃厚なキスを交わしながらムートはハイルの頬や耳の裏を撫でる。離れるとハイルを優しく押し倒し、背中から抱き締めて彼女の全身を愛撫した。
「さわり心地が良い。前より毛並みが良くなったな。」
「そういうあなたは前よりずっと乗り気ね。」
ハイルは嬉しそうに返す。彼女は気づいていないが、出産からいくらか月日が経った彼女からは雌の匂いが漂い始めている。
「濡れてきたか。」
「やっぱりわかる?」
「お前ほど嗅覚が良い訳じゃないが、雄はみんなその匂いに敏感なのさ。大好きな雌のだったらなおさらな。」
「…じゃあ、良いわ。やっと…やっとちゃんと交尾できる。」
ハイルはムートの抱擁から抜けてうつ伏せになった。
「好きにして。」
「休みたくなったら遠慮なく言ってくれ。その…長いから。」
ハイルがにこりと笑って頷き尻尾をどかすと熟れた秘裂がムートを誘った。
「んっ……」
湿ったそこを一舐めすると更に愛液が滲み出る。背中に覆い被さって、いきり立った剛直を彼女の胎に押し込んだ。
「あう……」
「奥入れるぞ。」
妊娠していたときと違って雄を受け入れられるよう柔らかくなっている子宮口を貫くと彼女の膣がムートを更に締め付ける。
キュウコンのような雄に亀頭球のある種族にとっては普通のこと。ただし体格に差があるため同族同士よりも深く侵入された。
「全部入った。すごく気持ちいいな、このままでも十分果ててしまいそうだ。」
体温の高い彼女の柔らかい膣の波打ちに、ムートは体を震わせ熱い息を吐く。根本まで入れたこともあってその快感は以前と比べ物にならない。一方のハイルも既に絶頂寸前だった。雄槍に内側から押し広げられる感覚にまだ恐怖はあるけれど、彼の匂いと優しさがゆっくり解きほぐしていく。
「動くぞ。」
引き抜かれまいと絡み付く膣に逆らって腰を引き、彼女の腹側をえぐるように突いた。
「はう……」
子宮口に刺さっては抜かれを繰り返され、ハイルはあっという間に達して嬌声を抑えようと歯を食い縛る。しかし、ムートも溜まっていたのとかなり興奮していたせいでハイルが絶頂したときの膣の動きに耐えられず、彼女の奥深くで射精しその脈動にハイルは声を上げた。
「あふ……シルクは……?」
「大丈夫、寝てる。」
密着したまま恥ずかしがるハイルの顔を舐めて、最初の余韻に浸る。不満げにピクつく肉棒の感触はハイルにもはっきり伝わっていた。
視線を交わすとムートはハイルを抱き直し、再び腰を動かした。
「あう……んんっ……」
首をもたげて快楽に喘ぐハイルは美しさを失わず艶やかで、ムートを昂らせる。必然的に腰を振る速さも上がり、2匹の本能的欲求が剥き出しになり始めた。
「あうっ…また…あぁっ……」
脈動に合わせて体を痙攣させるハイル。気がつけば胎は彼の精液の感覚でじんわりと温かくなり、結合部からは愛液と白濁が混ざった粘液が溢れて動く度に水音を立てていた。
「休むか。」
返事を待たずに接合を解いて、快楽に震える彼女を撫でる。
「もうやめようか。」
「ううん……平気……」
鼻息を荒くしながらムートの鼻や口回りを舐める。キュウコンの愛情表現であるそれをムートも彼女にお返しするついでにキスをした。
「早く妹弟欲しくなっちゃった。」
「ハイル……」
その言葉の裏の意味はもっと複雑なものだった。しかしムートはそれには触れず、笑顔で返した。
「きっとシルクは良い姉になる。でも大変な姉だ。俺たちのことだからきっとたくさん兄弟が生まれる。シルク任せにしないようにしないと。」
どこか寂しげな顔をしていたハイルは元の調子に戻った。
「そうね。私も労ってもらわないと。」
「そうだな。」
額を合わせるとハイルが促し、行為を再開させた。翌日も特になにもないということもあって、時々休みつつ空が白むまで営みは続いたのだった。
翌日の昼近くになってようやく起きてきた2匹を、見かけた者たち皆が温かい目で見たのは余談。
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「うーん、やっぱりそれは火の粉ね。」
城の炎技練習用水場にて、3尾のロコン2匹が特訓していた。彼らに火炎放射を教えているのは5尾のロコンだ。やはりまだ早いのか、弟達の口からは普通より少し粒が大きめの火の粉しか出ない。しかしそれは火炎放射の前段階で、周りのポケモンは姉に続いて優秀なキュウコンになるだろうと噂していた。
「ほーらお前達、そろそろラルム達が着くから戻れ。」
父親の一声で子供達は近くで見守っていた両親のもとへ。今日は定期的に行われている両国の交流の日だった。
ムートの母国は生まれ変わった。今やハイルの国と大差ない。
「久しぶりね、みんな元気かしら。」
「まぁあいつらのことだ。心配ない。」
子供達を城の外で遊ばせることもよくあったムートとハイルは、民の間では革命者というよりも仲良し夫婦として有名だった。
「父さん、ガルム兄さんも来るの?」
ガルムとはラルムの弟で元第一皇子のワカシャモだ。面倒見が良く子供達に好かれていた。もっともシルクにとっては別の意味もあった。
「もちろん来る。炎技が教わりたいんなら母さんに教われば良いじゃないか。」
「だって父さんと母さんは忙しいでしょ。」
「まぁ確かにそうかもね。でもあなたが気を使う必要ないのよ。それにラルムさん達が来てるときくらいお休みしたら?」
母親に舐められて少し恥ずかしそうにするシルク。彼女にはもう真実を伝えてある。それでも彼らにとってお互いは親子以外の何でもなかった。
優しくて頼もしくて、ちょっと子煩悩な夫、可愛い子供達。ふとムートの横顔を見たら目頭が熱くなる。
「ねぇあなた、」
「ん?」
「何でもない、呼んだだけ!」
「なんだよ。」
「あー、またパパとママがラブラブしてるー!」
「仕方ないわ、私たち子供は邪魔だからミクツさんの所にでも──うわぁ!」
「別に邪魔なんて言ってないぞシルク。久しぶりに首根っこくわえて運んでやろうか?本当は甘えん坊だもんなお前は。」
「もう父さんったら……」
おわり
[newpage]
ご閲覧ありがとうございました。この作品は本短編集の「策略に誤算はつきもの」と同じ世界、時間軸です。下にリンクを貼るので良ければそちらもどうぞ。
前作から来てくださった方、ご愛読ありがとうございます。そしてアンケートにご協力して下さった方々、誠にありがとうございました。今回も簡単なアンケートを実施しているので引き続きご協力いただけると幸いです。
2作続けてオリジナルの世界での物語を描きましたが、次作はゲームやアニメの世界のような感じで描いていこうと思っています。
のんびり頑張っていくのでこれからもよろしくお願いします。
レントラーのペニスにトゲがない?だってポケモン二次だもの。…というだけでなく、ポケモンはタマゴグループが同じなら異種繁殖が可能な世界なので、異種相手の場合トゲがあると傷つけてしまうand嫌がられる可能性→自然選択でトゲは退化と解釈。そして異種との受精率を上げるために大きさは体格相応。そんな世界観。
こんなところまでありがとうございました。良ければユーザーページからTwitterフォローしてください。宣伝、活動報告をしています。
それではまた。