※この作品はR-18です。

メイドさんと暮らす幸せ   作:冬樹リア

2 / 2
 どうも、冬樹リアです。

 こちら今作に関する事になります。

 前作(無印)を読んでいなくても問題はありません。ただ、読んでいただけているとより楽しめるかと思います。それから、前作のご感想にてくださったアドバイスに関して、あまり作品に落とし込めていないことを省みつつ、予めておきます。


メイドさんと暮らす幸せ 2

 冬というのは、特に夜になればどうしても冷え込むものだ。人肌が恋しくなる季節なのは間違いない。

 

 そしてその欲求を満たせる状況というのは、珍しくないが実は難しい。寝食を共にする相手というのは本来非常に気を遣う対象である。

 

 本来。そう前置きしたのには、当然理由がある。何においても例外はあるということだ。

 

 具体的に挙げるなら、そう、例えば僕の目の前で、腕の中で穏やかに寝息を立てている少女などは、その例外に当たるだろう。

 

 一足先に微睡みの先へと落ちたその寝顔は、普段よりもあどけなさを感じさせる。

 

「すぅ……くぅ……」

 

 なんとも可愛らしい。

 

 その見目麗しいと仰々しい表現を充てる事に違和感が無いくらい綺麗な女の子、シーラという名の少女は、つい最近僕の家(屋敷と表した方が適切な規模だが)で、住み込みのメイドとして僕に仕えてくれている。

 

 メイドであるシーラがこうして添い寝状態で居るのも、僕が一緒に床へ就いてほしいと頼んだからだ。

 

 シーラは、この国に暮らす多くの人とは大きく異なる、天使という存在。少々訳アリの、いわゆる天界を追われた堕天使であり、それ絡みで一悶着あったりもした。

 

 そして、彼女が例外であるという理由がそこにある。いや、勿論全く気を遣っていないという訳でもないのだが、余り気負う必要が無いという意味において、僕にとってのシーラは例外なのだ。

 

 纏めてしまえば、彼女の抱えていた問題が、僕にとっては全く問題ではない、というだけ。ただ、そういう明確な理由があって、お互いがそれを共有しているという条件の下では、配偶関係あるいはそれに近い関係の上でさえ例外が起こり得るということだ。

 

 文字通り人間離れした可愛らしさ、美しさを束ねた、これまた文字通り雲の上の存在であるシーラが、人間の僕にメイドとして尽くしてくれる、というのは少し恐れ多くもあるのだけれど。

 

 まあ、シーラ自身やりがいを感じているのか何なのか、理由は知らないが少なくとも嫌とは思っていない様だし、自ら進んでしてくれているので、わざわざそれに水を差すような事は言わない。

 

 触らぬ神に祟り無しではないが、考え方は近いだろう。時には不干渉というのも上手い付き合い方の一つなのだ。

 

 という生き方のせいで、最近まで一人寂しく日々を送っていたのだが。それでも、嫌われるくらいなら最初から関わらない方がいいという染み付いた思考は変わらなかった。

 

 そしてそんな時に来てくれたのがシーラで、僕にとっては天使どころか救いの女神みたいな存在なのだが、シーラの方にはどうやらその自覚がないらしい。

 

 もしかするとシーラは、僕に一方的に重荷を背負わせている、なんて考えているのかもしれない。

 

 決してそんなことはない。

 

 シーラは僕の寂しさを、展望の無い諦観を、心の穴を埋めてくれているのだ。こちらから不干渉気味だった分、周囲から僕に対しても不干渉気味だった僕に、自分を預けてくれる存在。深層心理がその比重を大きくするのだ。

 

「んみゅぅ……」

 

 僕はシーラの小柄で細い体を強く抱きしめた。シーラの吐息は苦しそうなものではなくて、落ち着いた気持ち良さを思わせる響き。

 

 こんな風に、誰かが一緒に居てくれる生活が、これほど温かいだなんて。

 

 そんなこと、シーラが来るまで考えてもみなかった。

 

 俯瞰的に自分の過去を見つめてみて、漸く空虚感の正体が寂しさだったことに気付けたくらいだ。

 

「ありがとう、シーラ……」

 

 眠っている天使を抱き締めたまま耳元で、囁くみたいに告げてみる。

 

 こんなにも心を満たしてくれるシーラに。

 

 僕の寂しさという種から芽生えた欲望まで優しく、丁寧に、自分のことみたいに受け止めてくれるシーラに。

 

「愛してる……」

 

「わたしも……」

 

 愛と呼ぶには余りに下卑た欲望、下心剥き出しの恋という劣情かもしれないけれど。

 

 ふわり。と、シーラがそよ風みたいな寝言を返してきた。

 

 穏やかな風は、それでも力強く、僕を揺らす。

 

 およそ主人とメイドという関係には思えないけれど、僕は今の状態がとても落ち着くし気に入っている。居心地が好くて、温かくて、優しい。刺さるような風が吹く真冬でも、春の木漏れ日みたいに安らぐ。

 

 僕も、少しずつ眠気に思考力を奪われてきたような気がする。

 

 特にそれに逆らう事もなく、僕も瞼を閉じて、少しだけシーラに体を預けるようにして、夜の帳に意識を溶かした。

 

 

 

――――――――――。

 

 

 

 違和感に目覚める。けれど、危険を感じるような違和感ではなくて、急速に意識が呼び戻される事は無かった。

 

 仄かに、温かくて、気持ち良い。

 

 どこからともなく、微かな水音が、耳に残る。

 

 その音の出所は、違和感の場所とほぼ同じらしかった。

 

 少しだけ強く腕に力を入れようとして、そして違和感の正体に、その力が空振って気付く。

 

「シーラ?何してるの?」

 

 言いながら僕が、二人分の体温が片方だけ抜けかかっている掛け布団を跳ねのけると、そこにはやはりシーラが居た。ただし、何故だか僕の若く健康な男子である証明を外気に曝して、それに舌先を伸ばしながら。

 

「主様の大きいのがお腹に当たってたので……私のせいかな、と」

 

「ち、違うからね?それは性的興奮とは関係なく僕くらいの年の男なら、寝起きには誰でもこうなるもので……」

 

「そう、なのですか?普段と違う姿の私には……給仕服じゃない私には、興奮、しませんか……?」

 

「う……」

 

 言われて、余り気にしないようにしていたシーラの服装を意識してしまう。

 

 落ち着いた淡い色の、透けて見えるくらい薄い生地で、ベビードールとネグリジェの間みたいな寝間着。普段のメイド服とのギャップも相まって、なんとも言えない扇情感を演出してくれている。

 

 元々シーラが持っている、瑞々しくきめ細やかな肌の大部分も、胴回りから腰を通り大腿へかけて描かれるしなやかな曲線も、程よい柔らかさと細さを共存させる脚足も、どれも普段は殆ど目にする事の無い、新鮮な艶めかしさだ。

 

 控え目な胸の膨らみが、健康的に覗く鎖骨のラインが、可愛らしく視線を誘う臍が、子供っぽい体ながら明確な女性を感じさせる。

 

 僕が常日頃見ているシーラは、精々首から上だけ。それだけでも充分以上に女の子としての強みが揃っているのだ。鋭い刃物の様でも、流れる水の様でもある髪もそうだし、端整な顔立ちもそう。およそこの世のものとは思えない程だ。

 

 それが、全身の隅々にまで行き届いたその美しさが、頭がボーっとしてくるくらいに、本能的な欲を引き出してくる。暴力的なまでの、魅力の塊。

 

「してくれてる、みたいですね。安心しました」

 

 この美貌と愛らしさを前にして興奮しない人間など居ないのではなかろうか。

 

 ただこの美しさに中てられるだけで、昏倒する者さえ居るかもしれない。或いは、同性愛者ではない女性さえ恋に落としてしまうかもしれないくらいの圧倒的な美。

 

「そりゃ、するよ……!」

 

「でも、この大きくなったのは違うんですよね……」

 

「……いや、もうダメ……。朝勃ちと思ってたけど、シーラのそんな姿、マジマジ見ちゃったら……」

 

「なら、このまま続けても構いませんよね……?」

 

 僕が何も言わずに頷いて見せると、シーラは数十秒前より随分と熱く滾ったモノに少し目を見開いて、しかし躊躇う事なく舌を伸ばす。

 

 僕の目が覚める前に、最初にしてもらった時に教えた「ご挨拶」は済んでいたのだろう。シーラの舌先が亀頭を転がして弄ぶように、刺激を加えてくる。

 

 初めてしてもらった後も何度かお願いしているけれど、その内にシーラの口淫は、他の仕事と同じかそれ以上のとんとん拍子で上達している。

 

 迷いなく的確に、僕の鋭敏な部分を強く、それでいて優しく、まるで花の生き様みたいに舐り、体の奥底から快感を引き出す。

 

 時に飛びあがりそうな程速く、時にじれったくなるくらいに遅く、緩急の激しい動きで翻弄するように、僕を昂らせてくれる。

 

 陰茎の根元近くまで咥え込んだ後は、舌を突き出して裏筋の付け根の方へ刺激を与えながら口内を締め付けてきたり、奥まで飲み込んだまま少し動きを止めて変化をつけたりと、刺激のパターンを増やして。

 

 或いは、上目遣いにあざとく視線を合わせてきたり、わざとらしいくらい下品で卑猥な水音を立てたり、僕と僕の欲望を満たすように、教えた訳でもないことを僕の反応から学んで自分のものにしていく。

 

 その勤勉さや真面目さ、学習の早さなんかを見ていると、やはりシーラは天使なのだが、しかしその向けられる先が性技というのは堕天使どころか淫魔の風情だ。

 

 不意に、僕の淫魔が、欲望の滾ったそれから口をパッと離す。

 

「ぅあっ……シーラ……?」

 

 肉棒を包んでいた柔らかい温もりが急に感じられなくなった寂しさから、思わずねだるような情けない声が漏れてしまう。

 

「主様……あの、もし良かったら、下半身をベッドから出してもらえませんか?」

 

「え?な、なんで?」

 

 息が上がって、脱力気味のまま、シーラの要求にその心を問う。

 

「えっと……喉の奥まで使って、ちゃんと気持ち良くして差し上げたいので……。ベッドの縁近くまで主様のを近付けてもらえたら、私が動くだけでできると思うんです」

 

「なるほど……分かった。よい、しょ、っと。これくらいで、大丈夫?」

 

「はいっ、ありがとうございます!私、頑張って沢山気持ち良くしますね?」

 

「う、うん」

 

 正直、あのまま続けてもらってもかなり気持ち良かったのだけれど。

 

 シーラは僕がベッドの縁から下半身を投げ出したのを見て、その両脚の間に隙を作り、自らの体をそこへ寄せる。そして、左手で僕の脚を掴んで体を支えると、空いている右手で肉棒を少し自分の方へ向けて、それを一気に口内へ押し込んだ。

 

 最初の時程ではないけれど、かなり無茶な姿勢だ。しかしそのお陰もあって、シーラの小さな口でも、僕の限界まで張り詰めた熱い欲望を受け容れきることができている。それでも殆ど限界ギリギリという感じに亀頭が喉の奥につっかえていて、急激に狭くなったそこが呼吸の度に未知の快感を与えてくる。

 

 いい具合の体勢を作って、シーラがゆっくりと動き始める。

 

 舌の動きが頭を前後(今は上下の方が近い)に振る動きと同期しない、いつまで経っても慣れる気のしない快感が、僕の全身を駆け巡っていく。

 

 普通の人間だと、例えば左右の手で人差し指と薬指を交互に動かして机を叩くとして、左右で同じ方を付かないようにする。これがゆっくりとした動きなら比較的誰でもできるが、テンポを上げていくと、いつの間にか同じ方になる、つまり両手の人差し指、両手の薬指の動きが同期してしまうのだ。

 

 僕も気付いてから両手の指の動きで何度かやってみたが、どうしても動きが重なってしまう。

 

 けれどシーラの場合はそれが起きず、頭部のピストン運動と、舌の動きがどこかズレている。シーラ以外と性交をした事は無いから実際にどうだか知っている訳ではない。けれどこれが天使特有のもの、或いは人間が訓練で身に着けられる技術だとしても、それを極々自然に使っているシーラが与えてくる快感は、僕の理解のずっと先にあるものだ。

 

「くっ、うぁ……」

 

 これだけ激しい快感の嵐の中にあるのだから、きっと僕の熱い先端からは、白い迸りの前触れである先走りが絶え間なく溢れ続けている。

 

 シーラの粘っこい唾液が常に絡みついているから感覚では分からないけれど、きっとそうだ。それを嫌な顔ひとつ見せず、いっそ嬉々として、亀頭に刺激を与えながらの舌が絡め取っていき、時折小さくシーラの喉が鳴る。

 

 柔らかな唇の締め付けが陰茎を、ネットリとした舌の動きが亀頭を、そしてシーラの献身的な奉仕そのものが僕を、底無し沼のような悦びに浸らせていく。

 

 吸い込まれそうになる。

 

 ゾクリ。

 

 口の中に、喉の奥に、肉欲の具現たる精液をぶちまける、あの得も言えぬ快感を体が思い出して、寒気にも似た愉楽が僕を誘う。

 

 まるで生産性なんて無いのに。だからこそ、その生への冒涜こそが演出する背徳感は、僕の体に、欲望に、本能にしっかりと刻み込まれていて。

 

 ぐらっと、傾く。

 

 足元が沈み込むように。

 

「うっ……ぁあ!」

 

「んっ……んむぅッッッッ!!!!」

 

 気付けば、僕の体は快感に抗いきれなくなっていて、清廉な天使である筈の少女の口内を白く濁った欲望で犯して、汚し尽くしていく。

 

 口の中に解き放たれた熱い溶岩の様なそれが精の迸りである事に気付くと、シーラは更に舌の動きを加速させて、性欲の塊全体をまんべんなく品の無いくらいに舐め回して、それを絶えさせない。

 

 激しく脈打って、決壊したダムみたいに精液を吐き出し続ける肉棒を、必死に咥え込み続けるシーラ。母親の乳房に吸い付く赤子のように僕のモノを捕らえて離さず、節操なく貪るように、僕の性を受け止めている。

 

 そして僕を襲う射精感が止んで、少し落ち着くまで、シーラは業の深い僕の愚息を唇でしっかりと掴んでいた。

 

 落ち着く、という表現は余り正しくないか。ただ心地好い脱力感に苛まれているだけである。

 

 ゆっくりと、精液が零れ落ちないよう慎重に、まだ張り詰めたまま痙攣している陰茎から漸く口を離すシーラ。

 

「んくっ、んっ、んぐっ……んっ……」

 

 完全に息が上がって一言話すのもままならない、性的に満たされた状態にある僕の視界の隅で、シーラが口の中に溜まった精液を少しずつ飲み下していく。その音を、僕の聴覚は驚く程鮮明に捉えていた。

 

 ゴクン。大きく喉を鳴らして、喉に引っかかった精液までをも唾液で押し流す。そして、血が逃げつつある僕の肉棒に絡みついたままになっている粘液を見ると再びそれを口に含み、丹念に舐め取ってからそれも嚥下すると、シーラは大きく呼吸をした。

 

「こんなに出されたら……お口が妊娠してしまいますよ……?」

 

 艶っぽく、淫靡な表情で言うシーラに、僕は荒れっぱなしの呼吸を収めつつ告げる。

 

「凄く、気持ち、良かった……」

 

「なによりです……。主様~……」

 

 ベッドの上、力無く倒れ込んだままの僕の隣に、シーラも体を預ける。

 

「何……?」

 

「気付いていないかもしれませんけど……私も、すっごく気持ち良かったんです……。私、主様の精液で、頭の中ふわふわして、クラクラしてきて、真っ白になっちゃいました……」

 

「……シーラって、やっぱり何か、変だよね……」

 

「変……?軽蔑、しますか……?」

 

「ううん、全然。前にも言ったけど、少数派の側にある需要も、軽んじられるべきじゃないしさ。それに、淫乱な女の子なら尚更、自分だけの為に乱れてくれるなら、大抵の男は好きだと思うよ?」

 

「主様も、ですか?」

 

「僕も」

 

「良かったです……」

 

 こんな至れり尽くせりな事もそう無いだろう。

 

 やはり人間の三大欲求の一つが、性が最高の形で満たされるというのは、これ以上無い幸せだ。理性的な幸せとはかけ離れているが、流石に三大と銘打たれているだけある。

 

 人智を超えた美の権化、理想の形である天使が、自分の為だけに異性として全身全霊を捧げて性的な奉仕をしてくれる悦びを言葉にするのは正直難しい。ただそれでも言えることを言うなら、この世のものとは思えない程気持ち良いという事だろうか。

 

「あの……主様……?このままもう一回って、おねだりしてもいいですか……?」

 

「質問してる風だけど、それもう実質してるよね……」

 

「バレました……?」

 

 イタズラっぽく微笑むシーラ。

 

 実際に行為に及んでいる訳でもなければ、誘うような雰囲気を纏ってさえいないのに。

 

 ドクン。

 

 心の臓が、大きく跳ね上がった。

 

 普段、余り見る事のない表情だったからだろうか。

 

 冗談めかして放たれたその言葉に、シーラの魅せた見慣れない表情に、僕の心は強く惹きつけられる。

 

 文字通り心を奪われて、放心状態でシーラをジッと見つめていると、追い打ちをかけるように訊ねてくる。

 

「ダメ、でしょうか……?」

 

 その表情は、どこかこの家に来たばかりの頃によく浮かべていた、何かに脅されているみたいな不安を抱えた、あの表情に似た影を宿していて。

 

 僕は咄嗟に何も言えない。

 

 ただ、不安に怯えるか弱い少女の細い躰を、強引に抱き寄せた。

 

「あ、主様……?」

 

 腕の中でモゾモゾと戸惑うシーラを、決して離さないように、強く抱きしめながら、浮かんでくる言葉をゆっくり伝えていく。

 

「シーラ、落ち着くまでこのまま居よう?何も、怖がる必要は無いから。僕がシーラを要らなくなる事なんて無いから」

 

「……はい。ありがとう、ございます……」

 

「もしこの余韻が抜けても怖かったら……続き、しようか」

 

 腕の中にピッタリと収まったまま、シーラが小さく頷く。

 

 視線を合わせてはくれなかったけれど、何かに怯えた目はしていなかった。

 

 

 

 

――――――――――。

 

 

 

 

「主様……」

 

「どうかした?」

 

 僕の腕の中で包まるように居るシーラが、小さく呟くように言葉を紡ぐ。

 

「やっぱり、少し怖いです……」

 

「……そっか」

 

「ごめんなさい……」

 

「いや、謝ることじゃないよ。どっちかと言うと、謝るのは僕かも」

 

「……何故ですか?不安なのは、私なのに……」

 

「だから、かな。不安を与えてるのは、僕なのかもしれないな、って」

 

 シーラは、何も言わない。否定しなかった、という事だ。

 

 つまり、一から十までそうかは別として、少なくともそういう部分があり、その心当たりがシーラにはあるのだろう。

 

 それなら、それは当然僕の責任になる。

 

 シーラには今、僕以外居ないのだ。

 

 もし不安の原因がシーラ自身の中にあったとしても、それまで含めて僕がシーラを受け容れる事を示さなければいけない。そして僕には、そうしたい意志があるのだから。

 

「シーラ、ごめんね。シーラの気持ちは言ってくれないと分からないし、不安もぶつけてくれないと分からない。でも、ちゃんと受け止めたいって、受け容れたいって思ってるからさ。もっと早く、そうやって伝えておけば良かったね。言わなきゃ、分からないよね」

 

「いえ、私が……私がちゃんと、確かめていれば……。でも、主様が優しいから、その優しさに甘えてしまって……」

 

「僕は、優しくなんてないよ?自分勝手で我儘だ」

 

「でも、私のお願い、我儘も、自分のと同じに受け容れてくれます……」

 

「シーラの我儘は、可愛いからなぁ……」

 

 なんというか、小さい事ばかりだ。

 

 僕が添い寝してほしいと言ったら、抱き締めてほしいと返してきた事とか、時折頭を撫でてほしいと言う事とか、書斎の本を読みたい、とか。

 

 そんな事ばかり。

 

 僕がお願いしている事に比べると、或いはシーラに任せている事に比べると余りに小さくて、我儘なんて言い方にはかえって相応しくないくらいだ。

 

「そんな事無いですよ?一つ一つ、私にとっては、凄く心が温かくなるんです。主様にとっては小さい事でも、私はそれでとっても安心できますし、そうでなくても受け容れてもらえる実感があります」

 

「ほんと、シーラは良い子だよね……天使かな?天使だった……」

 

「それ、主様の読んでいた小説ですよね……。定番ネタだとか……」

 

「まあ定番と言えば定番だけど、実際に使う日が来るとは思ってなかったよね」

 

 そもそもシーラが来る前は、天使が実在するとさえ思っていなかったのだが。

 

「さて……それで、何が不安なの?」

 

「私、なんで自分が不安になるのか、主様に必要とされてないかも、なんて思うのか、分からないんです……」

 

「……因みに、今はどんな気持ちで居るか、教えてくれる?」

 

「今は……主様の腕の中に居ます。温かいです。でも、何故か……主様が抱き締めてくれてるのが、嘘みたいで……」

 

「嘘みたい?」

 

「はい……どう言えばいいんでしょう……?こんなにも近くに居るのに、主様が遠くに感じます……温かいのに、凍えそうで……もっと、壊れるくらい強く抱き締めてほしいです……」

 

「……そっか。シーラは、そういう気持ちなんだね」

 

 僕はそう言って、シーラから腕を離す。

 

「あっ……あるじ、さま……?」

 

「仰向けになって?」

 

「は、はい……」

 

 拘束が解けて、動きを取れるようになったシーラは、僕の言う通りにベッドの上で仰向けに寝転がる。

 

 確かに、ひどく寒そうだった。冬の明け方だからという事でもないだろう。

 

 不安げな視線はあちらこちら彷徨っていて定まらないし、両手が、両腕が僕の方へおっかなびっくりに伸びてくる。

 

「大丈夫。今から、きっと温かくなるから」

 

 シーラは何も言わず、しかし伸ばしていた手を引っ込める。

 

「続き、するって言ったよね?」

 

「……はい」

 

「今からするのは、僕の気持ちの証明だと思ってくれていいから。でも、僕がシーラを受け容れるんじゃなくて、シーラが僕を受け容れるんだよ?大丈夫?」

 

 小さく、頷いてみせる。

 

「意味、分かってる?」

 

「……一応は。初めて、ですけど……今から、抱かれるのですよね……?」

 

「うん。分かってるならいいんだ」

 

 僕はたっぷり前置きをして、漸くシーラの身に纏った衣服に手を伸ばす。

 

 僕だって別に経験がある訳じゃないけれど、自分を想ってくれている女の子が不安に怯えているのだから、そしてその女の子を僕は想っているのだから、理由はそれだけで充分だ。天使だとか、人間だとか、そんなことは関係ないし、不純な関係でもないのだから、それ以上の何かが必要なんて事は、無くていい筈だ。

 

 流石に初めての経験に、そして最初で最後の初めてに、多少なり僕も不安が無い訳ではない。けれどそれを悟らせないように、気取らせないように、自分に強く言い聞かせて。

 

 生唾を飲む。

 

 そんなことをしている内に、シーラの肢体は隅々まで露わになっていて、メイド服は勿論、寝間着越しにも見る事の敵わなかった女性器の入口も、小さな膨らみの頂に咲く桃色の可愛らしい二輪も、手を伸ばせばすぐに触れられる。

 

 そんな夢のような現実に感動を覚えつつ、しかしそれよりも更に衝撃的な事があった。

 

「……シーラ、ここ」

 

「あ、あんまり、見ないでください……自分でも、分かってますから……」

 

 見るからに柔らかそうな秘部の入口、いやらしく蠢くそこが、かなり派手に濡れているのだ。

 

「これ……どう、したの?」

 

「さっき、主様のを、ごくんってした時に……」

 

「う……」

 

 先の口淫で、その上達に淫魔を思ったけれど、それを聞いて考えを改めた。根本的に違う。

 

 淫魔はその性技によって、或いは媚薬的な効能を持つ体液によって、または快楽に溺れさせることの容易い夢の中で、男を絶頂へと導く。

 

 シーラはそうではないのだ。恐らく純粋に、男を、つまり僕を悦ばせる事に特化していて、そうなるように条件反射的に反応を返してしまうのだと思う。

 

 学習したのは、性技ではなく、僕の反応。なるほど確かに思い返してみればそういうところもあったけれど、まさかそうとは思わなかった。

 

 シーラの体は僕が無意識に求めていることをそこから導き出して、その通りに反応するようにできているのだ。つまりシーラの性技は、体の反応は、僕の為だけに作られた、特注品の生きたラブドールみたいな。

 

 そこまで思考が巡った瞬間、僕はハッとして冷静さを取り戻した。

 

「……主様?私の不安……消してくれるんですよね……?お腹の奥、きゅーってなって、主様のが入ってくるの待ってるんです……」

 

「……分かったよ。お願いだから理性が消し飛びそうな事言わないで……」

 

 いつの間にか、熱く滾って張り詰めていた、肥大化した僕の欲望を、シーラの柔肉が形作るクレバスの入口にあてがいつつ、シーラの両手首を自分の両手でベッドに押さえつける。

 

 唾液とは違う粘液の感触に、肉棒が少し驚いて跳ね、若干の距離を取る。

 

「初めては痛いらしいし、キツかったら今度にする?」

 

「それは、嫌です……最後まで、ちゃんとしてほしいです……」

 

「それなら……シーツとか噛んでもいいから」

 

「分かり、ました……」

 

「じゃあ、いくよ……」

 

 シーラの小さな躰に、どこまで入るだろうか。

 

 言いながら、考えていたのはそんな事だった。

 

 僕はシーラの膣口へ欲望の先端を押し込もうとして、しかし何度か躊躇って、扉をノックするみたいになってしまう。

 

「ん……あ、主様……あんまりイジワルしないで……」

 

「イジワルしてるつもりは、少しも無いんだけど……」

 

 ただ、焦らしているように受け取られても仕方のない動きだったことも否めない。

 

 僕は改めて覚悟を決め、シーラの密が溢れてくるところへ、そそり立った熱いモノで口付ける。

 

 ふわり、と、シーラを最初に抱き留めた時のような感覚があった。

 

 そのまま、お互いの体の、一番熱い部分同士を、触れ合わせていく。

 

 亀頭の先の方が膣肉を捉えた瞬間に驚くような快感が僕を襲ってきて、僕は反射的に腰を引いてしまった。

 

「うっ……な、なんだ?」

 

「……も、もしかして……私の魔力が、主様に干渉してる、のかも……」

 

「そういえば……そんな事言ってたね……」

 

 シーラを構成する多くの部分は魔法で、それは魔力の奔流そのものだから、受け皿がとても強固で大きくないと、痛かったり痺れたり、酷いと気を失う。温かいなんて感想が出て来るのは、僕だけだ、とか。

 

 天使の体の一番熱い部分というのは、もしかしたら一番魔力の集まる場所なのかもしれない。というか、そう考えた方が自然だ。

 

「んっ……痛い、ですか……?」

 

「いや……気持ち良すぎて、ビックリしただけ……入れただけで、出ちゃうかも」

 

「……魔力感応は、肉体の刺激とは別のもの、なので……射精した後も、痛くならないかも、しれません」

 

「そ、それは……」

 

 もしその仮説が正しいなら、精巣の中身が尽き果てるまでシーラの膣内で延々と精液を吐き出し続けられるという事になるのではなかろうか。そしてその間、気が遠くなるような果てしなく鮮烈で強烈な快感が無尽蔵に全身を……。

 

 というか、そんな心配をしていたのではなかったのだが。

 

「もし痛くなったら、すぐに抜いて……気持ち良いままだったら、主様の気の済むまで私の中で……」

 

「わ、分かった……」

 

 再び、膣肉と亀頭の先端の邂逅。

 

 今度は迷う事なく、亀頭から陰茎に続く溝のようなところまで、すんなりと挿入することができた。

 

「うあぁっ……ヤバいって、こんな……!」

 

「ぁっ……そんなに、気持ち良いですか……?」

 

「気、抜いたら、死ぬ……」

 

 死ぬ、というのは勿論物の喩えだが、それくらい激しい快感が絶え間なく襲い続けている。

 

 余りの快感に余裕の無くなった僕は、シーラに確認してみる……

 

「お、奥まで一気に行ってもいい……?」

 

「は、はい……どうぞ、お好きなだけ、ぶちまけてください……痛くても、なんとかしますから……」

 

 その、なんとかする、という言葉に冷静に返す余裕があれば、どうする気なのか、とか訊くこともできたかもしれないけれど、残念ながら僕にそんな余裕は欠片も残されていなくて。

 

 シーラの奥の奥まで、亀頭の先端が突いていた純潔の証を突き破るような勢いで、強引に押し込んだ。

 

「いっ……」

 

 一瞬、シーラの表情が苦痛に歪んだ。

 

 けれど、それは本当に一瞬の事だった。

 

「うぁっ……シーラっ……!」

 

 僕の先見の明が、無駄なところで発揮された。

 

 分かりやすく言うなら、シーラの膣肉に、僕の欲望が完全に包まれた瞬間、もしかするとその直前からかもしれないけれど、精液がシーラの膣内へと叩き込まれていた。

 

「あっあぅ……!あるじ、さまぁ……!の、せい、えきぃ……なかぁっ……」

 

 苦悶に歪んでいた筈のシーラの表情は、たちまち恍惚としたものへ変貌し、絶妙に意味不明な言葉の羅列を始めた。

 

 明らかに、気持ちよさそうな上擦った声が、僕の耳から入ってくる。

 

 何故、シーラまでもが快感に打ちひしがれているのだろうか。疑問ではあるが、考える余地は無い。

 

「シーラっ、シーラっ……!!」

 

 奥の方から、次々に精液がせり上がってくるのが分かる。

 

 白濁の欲望が、色っぽくくねられたシーラの体の中を白く染め上げていく。

 

 体温が、物凄い勢いで、迸る精液に奪われ続けていく。

 

 あぁ、まずい。このままだと、本当に死んでしまうかもしれない。

 

 不吉で取り留め無く浮かんだだけの思考は頭の隅っこへ追いやられて、ただただ気持ち良い、その理解に及んでさえいない認識だけが脳内を埋め尽くして、可憐な少女の膣内を精液で、欲望で蹂躙していく快感だけが、僕の体を支配している。

 

 底が知れない。いつまで経っても止まらない。止まる気がしない。収まりが付かない。

 

 段々と、体の力が抜けてきた。寒気もしてきた。それすらも快感と混同して、なぜだか気持ち良く感じてしまう。

 

 全て、何もかも、ありとあらゆる感覚と認識とが巨大な快感のブラックホールに飲み込まれていく。

 

 精液を放ち続ける肉棒が脈打つ感覚だけが、途轍もなく明瞭なものとして、僕の全身に入力され続ける。

 

 頭の中が真っ白なんて、そんな次元じゃない。僕には頭なんてあるのか、という突飛な疑問が生まれるくらい、全ての感覚が体の中央で肉欲を満たそうとし続けているそれに集中されていく。

 

 やがて、シーラの小さな体が、その膣内が僕の精液でいっぱいいっぱいになってきた。

 

 そこで。

 

「あるじさま……!」

 

 シーラの声。

 

 僕が射精し続ける間も何度か甲高い悲鳴みたいな喘ぎ声を上げていたけれど、それとはちがう。僕を呼ぶその声だけはとても明瞭で、温かくて、僕のなけなしの思考能力を呼び戻してくれた。

 

 やっと、反射神経が働いて、僕の肉棒がシーラの中から弾き出されるように飛び出す。

 

 いつの間にか殆ど体重を預けっぱなしになっていた状態から、四足歩行の動物みたいな状態まで、なんとか脱力感に逆らって勢いよく体を持ち上げ。

 

 それでも、まだ精液の迸りは止まらない。

 

 艶やかで滑らか、きめ細かく綺麗なシーラの肌を、色だけ近い濁った粘液が汚していく。

 

「ふぇっ?ひゃっあんっ!あ、あるじさま、と、止めひぁん!あ、熱いっやぁ、ぁん……!」

 

 熱い精液を受けたシーラは、背中を大きくのけ反らせて、体中をドロドロに犯されるのを悦ぶ。

 

 永遠にも似た快感が過ぎ去り、猛烈な脱力感が襲う。

 

 お互いに目は冴えたまま、けれど三十分近く隣り合わせに寝転がった状態で、そのまま放心していた。

 

 言葉は無く、次第に落ち着いていく息遣いだけが、穏やかに響いていた。

 

 

 

 

――――――――――。

 

 

 

 

 あの交合というよりも自慰という方が適切な気のする行為から三日。

 

 忘れ去ってしまいたい失敗でもあるし、忘れられない至極の快楽でもある。

 

 どちらをとっても、シーラとだったからこそできた経験で、きっと忘れる事はないのだろう。

 

 ただやはり、純粋に愛し合ってみたい、という気持ちもある。一層強まったかもしれない。

 

 その為に必要になるのは。

 

「やっぱり……シーラに話してみるしかないか」

 

「お呼びですか?」

 

「うわっ!?い、いつからそこに……?」

 

 僕の部屋の入口辺りに立つシーラに、考え事に意識を集中していたせいで気付けず、驚いてしまった。

 

「丁度今、です。扉を叩いてもお返事が無かったので、主様に何かあっては大変ですし、一応確認しようと思って開けたら……」

 

「僕がシーラを呼んでいた、と」

 

「はい」

 

 メイドさんモードのシーラ。可愛くもあるけれど、シーラが元々持つしっかり者の印象が前面に押し出されている。それでも雰囲気は柔らかい。

 

「それで……主様は、私にお話が?」

 

「うん。結構大切な事だけど、すぐにどうこうできる話でもないから、一応ね。先に伝えるだけ伝えておこうかなって」

 

「……?」

 

「僕が、今長くお休みを取ってる理由は話したよね?」

 

「えっと……はい。魔術師としてする、次の研究のテーマを決め兼ねているから、でしたよね?」

 

 正確には、研究が一段落ついたから溜まっていた休暇を消化するついでに、次の研究題材をゆっくり決めよう、という事。まあ、大きく外れてはいないし、決め兼ねているのも事実だ。

 

「そう。でも、シーラさえ嫌でなければ……というか、シーラが協力してくれるなら、なんだけど……魔法、にしようかなって」

 

「魔法……魔術ではなく、魔法ですか?」

 

 僕が頷いて返すと、シーラは何やら難しい顔になってしまう。

 

「魔法ですか……確かに、原初の人類達は魔法を行使したらしいですけど……主様は魔法を使いたいのですか?」

 

「いや、僕が使いたい訳じゃないかな。シーラの体は魔法でできてるんだよね?だから魔術が使えないとか。また魔法を使えるようになったら、この前みたいな事にならないようにもできたりするのかな?とか、そんな事を考えてただけ」

 

 因みに、魔術と魔法というのは明確に区別がされている。

 

 どちらも同じ魔力を用いるという点では変わらないのだが、魔術というのは魔法を扱えない人間が魔法を使う為に分析し、体系化していった結果の、極々魔法に似た技術。魔法は魔術の原初に当たる、力そのものなのだ。

 

 当然ながら魔術は理屈で説明ができる。

 

 逆に魔法というのは、同じ魔力を扱うものでありながら、できるものはできる、としか言えない状態にある。

 

 これは、魔術が人々に浸透して、魔法という不明瞭なものに頼ることが無くなってしまったからこそ起きている問題だと僕は考えている。他の魔術師がどう思っているかまでは知らないが。

 

 古い文献などを漁っていると、魔法には魔術と違って発動手順が無いだとか、もっと言えば指の一本も動かす事なく扱えるだとか、中々に興味深い事が書いてあり、それで同じことを思ったのだろう魔術師達が魔法の研究をしようとしている。悉く失敗に終わっているが。

 

 ただ、僕には強力な助っ人が居るのだ。そこに解決の糸口がある気もする。

 

 その強力な助っ人であるシーラが僕の発言に返す。

 

「……多分、できます。でも、主様の研究を私の為に割いてしまって良いのですか?」

 

「勿論いいよ。というか、ダメな訳がない」

 

「それなら……私は魔法を使いたいです。主様と、ちゃんと……あんな変な形で終わってしまったのは悔しいので……最後まで、してほしい、です……」

 

「よし。そういうことなら、次は、魔法について研究していく事にするよ。勿論、シーラの為だけじゃなくて、僕の為でもあるし」

 

「そうですね。あくまでも、私の我儘ってことにはしてくれないんですね」

 

 微笑むシーラ。

 

 ちょっと申し訳なさそうに、困ったような表情でもあるけれど、どこか嬉しそうで、喜んでいるようでもあった。

 

「さて?何のことやら……?って、そういえば、シーラが僕の部屋に来たから聞こえた訳だけど、来た理由はなんだったの?」

 

「あ……」

 

 失念していた、という感じにハッとした表情になる。

 

「何と言えば良いでしょうか……。そ、その……もう、三日になりますから……」

 

「三日……?って、まさか……」

 

「余計な心配、でしたか……?」

 

「……いや。うん、まあ、正直に言うとそれなりに、シーラの考えてる通りではあるんだけどさ……嫌じゃない?」

 

「とんでもないですっ。むしろ嬉しいです!」

 

「……それならいいんだけどさ。三日前の二の舞は流石にアレだから、本番はナシで。それでもいい?」

 

「は、はいっ!主様のお好きなように、お好きなだけ私を使ってください……!」

 

 正直、我慢できなくなったら僕から言うつもりだったのだが。

 

 シーラの気遣いを無碍にするのも悪いし、何よりシーラの発言でなんというか気が変わった。

 

 好きなように、好きなだけ。

 

 こんな絶世の美少女にそこまで言われて引き下がったら男じゃない。それに、その言葉が持っている意味をシーラに教えてやりたくなった。

 

 最高最悪に下卑た欲求が、沸々と湧き上がってくる。

 

 嗜虐心という、天使に向けるには余りにも穢れた感情。

 

 体の芯に血が、腹の底に欲望が集まって、その曲者共の溜まってくる感覚が、早く喰らえと僕の脳裏に強く訴えかけてくる。

 

 意識が、そこにしか向けられなくなってくる。

 

 シーラに出会ってから、自慰なんて馬鹿馬鹿しくなるくらい快楽には困っていないのだけれど、今からするのは性交というよりもそれに近いかもしれない。

 

 不意に、僕と視線が重なったシーラが、少し怯えたような表情になる。すぐに、震えた声で訊いてくる。

 

「あ、あるじ、さま……?何か、その……気に障るような事を言いましたか……?」

 

「……?あぁ……ごめんね。ちょっと、乱暴な気持ちになってるかな?まあ、シーラが僕を、そういう気にさせたんだけどね?」

 

「な、何を……ひゃぁっ!むぐッ……!?」

 

 僕はシーラの疑問を遮るように彼女を床へ座り込ませ、熱く滾った欲望の塊を勢いよく露出して、未だ嗜虐心を煽り続けてくる少女の口腔へ叩き付けるように押し込んだ。

 

 強引に、乱雑に、本能的に。

 

 反射的に肉棒を押し返そうとしてくるシーラの舌が、亀頭を刺激する。

 

 この前の一件で不感症になっていないかと心配していたが、どうやら杞憂だったらしい。柔らかな唇も、しなやかな舌も、生温かい体温を残していく唾液も、普段より少し苦しそうな鼻息も、どの感触だって鋭く僕の心を揺さぶる。いっそのこと、前より強くシーラを感じているかもしれない。

 

「今から、シーラを犯すんだよ。僕の欲望を惹きつけてやまないシーラの口を。苦しくても噛んじゃダメだからね」

 

「んむぅっ……」

 

 唇を離して何か伝えようとしてくるシーラだが、僕がかなり喉の奥の方まで肉棒を咥え込ませているから、彼女の小さな口ではそれも上手くいかなくて、奇妙な声だけが小さく漏れた。

 

 忠犬さながらに従順なシーラだが、ここまでされたら流石に怒るだろうか。

 

 見ればシーラは目尻に涙を浮かばせているし、いつもなら咥えるなり激しく攻め立てるようにする僕のモノへのご奉仕もしてこないから、相当苦しいか、嫌がっているのではなかろうか。

 

 それが、結果として更に僕の嗜虐心を煽ることになるとも知らずに。

 

 ドクン。

 

 腫れ物のように赤く熱く張り詰めていたモノが、更に大きくなるのを感じる。

 

「ふぐっ、ぅ……」

 

 僕がシーラの口内で、力任せに遠慮なく劣情を暴れさせると、華奢な体躯と身震いする程美しい容貌の少女が呻いた。

 

 前、後ろ、前、後ろ。

 

 そこまで激しい動きではないものの、掻き出す様に引き、突き刺すように押し込み、と一気に大きく動く。そんな動きには当然慣れていないシーラの嗚咽が少しずつ、助けを求めるようなものに変わっていく。

 

 それでも、歯を立てないように、という僕の指示を健気に、忠実に守っている。

 

 なんて、扇情的なのだろうか。あらゆる意味でそうだ。

 

 可哀想になってくる。なのに、嗜虐心を湧き立たせられる。

 

 愛おしくなる。けれど、滅茶苦茶に汚してやりたくもなる。

 

 庇護欲が掻き立てられる。同時に、隅々まで犯し尽くして、壊してみたくなる。

 

 およそ相反する感情が、一見矛盾していそうな思考が、しかし何故だかそこには共生している。

 

 再び、マグマのような男の欲望が膨れ上がる。

 

「んむっ、う、グっ……」

 

 段々訳が分からなくなって、僕はより暴力的に、腰を振る速度を上げた。

 

 息苦しさに喘ぎながら抵抗してくるシーラの舌を、僕の肉棒が強く押し付けて、押さえつけるものだから、普段より唾液の分泌量が多い。

 

 多量に分泌され続けている唾液の粘性はいつもよりずっと弱くて、同じシーラの口内にも関わらず、全く記憶にない感覚が僕の肉棒を襲ってくる。

 

 してもらうか、自分から動くかというだけの違いが、強烈に印象の異なる快感を与えてくる。

 

 更に、唾液の分泌量が多いということは、そしてそれを貪るように激しく、本能の赴くままにその中を動き回っているという事は、唇と肉棒の間に生じた隙間から、水っぽい唾液が床へと滴り落ちる事になる。

 

 無茶苦茶に激しく暴れられながらも、唾液が床へ落ちるポトっという音が小さく響く度、真面目なシーラはそれを気にするように視線を揺らす。

 

 それがまた、堪らない背徳感を生んでくれるのだ。

 

 また不意に、喉の奥の奥まで亀頭が叩き込まれると、苦しそうな息遣いと苦悶の表情を返してくる。

 

 無意識に、僕の支配欲を満たしてくれる。

 

 慣れない刺激と、珍しい抵抗と、背徳感、そして支配欲の満足感が、それぞれ違った気持ち良さ、心地好さを演出し、相乗効果的に高める、悦楽と快楽のアンサンブル。

 

 それはやはり、三日前にシーラと交わした初めての挿入と同じように、口淫というよりは自慰と表すべき行為だった。

 

「あぁ、シーラ……イイよ。すごくイイ……気持ちいいよ……」

 

「むぐぅっ!んんっ!んむっ……!」

 

 苦しさの為か、シーラがくねりと身を捩る。白いエプロンドレスが、黒いワンピースが、その長い丈の裾が、シーラの動きにつられてふわりと揺れる。

 

 なんて事はない動きなのに、それはやたらといやらしく、淫らなものに映った。

 

 その意図せざる誘いに僕が乗って、更に動きを速く、激しくすると、再び慣れない刺激が肉棒を襲ってきた。

 

 シーラにご奉仕してもらった時には粘っこく絡みつきっぱなしになっていた舌が、今は僕が好き勝手に動き回ることでその追跡性能を発揮できず、くっついたり離れたり、また張り付いたり、という跳ねるような快感が、先端の方へ一気に精を押し上げてくる。

 

「うっ……そろそろ……!」

 

 そう言うと、シーラの瞳が急に物欲しそうな色を宿して、輝くような瞬きと共に僕を上目遣いに見つめてきた。

 

 シーラの苦しそうな表情も、いつの間にか淫靡な悦びをその中に孕んでいて、目尻に浮かぶ涙も興奮を抑えきれないで出てきたもののように見える。

 

 絡みつくような感じではないが、動きと、動きが奏でる水音も、その質を少し変える。吸い付くように、強く喉の奥まで欲望が引き込まれるような感覚と共に、放たれる間際の精液を更に強く引き上げようとしてくる。そしてその吸引に合わせて、水の跳ねるような音から空気の詰まるような音になる。

 

 精液が、陰茎を猛烈な勢いで駆け上がってくる。押し留めようにも、堪えきれず、精液を吐き出す。

 

「ぬぁぁっ……!」

 

「んぐっ!?んんんんんんんんんんんッッッッッッッッ!!!!!!」

 

 シーラの表情が歪んだ。

 

 それもその筈だ。僕の肉棒が跳ねるように暴れながら、白濁の欲液を撒き散らしながら、それでも口内を前後に激しく往復しているのだから。

 

 流石にシーラも、動き回る男性器と精液のダブルアタックには苦しそうに身悶える。

 

 いや、苦しそうなだけではない。

 

 どこか嬉しそうに、悦びを全身で表現するように、ビクビクと激しく痙攣しているのだ。

 

 驚くしかない精神力と体力だ。

 

 口内を二種類の欲望に犯されながら、まさか絶頂しているとは思わなかった。

 

 それを見た途端、僕の動きが無意識に加速する。

 

 夥しい量の精液が、シーラの口内を満たしていく。

 

 何度も、何度も、陰茎が跳ねて、絶えず吐き出され続ける粘性と臭気の強い液体が、簾純な少女を汚し穢して、犯し尽くしていく。

 

 天使の名に相応しい至上の美と可愛らしさを備えた少女を、淀んだ欲望で染め上げていく。

 

 僕は襲い来る脱力感に気力で抵抗し、一心不乱に、快楽を貪るように腰を振り続ける。

 

 シーラの口の端から、彼女の涎と溶け合って気泡の混ざった白い液体が滴っていた。

 

 それもその筈、僕が動きを止めないせいで、シーラは上手く吐き出され続ける精液を喉の奥へと流すことができていないのだから。

 

 そしてそれは、粘性の低い唾液と違って、シーラの首筋を這うようにツーっと降りていく。

 

「んむぅっ!ん、んん!ふぅう……!」

 

 一番勢いよく射放たれた欲望の矢が、シーラの口内に納まると、信じられない程長く永かった精液の迸りが、漸く止んだ。

 

 もしかすると、あのセックスの時に長く射精し続けるのに慣れてしまったのかもしれない。

 

 射精感が止んで、僕が動くのを止めると、シーラが口内に溜まった僕の欲望を、とろけきった淫靡な表情でゆっくり味わいながら飲み下していく。

 

 啄むように、まだ熱を持った僕のモノを優しく包むように咥え込んだまま。

 

 口内の動きが、微かに刺激を与えてくる。それに反応した陰茎が、ビクン、ビクンと跳ねて、精管の中に潜んでいた残党兵も押し出されていく。

 

 シーラが受け止めた欲望が、段々と彼女の体内に染み込んでいくように、口の中から粘っこい気配が減っていく。

 

 最後の最後まで、精液を飲み干して。

 

「……ゴクン。ぷあっ……あ、主様ぁ……」

 

「あ、あぁ……」

 

「ありがとう、ございます……」

 

「え……?」

 

「やっと私を、主様がちゃんと、使ってくれたので……嬉しい、です……」

 

「……やっぱり、マゾでしょ……?しかも、ドが付く……」

 

「そう、かもしれないです……。主様の精液をごっくん、って飲み込むだけで……いえ、もっと言うと、主様の熱くて大きいの咥えてるだけでも、頭の中ふわふわして、アソコもぐしょぐしょになって、軽くイってしまうんです……。主様のを飲んでる筈なのに、主様のに飲まれちゃってます……」

 

「僕の精液は、酒か何かなのか……?」

 

「えへへ……。中毒性という意味では、少し似ているかも、しれませんね……」

 

「中毒なのか……そりゃ、大変だなぁ……」

 

「そのお陰で、私は寂しさも忘れられるんですから……。責任取って、全部全部、私に注ぎ込んでください……ね?」

 

 嬉しいのだけれど、なんというか、天使として残念過ぎる発言であった。




 読了ありがとうございます。お楽しみいただけたなら幸いです。

 前作についてですが、読んでくださってありがとうございます。お気に入り登録、ご感想などもいただけていて、とても励みになります。まだ読んでいない方が居られれば、今から読んでいただけると嬉しいです。

 前作も含め、ご感想を頂けると励みになりますので、簡単なことでも短くても良いので、何か一言でもくだされば幸いです。アドバイスなどに関しても受け付けておりますが、そちらに関しては私の拙い腕ではフィードバックしきれない可能性もございますので、その点についてご了承ください。
 Twitterでも投稿報告をしております。そちらのリプライに下さると、より早く確認・反応できますので、良ければそちらもご確認ください。

 非常に筆の遅い人間ですが、温かく応援していただけると嬉しいです。

 以上になります。冬樹リアでした。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。