戦姫コレクション チートな勇将に転生してイチャラブな旅 作:たくと七星
「まずは名前をお願いね」
面会室で鶴と昌信が机に座って新しくやって来た奴に自己紹介を求めている。そう、今俺にニコリと笑って手を振っているあいつ・・・。
「余所見はしないで、本名は?」
「藤堂高虎です」
高虎は素直に自分の名前を言った。
「職業は?」
昌信が筆で名前を書いて聞いた。
「元は浅井家に仕えていましたがそこを出てからは無職の浪人です」
「ニートだった訳ね」
「おい鶴、傷付くだろ」
あいつだって色々頑張っているんだからその言い方は無いだろう。
「いいんです、本当の事ですから」
高虎は全然気にしてない見てえだな。ある意味達観しているのか。
「それでここへ来た理由は?」
昌信が館へ来た訳を聞く。
「巷で花の都を牛耳っていた悪党が一人の勇将によって懲らしめられ平和が戻ったと聞き、もしやと思い訪ねたのです」
「それがご主人だったって事?」
鶴が言うと高虎は頷いた。
「私はあのお方に助けられました。どうしてもそのご恩をお返ししたいのです。どうか私をご家来の端にお加えいただけないでしょうか?」
ああ、そう言う事か、俺の恩を一途に覚えていて忘れる事も無かった。可愛い顔して義理堅いんだな。
「ご主人、どうします?」
「まあ、俺はいいぜ。そいつの決意は固いしな」
俺が言うと高虎が明るくなるように笑顔になる。嬉しいんだな。
「ありがとうございます、これからは貴方様に精一杯尽くしますね」
こうして高虎と言う新しい仲間が加わった訳だ。俺もこいつの事を可愛いと思ってたし、こう言う奴は嫌いじゃない。何かしてやりたい、守ってやりたい気持ちにさせてくれる、まあ、癒し系みたいな感じだ。
「ご主人様、この方とはどこで出会ったのですか?」
一階の居間で皆がワイワイしている中、イノリがいつ、どこで高虎と出会ったのかを聞いて来た。
「あ、あのな、決してお前を裏切ろうとした訳じゃないぞ。困っていたから・・・」
「それは解っていますよ、側室の一人や二人、咎めるつもりはありませんから、話してくれませんか」
「ああ、実はな・・・」
イスケのために何かを買いに出掛けた時、ごろつき達に絡まれていた高虎を助けて、食を恵んで賃金を与えた事を話した。
「と言う事だ」
「まあ、とても素晴らしい事をなさったのですね」
あ、あれ、イノリの奴、うっとりしてるな。普通こう言う場合って嫉妬されてもおかしくないと思うんだが、それだけ心が広いって事だな。
「そうなのです!」
「きゃっ!」
て、高虎が早速割って出て来たな。
「あの恐ろしい野蛮な方達から颯爽と現れてお救いして下さった方、それが信道様だったのです。だから私、いつか貴方にお仕え出来たらと、ずっと思っていました」
胸に手を当ててあの時を思い出している。高虎から見て俺はカッコ良くて素敵な王子様って奴に見えるのか。
「たっだいま~」
お、この声、五右衛門が帰って来たな。
「おう五右衛門、帰って来たか」
「えへへ、信道、また仕官先が来てるよ」
「そいつは捨てとけ、でまた宝探しか」
「そうそう、館でこんなの見つけたの」
そう言って懐からある物を取り出す。うん、これ、どこかで見覚えがあるな。
「・・・・・・!」
高虎が食い入るように見ている。体を震わせて睨んでいる。
「きゃっ!」
素早く動いて五右衛門からその大判をバシッと取った。
「勝手にこれに触らないで!」
目を鋭くして五右衛門を強く威嚇していた。
「う、うう、ええ~~~~~ん信道~~~~っ!」
五右衛門が泣きじゃくって俺に抱き着いて来た。近くにいた皆も突然の剣幕に驚いている。
「おお、よしよし」
「あ、あの、私・・・」
「高虎、後で話がある」
「はい」
高虎は沈んだように落ち込んだ顔をした。
「びっくりしたぞ、お前があんなに怒るなんて」
館から放れた一本木の近くに高虎を呼んだ。まずは何故あれほど怒ったのかを聞いた。
「ごめんなさい、驚かせるような事をしてしまいました・・・」
しょぼんとしているな。余程俺に怒られる事を覚悟しているんだな。
「そんな顔するなよ、別に咎めている訳じゃねえんだからさ」
「ですが、信道様の気分を損ねるような事をしてしまいました。どうお詫びすればよいのか」
「気にすんなって、戦いで返してくれりゃあいいからさ」
「・・・・・、お優しい方です、信道様は」
「別に、そんなつもりでもねえよ・・・なあ」
「はい、何ですか?」
「それってそんなに大事な物なのか」
手に持っている大判を指差して大事なのかを聞いてみる。
「え?」
「血相変える位だから余程大事な物なんだろう?」
俺が言うと高虎は無言で頷いた。
「・・・初めてお仕えした方にもらった、大切な宝です・・・」
「浅井って家に仕えてたんだよな?」
そう言うと高虎が話してくれた。最初に仕えた相手は浅井家の主、浅井長政と言う人で、初めての戦いの時にもらったのがその大判だと。
「あの方は私の戦いを正当に評価してくれて身分の低い私にこれをくださったのです・・・」
「初給料って奴か。でも、何で出て言ったんだ」
「あのお方のために尽くそうと思っていました。でも・・・」
浅井家に仕えていた時の事を思い出して俺に言った。
『図体がでかいだけのでくの坊女が!』
『長政様がお前みたいな奴を認める訳がねえよ!』
『足軽上がりの女が大判もらった位で浮かれおって』
『卑しい貴様にはもったいない代物さ!』
『正に宝の持ち腐れよ、あっはっはっは!』
俺に聞かせてくれたのは先輩の奴等から心無い暴言を浴びせられ、ひたすら耐える日々だった。
「おいおい、ひでえいじめじゃねえか」
「でも、あの人達も長政様に忠実に使えている人達です。長政様は全ての方達を慈しんで接して下さいました、だから私、耐えていたんです。でも、でも・・・!」
瞳が潤んで涙が流れて来る。そして話は続いた。ある日、先輩の武士に理不尽な嫌がらせをされ、大事にしていた大判を勝手に取られた上に踏みつけられた。そして・・・、
「手を掛けちまったのか・・・」
「・・・・・・・。長政様の大切な家臣を・・・あの方に合わせる顔が無い。そう思い、浅井家を出て行ったのです・・・」
「そうだったか、それでも忘れてはいないんだろう、その長政って奴を」
「はい、去ってしまってもあの方の事は片時も忘れた事は・・・。あ、あの、もうここまでにしましょう、いつまでも昔の話をしても仕方ありませんから」
「ああ、済まない事を聞いちまったな。それに、お前は俺に仕えるんだしな」
「はい、今日から私の主は信道様です、ですが、ただの主従では無く・・・」
高虎のが頬を赤くしてもじもじしている。この仕草は、やはり今でも俺を思っていたんだな。
「高虎、お前・・・」
そっと抱き締めてやる。
「信道様?」
「お前の気持ち、凄く解るぜ。辛い思いをしてお前には凄く同情したい。その苦しさを、俺が消してやりたい」
「信道様、信道様!私、ずっと・・・!」
涙目で俺を見上げて来る。
「ああ、好きだ、高虎・・・」
そっと唇にキスをして抱き締めてやる。こんな天使みたいな奴を誰にも渡すもんか、そんな思いを込めて抱き続けた。