戦姫コレクション チートな勇将に転生してイチャラブな旅 作:たくと七星
戸を開けると、イスケがいるのが解った。俺とイノリの方を向いて鳴いている。
「イスケ、何かあったの?」
イノリがしゃがんで尋ねると、イスケは後ろを向いて歩き出した。その後をついていき、庵の入り口で止まってまた鳴き出した。
「こいつは・・・」
あの狐さんからの恩恵だろうか。何かの気配を感じる。すぐ近くに潜んでいる、そう言う感覚がして来た。
「ご主人様・・・」
「イノリ、お前かここに居ろ」
危険な目に合わせないようイノリには中で待機させ、入り口に歩み寄る。間違いない、誰かがいる、背に差した刀を抜き外へ出たと同時に右側へ切っ先を向けた。
「!」
「ほう、やっぱりな・・・」
思った通りだった。目の前には俺の刀の刃先を銃で防ぐ女がいた。
「さすが、一切の隙や無駄が無い・・・」
「こんな森の中へ女の子が一人、武器を持ってるからには只者じゃあないよな・・・?」
「ふふ、人物眼にも長けているとは・・・やはり思った通りだ」
「どういう事だ?」
「ご主人様!」
イノリが心配になって外へ出て来る。タイミングがいいようにそいつは俺達の前にしゃがんで礼をした。
「貴方はとても武に長けている御仁と見た。先のご無礼、ご容赦願いたい」
「おいおい、どうしたんだよ急に・・・」
「貴方の腕を見込んで頼みがある。きいてもらえないだろうか?」
頼み、一体どう言う事なんだ、まあ、ここで話すのもあれだ、俺はその子を庵の中へと入れた。
「感謝する」
お茶を煎れて彼女に差し出した。
「俺は世良田信道、こいつは二曲輪イノリだ」
「私は井伊直政、名は言えぬがある御仁の指図により腕に覚えのある猛者を探していた。そこで貴方を見つけたのだ」
「なるほどな・・・」
「うふふ~、イスケ、可愛いイスケ・・・」
一方のイノリは俺の隣でイスケをあやしていた。
「ほう、可愛い猫だな」
「ああ、親猫が死んでな、気の毒に思ったイノリが拾って飼うことにしたんだ」
「ほう、貴女が」
「はい、それが何か?」
「私も猫は好きでな、特に黒い猫は幸運をもたらすと言うぞ」
「まあ、良かったわねイスケ」
嬉しかったのかイノリはイスケののど元を優しく撫でた。
「それで本題は何だ?」
「うむ、貴方の事だが、見させてもらったぞ」
「見させてもらった・・・?」
「ご主人様の何を見ていたのですか?」
イノリが過敏に反応してぐいぐいと近付いてきた。
「待て待て、顔が近いぞ・・・」
その子は冷や汗をかいて待ったとばかりに両手を前に出した。
「あ、ごめんなさい・・・」
「私は見た、か弱き乙女を悪漢どもから救い、その日の食事を与え、賃金も差し出す懐の深さと慈悲深さ、そして鍛え抜かれた肉体からは想像の付かない身のこなし、それを見て察したのだ。ただならぬ御仁であると」
「ほう、で、それで俺に何をしろと?」
「単刀直入に申し上げるが、私に付いて来てもらえないだろうか?」
「付いていく?」
「それは何故ですか?」
「場所は花の都だ」
「まあ、あそこは確か・・・」
「イノリ、知ってるのか?」
「はい、御所が置かれた都市で、人々の笑顔が賑わう場所とされていましたが・・・」
「その通り・・・」
直政が事情を説明した。花の都と呼ばれる場所では御所を担当する将軍が力を失い、その重鎮が政治を牛耳り人々を苦しめていると言うのだ。
「それを受けて我等の盟主は義勇軍を結成して立ち上がったのだが敵の大将はあまりにも強大、それを受けて盟主は私を指名し、適当でいい加減ながらではあるが腕のある者を探すよう頼まれたのだ」
なるほどな・・・、と言うか大将さんがどうも人任せで無計画な感じがするのが引っかかるけどな・・・。
「貴方がいれば都の民を救うことが出来るかもしれない、勝手な頼みであるのは十分に承知しているがこの頼み、引き受け手はもらえないだろうか・・・」
そうだな、そちらへ行くとなるとかなりの長旅にはなる。けど、ここにとどまっていても腕がなまって仕方がない気はするよな、それにこうして授かった力を誰かのために使うのはいい事だよな。それに冒険みたいな感じがしていいよな。けど俺一人で決める訳にはいかない。
「イノリはどうする?」
「私は、ご主人様の仰せのままに従います、ご主人様、貴方は貴方の思うように、私は貴方に従い、それに合わせます・・・」
「じゃあ、決まりだな。解った、その誘い、引き受けるぜ」
「かたじけない、ご助力感謝する」
「ではご主人様、旅に行かれるのですね・・・」
「ああ」
「それなら、私もお供します、常にご主人様のお側にいたいですから・・・」
「おう、ありがとよ」
「では、私が道中を案内しよう」
こうして俺とイノリは直政と共にその都へと向かうことになった。持ち物の準備をして、支度を整えてから俺達は旅を始めるのだった。