あー、また1週間が始まるのかー。
小町は、学校の玄関で会った1年のクラスメイトと教室に向かって行った。俺は3年の教室に向かっているわけだが、内心は結構複雑だ。
今までは、早く金曜日の放課後にならないかと呪いながら登校していたといっても過言ではない月曜日の朝だったが(戸塚に会えることは除く)、現在の俺は淫魔導士。
ぶっちゃけると、スキルレベルをあげるため、学校の誰かとアレなことをほんの少ししたいなー、なんて思わないでもないのだ。
いや、マジでクズいのは分かっているんだが、淫気吸収に対する飢えみたいな感覚がまた出てきてるんだよなぁ。
しかし、今の俺は性的ハプニングを以前より多少起こしやすくなってるみたいだから、変に目立ってしまう可能性もあり、ぼっち的には大変複雑な週初めを迎えてしまったわけで……。
なんて思っていると、
「あ!おはよう、ヒッキー!」
「………おう。」
出くわしちゃったよ。いや、まあ教室同じだしね。
由比ヶ浜結衣。
奉仕部のメンバーで、性格が明るいちょっとアホな子。顔も、まぁ可愛いし、何より胸に母性を感じさせる、ある意味今の俺にとって危険人物のひとりといってもいい。
「む。なんか、ふくみ?がある感じ。」
「いや、無理に知らない言葉を使おうとしなくていいから。あれだ、俺はなんでこんなところにいるんだ、学校なんて無くなっちゃえばいいのに。という世間一般の学生が普通に考えることを思っていただけだ。」
「なんか凄いこと考えてた!?」
まったく、こいつは自分の危険性について全然理解してないな。
「もう。それより、一緒に教室行こうよヒッキー!」
「!?…止まれ、由比ヶ浜!」
「?…どうかした?」
くっ、今の俺達は向かい合った状態だが、何故か昨日の小町の時と同じパターンになりそうな気がする!
「いいか由比ヶ浜。そのまま、後ろ向きにゆっくりとさがれ。」
「うぇ!?なんで私が凶悪犯みたいな感じになってるの!?」
バカヤロー!お前はある意味凶悪な武器を目の前に備えてるだろうが!どっちかが何かにつまづいて倒れ込むパターンが想像できないのか、
「うぉ!?」
「へ?…きゃあ!」
後ろから、ドン、という何かがぶつかった衝撃と「あ、わりぃ。」という声が聞こえた。そうですね、ここは廊下だから、突っ立ってたら誰かがぶつかる可能性は充分ありますよね。
そして俺は前に倒れそうになったが、なんとか踏ん張ることができたようだ。
「な、な、な、な。」
しかし、わずかに力及ばず、俺の顔はとても柔らかくて良い匂いのする大きなクッションに埋もれてしまった。
なんか上から壊れたロボットみたいになった由比ヶ浜の声が聞こえる気がするが気のせいだろう。しかし、一家に1つは欲しいな、このクッション。
「い、いつまでそうしてるの!バカヒッキー!」
「うわ!?」
俺を押し返した由比ヶ浜の顔は物凄く赤くなっていて、胸を腕でガードしながら身を引いていた。くそ、やっぱりこんな展開になっちまったじゃねえか。
「ま、待て、落ち着け由比ヶ浜。これは不幸な事故で…。」
「言い訳すんなし!もう、ヒッキーのエッチ!」
そう言って由比ヶ浜は教室の方に走って行ってしまった。残った俺の周囲には、一部始終を見ていた奴らが俺を見てヒソヒソと何か話している。ああ、早速悪目立ちしちまったなぁ。
結局、あれから由比ヶ浜とは一言も話さず放課後を迎えた。まぁ、話す方が少ないからいつもとあまり変わらないんだが。たまにこっちを見ては、顔を赤くしてそっぽを向いていた。
3年生になってもクラスの顔触れはほぼ変わらず、休み時間に話しかけてくれる戸塚は俺の癒しだ。
由比ヶ浜は三浦達と教室を出て行った。どうやら部活には来なさそうだな。
「さて、じゃあ行くかね。」
今の俺にとっての危険人物その2が待ってる筈だ。
「うす。」
「こんにちは、比企谷君。大丈夫?いつもより目が腐っているようだけど。今更あなたの不遇さを嘆いてもどうしようもない事なのだから、思いつめてはダメよ?」
「まったくだ。困った部長さんをどうにか出来ないかといつも嘆いてるんだが、そろそろ諦めた方がいいかもしれん。」
雪ノ下雪乃。
部室に入った俺をいきなり罵倒するのは軽いジャブで、その知識量からくり出される毒舌の数々は俺を17分割しちゃうまである。綺麗な黒髪ロングと完全美少女な姿は、まさしく氷の女王である。
「由比ヶ浜さんは用事があって来れないそうよ。」
「みたいだな。小町も用があって先に帰ったし(まぁ、先に帰ってもらったんだが)。」
奉仕部のメンバーは俺と雪ノ下、由比ヶ浜に、今年入部した小町。あとは準部員的な生徒会長がいないでもない。あいつ、段々生徒会やサッカー部より奉仕部にいることの方が増えてきてる気がするんだが。
本当はさっさと帰りたかったところだが、来ないと平塚先生や雪ノ下がうるさいからな。まぁ、机の端っこ同士で黙って読書をしてれば何も起こらんだろ。
と、思っていた時もありました。
もうちょいで今日の部活も終わりかと思っていたら、バキッという音と「きゃ!」という声が聞こえ、見ると雪ノ下が床に尻もちをついていた。
「おいおい、大丈夫か?」
「ええ。どうやら椅子の脚が劣化して折れてしまったようね。」
マジか。どんな偶然だよそりゃ。鉄製の脚がピンポイントに劣化するなんてあるのか?実は雪ノ下って結構おも、
「何か?」
「な、何でもありましぇん!」
く、かんじまったじゃねえか。何?エスパーなのこいつ。
「ったく大丈夫かよ、うげ!?」
「え?」
完全に気を抜いていた俺は何気なく雪ノ下に近づいてしまっていた。そして何もないところで足を滑らせてしまう。
倒れる瞬間、壊れた椅子が危ないと思って左手で押しのけ、右手で床についたが支えきれず、すぐさま左手を戻すも間に合わずに雪ノ下を押し倒すように倒れてしまう。
「きゃあ!」
左手は雪ノ下の右胸をがっしり掴み、顔をお腹にうずめるようにおおい被さってしまった。それにしても女の子はどうしてこんなに良い匂いがするんだ。小ぶりの胸も触り心地はなかなか……。
「さっさとどきなさい!」
「ふげ!?」
顔の横を思い切り叩かれ、俺は床に転がされる。
見ると、顔を赤くし、眉をつり上げた雪ノ下がこちらを睨んでいた。
「つ、通報されたいようねエロ谷君。女子のお腹に顔をうずめるばかりか、胸を揉むなんて。」
「お、落ち着け雪ノ下!わざとじゃなかったんだ!足を滑らせただけで…。」
「犯罪者はそう言うのよ。安心しなさい、面会には行ってあげる。」
「完全に捕まってるじゃねえか!いいから話を、うぉ!?」
「な!?」
テンパってた俺は、また不用意に雪ノ下に近づこうとして、体勢を崩して倒れ込んでしまった。
「ひゃん!」
「ふご!?」
雪ノ下の足をどかし、スカートの中でパンツに顔を押し付けるという漫画のような倒れ方で。
「〜〜〜〜〜!」
「げふぅ!?」
俺から離れ、上半身を起こした俺の頬からあごにかけてを掌底で思い切り打ち抜き、雪ノ下は荷物を持って部室から走って出て行った。
俺はそのまま崩れ落ち、しばらく床に倒れていた。明日、部活休もうかなぁ。