※この作品はR-18です。

果てなき夜で、貴方に愛を   作:毒蛇

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ゆゆゆにR-18全然ないじゃん! よしエロいの書こうの精神。


首輪編
第一話 酒の所為にする奇術師


 ――酒という物がある。

 

 人類史において最古から存在している向精神薬であり、酒がもたらす酩酊は人を快楽に導く。

 ストレス発散の一つという認識ではあるが、迷惑行為や犯罪行為、嘔吐を招くというリスクもある。

 酒を飲み得られる酩酊は往々にして社会から忌避されがちで、基本的に俺もあまり飲まない。

 

「まあ、だから家で飲むんだけどな……」

 

 喉にわずかな苦みが滑り込む酒の味を堪能しながら、片手に持った缶を揺らした。

 

「――――」

 

 どこか脳がボンヤリとする感覚、酒という波に流されていると気分が向上していく。

 とはいえ、俺も中身はおじさん越えお爺さん未満の精神年齢ではあるが見た目は学生だ。

 もちろん酒の飲み過ぎは成長を妨げるという事は理解しており、墓参りぐらいでしか飲まない。

 

 根本的に未成年が飲んでは駄目だと言うが……俺は勇者だ。

 勇者とは危険を冒す生き物。つまり酒=危険という公式が出来る。

 すなわち勇者が飲むに相応しいという答えこそが正しいのだと頭脳が導いた。

 

「――――」

 

 未成年の俺が酒を飲むには、変装してどこか店で売っている物を買うというリスクを冒す。

 だから普段はあまり飲まないで貯蔵しているが、最近はあまり眠れずについ持ってきた。

 そこで見る夢は既に終わったことなのだが、それを未だに割り切る事が出来ていなかった。

 

「――ああ」

 

 気づけば空になった缶をテーブルに置き、震える両手で顔を覆っていた。

 こちらの世界で世話になっていた、数少ない信用できる両親が死んだ。死んでしまった。

 戦いの中で犠牲は付き物だと割り切っていたが、それでも時折酷い吐き気に苛まれる。

 

 まだ2月も経過していないのに、彼らの冷たい温度があの時触れた手のひらに残る。

 ここ最近安定していた己の精神も寝付けない所為か鬱になり気味と最悪の状態だ。

 

「……」

 

 先日、勇者たちの散華した供物は元に戻り、表面上は元通りに戻った。

 だが戦いの過程で一般人にも多くの死傷者が出てしまった。その中には両親もいた。

 

 一時期は荒れていた俺の家は既に掃除を終わらせ、壊した物も補充した。

 そうして再び元の生活に戻ったというのに、この家は随分と寒く感じ、また酒缶に手を伸ばす。

 

「――?」

 

 そんな時だった。

 家の玄関からチャイムが鳴り、来訪者がアポイントもなく訪れた事を俺は知った。

 だが今日は誰かが来る予定も、宅急便が届く予定もない。家族から便りも二度と来ない。

 

「―――っ」

 

 そんな事を思い、何故か目の前が熱い滴で歪む。

 申し訳ないが玄関の向こうにいる誰かには帰って貰おうと手で滴を拭い思っていると、

 

 ――ガチャリと扉が開く音がした。

 

 居留守をするべく声を潜めていたが、その音に思わず声を上げそうになる。

 聞き間違いかと思い、酒でわずかに酔い鈍い感覚ながらも耳に神経を集中させる。

 空き巣の可能性を考え咄嗟に武器を探したが、その考えはすぐに違う事に俺は気づかされた。

 

「亮ちゃ~ん、どこー?」

 

「なんだ、友奈か……、友奈?」

 

 結城友奈。家族以外にこの家の鍵を持っている世界で唯一の人物。

 俺が唯一自分の意志でこの少女を信じたいと思い、渡した鍵で家に入ってきたのだろう。

 だから、ただいまーと呼ぶ赤い髪の少女の声音に、安堵と明白し難い感情が混ざりながら、

 

「亮ちゃん、どこー?」

 

「ちょ、ちょっとま――」

 

「あ、亮ちゃん。ごめんね、心配できちゃ――」

 

 リビングに入ってきた友奈の声音が止まった原因は判っている。

 薄紅色の瞳が映す物。テーブルの上にある無造作に置かれたつまみと大量の酒、酒、酒。

 

「――――」

 

 この数秒にも満たない時間で俺の心臓は鼓動を止め、酔いが消えたような気がした。

 

 

 

 ---

 

 

 

「えっ、これは……なに?」

 

「――――」

 

 パチクリと目を瞬かせる友奈は目の前の状況が掴めていないらしい。

 一方で、何故一直線にリビングに来たのかと逃避していた頭脳がこれを好機と見たらしい。

 己が心配で来たらしい向かいに住む可憐な少女に対して、俺は適当な事を語ることにした。

 

「お酒……?」

 

「――に、似たパッケージのジュースだよ」

 

 思えば、彼女が来る時に酒を飲んでいた事はなかった。

 基本的に俺はあまり飲まないという事もあるのだが、いつもなら来てもすぐに隠せる自信がある。

 

「じゅ、ジュース? でも、この匂いって……」

 

「いや、違うって。最近は、子供でも気分優先で飲めるようにギリギリまで似せようとするメーカーが増えたんだと。甘酒みたいな感じのじゃなくて、なんかこう……、見た目にこだわる意識が高い人の需要が増えたらしいんだって。もちろん中身は普通のジュースなんよ!」

 

 しかし現在痴態を晒し、若干自分でも何を言っているか不安になる言い訳を口走っている。

 何が夜の奇術師か。酒の所為で普段は冷静なはずの頭が既に就寝してしまっているらしい。

 だが今更吐いた言葉は引き返せずに、真面目な顔でテーブル上に広がる証拠の説明をする。

 

「……ホントかな~?」

 

「本当さ」

 

 説明をしながら、ジト目を作る少女をソファに座らせる。

 そうして物は試しと、俺は可能な限り素早く口当たりが良く飲みやすい酒を作り、勧めた。

 やや疑惑の残る表情だが、素直な少女である友奈は差し出したグラスを恐る恐る手に取る。

 

「甘くて美味しい……!」

 

「――。だ、だろう?」

 

「これ、何ていうジュースなの?」

 

「カルーア・ミルクっていう牛乳が入ったジュースだよ」

 

「そうなんだ!」

 

 桃色の唇が触れ、徐々に中身が減っていくガラスのコップ。

 淡茶褐色のソレは、コーヒー・リキュールのカルーアを牛乳で割ったカクテルである。

 氷を入れたタンブラーを両手で持ち、小動物のように無邪気な笑顔で友奈は飲んでいく。

 

 そのほんわかとした光景を尻目に、本当にアルコールの度数が高い物を隠していく。

 バレているのか不明だが、ほんわか少女の眼を誤魔化しながら最低限の偽装を終わらせる。

 絶対バレてる! 諦めろ! と叫ぶ胸中を無視しながら、次のカクテルを友奈に持っていく。

 

「――あ、あの、亮ちゃん。その……」

 

「こっちも飲んでみて。多分口に合うと思うから」

 

「……本当だ!」

 

 適当に家にあった焼き菓子と、今度はカシスオレンジ等の甘めの物を追加していく。

 最初はやや警戒心があったらしいが、それでも飲みやすく彼女の舌には合ったらしい。

 普段飲むことがない分、不思議な味わいと、わずかな酒精が彼女の頬を緩ませていく。

 

「ねえ、りょうちゃん……」

 

「なんだい?」

 

 そうして多少状況が落ち着き、友奈がグラス二杯ほどカクテルを飲んだ頃。

 彼女の隣。一緒にソファに腰掛けて菓子と共に酒を飲んでいると、友奈の吐息がこぼれる。

 桃色の唇が俺の名前を呼び、そのいつもよりも舌足らずな甘い声音に背筋がゾクゾクする。

 

「今度、勇者部のみんなとも、こうしてパーティーしたいねぇ……」

 

「そうだね……」

 

 いつだったか、犬吠埼姉妹は酒成分がわずかに入っていたケーキ程度で盛大に酔っていた。

 妹は笑い上戸に、姉は泣き上戸という傍目から見る分には楽しませてくれる少女たちだ。

 絡まれると面倒だが、その時は夏凜に二人を押し付けて動画に収めたい。きっと楽しいだろう。

 

「――まあ、でもこうして友奈と二人だけっていうのも俺は好きだけどな」

 

「んへへ……私もだよ」

 

「……」

 

 素直な気持ちを吐露しながら、隣にいる可憐な少女の顔を窺う。

 緋色の少女は酒の所為か、先ほどよりも頬を朱色に染めながら無邪気な笑みを浮かべている。

 機嫌が良いのか、何が楽しいのかこちらにもたれかかりながら、スンスンと俺の匂いを嗅いでいる。

 

「ねえ、りょうちゃん」

 

「なに?」

 

 似たような会話が繰り返され、その度に甘いお酒を飲んでいく。

 他愛無い会話だったが、それでも友奈と二人だけの空間に心が麻痺しかけていた。

 そんな状態ながらも擬音を絡めずに、友奈は拙くも何かを俺に伝えようとしていた。

 

「りょうちゃんが悲しい顔していると、私も悲しくなるから……。だから、その、困った事があったら言ってね。なんでもするから」

 

 きっと今日この家に来たのは、俺の事を親身に心配してくれたのだろう。

 そう思うと心が温かくなるのを感じた。熱があるかのように薄紅の瞳を潤ませる少女。

 その優しさが心に沁み込み、心臓が早鐘のように鳴る中で、俺は感謝の気持ちを口にした。

 

「ん? 今、『なんでも』っていったね」

 

「ふぇ?」

 

「……それじゃあね~」

 

 ふと彼女の服装に俺は目を向けた。

 時々見る柔らかな桃色のカーディガンとプリーツスカート、黒のハイニーソという洋装。

 何となくスカートとニーソの間から覗かせている少女の健康的な柔肌を指の腹でそっとなぞる。

 

「そんなところ……ひゃう!?」

 

「――――」

 

「あっ」

 

 くすぐったそうに身をくねらせる少女を見ながら、無言で彼女の太ももに手を這わせる。

 健康的に引き締められた彼女のもも肉を手のひらで弄り、内ももにゆっくりと手を伸ばす。

 普段触られる事のない部分を触ると慌てて友奈は両脚を閉じて俺の片手を柔肌で封じ込める。

 

 慌てた表情の友奈をそっと抱き寄せると、力が入ったのか俺の手を挟んだ太ももを締め付ける。

 自分でも驚きの行動だが、きっと酒の所為だろう。そういう事にしておこう。そうしよう。

 

 この瞬間、俺は思考を放棄した。

 

「あのっ、りょうちゃん! 何を……あう……ッ」

 

「触りたいから触っているだけだけど……? 駄目なら抵抗してよ」

 

「そんな……あ……ッ」

 

「――友奈って抱き心地良くて、好きだよ」

 

「……ッ!」

 

 日常的に俺と友奈の距離感は密な為か、腕の中でモジモジとする少女の抵抗は少ない。

 ときおり友奈が朝に俺を起こす為に来る時があるが、布団の中に連れ込んだ時の感触は最高だ。

 友奈の柔肌と体温、匂いや反応は俺に活力と癒しを与え、気持ちが朗らかになる事は多い。

 

 友奈で遊ぶ……わけではなく、抱き心地の良い友奈の身体を弄っていく。

 抱き寄せた友奈の赤色の短めな髪をそっと撫でながら、彼女の後頭部に目を向ける。

 彼女の癖なのか、いつも作るショートポニーテールはわずかに左側に寄っているが、

 

「あ……っっ」

 

「あまじょっぱい」

 

 重要な所はそこではなく、ポニーテールにより露わになる彼女の魅力的な白いうなじだ。

 酒を飲み体温が上がったのか、それとも興奮しているのか、赤面する少女のうなじに汗が滲む。

 せっかくなので彼女の汗を舐めてみるべく舌を這わし、その行為に友奈から吐息がこぼれた。

 

「そんな……、なめ……ッ」

 

「ふ――」

 

「はひゅ……っ!」

 

 うなじや首筋を舐め、唾液で濡れた部分に息を吹きかけると、不意にビクリと腰を浮かせた。

 いつものソフトな触れ合いの延長で、ときおり寝ている時にも似たような事をした気がする。

 少しずつ敏感になっていると思っていたが、今ほどの反応は見た事が無く、狂喜に頬を緩める。

 

 自らに回された腕に縋るように力を込めて、荒い息で友奈は必死に俺の腕を握る。

 興奮の所為か心臓が少し痛くなるほどに鳴るのを感じながら、形の良い耳に口を近づける。

 耳まで赤くなる魅惑的な姿、抵抗は出来るはずだが、随分と抵抗の少ない赤面する少女に囁く。

 

「――友奈ちゃんは可愛いな」

 

「……っ」

 

「最高に綺麗で可憐な勇者だよ」

 

「あぅ……」

 

 囁き声の一つ一つに可愛らしい反応を示す少女。

 その姿に自分でもクツクツ……、と意地の悪い笑みを浮かべているのが分かった。

 同時に、先ほどの『なんでも』の内容を決めて、そのまま友奈に小さな声音で囁く。

 

「ねえ……友奈」

 

「にゃに……」

 

「パンツ見せて」

 

「えっ……」

 

「なんでもって言ったでしょ?」

 

 直球で欲望の塊のような要求を放つ俺に対して、薄紅の瞳を揺らし戸惑いの声を上げる。

 そっとお腹に手を這わして、目の前に立つように言うと、震えながら友奈は目の前に立った。

 下劣でもギルティでも何と言われようとも、今俺は友奈ちゃんに対する要求を貫こうと思う。

 

 友奈の言う、“なんでも”という勇者の言葉にいやらしい意味はなかったのだろう。

 当然、俺を心配してきてくれたのは解っている。だが俺は大丈夫だ。友奈がいる限り。

 

「頼むよ、友奈ちゃんのが見たいんだ」

 

「……ぅ」

 

 多分真面目な顔で要求する俺は、紳士の皮を辛うじて被る変態でしかない。

 否、男は変態である事が男なのだ。変態で何が悪い。変態でない男はもう人類ではない。

 

 この瞬間、変態というコマンドをキーに再起動した冴えた頭脳が確実にショーツを見る為の戦略を練りあげる。幼稚園で激しい運動をした際に見えた場合に対応する練習だとかなんとか。

 そんな卑劣で陳腐でつまらない姑息な考えを俺は捨てて、漢として向かい合い、口を開く。

 

「見せて」

 

「……ん」

 

「あ、待って」

 

 案外簡単に承諾され、スカートのファスナー部分に、赤面する友奈は手を掛ける。

 その行為に対して、欲望よりも小さな怒りが上回り、彼女の細い手を掴み無言で頭を横に振る。友奈は優しい天使のような少女ではあるが、残念ながら男のロマンを解っていないので丁寧に、丹念に、彼女に知識を植え付ける。

 

「たくし上げて」

 

「ほぇ……?」

 

「スカートを持ちあげて見せて」

 

「――! ……変態さんだね、りょうちゃんは」

 

 何故ここまでこだわるのか。変態だからといえばそうだが。

 彼女と一緒に過ごしていると無防備ゆえに自然とパンツが見える時は確かにある。

 だが、それは無邪気ゆえの行動に過ぎない。他に男がいた場合はそんな事は俺がさせないが。

 

 ――要するに俺は、友奈の意思でショーツを見せて欲しかった。

 

 真摯な想いが届いたのか。それとも普段の仲の良さか、酒の所為か。酒の所為にしよう。

 ともかくも、羞恥による涙を目尻に浮かべ、恥ずかし気な表情の中でスカートに手を掛ける。

 震えながらゆっくりと短い丈のスカートをたくし上げる友奈の表情を眼球に焼き付ける。

 目端に羞恥の涙を浮かべる友奈の姿は、どうしてこんなに心を揺さぶるのか。

 

「あんまりこっち、見ないでよ……」

 

「――――」

 

「うぅ……ッ」

 

 俺の視線が気になるのか、必死に目を合わせようとしない友奈。

 その表情を見ながら、スカートを両手でたくし上げ露わになる桃色の下着に目を移す。

 

 今までも似たような下着は見てきたが、恐らくだが新品のパンツを履いているのが判った。

 最近買ったばかりの小さなリボンが前についているタイプのショーツに思わず手を伸ばす。

 情欲の炎に突き動かされた指は、桃色の布地に浮かぶ小さな湿り気を帯びた部分に触れた。

 

「この染みはどうしたのかな?」

 

「あっ……!!」

 

 指で彼女の下着に浮かぶ染みを優しくなぞると、突然の刺激に友奈は腰を引かせる。

 粘りつきのある液体は明らかに尿ではなく、逃がさないと柔らかな桃尻を片手で掴み押さえる。

 そのまま友奈のショーツ越しに浮かぶ蜜口を弄り回す度に、指に生ぬるい愛液が付着する。

 

「ほら、腰引かしたら駄目だよ。許しません」

 

「まってまって! 本当に……、りょ……ぁ、ぁっ……ッ!!」

 

 嫌々と首を横に振り、己の股間に伸びる手を必死に友奈は取ろうとするが強行する。

 見せて貰ったお礼に気持ちよくしようという傲慢な気持ちで脚が震えだす友奈に囁く。

 

 クチュクチュとわざと水音を響かせる。

 秘部を包み込むように弄る俺の腕に触れ、いやいやと首を振る友奈の口端から涎が零れる。

 

「も、もう、ほんと……、だっ、でちゃ……!!」

 

 赤面し、瞳を潤ませる赤い髪の少女。

 少女の恥部を弄りながら、膣口の上、包皮に隠された肉粒を指で剥く。

 それだけで――、

 

「ぁぁ、ぁっ、ああぁ……ッッ!!」

 

 その瞬間、ビクリと身体を硬直させて、友奈は床に膝を付いた。

 両手で俺の肩を掴み、胸板に熱い吐息と滴を垂らしながら、その細い身体が崩れ落ちていく。

 男を情欲に燃えさせるような艶のある声を桃色の唇から出す友奈の背中をそっと抱きしめる。

 

「は――、あ……」

 

「感度良いね。……昨日も一人でこんな事してたの……?」

 

「――! ち、ちがっ……」

 

「友奈ちゃんはエッチだね」

 

「私は……」

 

 荒れた息が整うのを待ちながら、そっと友奈の乱れた髪を手で整える。

 そうして囁くように引っ掛けでそんな事を言うとどうやら当たりだったらしい。

 友奈の弱みも握ってはいるが、ストーカーのように四六時中監視しているわけではない。

 

「いいんだよ、我慢しなくて」

 

「……」

 

「俺の前でだけ、我慢しなくても良いんだよ」

 

「亮ちゃん……」

 

 未だに赤い顔で潤ませた瞳には俺が、俺だけが映り込んでいる。

 彼女も勇者である前に『普通』の女の子なのだ。普段から悪戯すればそうなるだろう。

 

 だから何も恥ずかしがる事はない。

 『俺の前でだけ』全てを曝け出して欲しいという想いは、一層深まる。

 

「好きだよ、友奈」

 

「――――」

 

 こちらを見上げる友奈の唇を指で塞ぎ、小さく微笑む。

 この世界の状況は相変わらず酷いままで相変わらず地獄の中の箱庭だ。

 だが俺には友奈がいる。彼女がいる限り俺は戦えるだろう。死ぬまで、死んでも。

 

「今日は、泊まっていくだろ?」

 

「ぁ、……うん」

 

 コクリと頷く友奈に、その言葉に俺は頬を吊り上げた。

 幸いにも既に週末に入り学校は休みで運よく今週は部活動もない。邪魔はない。

 何だかんだ中学生の男女が同じ屋根の下という状況だが、結城家は完全に黙認している。

 世間的に見れば加賀家は名家で実際に莫大な金はある為、嫁ぐ先としては安泰だろう。

 

 そんな事を思いながら、そっと友奈の力の抜けた身体をソファに預ける。

 最後に小さく指の腹で濡れた布地を撫でると、小さく吐息をこぼす友奈に目を向ける。

 

「とりあえず、友奈はここで休んでて……、それで」

 

「亮ちゃん」

 

「……ん?」

 

 

 

 

 

 

 

「――ずっと一緒にいようね」

 

 

 

 

 

 

 

 そう告げて、小首を傾げて柔らかく微笑む友奈に対して、俺は曖昧に笑い返すだけだった。

 まずはリビングの上にある酒類は処分してしまおうとそちらに意識を向けてしまっていた。

 だから、薄紅色の瞳に宿す感情を見る事は無かった。

 

 

 

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