乃木園子とは長い、本当に長い付き合いだ。
勇者部よりも、東郷よりも、友奈よりも、時間を共にしてきた。
第二の人生で初めて手にした友達への思い入れは深く、彼女にとっても俺という存在は物珍しく親しんでくれたのだろう。殆ど毎日一緒で、春も夏も秋も冬も共に過ごしてきた。
前世ではいなかった幼馴染の令嬢と多くの事を共有した。
容姿端麗ながらも常に不思議な行動をする彼女に興味の種は尽きなかった。
彼女の両親ですら不安視していた園子の奇行についていけたのは俺だけ。
そんな謎の自尊心と共に日々腕を磨いては奇術を披露していた。
あの頃必死に努力していたのも、園子に見て欲しい、喜んで欲しいという思いが確かにあったからだ。
「ずっと一緒にいたいな~」
園子は名家である乃木家の令嬢だ。
俺は乃木家の分家、両家の間柄は悪い訳ではないが、子供の純粋な想いは続かない。
権力や神樹、子供では太刀打ち出来ない理不尽で俺と園子は引き剥がされた。
再会したのは数年後だった。
だから初めて園子(小)と出会った時は驚いた。
『かっきーが大きくなってる! かっきーがかっきー先輩になっちゃった!』
アルバムにない、記憶にもない姿。
鷲尾須美や三ノ輪銀だけが知る、俺の知らない園子。
別に大きく変わった訳ではない。
少し身長が伸びたとか、身体的な成長のことを言うのではない。
『わっしー!』
『ミノさ〜ん!』
俺の知らない表情で園子は友達の名を呼ぶ。
年相応の少女として同性の少女と親し気に遊ぶ姿は、無邪気に笑って、気ままに眠って、変わらず天才肌なのは変わらず、しかし俺とだけ遊んでいた彼女とは違って見えた。
『かっきー先輩!』
彼女はいつも俺のことを「先輩」という敬称を付けて呼んでいた。
その事に少しだけ壁を感じた。
あの頃のように甘えるし、抱き着いてくるし、笑みも見せてくれる。
でも、彼女にとっての「かっきー」は俺ではないのだと感じていた。
小さい事を気にするなと言われるかもしれない。
他人にとっては鼻で笑うような、凄くどうでもよい、些細な事だろう。
「……私ね……かっきーを私のかっきーじゃないって思ってたんよ」
「────」
「ごめんね」
初々しさの残る口づけは柔らかさとフルーツの味がした。
纏った衣を脱ぎ、一糸まとわぬ肢体が露わになる。
彼女の裸体は幾度も見た筈なのに、美しさに目が惹かれる。
将来の希望が明るい乳房から曲線を描く美尻、生えかけの恥毛とすらりとした腿。
白い肌にブロンドヘアがさらりと揺れ動き、自然と息を呑む。
──いつだって彼女は俺の目を奪う。
硬直する俺を他所に、少女の動きに躊躇いはない。
大胆に、こちらの思考も感情も気にすることなく、しかし繊細な動きで距離を縮める。
「────」
「────」
もともと密着しているに等しい距離すらなくなった。
甘いミルクのような体臭が鼻孔をくすぐる中で、唇を重ねる。
ふに、と柔らかな唇が触れ合うだけの友愛を感じさせるキスの合間に、
「ちょっと懐かしい見た目ってだけなのに、我ながら現金だよね」
「園ちゃん」
「かっきーはかっきーなんだから」
「────」
吐息と共に少女の声を聞いた。
遠い目で懺悔するように呟く園子の頬に掌を当てる。
向かい合った状態で、彼女は俺を見下ろした。
彼女の長い髪の毛を指で梳きながら、焦点が合うのを待つ。
きめ細かな肌、柔らかな頬を指で突いていると、話題を変えるように目を逸らされる。
小さく口を開くと、タイミングが良いのか悪いのか滑らかな腹部が小さく音を鳴らす。
ほんのりと頬を染めながら、形の良い眉を園子は顰める。
「お腹減ったんよ」
「……クッキーあるよ」
「やった~。ちょっと休憩しよっか」
「早くない?」
マイペースな彼女にはいつだって振り回される。
思わず弛緩させられる園子に頬を緩めては、菓子を差し出す。
指で摘まんだクッキーを、それが当たり前だと言わんばかりの態度で雛鳥のように口を開けて待つ彼女に食べさせる。
目を輝かせる園子は小さく頷いて咀嚼する。
「うん、美味しい。かっきーのクッキーだ〜」
「────」
「かっきーのクッキーだ〜」
「ふふっ、爆笑必至だね」
「本当にすっごく美味しいよ? ちょっと大人な感じで紅茶か……ううん、コーヒーとかが欲しくなるような味わい。わっしーのぼた餅と同じくらい美味しいけど、どこで作り方を覚えたの?」
「……秘密。もっと食べて大きくなれ」
お袋の味でも故郷の味という訳でもない。
前世で唯一覚えていたレシピという訳でもない。
この世界でもどこでもない、俺だけが知っている味は、唐突に食べたくなって再現した。紆余曲折を経て作った味は少しは近づけただろうか。
そんなことを思いながら彼女の頭を撫でると、園子は追及をやめる。
「いつか教えてね」
「……ああ」
薄暗い部屋で僅かに開かれたカーテンの隙間が光源だ。
室内は吐息と汗と、生暖かい空気で充満している。
桜色の唇にクッキーを運び届けると指にその艶やかな唇が吸い付く。
美味しそうに食べる彼女はジッと俺に目を向ける。
何かを言いたげなその眼差しは、やがて言葉として放たれた。
「かっきーはその姿は嫌いなの?」
「それは……」
「私は好きだよ。大好き。またこうして会えたから分かる。見た目とか力があるとか無いとか関係ないんよ。いつだって私を想ってくれてるかっきーが私は好きだから」
「────」
「どんなかっきーだってその時の私が、過去の私が、今も、明日も、ず~っと愛してるから」
「────」
「だから泣かないで」
「泣いてないって」
「泣いてるよ~……ずっと泣いていて」
「────」
「ずっと誰かの名前を呼んでるもの」
もう喋らなくていいからと、小さな唇を奪う。
処女雪に触れるような口づけは、やがて舌が絡みつく。
──どこかコーヒーの風味がするキスだった。
ちゅう、ちゅうと吸い付くように唇が肌に触れる。
胸板と薄い胸肉を擦り合わせ、じゃれるように耳や首筋、乳首に吸い付いては甘い刺激に身をくねらせ、呻く。
キスの雨が降る。髪に、頬に、唇に。
俺の反応を確かめるような素振りを見せる園子の背中を撫でる。
「ひゃぁ!」
滑らかな肌を指で撫で上げると彼女の背が跳ねた。
あと数年もあれば、みずみずしい肉果になるだろう乳肉を揉み解す。
掌に収まるサイズを揉みながら彼女の切なげな表情を視界に収める。
「ぁ……っ」
小さな喘ぎ声を漏らしながらも自らの胸元に彼女は俺を抱き寄せる。
俺もまた園子の細い腰を抱き寄せて、下腹部を重ねる。
挿入はせず、彼女の秘部で怒張を擦らせる。
俺の上に跨った園子は思い出すように腰を動かして、
「こんな感じだよね……んっ」
「無理しなくて良いよ」
「無理なんかじゃない……あ、あれ?」
「────」
「入らない……んっ……」
ん、ふ、と少女の息遣いが響く。
掴んだ肉棒を自らの秘所に宛がうも中々入らない。
腰をくねらせて、怒張を逃がす度に熱い吐息を漏らす園子。
色付いた陰唇は熱く濡れ、肉棒を愛液で光らせる。
「んん……っ……ぁ……んっ、ン」
いつの間にか彼女は素股に方針を変えていた。
恥ずかしそうに腰を動かし、彼女は赤らんだ顔で荒い呼気を漏らす。
俺も腰を動かし吸い付く媚肉に剛直を擦らせる。
にちにちと濡れた媚肉が竿を上下し、新鮮な蜜液がシーツに垂れた。
快楽を求めた結果、揺れ動く腰。
幼さの残る表情に確かな女を見せながら、揺れる瞳が俺を誘う。
小さな肉芽が亀頭に擦れる度に確かな嬌声。
徐々に甘く蕩けた表情に変わる少女は再度自らの腰を持ち上げる。
細い指が肉竿を掴んで、自らの秘所へと先端を触れさせる。
ゆっくりと園子の蜜肉を怒張が貫いていった。
「ぅ、ァ、ああっ──!!」
園子が声を上げて大きく瞳を見開く。
俺の肩に爪を立て、結合したことに喜びの涙を流す。
怒張に吸い付く肉壺の締め付け。
柔らかな唇を噛み締める彼女は繋がったまま、俺の上に倒れ込む。
繋がることに力を使い果たしたのか、彼女は静かに耳元で囁く。
「……かっきー」
「うん?」
「あと、任せていい?」
「勿論」
ぐるりと体勢を入れ替える。
園子を下に、俺が彼女に覆い被さる形だ。
サンチョの枕に彼女の頭を乗せるとジッと俺を見上げる瞳。
揺れ動く瞳は、一瞬でも恥部から怒張を抜くことを許さない。
その眼差しは中途半端な行為は絶対に許さないと告げていて、
「園ちゃん、ハグしようぜ」
「……ん~」
強張った身体を解すように全身で抱擁する。
やや汗ばんだ少女の身体から力が抜けるまで耳や唇にキスをする。
ふわりとした髪の毛が頬をくすぐり、甘い香りが肺を満たす。
「昔……こんなことしなかった?」
「流石にここまでじゃなかったけど。あれだろ? 一緒にお風呂に入った時とか」
「一緒に洗いっこしたりとか? 楽しかったな~」
「よく覚えてるな」
「忘れないよ」
園子の掌が俺の頬に添えられる。
美女の片鱗を既に見え隠れさせる彼女の瞳は俺を見上げる。
乳房と胸板が擦れ合い、上下に動く腹部を重ね、結合部で繋がる。
髪の毛を触り合い、肌を重ねる。
指を握り、唇を重ねて、互いの体温を確かめる。
腰を動かしている訳でもないのに、不思議と快感があった。
性行為を覚えたての学生が貪欲に求める末に得られるのではない。頭の先から爪先まで全て、余すことなく、互いのことを知っているからこそ得られる快感だ。
──甘い微熱が身体に熱を灯す。
「……動いていいよ」
汗が張り付いた前髪を払いながら彼女は言った。
此方を安堵させるような微笑を浮かべて、小首を傾げる。
「いくよ、園ちゃん」
そっと、肌を手でなでる。
園子の肢体は汗で僅かに濡れ、絹のように滑らかだ。
慎ましく育ち切っていない胸は揉む俺の手を楽しませ、ふわふわな弾力を返す。
「ぁっ」
園子が喘いだ。
それを皮切りに、ゆっくりと腰を動かす。
初々しい締まりで俺を迎え入れる膣肉。
少女は俺の背中に手を回し、首元に顔を埋める。
「んぅ……っ!」
ぱちん、と肉が肉を叩く音。
苦し気な呻き声に喜悦が入り混じるのを聞きながら、一突き。
「あっ、ぁ、やぁぁっ」
俺の腰肉を彼女の滑らかな太腿が叩く。
いつの間にかよく濡れほぐされた膣が甘く俺を受け入れる。
「それっ……」
激しいピストンをせずとも満足感はあった。
ゆっくりと腰を回して未来で悦んでいた角度や位置を剛直で刺激するだけで、園子の初々しさのある反応と媚肉の感触を味わう。
「ぁ……それ、気持ちいい……っ」
俺に覆い被さられた園子の両脚が俺の腰に回る。
小さな身体は程良い弾力で俺を押し返しながら色付いていく。
「かっきぃ……」
全身で密着したままゆっくりと腰を動かす。
園子は俺の背中に手を置いて、薄闇の中で甘い声を漏らす。
互いの吐息がよく聞こえる。
互いの鼓動がよく聞こえる。
「ハァ、ハァ……そのちゃん……」
「好き……だいすき……かっきぃ……!」
薄暗い部屋で聞こえるのは結合部の淫音だ。
にゅぷにゅぷと粘膜が擦れ、互いの体液が絡み合う。
「ひ、ぁ……んっ!」
怒張を呑み込んだ媚肉は熱く、貪欲さを増していく。
左右の手で乳房ごと乳頭を刺激しながら、腰を突き上げる。
「んっ……ぁ……はっ……!」
甘く爛れた少女の喘ぎ。
密着した結合部はぬめり、新たな蜜が怒張を濡らす。
男を知った女体が熱を帯び、子種を求めて蠕動する。
長い時間をかけて、ゆっくりと動かしていた腰を一気に打ち込む。
「ンン~~~~っっっ!!!」
視界が白く酩酊する。
電流のような快楽が脳を震わせては瞼を閉じた。
解き放った白濁は園子の膣が飲み込み、全身で抱擁する手足が俺を締め付ける。きゅうっと媚肉が締め付け、汚濁の一滴一滴に膣が敏感に反応する。
荒い吐息を漏らす彼女を抱き締めてゆっくりと肉棒を突き上げる。
「はぁっ……はぁっ………ふぇ? ぁ、ぇ、出したんじゃ……!?」
射精に至った怒張は僅かに柔らかくなる。
それでも彼女の中から抜くことをせず、ゆっくりと腰を動かす。
「ゃ、あッ」
俺は片手を陰部の肉粒に添えた。
徐々に俺の知る女の呻きと反応を見せ始める。
「それっ……だめだめだめッ……ぅあッッ!」
両脚を伸ばした脚がシーツに皺を作る。
長い髪の毛に隠れた耳を甘噛みしては、陰核を弄り肉壺を穿る。
「ぁひっ……! ぃぅッ……!!」
ぴんと爪先が立ち、背を反らせる。
開いたままの口から涎が落ちるのを見ながら、俺は腰を動かす。
少女を押し倒し、覆い被さったまま深くまで貫く。
「ふぁぁあっっ……!」
ぶるりと肢体を揺らす園子の乳房を口に含む。
汗に濡れた乳房は甘じょっぱく、あられもない声が響く。
結合部から抜くことをせず、ゆっくりと抜き差しを続ける。
園子の喜悦に歪む顔を見下ろしながら、ゆっくりと、ゆっくりと。
何分でも、何十分でもスローピストンは続けることが出来た。
正常位から側位、寝バックと体勢を変えながらまったりと行う。
見た目が違っていても、やはり彼女は乃木園子で、悦ぶ体位も、悦ぶ性感帯も、全てが同じだった。助けを乞うような悲鳴を聞かせながらも身体は熱く雄を受け入れる。
すっかり蕩けた顔になった頃に、口づけを交わした。
淫熱に浮かされた少女は、されるがままで快楽に溺れる。
「あぁ~~~~ッッッ!!!」
園子の腰が大きく跳ね、媚肉が収縮し俺の意識を溶かす。
夢か現実か曖昧になるような快感に、何度目かの白濁が噴き出す。
「……ぁ……は」
鼓動を重ね、腕を回し合って、目を閉じた。
俺は俺だ。俺が加賀亮之佑だ。
戦うことが出来なくても、見た目が幼くなっても。
それでも俺を好きだと言ってくれる少女がいる。
すやすやと眠りこける少女の裸体に毛布をかける。
安堵したように眠る彼女との行為が、言葉が、教えてくれた。
考えすぎだった。
自分で自分を縛り付けていた。
言ってしまえばそれだけだったのかもしれない。
少女を抱いている時は心が満たされていた。
母性に飢えていたとも、戦えない自分を肯定して肉欲で慰めて欲しかったのかもしれない。そして今は、園子を抱いたからか、不安定な精神も随分とマシになった。
「現金なのは俺の方だろうな」
快楽の果てに得られるのは虚脱感。
ぐっすりと眠りに耽る園子とは別に俺は目を開いたままだった。
現実と夢の境目にいるような、曖昧な意識の中で、
「──人間なんてそんなものさ」
独り言のつもりだった。
誰かに言葉を返して欲しかった訳ではなかった。
視界の端に映り込む白い手。
テーブルの皿にある残っていたクッキーを摘まんでは上品に口にする誰か。
「──そういえば、その歳くらいの頃だったね。初めてキミと顔を合わせたのは」
月明りがカーテンの隙間から差し込む。
さく、と音を立てて菓子を口にする少女。
肩まで伸びた闇夜を切り取ったような黒髪と、白磁の肌。
曲線美を描く肢体を包み込む黒色のワンピース。
その美貌と共に長い睫毛に縁取られた瞼は菓子を嚥下すると共に開かれる。
「うん、ボクほどではないが悪くない。今後も研鑽を積むといい」
「────」
忘れもしない血紅色の瞳だった。
鼓膜を揺さぶる声音も、見た目の美も、血紅の輝きが全てを奪う。
声も出なかった。出し方を忘れてしまったようだった。
自分は夢でも見ているのか。ついに頭がおかしくなってしまったのか。
身体を心を魂すら硬直してしまった、そんな気分だった。
──その輝きを何度憎悪して、何度愛おしいと思っただろうか。
この世のものとは思えない美少女がいた。
身に纏う黒と白と紅は彼女の為にあるのだと、そう思わせる少女がいた。