前世で保健体育のことを思い出す時、なんとも言えない恥ずかしさを覚えたことがある。それは恐らく自身が思春期であったことも含めて、周囲の同学年の男女と共に自分の身体や子作りについての講義を聞くのが恥ずかしいとなんとなく感じたからだ。
生々しい、というべきか。先生に指名されて教科書に記載されている内容を読むだけで、意味もなく周囲の生徒と顔を合わせることがあった気がした。
今思えば勿体ないことをしたと思う。自身の育ち切らない感情に支配され同年代の少女たちの反応をもっと楽しむべきだったと後悔している。
そういった授業に対する反応は、前世も今も変わりない。
とはいえ、神樹教育の効果はそういった地味な所にも及んでいるのか、「あいつ、子供の作り方を朗読してる! エロだわ!」みたいな揶揄を表立ってしようとする者はいない。
表立って他人を馬鹿にする者は殆どおらず、またそういった学生については多少の体罰が許されるようになった先生の教育対象であり、彼ら彼女らが解放される頃には従順な生徒が出来上がるのがこの世界だ。
「──で、保健体育って何する訳?」
「えっ? にぼっしー知らないの? 日直なのに?」
「……園子は知っている訳?」
「知らな~い……ぁあんッ! ポロりしちゃう! 脱げちゃうよ~」
授業が終わり僅かな休憩時間。
子供の頃は十数分程度の休み時間で外に行ってグラウンドを駆け回り、サッカーや鬼ごっこをしてチャイムと同時に戻ってくるという謎のバイタリティがあった。
今も出来るとは思うが、積極的には外出を避けたい俺の腿に座るのは園子や友奈だ。彼女たちも貴重な時間はゆっくりと過ごしたいらしい。
「午後はどうしても眠くなっちゃう」
「お日様が気持ちいいもんね~」
「ね~」
どんな世界でも二人はふわふわな雰囲気を崩さない。
俺を椅子にして座る彼女たちの現実世界との差異など、制服姿か下着姿かという違いだろうか。柔らかな下着に包まれた尻肉が身じろぎの度に形を変えるのを直に太腿で感じる。
貧乏ゆすりをしてみると無言で抗議するように二人の両腿が俺の腿を挟み込み、密着した布越しに秘所の生暖かさを感じさせる。
そんなことをしている見目麗しい少女とその椅子に注目が集まる。
「かっきーは眠くならない?」
「眠くない」
「昨日も夜更かししてたのに私よりも早起きなのは凄いよね!」
「私も~、朝起きて気づいたら(パジャマを)脱がされて(朝ご飯を)ゴックンさせられたんよ~」
周囲へのアピールなのか、もしくは天然か。
結構な頻度で、周囲の目を気にすることなく俺とのスキンシップを行う彼女たちの存在は男子からは畏敬と嫉妬を、女子からはなんとも言えない熱の籠った視線を貰う。
だが慣れ故か、或いは別の何かがあるのか直接何か言われることはない。
今更他者の評価や目線で人生観を変えることはないが、注目を集める身として何かしておこうかと友奈と園子の背中を撫でる。
滑らかな肌に掌が吸い付き、下から上に撫で上げるとピンと背筋を伸ばした。
「ひゃ!?」
「んッ!」
背後からのボディタッチに彼女たちは腰を上げることはせず俺の手を受け入れる。その手の悪戯を許容し、ブラジャーのホックを外すと掌サイズの友奈の乳房と、掌からやや余る園子の乳房がカップからこぼれる。
躊躇うことなく左右でそれぞれの乳肉の柔らかさと体温を揉みながら味わう。
餅のような質感やプリンのような質感の比較を行う俺の肩を掴む友奈と園子。
「ぁ……もう……かっきー駄目だよぉ」
「ひゃッ……んっ……ぁ」
あ、ん、と吐息を漏らす彼女たちは逃げることなく自らの乳房を揉まれ、雪肌にほのかに朱色を差す。内腿を擦り合わせる友奈と園子はさりげなく俺の下腹部に手を這わす。
そのまま床に押し倒して今にも3人でホニャホニャしそうな光景に、
「あんたたちは相変わらずよね」
と、その姿を半眼で見るのは夏凜だ。
正気に戻った、と主張する彼女は下着姿が恥ずかしいからと慌てて着替えを探す。気の利いた東郷から渡された体操服を手にした夏凜は更衣室や空き室に行くこともなく、すぐ目の前で生着替えを実行していた。
人並みに羞恥心のある彼女だったが、衣類を身に纏い安心したように片目を瞑る。
「……というかあんたも説明したらどうなの?」
「さっき説明したじゃないですか。その完成型の頭脳で理解したんだろ?」
「ま、まあね。当然よ、バッチリ理解しているわ! ……というか、説明しながら二人の胸を揉むのはやめなさいよ。一応真面目な話をしているんだから……いや吸えば良いという話じゃなくてちょいちょちょい!!? 他の男子もいるんだから脱がせんな!」
「夏凜ちゃん、もしかして友奈ちゃんの胸を揉みたいってこと?」
「東郷はちょっと黙ってくれる!?」
「ほえ? 夏凜ちゃん……私のおっぱい触りたいんだ? ふーん」
「えっ、ぁ、いや……」
「揉みたくないってこと!? 友奈ちゃんの慎ましくも可愛らしい胸を!」
「にぼっしーはわっしーのおっぱいが揉みたいんだよ~」
「なんてこと!? でもごめんなさい、私の身体は髪の毛から爪先まで亮くんのモノだから……」
「揉むかあ!!」
今まで誰もツッコミを入れようとはしなかった状況。
そんな中で律儀に声を張り上げる夏凜は赤面した表情を誤魔化すように告げる。
「友奈も園子もほかの皆も下着姿になってそれを恥ずかしいとも思わない。そんな風に……その、えっ、エッチなことをしても誰もなんとも言わないのは変だというのは十分に分かったわ」
「……にぼっしー、私とかっきーがこんなことしていたら変だって思うんだ~?」
「夏凜ちゃん。私、悲しいな。私たちが亮ちゃんとホニャホニャしない程度にイチャイチャするのはよくあることなのに」
「うぐっ……と、東郷はどうなのよ」
二対一の戦いは劣勢だと完成型の頭脳が悟ったのか。
話題を振られた東郷は小首を傾げる。美人は何をしても美人だと世界の心理を悟る俺の頭を撫でる彼女は慈母の如き表情を浮かべる。既に情事の痕は処理され、水色の下着を着け直している東郷は俺の後ろに立つ。
体操服を勧める夏凜を無視した東郷は堂々と下着姿を晒しながら豊満な胸元を後頭部に当てる。谷間を腕で寄せずっしりと重い乳房を押し付ける彼女は、腕を俺の首に回す。
「そうね……亮くんが私と責任を取ってくれる以上、ここが夢でも別世界でも良いのだけど」
「それで良い訳?」
「友奈ちゃんがいて、そのっちもいて、勇者部も……勿論夏凜ちゃんもいる。問題ないわ」
「──それは」
「……ふぅ」
「ん」
吐息を耳に吹き掛ける東郷は俺の反応に笑みをこぼす。
先ほどと変わらず下着姿の東郷から俺に視線を移す夏凜は呟く。
「亮之佑。そのうちあんたは刺されるわ」
「まさか」
「亮くんは私が守るから大丈夫よ。話を戻すけど……ひなたさんも正気に戻っているのなら私との共通点として巫女であることが関係するのかなって思ったんだけど……」
「私は勇者で巫女適正はないわよ? 亮之佑はどう思う?」
「下着って普段隠されているからエロい訳で。捲れるスカートがある訳でも透けるカットシャツを着ている訳でもない現状って実質水着だよね。だから最初は興奮したけど今は別に……って思う」
「いや、聞いてないんだけど!」
「強いて言うなら水着よりも下着の方が生活感というかその人のセンスを感じるというか……生地が透けていて肌が見えるのがエロいと思わない? 夏凜もエッチだったし」
「え、エッチとか言うなあ!」
というように知恵を寄せ集めようにも情報は足りない。
そもそも情報を集める手がかりも可能性も神の思うがまま。最悪法則性なんてものは何もなく、神の気紛れで遊ばれているのかもしれない。
そうなれば最早お手上げだろう。
かぶりを振る夏凜が腕で下着を隠しながら唇を窄める。
「……それで、ひなたの方に異変はなかったの?」
「さっき確認したけど特に異変はないって。授業が終わって夢がまだ続いていたら集合出来るだろうけど」
「そんなまどろっこしいことせず今からでも──」
「あっ、チャイムだ」
「お昼寝タイムだ~」
「園子、あんたさっきも寝ていたでしょ」
学校という場所は制約が多い。
遊び場ではなく勉強をする為の場所なのだから当然かもしれない。その制約の一つはチャイムが鳴ったら自分の席に座り教師を待って、次の授業を行わなければならないということだ。
ガララッと扉が開くと同時に無言で少女たちが自分の席に移動する。
「……亮くん」
「ん?」
その数秒程度の時間。
深瞳の少女に呼びかけられる。優しさと親愛を感じさせる声に振り返ると、衆目の中、他のクラスメイトの視線が他を向く中で、東郷は大胆に自らのブラジャーを上に引っ張ると同時に、ショーツの前面を指で引っ張り、その奥の肌を見せる。
ぷるりと震える豊満な乳房。
程良い脂肪の乗った下腹部と鼠径部、整えられた黒の恥毛に覗く媚肉。
「────」
思わず目を奪われる。
ある程度は拭い取ったのだろうが、手を伸ばせば届く距離にいる彼女のソコは雄の白濁が僅かに残っていた。
むわりと淫臭を漂わせる彼女は自らが既に雄のモノであると無言で示す。
陰毛に絡まる白濁を。最奥から逆流しクロッチの裏側を汚す子種を。誇らしげに、気恥ずかしそうに、嬉し気に、慈しみと母性と雌を混ぜたような表情を見せる女は一言告げる。
「帰ったら……」
続く言葉はいらなかった。
言葉よりも鮮明に、放課後の大和撫子との予定が構築されていく。
乱暴に、優しく、東郷美森を抱く。
衆目も親友の目もなく、ベッドの上で着ている物全てを剥いだ上で、彼女を抱く。
声を我慢することもせず、背中をのけ反らせ、シーツに皺を作り、長い髪を振り乱し、恥も外聞もなく汗を巻き散らし、屈服させるように滅茶苦茶に抱き、唇を交わし、愛の言葉で鼓膜を震わせて、壊れるような快楽を教え込みたい。
一瞬脳裏を過るいずれ訪れる妄想は俺の背筋に電流を奔らせる。
──私はあなた無しでは生きられない。
そんな、言外に告げる彼女の控え目なアピールは、的確に俺の何かをくすぐった。
ブルリと震える。
それは求められることへの渇望か。極上の雌に応えたい雄の矜持か。或いはそれら全てを計算し掌で踊らされていたのだとしても、それはそれで後悔はしないと思えた。
「滅茶苦茶にするから」
「……っ、うん」
手を伸ばす。
下腹部の、子宮に掌を置くと少女が小さく震える。
言葉少なに自席に戻る東郷。
切り替えの出来る少女は授業が始まると同時にキリリと黒板に目を向ける。
そんな優等生の彼女の澄ました顔を見ると、「この教室で彼女を抱きました!」と全力で叫びたくなる俺は破滅願望の持ち主か、東郷美森という存在に脳味噌を破壊されたかもしれない。
ガラリと音を立てて教室の扉が開く。
眼鏡を掛けた女教師は正気に戻った者なら思わず二度見するような下品な穴開き下着を身に着けて歩いてくる。
「起立。礼。神樹様に……拝」
日直の号令で、クラスの生徒たちは授業の最初と最後に教師と神樹に感謝を示す。そして授業が始まるが、俺の場合は何か見えない力が働いているらしい。
何回も聞いて授業の内容への理解度もテストの点数も既にカンストしてしまった以上、聞いていて退屈な俺はおもむろに立ち上がる。
そのまま近くの席に座る友奈の頭を撫で、髪の毛を指先で弄ると視線を感じた。
「いや、なにしてんのよ……」
「三好さん? 聞いていますか?」
「は、はい! えっ、あれ? 私だけ?」
夏凜だ。
授業中に立ち上がり、友奈の席に移動して彼女に堂々と触れる俺を信じられない眼差しで見ていた。勇者とも違うバカを見るような視線に思わず肩を竦める。
──あれが常識的な反応なのだ。
ホックの外れたブラジャーを上げて少女の乳房を揉む。
友奈を立ち上がらせて彼女の椅子に座ってから俺の膝の上に座らせる。そのままおもむろにショーツに手を入れて柔らかな恥毛と秘所を指で弄る。
「……ん」
チラリと俺を見る友奈と静かにキスをする。
音を立てず、恥部から水音を僅かに聞かせながら、ほんのりと頬を赤らめる彼女は俺に背中を預けながら眠そうな目を擦り授業に耳を傾ける。
一連の流れに声を上げない夏凜と東郷だが、適応力のある東郷とは違い夏凜は顔の表情と時折此方を見ていた反応で教師に怒られていた。
「それで三好さん。その服はどうしたのですか?」
「えっ、どうって……着替えましたが」
「脱ぎなさい」
「は?」
「学校でそんなものを着て良いと思っているのですか!!」
「い、いやいや……おかしいですよ。だって体操服じゃ」
「制服を着なさい! もしくは体操服でもいいですから! いつからそんな物を着る不良生徒になったんですか!」
「えぇ……」
今更教師が声を上げた程度で委縮する夏凜ではない。
多少ビクッと身を強張らせ目を白黒とさせるが、それはどちらかというと眼鏡を掛けた下着姿の教師の発言への驚愕によるものだろう。
現在の夏凜は体操服姿だ。つまり着用していることになる筈だが、この世界で『体操服』というのは現在夏凜が着ている白の半袖シャツと紺色の短パンではなく別の物で、元々のソレは不良が着ている何かに見えるらしい。
では、何が制服で、何が体操服なのかと言うと、今回の世界ではどうやら『下着姿=制服』であり、『体操服=バニーガール』の衣装になるそうだ。逆バニーの姿はどちらになるのかと思ったが恐らくは制服扱いになるのだろう。
そんな非常識な理論を常識の戻った人間に語ったところで、
「いやふざけんな!」
眉を逆立て怒るのも当然だろう。
しかし、郷に入っては郷に従えという言葉があり、そして一人間程度では世界に、神の意向に逆らうなど、何が起きるのか分からない。
「まったく……三好さん、それはともかく教壇に来てくれる?」
「え? あ、はい」
小さく吐息する女教師は両手を叩いて夏凜を呼ぶ。
眉をひそめながらも素直に従う彼女は教壇に脚を進め、クラスの視線を集める。
何か問題でも解かされるのかと夏凜は思ったのだろう。俺も思った。
その直後だった。
「不良に鉄槌を!」
「……ぇ」
黒板に背を向けて立つ彼女の身体が固まったかと思うと、背後に立つ女教師が彼女のハーフパンツに手を掛け、一息に引き摺り下ろしたのだ。
膝下まで下がった可愛らしいショーツが短パンの裏地で染みのついたクロッチの裏側を晒し、目線を上げると白い無地のシャツの大きさではギリギリ隠せていない夏凜の秘所が丸見えだった。
生えかけの陰毛や恥部に周囲の視線が刺さる。
学校で少女が晒してはいけない場所が丸見えだった。
「は、ぇ」
約1秒。夏凜が混乱していた時間だった。
わあ、と思わず息を呑む東郷の呼気を耳にしながら夏凜の顔が朱色に染まる前に女教師の手が電光石火の如く動く。
いつの間に持っていたのかバニーガールの衣装を取り出す教師と違い、緩慢に視線を下ろした夏凜は自らの下半身の惨状と周囲の視線に脳が理解したらしい。
「きゃあああっ!? ななな、なにしてんのよ!」
「日直なのですから早く着替えなさい!」
「脱がせようとするなあ! ……ぅぅっっ!! 見るなぁ!」
するりとシャツすら脱がされ上半身をブラジャーのみとした彼女はかああっと顔を赤くする。
同年代の女子だけでなく男子すらいる学校の教室。午後の眠い時間に寝ぼけ眼を擦る生徒もいる中で、何事かと視線を向ける生徒たちに見られる夏凜。
恐らく周囲の視線に性欲は宿ってはいなかっただろう。
間違いなく美少女の一人である彼女の痴態を目にして喉の一つも鳴らさない男子生徒などいるだろうか。彼ら彼女らにとっては何か騒いでいるなという認識だ。
あの視線の意味は、単純に物珍しさが込められているのだろう。
そうでなければセクハラまがいなことをした女教師は解雇不可避であるし、周囲の男子たちは歓喜に叫び、女子はその男子たちを見て「ちょっと男子ー!」と叫ぶだろう。
だがこの世界において、そんなことは一切ないらしい。
それこそ全裸になろうとも本当の意味で認識はされないからダメージは無いのだ。
──ということを語ったところで、見られた当人としては「はいそうですか」とすぐに納得は出来ないのも事実だ。
「ぅぐぐッッ!! 力つよッ! 離しなさいよ、フンヌラア!!」
どれだけ恥ずかしかったのだろうか。女教師に負けず劣らず電光石火で短パンを引き上げようとするも手が滑ったのか赤と白の年相応な柄が入ったショーツのみを手にした。慌てて引き上げるも今度は女教師の妨害で恥部に布地が食い込まされる。
ピクッと肢体を身じろぎさせる彼女は薄く目尻に涙を浮かべる。
「んんっ! ちょっ……止めなさいよ! あんた教師でしょうが。……さては人に化けたバーテックス!? いや赤嶺友奈?」
「────」
「なんとか言いなさいよ……ふわぁあ!? やっ、それ止めなさい……ぁっ」
無言で脱がせようとする女教師との攻防は夏凜が劣勢だった。
ぐいぐいと秘所をショーツで弄られ、徐々に身体に熱を帯びていくのが見て取れた。ショーツを引っ張る力に緩急を入れて夏凜を弄る女教師は隙を見たのか、すかさずブラホックを外す。
「ぁぁあぁあああ!?」
ブラジャーを脱がせられ、ぷるりと小振りな乳房が露わになった。
体勢を崩し、咄嗟に胸元を手で覆う夏凜を読んでいたように、今度こそ少女のショーツは女教師の手によって恥部から透明な糸を引きながら引き摺り下ろされた。
完成型勇者が全裸の哀れな少女になった瞬間だ。
一瞬で顔を真っ赤にした全裸娘が教室に出来上がった。
だが、それで終わることはない。その小麦色の健康的な肌を覆い隠すように黒色のバニーガールの衣装が夏凜の抵抗を無視して着させられる。
「あ、あれ、なんで身体が動かないのよ! ちょっ、やめ、やめなさいよ」
あっという間だった。
瞬きをすると逆バニーではない、普通のバニーガールの恰好をしていた夏凜は女教師に解放されると同時にへなへなと崩れ落ちる。
「こんな……こんなのって……」
頭に乗せた兎耳が垂れ下がる。
黒色の網タイツ、肩紐のないハイレグタイプの衣装とカフス、蝶ネクタイ。夜のお店にいそうなバニー衣装はバスト上部分が捲れ、桜色の乳頭が覗く。
完成型勇者の敗北。生徒は先生には勝てないということをクラスメイトの前で分からされた夏凜は乳首が丸見えの状況に気づかずに床に膝と手を置いて項垂れる。
流石に精神的なダメージが残ってしまったのか。
周囲は特に何も気にせず夏凜から黒板に目を移しノートに中身を移していく中、俺は片手を上げて女教師の目を惹く。
「先生! 夏凜さんが体調悪そうなので保健室へ連れていきます!!」
「うむ、許可する! では諸君、授業の続きをしようか。残りは私の身体で教えてやる!」
いったい、どんな授業になるのか。
現実の体操服から別世界基準の体操服(バニー衣装)になった彼女の肩を貸し、東郷の心配そうな視線に問題ないとアイコンタクトをして教室を出た。
授業中だからか、廊下は静かなものだ。
たまに見回りの先生が乳首丸見えの夏凜と俺を見るが、特に何も言うことはない。
「……これって夢?」
「……」
「夢よね」
分からされたのがよほどショックだったのか。
捲れたバストを戻そうともせず光のない瞳で虚空を見る夏凜と共にやがて保健室に辿り着く。
ガララっと音を立てて開けると漂うのはアルコールの匂いだ。
清潔感を感じさせる白を基調としたやや広め部屋。
ガラス引き戸の棚には薬品などが見え、教師が座るべき机には誰もいない。右手にはピンク色のカーテンが仕切りを作り、隙間からは誰かが寝ているのだろうベッドが軋む音が聞こえる。
「怪我人ですか?」
「あ、はい。そうなんです。心を少し」
ピンク色のナース服を着た高嶋がカーテンを開けて近づいてくる。
清楚な衣服は彼女によく似合っているが、ウサギのカチューシャは少し邪魔に感じた。
近づいてくる彼女の背後、チラリと見えたベッドに寝転がるのは杏、千景といった西暦組の少女だが、その前には玩具片手に膝立ちで彼女らを見下ろすひなたが一瞬見えた。
珍しく若葉がいなかったが特に気にすることなく、同じ光景に目を剥いている夏凜の腰に手を回し、天使の如き笑みを見せるナースに告げる。
「実はかくかくしかじかで」
「なるほどー。なら一番奥のベッドが空いているので使ってね!」
チックンと俺の腕に指で元気を注入する高嶋。元気が出た。
はむ、とバニーガールとなった夏凜の腕を甘噛みする彼女に導かれる。
「弥勒先輩……もっと脚を広げて下さい」
「こうですの? こんな格好、あなた方以外には見せられませんわ……」
「じゃあ、挿入しますね。芽吹先輩はもう少し待っていてくださいね」
カーテン越しのシルエット。
腰に何か肉棒のような何かを着けた小兎に人には聞かせられない声を上げる兎たち。公共の場所であることを理解しているのか必死に声を抑えるも、肉が肉を叩く音と時折漏れる喘ぎ声に、防人サーとその姫がいることを確信した。
「この世界……いったい何なのよ……」
「夢だよ。夏凜」
他の住人を無視してシングルサイズのベッドに座ると夏凜がボソリと呟く。
白色のシーツは彼女が座ると同時に僅かに皺を寄せ、一息吐いて胸元の惨状に気づいて腕で隠す彼女は、しばらく黙り込むと俺の肩に身を寄せる。
頬をくすぐる少女の髪から甘い香りが鼻孔をくすぐる。
「亮之佑」
「どうした」
「私、みんなに、裸見られちゃった。胸も……あそこも全部」
「誰も覚えてないよ」
「あんな恥ずかしい目にあわされちゃった」
「俺がもっと恥ずかしい目にあわせてやる」
「なにそれ。……というかさっき亜耶とかいなかった? ──んむぅッ!?」
面倒臭いので唇を奪う。
肢体を強張らせる夏凜も、舌を絡め、頬裏を舐められ、ねっとりとした情熱的な口腔行為をし続けると、ぼんやりとした表情を浮かばせる。
唇を離すと透明な糸が橋を繋ぎ、その繋がりが切れる前に寝台に押し倒す。
顔を赤らめて、ぎゅっと瞼を閉じる彼女の耳元に囁く。
「なに、を」
「すまなかった。もっと辱められる前に俺がなんとかすべきだった。でも、どうしても、夏凜が恥ずかしがる姿が、綺麗な身体を見たいという欲求で動けなかった。ごめんな」
「……ッ、べ、べつに……あんなの完成型勇者の私にとって大したことじゃないわよ。亮之佑が変態なのは今に始まったことじゃないし別にいい──んんッ」
唇を重ねる。
今度は彼女から舌を絡めては、熱を宿した瞳を瞬かせる。
「──ありがとう。やっぱり夏凜は優しいな」
「……う、うるさいわね。するなら早くしなさいよ」
「何をするって?」
ドスッと肩に拳をぶつけ、プイッと顔を背ける夏凜。
そちらに顔を向けると今度は反対側に少女は顔を向ける。それを二度三度と繰り返せば普通に怒るだろうと思い、悪戯心をグッと自制する。
背けた方の頬にキスを落とし、慌てたように顔を向ける少女の唇を奪う。長く、甘い口腔行為の果てに、しおらしくなった夏凜に俺は告げる。
「夏凜。俺が忘れさせてやる。恥ずかしいことも嫌な夢も全部」
目を伏せ、小麦色の肌に熱を帯びさせる夏凜。
腹部に押し付けられた雄の存在に身じろぐ彼女は負け惜しみのように呟いた。
「……ふん。精々、期待してあげる」
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