加賀亮之佑の朝は早い。
パチクリと目を開けると時計を確認、天気を確認して着替える。
歯を磨いて、顔を洗って笑顔の練習をしたら、外に出る。
薄暗くも遠くの地平線には陽光が覗く。
家の外に人影はない。それどころか目に付く場所には誰もいない。
ゆっくりと鼻孔から肺に入れる空気は冷たい。朝特有の清涼感がある空気を吸って吐いて、肺の中の空気を入れ替える。並行して柔軟や屈伸などで準備運動をする。
「ジャージ、買ってよかったな」
新しい衣服を買うとなんとなく予定も無いのに着て歩きたくなる。
ついでに可愛い勇者部の誰かと楽しく遊べれば青春の一ページに刻まれること間違いなしだ。
そんな心境だが、今回はキチンと事前に決めていた予定だ。
準備運動を終えた後、俺はゆっくりと歩き始める。
アスファルトを踏み締めるとしっかりとした感触が足裏に伝わる。腕を振り、呼吸を一定に、徐々にウォーキングからランニングへと移行する。
「ふっ、ふっ……!」
静寂に自分の足音が響く。
無言で走る度に、自分の吐息と足音だけが嫌に響く。
街灯はまだ点灯したままだが、いずれ必要なくなるだろう。
空はうす暗く、太陽が世界を照らすにはまだ時間が必要だ。
大通りすら車の一台も通らない光景は早朝か深夜でしか見ることが出来ない。
まるで世界に自分だけが取り残されたような、そんな光景。
どこか特別感のあるこの光景は、俺が気に入っている光景の一つだ。
ただウォーキングとジョギングを交互にするには、世界はあまりにも静か過ぎた。だが樹のように歌い出す訳にもいかず俺はポケットからイヤホンを取り出す。
耳に装着したイヤホン、スマホの端末からお気に入りの音楽を流し、再び走り出す。
目的は体力の向上。走るルートは決めていない。
坂路があるようなところを積極的に走るようにはしているが、天候や気分で道を変える。
今は一人だが有明浜の方向に向かうと定期的に夏凜や防人組に遭遇する。
寄宿舎方面に向かえば、若葉たちが朝から鍛錬をしている光景を見ることが出来るだろう。
朝が遅いのは勇者部の中でも一握りだけだ。
「今日は……こっちだな」
気分で目端に捉えた無人の細道に入る。
子猫が俺を見つけて去り行くのを尻目に細道を抜ける。
やがて寄宿舎のある方向に向かっていくと、同じようにジョギングしている人を見つけた。
追い抜くのもなんとなく気まずい。だから一定のペースを保ちながら追い続ける。そうしているとクールダウンなのかゆっくりとウォーキングに移行し始めた。
その後ろ姿、揺れる薄紅色の髪に確信を抱いた俺は先ほどよりも速度を上げる。
「高嶋さん」
「……えっ?」
声を掛けると立ち止まり、振り返る少女。
黒のキャップに同色のシャツ、白のハーフパンツからすらりとした腿を覗かせた恰好の高嶋友奈。早朝から同じように走っていたのだろう、額に汗を浮かべる彼女は俺に気がつくとパッと笑顔を浮かべ駆け寄る姿は、なんとなく主人を見つけた子犬を連想させた。
結城友奈にそっくりな彼女の太陽の如き笑顔に俺は思わず目を細める。
彼女に似ているだけあって、或いは友奈が高嶋に似ているのか、否、大事なのはそこではない。双子と間違えかねない彼女の笑みは今日も無邪気で可愛らしい。
「りょーくん! おはよー!」
「おはよう、高嶋さん。今日も眩しいね」
「えー? 日差しはそこまででもないかな……」
空を見上げる高嶋は額をリストバンドで汗を拭う。
キャップを被り直した彼女は屈託のない笑みで俺を見上げる。
「……熱そうだね。ほら、まだ飲んでないお茶だから飲んで飲んで」
「えっ、でもりょーくんに悪いよ」
「高嶋さんに飲んで貰える方がお茶も喜ぶから」
「あはは……それじゃあ、一口だけね。ありがとうりょーくん!」
渡した水のペットボトルを素直に両手で受け取る高嶋。
ぷるぷるとした唇をちゅっと飲み口につけ、両手でゆっくりとペットボトルを傾ける。
両目を閉じて、彼女はこくこくと喉を鳴らす。
律儀に一口分で済ませようとすると俺は「もう一口!」とボトルを持つ手を掴む。薄紅色の瞳が俺を映し、困ったような顔をしながらも手を下ろすことなくペットボトルの中身を嚥下していく。
結局半分以上飲んだ彼女が「ん~」と唸り出した頃に手を離す。
「ぷはっ! ……ごめんね、いっぱい飲んじゃった」
「そこでごめんねって言える高嶋さんは天使だなって思うよ。蹴りの一つくらいあるかと」
「えーそんなことしないよ! りょーくん、私をなんだと思っているの?」
「アハハ! そうだよね! 友奈族最高なんよ。プロテインバー持っているけどいる?」
「それはいいかな。……赤嶺ちゃんに渡したら喜ぶんじゃないかな」
友奈族以外なら大なり小なり無理やり飲まされることに文句の一つも言うだろう。
飲まされたことよりも、その後の会話で僅かに拗ねたような表情を見せる高嶋の可愛らしさは今すぐ写真を撮って保存したいほどだ。その後、「美味しかったよ!」とふわふわとした笑みと共に感想を告げて返されるペットボトルに口をつける。
清涼感のある水はなんだか少し特別な味わいがした。
俺がペットボトルに口をつけると、高嶋が無言で見てくる。特に口元に視線を感じた。
「どうしたの?」
「ほえ? ……う、ううん。なんでもない」
「そう。一緒に走らない?」
「う、うん、良いよ」
「……今の間接キスだったね」
「……っ」
「なーんて」
「……もう」
イヤホンを外し、僅かに頬を赤らめる彼女と並走する。
俺よりも早く起きていたのか、既に結構な距離を走っていそうな高嶋は黙々とランニングを続ける。少し速度が速く、俺も負けてはいられないと彼女の隣を走る。
競争ではない。ただ一緒にそれなりの速度で走るだけだ。
アスファルトを蹴る足音と、互いの吐息が静寂の朝に響く。
「……いつから走ってたの?」
「……1時間くらい前かな」
音楽の代わりに高嶋の声音に鼓膜を集中させる。
吐息と共に漏らす言葉には僅かな震えがある。
続いて、躊躇うような素振りで俺の顔をチラリと見る高嶋が、
「……りょーくん」
「悩みがあるなら聞くよ」
「……最近のぐんちゃんはね、みんなと仲良くなって凄く嬉しいんだ」
しばらく彼女と走った先、偶然辿り着いた名も知らぬ公園で脚を止める。
荒い鼓動が治まるのを待ちながら、おずおずと上目遣いを見せる高嶋に目を向ける。
小さな公園に設置された滑り台、足元には砂、誰も訪れないような廃れた公園は周囲を木々に囲まれている。
隔絶された世界のようで僅かにテンションが上がるが、それを隠し心配気な顔を見せる。
「それで? ……寂しくなっちゃった?」
「……うーん、それもあるかな。若葉ちゃんやアンちゃん、ヒナちゃん、タマちゃん……みんなとぐんちゃんが仲良くなっていって私は嬉しいけど、でもちょっと寂しいなって。それに、なんだか、ぐんちゃんだけじゃなくてみんなともちょっと距離が出来た気がして……」
「仲間外れみたいになって嫌なの?」
「そうだね。……うん、そうだ。でも、あんまりこういうことを言ったらぐんちゃんにもみんなにも迷惑が掛かるから、それにせっかくみんなが仲良くなったのに私だけ我儘を言うなんて……変なこと言ってごめんね、りょーくんも忘れて」
「高嶋さんは奥ゆかしいもんね。ムードメーカーなのは友奈族の……友奈と似てるよ」
滑り台の斜面に座った彼女は切なげに笑う。
高嶋は誰かに胸の内を語りたかったのだろう。それも出来ないからせめて少しでも胸中の思いを発散するように朝の早い内からひたすらに走っていたのかもしれない。
誰かを傷つけるよりも、自分の身体を傷つけた方が健全なのもあるからか。
「そんなに考えてないよー。眠れなくて走りたくなっただけだよ」
「じゃあ天性の才能だ。凄いよ高嶋さん。高嶋様ー!」
「えへへ……褒め過ぎだよ」
俺は階段を上り滑り台の頂上に立つ。面白みのない住宅街しか視界には収まらず、そのまま斜面を滑り降りると彼女の背後から抱き着く。
高嶋は嫌がる素振りを見せず、これ幸いと下腹部を臀部に押し付ける。
両脚で高嶋を挟むと、こてん、と頭を肩に置く彼女は恋人のように俺に身体を預ける。くぅーんと子犬のように身を寄せる姿は相応の信用を得られた故の甘えを感じた。
目に見えない犬耳が柔らかな髪から覗いた気がした。
「……千景がみんなと仲良くなったのは俺とエッチしたからだよ」
ビクッと抱いた肢体が震えた。
振り向こうとする彼女の身体を背後から強く抱き締める。
薄紅色の髪に鼻を突っ込むと、漂う汗と彼女の芳香で呼吸をする。シャツ越しに彼女の胸元を揉みながら耳元で囁くと首筋に唇を落とす。健康的な肌に浮かぶ汗は甘じょっぱい。
「……それは」
「悪いことだって?」
「────」
「でも、高嶋さんも悪いことしているよね。……お酒の所為にしないとぐんちゃんとも俺ともエッチできないもんね」
ん、は、と彼女の熱い吐息が震えた。
見下ろすとシャツの隙間から覗く鎖骨と水色のスポーツブラ。
シャツを捲り上げ、やや冷たい白い腹部を撫でるとしっとりとした肌が掌に吸い付く。身じろぐ高嶋の乳房をスポーツブラごと揉みしだくと彼女の鼓動の高鳴りが背中から伝わる。
「わ、私は……」
「いいんだよ。みんな悪いことをしているのに自分だけその輪に入れないのは嫌だよね。だから、──高嶋さんも悪いことしよう? 悪い子になってみんなの輪に入っちゃおう?」
「ひゃう!?」
はむ、と耳を甘噛みする。
背後からぎゅううっと強く抱き締めると伸ばしていた脚を折り畳み、三角座りをする少女が小さく呻く。力強い抱擁への苦情というよりも抱かれることへの安堵感と羞恥を混ぜた呻き声。
素面のまま、異性に抱かれ、身体を触れられることに今更ながら恥ずかしくなったのか。
「一緒に悪い子になろう? みんながしていることなんだから」
言葉を重ねる。言い訳も与える。
臀部に肉竿を押し付けて、ハーフパンツのウエスト部分を僅かに捲る。水色の縞模様のショーツをチラリと見ながら、彼女の秘肉を覆い隠す布地ごと指で押す。
むにゅむにゅと独特の弾力と汗が染みた布越しに彼女の貝肉を弄る。
「ゃ……は、ぁっ!」
指でカリカリと上下に掻くと高嶋の腰が浮く。
両脚で彼女を挟み直すと、余裕のない勇者の唇を奪う。
瑞々しい唇を啄み、彼女の舌に舌を絡める。
強く抱き締めながら乳房を揉むと、にじゅっと下腹部から水音が響く。執拗に秘所を指で責め立てるとじわりとクロッチ部分の染みを広げ、彼女の口端から涎が垂れ落ちる。
ゃぁ、と子供のような嬌声を聞かせる彼女に、もう一度問い掛ける。
「悪い子になろう?」
「……どうしたら」
スポーツブラ越しに硬くなりつつある乳首を指で弄る。
唇を離した直後の三度目の問い掛け。ぼんやりとした眼差しの高嶋は唇の間を繋いだ透明な糸を気にすることなく、ゆっくりと唇を震わせる。
「……どうしたら、いいの?」
彼女は迷える子羊のような顔で俺の腕を掴む。
だから俺は牧師として、彼女を導く。
滑り台を降りて、彼女の腰を抱いて少し歩く。
公園の隅、木々に覆われて周囲からは見え難い、しかし完全に見えない訳ではない位置で高嶋を解放する。シャツと髪を肌に張り付かせる彼女はどこか事後に似た雰囲気を漂わせる。
もじもじと白い腿をくねらせて、上目遣いで俺を見る少女は雰囲気に流される。
「ん……」
無言のまま高嶋は自らのハーフパンツのウエスト部分を掴む。
数秒の躊躇い、そしてゆっくりと下ろすと水色のショーツが露わになる。
脚から抜き取り俺に渡した彼女は、愛液と汗で濡れた縞模様のショーツを露出させる。キャップとシャツを着た彼女は下半身だけ下着という不揃いな姿で内腿を擦り合わせる。
「何しているの? 続けて」
「や、やっぱり……」
「続けて」
「……」
涙目の彼女は緩慢とした動きで下着を掴む。
覚悟を決めているのか閉じた瞼が震え、しかし変わらず下着のウエスト部分を掴んだまま硬直する彼女に露骨な溜息を吐く。
するとビクッと震える高嶋はやや躊躇しつつも下着を膝までずり下ろす。秘所と下着の裏地に糸が引き、外気に晒されたからか下腹部を震わせる彼女の片足を持ち上げて下着を抜き取った。
必死にシャツで秘所を隠そうとしながら高嶋は周囲に目を向ける。
「や、やっぱり……やめ──」
「悪い子になるんでしょ?」
掴んだ下着を生暖かく淫臭が漂う。
取り返そうと片手を伸ばす彼女を避けてはポケットに仕舞う。
ハーフパンツを畳んで、高嶋の背後に回り込み抱き着くとそのまま一緒に倒れ込む。
「きゃっ!」
シャツが捲れ上がり露出する下半身。
少女の白く眩しい内腿から、雫がちらついた茂みと愛液で滲む秘裂。芝生の上で薄い陽光に照らされた彼女の下腹部から臍までの全てが外気に晒される。
ぶるりと震える高嶋の体躯に腕を回し半裸の彼女に囁く。
「ぅ、ぁ……!」
「じゃあ、しーしーしようね。神樹様も喜ぶから」
少女の膝裏を掴んで両脚を広げさせる。
嫌々と首を振る彼女の身体は熱く、閉じようとする脚の力は強い。
「ちゃんと広げて……それに早くしないと誰か来るかも」
「ぅぅぅ……っ」
瞳に薄く涙を浮かべる高嶋、彼女は従順にも俺の言葉に従う。
細い指はピンクの陰唇の縁に触れると自らの最奥を外で曝け出すように左右の陰唇を割り拓く。上から見下ろす彼女の花弁はひくひくと動き、それを伝えると高嶋は顔を横に向ける。
外で見る彼女の鼠径部、薄い陰毛が風に揺れ、透明な雫が花弁から垂れる。
綺麗な華からは新鮮な蜜が溢れ、包皮の剥けた肉芽が陽光に照らされる。
「……こんなのやだよぉ」
「悪い子になるんでしょ? ほら」
「ぁ、っ、揺らさないで……」
「我慢しないの」
俺は高嶋に公園で露出と放尿を強いていた。
悪い子になるならこれ以上の悪事はない。人気のない公園で脚を広げ自ら痴態を晒す。
そう、犬だ。まるで、犬のように──。
「犬」
「え?」
「犬」
「りょーくん?」
「犬」
「……」
俺を見る高嶋の表情には困惑、そして数秒ほど遅れて理解したように瞳を見開く。
直後に訪れる羞恥と葛藤、開いた脚から無駄な力が抜けて、しっとりとした肢体に新たな熱を帯びていく。荒い呼気を繰り返す彼女は小さく呟く。
「……ワン」
直後、弧を描く小水が木の根元に掛けられる。
しょわわ……と細い指で開いた花弁の小さな穴から飛沫が芝生を、木を濡らす。
「……! ──!」
水音を奏でる間、高嶋は無言を貫いた。
可哀そうなほどに顔を赤くして、彼女は良い子を捨てていく。悪い子になっていく彼女は口元を緩め、外で小水を漏らしたことへの罪悪感と同時に気持ちよさそうな顔をしていた。
「だめだよぉ……こんなのだめなのに……」
「あーあ、さっき飲んだ分、全部出ちゃうね~」
「ぅぅぅっ……! 見ないでよぉ……」
「神樹様! 見ていますか! お供え物です! 受け取って下さい!!」
「りょーくん! 声っ、大きいからっ、やだっ……んっ」
「気持ちいい?」
「……ん」
勢いは徐々に弱まる。
ぽたぽたと雫が芝生に染みこむのを確認しながら、再び少女の顔を見る。
下半身丸出しで恍惚な表情をした彼女は、薄い笑みを浮かべた。
背徳を味わった少女は小さく笑い声を上げる。
「ぁはは……りょーくん。これで私、悪い子になっちゃった?」
「……ああ、悪い子だな。悪い子にはお仕置きを与えないと」
「……お仕置きは部屋でして欲しいなぁ」
陽光は先ほどよりも強くなっていく。
一筋の風か薄紅の髪を揺らし、俺の頬をくすぐった。
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