※この作品はR-18です。

果てなき夜で、貴方に愛を   作:毒蛇

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第十四話 甘い菓子に種子を蒔く

 『溺れる』というのはこんな気持ちなのだろうか。

 快楽という水が全身に絡みつくように、後には心地良さだけが俺の心身に染み渡る。

 

「っ、……っ」

 

 湯舟のお湯と少女の色濃い香りにクラクラとする。

 ふと己の指を見ると長湯の所為か随分とふやけており皺が出来ていた。

 それは俺の身体を座椅子にして背中を預けている長い黒髪を上げた少女も同じか。

 

「東郷さん」

 

「亮、くん」

 

「……」

 

 頭を俺の肩に乗せる東郷との顔の距離は近い。

 完全に脱力したように身体を預けながら、東郷の深緑の瞳は俺に向けられている。

 更に顔を近づけると、薔薇色の唇を濡らす少女の浅く熱い呼気に俺はある事を思い口を開く。

 

「そろそろのぼせるから」

 

「――ん」

 

 唸るように応じながら東郷は動かない。動けないのだ。

 快楽を貪るような行為を繰り返し、その果てに腰に力が入らないのだと、緩々と首を振った。

 そんな彼女の白い肌にははっきりと長湯と情事に伴う朱色が仄かに、猥らに、色濃く残る。

 

 湯舟の中、背中を預けた壁から離れ、少女の背中と太腿付近に手を伸ばす。

 彼女が纏う物は何もなく、陶器のように滑らかな肌の感触は決して飽きることが無い。

 顔が近づき、目を閉じた東郷は何かを待つように顎を持ち上げ、俺の口づけを待っている。

 

 俗にいうお姫様抱っこの準備を整えながら、俺は少女の薄い唇と唇を重ね合わせた。

 そっと啄むような口づけは情欲を湧き上がらせる物ではなく、ただ深い親愛に溢れている。

 情欲を掻き立てるようなキスではなく、唇の柔らかさを知るようなキスを東郷の唇は繰り返す。

 

「っ―――」

 

「ん――、ぁ、は――」

 

 このままどこまでも『東郷美森に』溺れてしまいそうな感情を噛み締め抑える。

 唇を離し、せめて湯舟からの脱出の為に身体に力を入れ裸体の少女を持ち上げる。

 湯が滴り落ち、水音を響かせながら、随分と軽く感じる東郷の身体を抱き上げ脱衣所に向かう。

 

「……」

 

 風呂後の東郷は随分と無口に感じる。

 ただぼんやりと俺を見上げる東郷に小さく微笑みながら、一度少女の身体をマットに下ろす。

 壁に背中を預け脱力した様子で脚を伸ばす少女の身体をバスタオルで拭き、水気を取っていく。

 

「んっ」

 

 介抱というのだろうか。

 脱衣所の電灯に照らされ、くすぐったそうに目を細める東郷の肌は雪原の如く白い。

 勇者部で一番、雪のように淡く、透明で、美しいと感じる彼女の柔肌を拭いていく。

 

 首筋を優しく撫で、背中に手を添え、乳房を軽く揉む。

 彼女の裸体を傷を付けないように丁寧に拭きながら弄ると、東郷の唇から呼気が漏れる。

 

「ぁ……っ……」

 

 先ほどの愛撫と情事の痕を色濃く残した裸体。

 それを思い出したように身体に触れる度にビクリと小さく東郷は震える。

 切なげな表情でときおり熱い吐息をする東郷を見ながら、自身の身体も素早く拭き取る。

 

「自分で、拭くから……」

 

「駄目」

 

 程良く筋肉と薄い肉の乗った両脚を拭き、脚の付け根に手を伸ばす。

 湯に濡れた少女の髪色と同じ色の薄毛と恥丘をタオルが触れると呼吸と共に腹肉がピクリと動く。

 秘裂をなぞるように拭くと東郷はもどかしそうに呻き、強く拭くと首を仰け反らせた。

 

「ぁっ……やっ!」

 

 白い両手が妨害するように俺の手に触れる。

 遅すぎる抵抗、異性に余すことなく身体を拭かれる状況に東郷は目を閉じながら嫌々と首を振る。

 湯冷めにより肌が白くなりつつも、しっとり感のある少女の身体、尻肉を掴み再び持ち上げる。

 

「っ、待っ、~~……ッッ!!」

 

 風呂上がりの東郷の素肌はきめ細かく、まるでつきたての餅のような感触である。

 蜜壺からとめどなく溢れる蜜液をバスタオルが吸収しながら、膣口に指を挿入し臍側の膣壁を撫でるように動かすと、東郷は背を仰け反らせてガクガクと膝を震わせながらマットに座り込む。

 

「――じゃあ、行きましょうか。お姫様」

 

「……ぁ、うん」

 

 拭き終わり、荒い息を吐く東郷の身体を持ち上げる。

 抵抗などなく、容易く脱衣所の扉を開け俺は少女の裸体を抱えたまま外に出る。

 

「東郷さんのご両親、いないんだよね」

 

「――そうよ」

 

 東郷家の廊下を歩き、黙々と少女の自室へと向かう。

 全裸の男女が家の中を歩き回るという状況に東郷はぎゅっと目を閉じ胸板に頬を擦りつける。

 しばらく無言で自分の足音と自らの鼓動が聞こえる中で、やがて少女の自室に到着する。

 

「大丈夫? 疲れた?」

 

「ううん。大丈夫よ、亮くん」

 

「そっか、良かった。……あと三十秒で水を持ってくるから待ってて」

 

「……うん、待ってる。ずっと」

 

 見慣れた東郷の自室、畳を素足で歩く。

 その部屋にある少女がいつも寝ている寝台に部屋主を横たえさせる。

 了承を得ると同時に東郷の自室を飛び出し、可能な限りの速さで台所を過ぎ風呂場に向かう。

 

 二十秒で脱衣所と風呂場の情事の片付けと、脱いだ服を回収する。

 残りの十秒でキッチンに寄り、コップ一杯に水を入れて素早く移動する。

 我ながら素早い行動だと思いながら、長い黒髪の美少女が待つ自室に戻った。

 

「おかえり、亮くん」

 

「ただいま」

 

 先ほどまで人形の如く俺にされるがままだった東郷。

 枕で自らの豊満な裸体を辛うじて隠しつつ、戻った俺に少女は親愛の微笑を浮かべる。

 寝台の近くに回収した衣服を置き、コップを持って俺は上半身を起こした東郷の近くに寄る。

 

「お嬢様、お水をお持ちしました」

 

「ふふっ……、では飲ませて頂戴?」

 

「ははー」

 

 適当な茶番を混ぜつつ、少女の薄い唇にコップを近づけて、動きを止めた。

 寝台に腰掛ける少女は唐突に動きを止めた俺に、小首を傾げながら見上げる。

 コップの中の透明な液体を見て、ある発想を浮かべた俺は少しだけ水を口に含み近づく。

 

「えっと、りょ……、ん―――」

 

 その後に続く言葉は無かった。

 顎を持ち上げ、唇を重ね合わせ己が含んだ水を東郷に飲ませる。

 んくっんくっと少女の白い喉が鳴る中で、驚きに見開いた瞳はやがてうっとりと細められる。

 

 送られる水は少しだけ口端から垂れ、首筋へと流れる。

 頬に手を当て、天井へ向いた東郷の唇に再び水を含み唇を重ねる。何度も重ねる。

 んふ、んちゅと懸命に水分を補給する為に鼻息を荒くし、少女は猥らに唾液と水を飲みこむ。

 

 やがてコップ一杯分の水が無くなる。

 その頃にはこの給水という口腔行為に、お互いが息を荒くしていた。

 目元をとろんと緩ませた東郷から枕を取り上げ、ベッドに押し倒しながら首筋に顔を近づける。

 

「ぅン……ッ!」

 

 しっとりとした、雪原のように白い肌に唇を這わせる。

 その滑らかさと柔らかさ、かすかな体温にまるで吸血鬼のように一息に吸い付く。

 跡が残っても構わないとばかりに、寧ろこの少女に教え込むように強く強く吸い付いた。

 

「はぁ……ぁぁ……」

 

 風呂場で纏めていた長い髪は既に解かれている。

 しっとりと濡れた少女の長い髪の香りを吸い込み、ふと髪も拭いておくべきだったかなとやや場違いな事を考えながら、背を反らすように腹部を上下させる少女に口付けを繰り返す。

 

 改めて、ぷるんと震える双丘を持ち上げるように両手で揉む。

 既に先端がツンと硬さを主張し、極上のプリンのような生乳の感触を手のひらで確かめる。

 背中に手を回し、乳首を口に含みちゅぷちゅぷと愛撫の音を聞かせると、もぞもぞと脚が動く。

 

「やっ! ぅ……ふっ」

 

 背中に手を回された東郷は快楽から逃げられない。

 俺の頭を掴む少女の嬌声と、ちゅ、ちゅぷという愛撫の音だけが室内に響く。

 丹念に乳房を弄りながらチラリと少女の顔を見上げると、羞恥に涙を目端に浮かべていた。

 

「東郷さんの身体って綺麗だよね」

 

「ぇ……、ぁ、ありが……ンあぅ!」

 

 一方的な愛撫を俺は続ける。

 せっかくなので更に辱めたいと、手は腹よりも下へ動かす。

 程良く脂と筋肉の乗った腹を撫でながら、更に下、少女の薄毛を指先でさわさわと弄り回す。

 

「そこは、あんまり触らないで……」

 

「触り心地、良いよ。東郷さんの×××」

 

「―――ッ」

 

 わざと東郷が嫌いそうな淫語を囁く。

 その言葉が空気を伝い鼓膜に届くと、かああっと少女は赤面する。

 

 柔らかめの感触を指先で感じながら、少し下にある東郷の濡れた媚肉に触れる。

 それだけで、触れただけで、あられもない声を上げた少女は恥じらうように両手で口を押さえる。

 粘液性を帯びた少女の愛液を指先に絡めつつ、彼女の恥部にある小さな陰核を探り、見つける。

 

「ん、……ふくっ……」

 

「東郷さん、ここには俺しかいないんだから、声、我慢しなくていいんだよ」

 

 シーツに皺を作りながら、猥らな声を隠そうとする東郷。

 その行為が無意識に男の情欲を掻き立てている事に気付かない少女に、全ての抵抗が無意味である事を教える為に俺は恥部にある小さな包皮を剥き、指の腹でこするとビクッと身体を震わす。

 

「ひっ! ぃっ、ぁ」

 

 露出した肉の芽を爪と指の腹で軽く撫でる。

 忙しなく動く両脚を閉じないように股の間に脚を入れながら、指の腹で軽く潰す。

 

「ぃぁ、ぁっ、~~~ッッ!!!」

 

 ビクンと短く、しかし激しく東郷の腰が浮き上がる。

 今ので果てたらしく、激しい呼吸に合わせて少女の腹肉が上下する。

 口元を押さえていたはずの手はいつの間にかシーツをぎゅっと掴み、新たな皺を寄せている。

 

 ぷしっと新しい蜜が指に跳ね、愛液を指に絡めながら、腰に片手を回し固定する。

 寝台に仰向けとなった東郷の負担が少ない形で、さらに言えば快楽の全てを味わい楽しむ形で。

 東郷の身体の震えを感じながら更なる高みを目指し、肉粒を指先でぴっと弾く。弾く。弾く。

 

「……は、りょうくん、ぁ、ま、待って! ……ぁ、ぁかっ~~~、ぃぃっっ!!」

 

 再び短い悲鳴を東郷は上げる。

 今度は声を押し殺す事もなく、喜悦の悲鳴を俺に聞かせた。

 その甘い声音を聞かせた事へのご褒美として、顔を淫らな匂いのする秘部に近づける。

 

「可愛いよ、東郷さん」

 

「待って……は、りょ、も、もう、もう十分だから……」

 

「遠慮しなくて良いんだよ、東郷さん。せっかくだから一杯奉仕してあげる。……指と舌、どっちが良かったか教えてね」

 

「いや、ぁぁっ! ぁ、ああっ!」

 

 嫌々と首を振る東郷の秘部に顔を埋める。

 慌てたように上半身を起こし、ぷるんと乳房を揺らしながら両手で俺の頭を掴む。

 どこにそんな力を残していたのかと思いながら、今は東郷の淫声を聴きたいと媚肉を舌で犯す。

 

「んくっ! ぁ、また……、ぁ、ぁ……!!」

 

 ちゅぷちゅぷと噴き出す蜜が頬を叩く。

 俺の舌が貝肉を貪り、小さな粒を舌で根本から潰し、舐め、弄る度に嬌声が響く。響いた。

 両脚の腿が強めに俺の顔を挟みながら、そしてその力すら弱まるまで、俺は東郷に奉仕をする。

 

「~~~~、は、ぁ、ッッッ!!」

 

 部屋が暗くなるまで。

 少女の味を舌に教え込む。

 

 ――淫らな声音と水音が部屋に響く。

 

 その日は東郷の両親が帰宅する寸前まで。

 捕食するように、味わい尽くすように、俺は東郷に奉仕した。

 

 

 

 

 ---

 

 

 

 

 東郷とののぼせる程に長い長い湯浴みとマッサージから数日が経過していた。

 俺は以前約束していた、夏凜の家に遊びに行く約束を果たす為に彼女の部屋に来ていた。

 玄関より脚を踏み入れ、以前よりも多少本などが増えた程度の、一人暮らしの少女の部屋。

 

 まめに手入れの入ったフローリングの床の感触を踏みしめる。

 キチンと掃除も行い、衛生面もしっかりとしているのは素晴らしい事だ。

 同時に懸命に努力を惜しまない少女のトレーニング器具の多さは変わっていない事に苦笑する。

 

「――二月十四日は、にぼしの日らしいよ」

 

「誰が煮干しよ」

 

「言ってないから。夏凜、これお土産」

 

「……あ、ありがとう。別に気を遣わなくても良かったのに」

 

「いや、戦友との交友を深めるせっかくの機会だし。多分美味しいと思うから」

 

「そっか……うん。あっ、座ってて亮之佑。何か飲み物用意するから」

 

 そうしてゆったりとした部屋着を着用した夏凜はキッチンに向かった。

 その少女の後ろ姿を見ながら、俺は改めて戦友の、夏凜の、異性の部屋を見渡す。

 

「――――」

 

 特に何とも感じないのは夏凜だからだろうか。

 一応は異性だと言うのに、胸の鼓動を高鳴らせる物がないのは慣れた所為だろうか。

 もしもそうだったならば非常に残念であると肩を竦め、小さく含み笑いをしていると、

 

「――残念だ」

 

「何がよ?」

 

「いや……髪切った?」

 

「え、まあ少しだけね。よく気付いたわね」

 

「――直感ですかね」

 

 俺の独り言を聞きつけた少女が戻ってくる。

 彼女が両手に持つお盆、その上には先ほどの土産物と並々と液体が入ったコップ。

 それらをテーブルに下ろすのを手伝いながら、座った少女と適当な雑談を始めた。

 

 

 

 

 ---

 

 

 

 

 夏凜と言葉を交わす合間に、ふと少女の指が皿に伸びる事に目を付ける。

 その速度に渡した土産を気に入って貰えたのだと思うと、それを肯定する様に夏凜は口を開く。

 

「このお菓子。……香りが良いし、何より美味しいわね」

 

「ああ、それ手作り」

 

「へぇ……、あんたって結構凝り性よね」

 

「そんな……照れる」

 

「褒めて……、褒めているわね」

 

 ビスケットサンドが細い指に摘ままれ、瞬く間に薄紅の唇に吸い込まれる。

 フルーツブランデーに漬けたリンゴとヨーグルトを混ぜたクリームを挟んだサンド。

 夏凜の家に遊びに行く際に、事前に自作料理の試作として作ったお菓子は好評のようだ。

 

 最近少しだけ、自分の中で菓子を作るブームが到来している。

 酒を使用した菓子なのだが、風味をマイルドにし、保存性を上げるなどメリットは大きい。

 直接酒を飲むわけではなくアルコールの量も作成時に調整が利くため、ほろ酔いが限界だ。

 

 ――限界のはずなのだが。

 

「それで、なんだっけ」

 

「だから! どうして! わたしだけこんなにツッコミが多いのかってことよ!!」

 

「――うん」

 

 ほろ酔い程度ならば、適度に身体に溜まった疲れを落とす。

 気持ちよく、程良い酩酊状態を味わえるという菓子を片手に、ジュースが注がれたコップを傾ける。

 ごくごくっと喉を鳴らしながら美味しそうに飲む少女を見ながら、己も菓子を摘まみ咀嚼する。

 

「――ふむ、まあ、問題は無いと思うけど」

 

「ちょっと聞いてるの、亮之佑!」

 

「ああ、聞いてたよ。ならツッコミを止めたらいいじゃないか」

 

「そうしたら、勇者部にボケが飽和するでしょうが! 園子も東郷も、友奈も、あんたも! 樹はともかく……。こんなの明らかに比率が可笑しいじゃないッ!」

 

「はあ。東郷さんか……。知っている夏凜? 東郷さんってとっても可愛いよ」

 

「東郷は可愛いというか綺麗でしょ」

 

「まあ、そうだね。……夏凜は、凛々しい感じだよ」

 

「はいはい」

 

「おい、雑な相槌は止めろよ」

 

 カランとコップの中の氷が音を鳴らす。

 手のひらの中で聞こえた音に耳を傾けながら、薄い笑みで相槌を打つ。

 既に雑談を開始してからいつの間にか一時間が経過していく中で、持ってきた菓子が底をついた。

 

「はー、……なんか、暑いわね」

 

「そうか?」

 

「そうよ」

 

 仄かに顔を赤くした少女は一息に上着を脱ぎ、パタパタと手で自身を扇ぐ。

 そんなに暑くはないのだがと思いつつ、それを余所に冷静な頭脳が原因を模索する。

 

「――――」

 

 既に空となった皿。

 先ほど、どこかの世界にある菓子を再現した物を土産に持ってきたのだったが。

 キチンと自分で味見をしたからこそ、ある程度の自信の中で持参した菓子だったが。

 

「酒成分、強過ぎたのか……それとも食べ過ぎが問題か……」

 

「何ブツブツ言ってんのよ」

 

「いや、何でもないよ。夏凜」

 

「そう? 大体、風も――――」

 

 上着を脱いだ事で露わになった、わずかに曲線を描く薄いシャツにふと視線を向ける。

 鎖骨、首筋、肩を剥き出しにし、熱さ故に仄かに滲んだ汗と少女の香りが鼻腔を擽る。

 そういえば夏凜も女性なのだと今更ながら認識すると、急に現状に対して危機感を感じた。

 

「――ん~」

 

「酔ってる?」

 

「酔ってないやよぉ!」

 

 向かい合っていたはずだが、いつの間にか隣に座っている無防備な少女。

 酩酊しているように瞳をトロンと潤ませた夏凜の、汗と、少女の甘い匂い。

 愚痴を溢すだけ溢して楽しそうな笑みを浮かべる夏凜の視線は、ふと俺の股間に向いた。

 

「……あれ、亮之佑。これって何よ?」

 

「何でしょうね」

 

 当たり前だが、夏凜も性的な知識があるらしい。

 耳まで顔を赤くしながらも、普段の反抗的な表情も怒りもない。

 ただ、少女の手が俺の履くスラックスの股間部分にゆっくりと伸びる。

 

「その、これって……」

 

「いや違うって、東郷さんとのアレがフラッシュバックした所為だから」

 

 わずかながら勃起した怒張の存在をスラックス越しに夏凜は見つめる。

 その無防備な姿、隣に座る小柄な彼女は少し前屈みになるだけでシャツの内側を無自覚に男へ晒す。

 首元が緩んだシャツからは汗ばんだ胸部と、それを包み込むスポーツタイプのブラジャーが覗き見れた。

 

「ぁ……、ぇ……おっきくなって」

 

「……そんなに見るなよ」

 

 俺の股間に小さく驚きの声を夏凜は漏らす。

 身体は素直だね、と下半身がレアなシーンを目撃した事と凝視される事で更に勃起する。

 顔を赤らめるのは乙女故か、驚き故か、判断に困りつつも俺はゆっくりと立ち上がる。

 

「ほら、夏凜」

 

「ど、どうしたのよ……? ちょ、なんで目の前に……!?」

 

「負けたよ。まだまだ俺は修行が足りなかったらしい」

 

「ふぇ?」

 

 真面目な顔と真剣な声音の中、スラックス越しに存在を主張する怒張を見せつける。

 原因としては、記憶に生々しい東郷との情事と、夏凜の無防備な行動故にだろう。

 しかし、その程度で制御出来ず勃起してしまう己の逸物はまだまだ練度が不足していたらしい。

 

「そして、こうなったのは、夏凜の、所為だ」

 

「……わたしの」

 

 解りやすく、一言ずつ区切りながら座り込む少女に告げる。

 仄かに酩酊状態故か、抵抗の薄い夏凜の片手を取り、そっと股間に押し当てる。

 少女の手の感触と表情、高鳴る鼓動が自身に響く中で、夏凜は瞳を波面の如く揺らめかせる。

 

「――その、どうしたらいいの?」

 

 

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