第二十二話 貴方を思うと胸が詰まる
――僅かに扉を開けると見える光景がある。
部室で騒ぎ立てる少女達。友奈や東郷、樹と少女達が雑談をしている。
可憐な少女達が笑顔を浮かべる中、無言の少女が目を向けるのは一組の少女達だ。
「こんなところに入り浸ってていい訳?」
吐息をするように夏凜が風に告げている。
呆れを隠す事なく、既に卒業したはずの少女に話し掛けている。
風が卒業してからそれなりの日数は経過したはずだが、まるで卒業など無かったかのように勇者部部室に顔を出し樹の勇姿をカメラに収めようとする姿を捉える。
「――――」
どこか皮肉屋を気取る夏凜。
そんな彼女に揶揄うように、図星を突くように告げる風。
「あら~、もしかして寂しかったのかしら?」
「……まあ、少しはね」
「あら?」
夏凜はツンデレであるのは間違いないだろう。
ツンツンデレデレ。頬を赤らめ風から目を背ける夏凜に目を丸くする風。
その光景は心を和ませ、小説の創作意欲を高め、何よりも――、
「にぼっしーは可愛いな~」
「――園ちゃんの方が可愛いよ」
部室の扉で一人呟いた園子に声が掛かる。
大声というよりかは耳元に囁くような声音の持ち主は見知った人物だ。
彼の声が耳朶に響くだけで不思議と心音が高鳴り、頬が熱くなるのを感じた。
「メモしないの?」
「……しないよ~」
背後から抱き着くように園子の耳元に少年の声が囁かれる。
鼓膜を震わせ直接神経に介入するかのような声音には、どこか揶揄いの響きが含まれている。
持っていたメモ帳を背後にいる少年の視線から逃れさせるように制服のポケットに忍ばせる。
「ふーん」
「それよりも、かっきー。部室に入らないの?」
「園ちゃんこそ」
「かっきーが入ったら私も行くよ」
「じゃあ、園ちゃんが入ったら俺も行くよ」
「あ~、真似っこだー!」
制服越しに腹部に回された彼の腕にそっと触れてみる。
何気ない一時に笑みを浮かべ、何でもない会話に安堵感を抱いて――、
「ねえ、園ちゃん」
「何~……?」
「さっき、チラッとメモの内容が見えたんだけどさ」
+
舌の感触とは不思議な物だ。
触れれば触れる程にその柔らかさと甘さを感じ、ぬめり熱くなる様は生き物のようだ。
逃れようとする小さな舌を捉え絡ませると、おずおずと絡ませてきては攻守が入れ替わる。
頬の柔らかさを、舌の裏側の柔らかさを比較する。
比較して今度は歯茎をなぞり、唇を重ね合わせ、貪るように味わう。
ん、んっ、と鼻息がこそばゆい。
苦し気に、切なげに、愛おし気に、溺れたように鼻息を荒くする彼女はそれでも口腔行為を止めない。唐突に始めた事に抗議を上げていた少女の手は、今では大人しく背中に回されている。
沈んだ彼女を引き上げるように、そっと唇を離す。
一瞬離れる唇を追いかけようとして、その行為に顔を赤くする彼女は慌てて唇を閉じる。
架け橋となった唾液の糸がふと千切れ、少女の口端に珠を作る様を俺はジッと見ていた。
「……、きゅ、急に……」
「こうしたかったんだろ?」
「……今日はごーいんなかっきーだね~」
「――――」
「こんな壁に押し付けちゃって……ンッ、他の子とはしてないでしょ~」
「――――」
何度唇を塞いでも少女は口を開く。
何度でも塞いでほしいと、言葉に揶揄を含ませて薄紅色の唇を開く。
どちらかの唾液を淫靡に舐めとる彼女は流し目で此方を見やり挑発するように小首を傾げる。
確かに彼女の言う通りだ。
こういった行為は普段学校では行わない。
まして依頼で誰もいないとはいえ、勇者部の部室で密な触れ合いをする事などないのだ。
誰かに見られるかもしれない。
それで何かしらの弱みを握られるかもしれない。
そういった小心者の思考が働き、基本的には家でしか行為には及ばなかった。
「……」
「ん、ふ……」
それに何よりもタガが外れそうで嫌だった。
そんな思いを見透かしたように園子は恍惚とした表情で唇を求めてくる。
部室の壁に彼女の身体を押し付けて、片膝を制服のスカートから伸びた脚の付け根に捩じり込む。白色のニーソに包まれた少女の脚が時折暴れる事を気にせず、園子の手首を掴みながら強引に唇を重ねる。――そんな風にされるというメモの一文が、何故か俺を昂らせていた。
何となしに園子の髪を撫でてみる。
艶のある蜂蜜色の髪、この世界で初めて見た彼女の金髪こそ美の象徴である。
ハーフアップの少女をしばらく撫で続けると、目を細めた少女が安堵の溜息を吐く。
「もっと」
「……こうですか」
「よろしいのじゃ~」
手入れの施された少女の長い髪の毛に触れる。
髪型を崩さないように、グシャグシャにしたくなる欲求を抑えつつ手を這わす。
そうして彼女の髪を指で梳いていると、少女は俺の両頬を手のひらでそっと押さえる。
今度は彼女から唇を重ねてきた。
啄むように、親愛と優しさを感じさせるように唇を重ねられる。
はふーと吐息する少女は、何度目かの口付けの後におずおずと口を開いた。
「妾は満足なんさ」
「だが俺は満足してない」
「……ねえ、かっきー。そろそろ脚を退かしてくれないかな~なんて」
「――――」
「……っ」
「もうちょっと」
唇を離し、少女の小さな耳に唇を宛がうと少女は僅かに身体を震わせる。
園子の体重を感じる膝に力を入れると少女の股の柔らかさと温かさが伝わってくる。
何となしに膝を震わせると、腰を浮かせようとする少女の動きが目を向けずとも分かった。
「か、かっきー」
「園ちゃん、良い匂い」
「くすぐったいよぉ」
ただ触れ合うだけの行為だ。
愛撫とも言えない、少女の香りを楽しみ、彼女の身体に触れるだけの行為。
髪を撫で、頬に口付けし、耳元で言葉を囁き、耳朶を甘噛みする。それだけの行為。
目が合う。
やや濡れた目と窄められた唇。
何度目かのキスをし、ニーソとスカートの隙間から覗く腿に手を這わせる。
「触り方がいやらしいよ~」
「駄目?」
「……かっきーのえっち」
膝を少女の脚の間から剥がし、壁に縫い付けていた彼女を解き放つ。
弛緩した彼女の身体はゆっくりと俺にもたれかかり、首元に園子の頬が触れる。
ぎゅうっと園子は力を籠めて俺の背中に腕を回すと同時に僅かに首元に痛みを覚える。
「……噛みつくなよ」
「がおー」
ふわりと園子の髪が揺れ動き、少女の匂いが鼻腔を擽る。
同時に、自らの首元に小さな噛み痕が出来た事を見ずとも悟った。
抗議の意味も込めて少女の小振りの臀部を制服越しに揉みしだくと独特の弾力を感じる。
むにゅりと形を変える尻肉は、少女が押し付けてくる双丘とは柔らかさが異なる。
手のひらで広げ捏ねるようにして遊ぶ度に吐息する園子に、先ほどの言葉への反論をする。
「えっちなのはどっちだよ」
「……ぇ、ぁ!?」
「こんな紐なんて履いちゃって」
違和感に気づいたのか、目を見開く園子を余所に俺は戦利品を手にする。
レースと百合の花の装飾がされている紫色の聖布は僅かに染みと蜜液が付着していた。
「あっ、返して、えッ!!」
臀部を叩くと肉が震えパチンと音が部室に響く。
悲鳴を上げる園子を余所に、少女に抱き着いたまま何度かスパンキングを行う。
そうして自らの手のひらで少女の身体が奏でる音を堪能した後に、少女の下着を弄ぶ。
「両方の色を揃えているのは流石だよ、園ちゃん」
「~~~~っ!!」
右手に少女のショーツ、左手にはブラジャーを。
東郷程ではないが睡眠によって育ったお嬢様の乳房を包み込むブラジャーを握りしめる。
バタバタと暴れだす園子を押さえつつ、制服越しに感じる少女の生乳の感触を堪能する。
「今日はそのままで過ごしたら?」
「……かっきー」
「いつの間に取ったって? 俺を誰だと思っているんだい?」
「かっきー……?」
「そんな怖い顔しても返さないよ?」
「かっ……ひぅ!!」
半眼で此方を見やり、手の中にある聖布を取り返そうとする少女の恥部に指を滑り込ませる。
スカートの内部、少女の秘裂を隠す物は何もなく、人差し指を怒張の如く媚肉に味わわせる。
「ゆ、び……っ」
慌てて両手で俺の手首を掴む園子。
どこか焦りを見せる少女の白い首筋に齧り付くと悲鳴を上げる姿を俺は見やる。
少女が悲鳴を上げる度、艶のある声を上げる度に人差し指を媚肉が締め付ける。
「抜いてよぉ……」
「いいよ」
「んっ……」
ずりりと人差し指を第一関節部分まで抜き出し、再度押し込む。
身を悶えさせる園子の全身から色濃い雌の香りが漂い、全身が熱を帯び始める。
「や、ぁ……、ぁっ」
普段は雄の怒張を咥える為に存在する少女の恥部。
今は指を咥えながら、上下に動かす疑似的なピストンに、溢れる蜜液が腿を伝う。
途中人差し指よりも中指の方が好みだと媚肉が震え、返礼として少女の弱点を指先で弄る。
「ぁ、……ぁー……」
ぱたぱたと部室の床に滴を垂らし、しかし少女への愛撫は止めない。
耳まで赤くする彼女、親指で陰核を、中指で媚肉を愛でると喘ぐ少女は腿を震わせる。
今にも床に座り込みそうになる少女を無理やり立たせながら、刺激を与える事を止めない。
「気持ち良い……?」
「……うん」
「ん。じゃあ、続きは家でね」
「え」
何を言っているのかと此方を見上げる園子に笑い掛けると同時に部室の扉が開く。
ガラリという音と同時に、ただいまーというどこか倦怠感のある声音には聞き覚えがあった。
「おつかれ」
「あっ、お疲れ様です。亮さん」
「――――」
扉を開け入ってきたのは樹だ。
姉譲りの金髪、どこか小動物を連想させる姿なれども現勇者部部長である。肝心の姉は大分前に妹の勇姿を視界に収めた後、一足早めに自宅に帰っている。
扉からは死角となる場所から顔だけ出して応対する。
肩を揉む少女にお茶でも注ぐかと思うが、制服を掴む少女が一人。
「かっきー」
「それにしても樹。いや部長、依頼の方はどうでした?」
「け、敬語は止めてください。……えっと、皆喜んでくれましたよ」
「それは良かった」
「亮さんは何をしてたんですか?」
「うーん、つまみ食い」
「……?」
「かっきー」
呼びかける園子を無視して俺は樹と会話する。
微妙に不審がる樹だが、普段通りに接する俺に微笑を浮かべ、パイプ椅子に座る。
「そうだ、樹」
「はい?」
「タロットカードでさ、占ってみてよ」
「いいですよ。でも亮さんって大体死神しか出なくて――」
「■■■」
承諾を得るのと、名前を呼ばれるのはほぼ同時であった。
一瞬、誰に名前を呼ばれたのか認識出来ず、誰がその名前を呼んだかを理解して――、
「亮之佑」
甘い花の香りが金色の髪と共に漂う。
自分の名前を呼ぶ声、金鈴の声音で呼ばれるだけで酷く心を震わせる。
園子の細い腕がゆるりと首に巻かれる。それはさながら獲物を狙う毒蛇の如く。
顔は首の裏に乗り、表情は見えない。
少し虐め過ぎたかもしれない。何か気の利いた言葉でも――、
「あとでね」
ちゅっと園子の舌が俺の首裏を舐める。
背後から抱き着き、奇跡的に樹にも気づかれない中、甘く暗い声が胸をくすぐる。
少女の声は小さくて、甘やかに囁く声音は微毒のように、亮之佑だけに静かに届く。
振り向けないから見えない。分からない。
だから――、
「逃がさないよ」
――微笑を浮かべた女の瞳には、何が宿っていたのだろう。