※この作品はR-18です。

果てなき夜で、貴方に愛を   作:毒蛇

31 / 180
第二十三話 I could die for you

 乃木園子に名前と渾名どちらを呼ばれることが多いかで言えば、圧倒的に後者だ。

 名家のお嬢様でありながらも気さくさも兼ね合わせている彼女が付ける渾名は独特な物があるが、それでもそこまで仲良くない人間に対しては渾名すら付ける事はないから。

 

 要するに、彼女に渾名で呼ばれる事は嫌いではなかった。

 幼少期から何度も呼ばれ耳に染み付いた渾名を彼女から呼ばれると嬉しく思える。

 前世どころか今世でもこんなに長く渾名で呼ばれた経験などない。だからこそ月明りのような微笑を浮かべた彼女に呼ばれる度に、確かな親愛と信頼を感じていたのだ。

 

「……」

 

「……」

 

 そして現在、加賀家リビング、ソファ上にて。

 我が愛すべきお姫様は、無言のまま小説を読んでいた。

 

 記憶にある限り視力は悪くはなかったはずだが、黒縁の眼鏡を掛ける私服姿の少女。白色の縦セーターに黒色のプリーツスカートから伸びた素足、腰元には猫の枕が一つ。

 一枚絵として飾られてもおかしくはない一輪の花だが本日はわずかに刺々しい。

 

「制服から着替えたんですね……」

 

「…………」

 

「その……」

 

「亮之佑」

 

「――――」

 

 ぺらり、とページを捲る園子。

 此方を一瞥する事なくポツリと名前を呟く少女の声音が俺の耳朶に響く。

 違和感と珍しい声音に心音が高鳴りながらも、微笑を浮かべて俺は対応した。

 

「どうしたの?」

 

「……今日の夕ご飯は?」

 

「決めてないけど。……何か要望でも」

 

「……じゃあ焼き鳥かうどんがいいかな」

 

「あいあい」

 

「『分かりました、お嬢様』」

 

「……分かりましたわ、お嬢様」

 

 会話の度に名前を連呼する少女の心意は如何なるものなのか。

 自宅にいる為、神樹の神棚に奉納出来ずポケットの中で眠る聖布達の感触を確かめながらソファから立ち上がろうと脚に力を入れようとするも、園子に手を掴まれる。

 

「――――」

 

 柔らかい少女の手のひらと細い指が俺の手を絡めとる。

 特に力が籠っていないにも関わらず、園子の手に思わず俺は脚を止めた。

 

「……何?」

 

「……、えっと……、どれくらいで出来るのかな~って」

 

「そんなに時間は掛からないけど……、お腹減っているの? ぼたまんならあるけど」

 

「あれはちょっと……」

 

 ぼたまんとは、ぼた餅を白いパン生地で包んだ物だ。

 にくまんやピザまんの親戚のような物で、不思議な味わいを楽しめる。

 そんな神秘の食品を勧めるが、そっと首を横に振り断る少女はある方向を指で差す。

 

 部屋の隅に忽然と置かれた衣服。

 どこかで見た事のあるソレは、小説や漫画などで見る執事の燕尾服だ。

 いつの間に用意したのかと振り返り少女を見やるが、一瞬目が合った園子はそっと目を逸らし無言のまま着用するように促してくる。

 

 ――仕方がないので着替える。

 

「……ん? あれ、早着替え~……?」

 

「見ての通り」

 

「『見てのとおりです、お嬢様』」

 

「……見てのとおりです、お嬢様」 

 

「よきかな~」

 

 一瞬目を輝かせる少女は、しかしそっと明後日の方向を向く。

 その横顔を見ながら要望に応えるべくエプロンを着用し、キッチンに向かう。

 

 焼き鳥と言われるとタレや塩など、屋台で食べる物を想像するだろう。スーパーでも似たような物は売っているが、やはりキッチンがある以上自分で作りたい物である。

 幸いにも焼き鳥は数日前に仕込みはしているので本当に焼くだけなのだが。

 

 うどんに関しては、もはや第二の主食と言えるだろう。

 本日は蟹玉うどんに焼き鳥、ツナサラダにしようとしばらく黙々と準備を行いながら、俺は園子の態度の豹変具合について思考を巡らせていた。

 

「やっぱり、聖布を取った事だろうか……」

 

 しかし神樹に奉納している園子の聖布はそれなりにあったりする。

 今更怒ったりはしないはず、いや実はお気に入りだったとか……等と考えていると調理は既に終わりを迎え、皿をリビングに運ぶだけとなった。

 そうして、五分前ぐらいから壁から顔を覗かせて存在を主張する少女に振り返る。

 

「……じぃー」

 

「……手伝うか?」

 

「うん」

 

「熱いから気を付けて」

 

「うん」

 

 

 

 +

 

 

 

 食事の一時はあっという間であった。

 ただ普段と異なり、輪にかけておしとやかなお嬢様は無言のまま、──瞳を煌めかせつつも焼き鳥を頬張り、うどんを啜る行為を惚れ惚れする程に綺麗な動作で行った。

 どんな時でもお腹は減る物で皿の上の料理が消える頃には、むすりとしていた園子嬢の様子も通常時の状態へと戻り始めているのが見て取れた。 

 

「ご馳走さま、美味しかったよ」

 

「はいよ」

 

「片づけは私がやるんさ」

 

「いや、いいよ。園子は座ってて」

 

「……」

 

「……、じゃあ一緒にやるか」

 

「うん」

 

 キッチンで食器を洗い、隣の少女に渡す。

 金色の長い髪の毛を揺らし、受け取る少女は丁寧に水滴を拭き取っていく。

 そうして暫く無言で後片付けを行い、皿が少なくなった頃、ポツリと園子が口を開いた。

 

「亮之佑くん」

 

「何?」

 

「許して欲しい?」

 

 何を、か。当然彼女による名前呼びの事だろう。

 どこか気品のある佇まい、吐息と共に紡ぐ名前は一呼びごとに魂を震わせる。ただ彼女に名前で呼ばれるのは嬉しく思えると同時に、どこか酷く他人行儀に感じてしまう。

 だから彼女の問いかけに対し、俺は皿を拭きながら小さく頷いた。

 

「――まあ」

 

「……ふーん、そうなんだ~」

 

 改めて隣の少女を見ると、流し目で俺を見やる園子は揶揄うような声音を響かせる。ゆったりとした歩幅で俺を引き連れる園子はリビングのソファに再度腰掛ける。

 

「いいよ」

 

「え?」

 

「条件付きで許してあげる」

 

「条件?」

 

「うん」

 

 どこかの国の女王様的なオーラを醸し出す少女は俺に手招きをする。

 小首を傾げ、自らを抱くように腕を組む園子は胸を張って告げた。

 

「――揉んで?」

 

「よろこんで」

 

 柔らかくゆったりとしたセーター越しに園子の胸に手を伸ばす。

 胸を張る少女、しかしそんな行為をせずとも服越しに分かる程健やかに大きく成長しているであろう園子の乳房はやはり睡眠による賜物なのだろうか。寝る子は育つのだろう。

 

 持ち上げるようにして揉むと、制服から着替えたのかブラの感触が手のひらに伝わる。

 流石にノーブラの趣味は無かったのか、或いは型崩れ等を気にしていたのか、流石に真偽を問いかけるつもりはなく、今はただ少女の命じるままに胸を揉みしだく。

 

 服とブラジャー越しではあるがもちもちとした肌、柔らかい弾力と形の整った少女の乳房は容易く想像でき、流石に東郷程の大きさではないが、風に迫る程の大きさの美乳であり確かな母性を主張している。

 そんな感想を抱きつつ園子の双丘を楽しむが、ふと両手首を掴まれる。

 

「ち、違うよ~。肩、肩だよ」

 

 恥ずかし気に顔を赤らめる少女はそっと自らの乳房を揉みしだく俺の手を外し、自らの肩へと誘う。そのまま髪の毛を払いのけ、露わになる少女の肩に手を置かせた。

 

「あっ、そっちね。なんだよ、まぎらわしいな」

 

「いや~、『揉む』で即座に私のおっぱいを揉むかっきーもかっきーだよ~」

 

 胸を反らして偉そうに揉んでと言われると、つい目の前の果実に触れたくなる物だ。とはいえ、あくまでマッサージ的な意味合いなのだと互いの連携も取れた為、改めて少女の肩に乗せた手のひらに力を籠める事にした。

 

「そんなに凝っているの?」

 

「ん~……、少し身体が重いな~って」

 

「友奈に頼めば? 物凄く解してくれるよ」

 

「ゆーゆのは、うん、ちょっと凄すぎるから……」

 

 それは暗に俺のは大したことがないという意味なのだろうか。

 確かに俺のマッサージテクニックなど友奈の足元にすら及ばないだろう。だがそれでも器用さや大道芸に関しては僅かにプライドがある。何よりもマッサージに関してはある程度友奈自身から手解きを受けている。

 ついでに言うならば、ツボさえ押してしまえば何とかなるのだ。

 

「あー、お嬢様」

 

「なーに、カガスチャン?」

 

「要するに、園子様をマッサージしたり悦ばせれば許して貰えると」

 

「そうだねー、今日一日私の執事さんとしてずっとかな~」

 

「ずっと?」

 

「んー、肩だけじゃなくて、えっと……」

 

 既に時刻は夜の七時を少し経過した頃だ。

 ニュースでは近畿地方に脚を踏み入れたアナウンサーと防人のインタビューが放映されている。画面越しに見知った顔を見つけつつも、園子の肩を揉み始める。

 

「肩だけじゃなくて……、耳とか?」

 

「そうだね……、じゃあ全身をお願いしちゃおうかな~」

 

「じっくりねっとりとご奉仕?」

 

「言い方がいやらしいよ~、アルフレッド=カッキー」

 

「誰?」

 

 だが否定はしない園子は左右に小さく頭を振る。 

 

「シェフのおまかせで~」

 

「じゃあ朝までじっくりと」

 

「私、煮込まれるの~……?」

 

「トロトロに」

 

「ひゃぁ~」

 

 親指で園子の肩甲骨付近を押すと、ん、んふっ、と吐息する園子。指圧師を目指した記憶は無いが一時期身体のツボについてという書物に嵌った事がある。そうして磨いた腕は、時々訪れる安芸や隣人達を喜ばせる程度には成長している。

 

「そんなに凝っているか?」

 

「ん~、最近は少し忙しいからねー」

 

 あー、と声に出す少女の姿は夏に扇風機の前で佇む幼少期の頃を彷彿とさせる。

 懐かしい思い出に頬を緩めながら、首の付け根や背中、腕と静かに揉んでいく。

 

「そういえば、しばらく大社の方に行くんだっけ」

 

「そう~、私だけぇ~」

 

「明後日からだっけ」

 

「そうなんさ」

 

 身体を揺らす度に園子の絹の如き金髪が指をくすぐる。

 何だかんだ世間は公表された世界の真実にまだ収束しきれてはいない。政府や大社を批判する声、神樹を信じる声など、小さな芽が芽生え始めているのだ。

 そうした情勢であっても、乃木家という地位は役に立つ。加賀でも東郷でもなく知名度も高い乃木家である事に意味があるらしく園子はときおり大社に力を貸している。

 

「かきにうむを補充しないとね~」

 

「なんじゃそれ」

 

「あれれー知らないの?」

 

「知らないです」

 

 苦笑しながらソファに少女を横たえさせる。

 うつ伏せになる園子、顔を近づけて剥き出しの白い素足、足裏や足首、太腿をゆっくりと揉み解していく。親指で円を描くように乙女の柔肌をマッサージしながらツボを突くと園子が小さく呻いた。

 

「ん……」

 

「痛い?」

 

「ううん、良い感じだよ~、ぁ、ぁー……んっ」

 

 丁寧に、愚直に、少女にマッサージを行う。 

 園子を仰向けにし、脚を手で、指で揉み、撫でていくと無意識なのか意識的なのか蜂蜜のような甘い声音を少女は聞かせる。

 乙女の声音に徐々に艶が混ざるのを感じながら、しかし丹念にマッサージを続ける。

 

「……ふくっ!」

 

「――――」

 

「ん、んんっ」

 

 僅かにスカートの裾を捲り、脚の付け根を揉むと少女が声を上げる。

 ごほんと咳払いをする園子は自らの声を無かった事とし、赤い顔を腕で隠す。

 羞恥を隠そうとする少女、その姿を見ながら何となく細い腰に触れると――、

 

「! あ、あはは、くすぐったいよ~」

 

「――――」

 

 笑顔で軟体生物のように悶える姿に、ふと加虐心がくすぐられる。

 園子には今後も笑顔でいて貰おうと、マッサージついでにスキンシップを行うべく園子の背中と弾力のある太腿に両手を差し込む。

 

「……」

 

「あれれ、どうしたの……?」

 

 ソファに仰向けになる園子の身体を静かに抱き上げる。

 腕を顔から外し、瞳に疑問を宿す少女は自らの身体を抱き上げる俺を見上げる。

 

「落としたりはしないって」

 

「そこは心配してないよ〜」

 

 琥珀色の瞳を煌めかせ告げる園子に微笑を浮かべて、俺は彼女をゆっくりと絨毯に下ろす。

 蜂蜜を垂らしたように絨毯に広がる金髪、猫のように喉を鳴らす少女はジッと此方を見上げ、囁くように小声で問いかける。

 

「何するの?」

 

「スキンシップ」

 

「……沢山してると思うんだけどな~」

 

「どれだけ取っても足りないよ。そのにうむと交換しようかなって」

 

「何それ~」

 

「知らないのか? ゆなにうむ並みに大事な要素だぞ」

 

「ふふっ……」

 

 彼女との触れ合いで飽和する事も飽きる事もあり得ない。

 どれだけ会話をしても、どれだけ絆を紡いでも、どれだけ身体を触れ合わせても。

 とはいえマッサージの延長といえば微妙にはなるかもしれないが、笑い声を上げて悶える園子の姿というのは何故か、不思議と、嗜虐的な気分になってしまう。

 つまり――、

 

「園ちゃんが悪いんだよ」

 

「あははは……っ!! ああっ~!!」

 

 一切の遠慮なく絨毯に寝転がる少女、セーター越しに腋や首元を指先でくすぐると、横に首を振り笑みを浮かべる園子はバタバタと脚を動かし、笑い声を上げた。

 白い手で俺の腕を叩きながら、しかしくすぐりの拘束からは逃れられない。

 

「あはっ! やめっ、やめははは……っっ!!」

 

 暴れる園子を丁寧に押さえつけ、セーターの隙間から覗く脇腹を指でなぞると程良い脂と柔肉の感触が伝わってくる。その感触が好ましく蜘蛛が這うように五本の指先が柔肉を蹂躙し、少女の笑い声を奏でさせた。

 

「くひゅ! くっ、ぁ、はは、やめ……っ」

 

 細い腰を人差し指がラインをなぞり、中指が臍に円を描く。

 薬指は僅かに汗ばむ首筋を撫で上げ、小指は捲れたスカートから覗く脚の付け根を突く。

 黒色のスカートから覗くピンク色のショーツ越しに恥部を撫で、足裏をくすぐる。

 

「あははははっ……、あっ、はっ、も、もうやめ……」

 

 リビングに金鈴の笑い声が響き渡る。

 

「ぁ、っ、ん、あはは、ぁ……」

 

 少女の笑い声と暴れる音が響く。

 

「あっ、そこ、んっ! あはは、はひゅ……っ!」

 

 髪の毛が乱れ、衣服が擦れ、捲れる音が響く。

 しばらく無心で少女が笑い乱れる姿を視界に収め、押さえ、思わず哂って――、

 

 

 

 +

 

 

 

「……」

 

「――はっ!」

 

 ――どれだけ時間が経過したのか。

 耳朶を唇で挟んでいた俺は、ふと正気を取り戻した。

 

 埋めていた長い金髪から顔を覗かせ、痙攣したように震える少女を背後から抱きしめている事に気づいた俺は、慌ててわしゃわしゃと人を笑わせ続ける蜘蛛と化した自らの両手を人の手へと戻した。

 ひとまず目の前の惨状に一言。

 

「……」

 

「なんという事でしょう」

 

 ふにゃふにゃと呟く園子の声は小さく、言葉を成しているかすら不明だ。

 ぐったりと力の抜けた肢体、セーターはいつの間にかソファに丁寧に畳まれている。

 スカートは捲れあがり、スカートの裏地と同時に桜の刺繍を施したショーツが見える。

 

 ブラジャーの肩紐はずれ、激しい運動をしたかのように絨毯に倒れ伏した半裸の少女。

 昼頃に頂いた紫色の聖布と同系統らしく腰付近は紐のみだが、一体何が起きたのか紐が解けてしまっている。辛うじて恥部に張り付いているのは汗のおかげだろうかと、そっと結び直す。

 

「ぁ……ぅ……」

 

「――――」

 

 少女の身体を流れる汗が照明に反射し、呼吸で上下する臍に溜まっていく。

 激しい運動をした少女に僅かに触れると敏感肌なのかビクンと身体を震わせる。

 ――唐突に太腿を撫で上げてみる。

 

「ふぃ!?」

 

「一体どうしたんだ」

 

「……」

 

「一体どうしたんだ」

 

「……、かっきーはくすぐりフェチかもね~」

 

「――――」

 

「あと結構Sだよね」

 

「そんな事はないよ。園ちゃんの方がSだよ」

 

 どちらがS属性かなどどうでも良い。

 ただ少女が悦び、啼き、喘ぎ、咲く姿を見たいだけなのだ。

 

 半眼で見上げる少女に笑い掛けるが、ぐったりとした少女は僅かに頬を膨らませる。変態さんやケダモノだという罵倒を受けながら共に上体を起こすと少女は俺の首筋に小さく噛みつく。

 

「う~~」

 

「悪かったよ」

 

「また怒るよ?」

 

「偶には名前呼びも好きだよ」

 

「……もう」

 

 抱き着いてくる園子を拒絶せず、汗ばんだ少女の裸体を受け止める。

 そうして暫く触れ合っていると自らの現状に気づいたのか、慌てて少女は身体を離す。

 

「お風呂!」

 

「うん?」

 

「かっきーの所為で汗かいちゃった~。それに朝までコースなんでしょ?」

 

「……ああ」

 

 小首を傾げる園子の首筋にそっと唇を触れさせ、俺は頷く。

 

「あったまりたいな~」

 

「もう一回くすぐる? あったまるよ」

 

「それはちょっと……、まったりとしたいな~」

 

「じゃあ、まったりと風呂に入って、しよっか」

 

「――――」

 

 下着姿の少女は無言のまま此方を見上げる。

 どこか期待を宿すように、長い睫毛を震わせて、小さく頬を緩める。

 そうして小さな身体を抱き上げて風呂場へと向かう中で俺はふと立ち止まった。

 

「園子」

 

「なーに?」

 

「その下着、似合うよ」

 

「そう? 変じゃない?」

 

「似合うよ」

 

「……かっきー」

 

「うん?」

 

「――ありがとうね」

 

 

 

 +

 

 

 

 加賀家別宅の風呂場は、一般家庭の風呂場とそれほど変わりない。

 昔乃木家を訪れた際に入った温泉と見間違える程に広い浴室という訳でもないが、多少は広くそれなりに大きな湯舟に並々に注がれた乳白色のお湯から白い湯気が天井に昇っていく。

 

「はふ~」

 

「は〜」

 

 ばしゃんとお湯が溢れていく。

 二人分の男女が入り込んだ結果、溢れ出した湯水が床のタイルを流れていくのを一瞬勿体ないなと思いつつも、背中を反らし両手を上に上げて溜息をする少女に目を奪われた。

 んー、と声を出す園子は髪の毛がお湯に付くのを避ける為か、アップにしている。

 

「その髪型、良いね」

 

「これ~? ありがと~。……かっきーってさ」

 

「うん」

 

「長い髪の人が、こうやってアップにしてうなじとか見えるのにグッとくる人でしょ」

 

「……」

 

 そうだろうか。そうかもしれない。

 少なくとも東郷や園子と言った長髪の美少女が普段は下した髪の毛を纏めたりする姿に何かを感じるのは確かだ。普段の生活では見ない新鮮さもあるからかもしれない。

 園子の言葉に何と答えるかに窮していると、再び少女の口が開くのが先だった。

 

「それよりもお風呂に入ると、なんとなくあーって言いたくなるよね」

 

「まあ分かる。言う必要ないけど、よっこいしょっていう感じの」

 

「それそれ~」

 

 全身を包み込む暖かいお湯が細胞に染み渡るのを感じる。

 向かい合いながら乳白色の湯水を手で掬う園子の裸体は残念ながら乳房の上部分より下を見る事が出来ない。チラチラとピンク色の乳頭が見えるが、視線に気づいた少女がそっと腕で隠す。

 

「ん~……?」

 

「いや? 何も?」

 

「かっきー。目は口ほどに物を言うんよ、えっちー」

 

「かっきーをえっちーみたいに言わないでくれるかな? あれ? 逆?」

 

 長い髪をアップにした園子は自らの肩にお湯を手で掛けながら告げる。

 どこか揶揄うような口調で眦を和らげる少女はじりじりと此方に迫り寄る。

 白い裸体はお湯の所為か火照り、普段は見えないうなじも相まって色っぽく見える。

 

「ん」

 

「あ~、元気だね~。ん~?」

 

 此方ににじり寄る少女は手探りで反り立った怒張を探り当てる。

 滑らかな両手が湯舟の中、その手のひらが硬さと長さ、太さを確かめるように肉棒に触れる。僅かに残るぎこちなさは持ち前の積極性がカバーし、楽しそうに怒張を握る。

 

「私で興奮したの?」

 

「……ぅ」

 

「こんなに大きくしちゃって~」

 

 柔らかな手のひらで亀頭を撫で、細い指先が雁を擦る。

 ゆっくりと薬を塗り込むような丁寧さで、焦らすように肉棒を上下にしごく。

 四つん這いで肉棒を弄る少女は此方の反応を確かめながら奉仕行為を行う。

 

 ちゃぷちゃぷと水面に波を起こしながら、園子の身体が近づく。

 ジッと此方を見上げる琥珀色の瞳と数秒程見つめ合っていたが、先に目を逸らしたのは俺の方だった。ただ手持ち無沙汰の両手は目の前で浮かぶ二つの果実に伸ばされる。

 

「あ~、触っていいなんて言ってないよ」

 

「許可が必要だっけ」

 

「そうだよ~」

 

「許可を下さい」

 

「いいよ」

 

 この会話の間も既にもちもちの彼女の乳房に触っていたが問題はないらしい。

 ぬくぬくとした驚きのやわらかさと言えば良いのだろうか、パン生地とプリンの柔らかさが混ざり合ったような園子の乳肉は、たゆんたゆんと湯舟と手のひらの中で形を変える。

 ――いつまでも触っていたいと思わせる母性の塊だ。

 

「……」

 

「ん……」

 

 ちゃぷちゃぷと水の音だけが浴室に響く中、互いに無言で相手の身体を弄り合う。

 スキンシップと言えば過剰だが、愛撫と呼ぶにはどこか遊びとも呼べる物がある。例えば布団の心地良い柔らかさについ表面を撫でてしまうような、性行為的な意味合いはあまり含んでいない。

 少なくとも意識上ではそのつもりだったが、眼前の少女の様子はそうではないようだ。

 

「ほんと……ぁ、……かっきーって、っ、テクニシャンだね」

 

 少女の乳房を持ち上げるようにして手のひらで捏ねるように揉む。

 奉仕行為をしているからか、それとも愛撫とも呼べぬ行為に身体は悦んでいるのか、ザクロの実のように硬さを帯びる乳首をそっと指が触れると少女は呻き喘ぐ。

 

 吸い付く少女の柔肌に手を這わせ、薄いピンク色の乳輪を指でなぞり、園子の性格に反してツンと尖る乳頭は雄に触ってと言わんばかりに上を向いているのを確かめる。俯き、表情を隠す園子の様子と怒張を弄る手の勢いが衰えるのを感じながら、静かに乳輪をなぞる。

 硬さを帯びた乳首にだけは一貫して触れることをしない。

 

「ね……かっきー」

 

「――――」

 

 そうして少女の極上のプリンのような乳房を遊び、少女の蕩けた声をときおり聞きながら互いに触れ合っていると、焦らされる事に我慢を忘れたのか甘い吐息と共に少女が呼び掛ける。唇と唇が触れ合うような距離で、きめ細かな肌が見える距離で囁かれる。

 彼女の琥珀色の瞳に確かな熱を宿しているのが、この距離でも分かる。

 

「意地悪しないで」

 

「――――」

 

 懇願するような、慈悲を乞うような、雄を誑かす甘い声音。

 一瞬で身体がのぼせてしまいそうな少女の声は、熱い蜂蜜のように蕩けた物だ。

 いつの間にか湯舟の中で抱き合う形になると、少女の薄い尻肉が怒張を叩くのを感じた。

 

「かたいね~」

 

「ぐりぐりするなよ」

 

 位置が悪いのか怒張を尻肉で挟み込もうとする園子は湯舟の中でハグを求める。

 甘えん坊にジョブチェンジしたのか、豊かな双丘を俺の身体に押し付け、顔を首元に埋める少女の表情は窺うことは出来ない。

 ただ俺に出来ることは、滑らかな少女の背中を撫で抱きしめ返すことだけだ。

 

「――――」

 

「――――」

 

 湯舟の中で少女の両脚が腰に回されるのを感じる。

 下を見れば園子の髪の色と同じ薄毛が湯舟に揺れている様を見ることが出来るのだろうが、あいにく湯舟の色は乳白色で少女の上半身しか見る事は出来ない。

 放置すれば冷えてしまいそうな園子の肩に掬ったお湯を掛けると小さく囁かれる。

 

「……、もうちょっとだけこうしてて」

 

「……今日は甘えん坊なんだな」

 

 腹部と腹部を擦りつけ合い、胸板に乳房が潰れる。

 腰に両脚を回す彼女がどんな表情をしているのかは湯気で見ることは叶わない。

 ただ――、

 

「……そうだね、きっと私が一番甘えん坊だと思うよ」

 

「――――」

 

 ぎゅうっと抱きしめる園子への返答は、腕に力を籠めるだけで十分だった。

 頬を擦りつけてくる少女の柔肌を全身で味わい、しかし今日はこれで終わる事は無い。

 時折腰を浮かせる園子の媚肉と亀頭が擦れる度に、んっ、ん、と至近距離で自らの嬌声を耳元で囁く少女に、怒張ははち切れそうな程に膨張し痛い程に反り立っていく。

 

「……これ、気持ちいいね」

 

「……っ」

 

「今、ピクってした~」

 

 そんな風にして十分か、十五分か、正確に計れる物は自らの心音しか分からない状況で、園子が漸く身体を離した頃には随分と身体が温まり、絡む視線には熱が籠るのが分かった。

 互いに無言で、ただ何を行えば良いのか、何をしたら良いのかを察知した。

 

 何十回目かの素股を行って、漸く俺は園子を伴い立ち上がる。

 久方振りに湯舟から身体を出すと大量の滴がぱたぱたと滴り落ちる。

 それは園子も同じで、ただ白い肌に差す朱色が美しく思え、無言のまま少女を縁に座らせるとポツリと園子は自らの腹部に手を乗せながら尋ねる。

 

「……いれるの?」

 

「……」

 

 確認とも疑問とも思える声音に反射的に頷き返そうとして──はたと俺は止まる。

 このまま挿入すれば、挿入しただけで暴発寸前にまで高められた怒張では彼女を満足させる事など不可能だろう。いや芸達者兼奇術師以前に男としては避けたい事象だ。

 

 少し休憩を入れたいが、そんな事を口にすれば眼前の少女がその頭にある知識を総動員し、手なり腋なり口なり使い全力で射精させようとしてくる気がする。

 ――というような事を顔に出した訳ではないが園子は察知したらしい。

 

 ここぞとばかりに素股で暴発寸前の怒張から子種を搾り出そうと再度湯舟に身体を沈み込ませ俺の腰に張り付き、その小さな唇で亀頭に吸い付き舌が雁裏を舐め始める。

 頬の裏の柔らかさと園子の口内のぬめりが怒張を刺激し、思わず奥歯を噛み締める。

 

「あ、ちょっと」

 

「はっひ、らしてよ」

 

「くっ」

 

「らひて~」

 

 上目遣いで少女が口を動かすと舌のざらついた感触に思わず口ごもる。 

 少しずつ性技が上達している園子嬢は口腔奉仕も躊躇う事は無いらしい。

 出して出して~と懇願する少女に限界を感じ、咄嗟に少女の頭を掴んでしまう。

 

「んんっ!!」

 

 苦しそうに声を上げる少女の喉奥に噴水の如き勢いで精を注ぎ込む。

 目の前が白く染まりふらつきそうになるのを堪えながら、びゅううっと園子の喉に大量の白濁を流し込む。

 長い射精が終わり吐息する俺だが、咽る園子の姿に我に返り背中を摩る。

 

「……大丈夫か」

 

「げほっ……ぁー、うん、なんていうか凄い濃厚な、ねばっこい感じ……」

 

 ほんわかと告げる少女の唇には僅かに白い糸が引いている。

 吐き出す訳でもなく精液を飲み切った少女は目の前の怒張を撫でる余裕すら見せている。

 ――だが、そもそも今日は園子を癒し、悦ばせる時間ではなかったのか。

 

「私ばっかりよりもかっきーも楽しめたら、私も嬉しいな~って」

 

「……、……そっか、それじゃあ今度は俺の番だな」

 

 冷静になり冷え切った思考が自らを責め立てる。

 健気な少女を今度こそ悦ばせる為に俺は湯舟に沈んだ彼女の裸体を縁に座らせ、代わりに自らの身体を湯舟へと沈み込ませる。

 自然と裸体の少女の股座の前に座り込む事になり、その状態に羞恥を感じたのかそっと恥部を手で隠そうとする園子に俺は告げる。

 

「園ちゃん、見せて」

 

「……恥ずかしいんよ」

 

 口を尖らせて頬を赤らめる少女はそっと両脚を閉じようとする。

 そうして花園への道が途絶えようとするのだけは阻止するべく太腿を撫で、恥部を隠す手に顔を近づけ指を舌でそっと舐めとる。

 

「ん……っ」

 

「園ちゃん、今度は俺も園ちゃんに気持ち良くなって欲しいから、ね?」

 

「……こんなところ見せるの、かっきーだけだからね」

 

「知ってる」

 

「もぉ~」

 

 そうして少女は手を外してこんなところ――乙女の恥部を俺に見せる。

 そっと太腿に触れると理解したのか、今更ながら恥ずかしがる少女は、しかしゆっくりと脚を開き俺の顔をより自らの恥部へと近づかせる。

 

 陰唇は僅かに開き、薄い陰毛はお湯で張り付いている。

 その奥の媚肉や僅かに膨らんだ陰核も、目と鼻先の距離で見る機会はそうそうない。

 無言で少女の顔を見上げると、赤らんだ園子の顔は年相応に羞恥と喜色に富んでいた。

 

「――――」

 

 お上品に行うつもりはなかった。

 ケダモノのように、彼女が恥も外聞も忘れて悦ぶように奉仕をするつもりで。

 その事だけに専心する為に、わざと音を立てて貝状の肉に口を開けて吸い付いた。

 

「あっ!!」

 

 風呂場に響く園子の声。

 慌てて口を押さえる姿を目端に捉えながら的確に少女の媚肉を味わう。

 舌を媚肉に挿入し、同時に鼻先で薄毛に隠れたクリトリスを見つけ、丹念に擦ると少女の甘い声音を奏でるのに時間は掛からなかった。

 

「……ふ、……ぅ……」

 

 くちゅくちゅと水音が響き、声を抑えようとしても漏れる園子の声。

 水音が響く度に媚肉が蠢き、声が漏れる度に陰核はその硬さを増す。

 

「……ぁぁっ!! ぁ! ……ン!」

 

 穿るように園子の恥部を舌先で味わい、溢れる蜜液を陰核に擦りつける。

 そうして小さな肉粒を唇で挟み込む度に浴室に園子の嬌声が響き渡る。そうしてまた溢れる蜜液を舌で舐めとり、丁寧に陰核に擦りつけて――、一息に吸い付く。

 

「~~~~~~ぅぁ!!!」

 

 ビクンと腰を震わせ、首を仰け反らせる園子。

 ぎゅっと太腿は閉じられ俺の頭を締め付けんとする圧迫感が襲い掛かる。

 しかしその程度の事で止めるのだったら奇術師の看板は下ろさねばならないだろうと、無心のまま虐めてと主張する快楽器官、即ち陰核を唇の中で転がし、舌で突きまわる。

 

「ぁ、ぁ、ぁー、ぁっ……!」

 

 嫌々と首を振る園子を見上げ、もっとして欲しいのだと悟りしばらくの間クンニリングスでの奉仕を行い続ける。ときおり頬に掛かる少女の飛沫を舐めとり、後退しようとする少女の腰を腕で固定しながら丹念に舐め続けると、園子は限界とばかりに俺の頭を掴んだ。

 ――そろそろ本気で絶頂させて欲しいという合図として受け取る。

 

「ぷぁ……っっ!!?」

 

 鼻先に感じる園子の薄毛がこそばゆい。

 取り敢えず頬に擦り付けながら飴玉のように少女の陰核を唇で遊びつつ、ゆっくりと中指を少女の媚肉に挿入していき、経験に基づく彼女の「弱点」の場所を探り当てる。

 

 ぎゅっと俺の頭を掴む手に力を入れる園子だが、抗議の声はない。

 つまりは陰核と弱点を同時に責められる事に問題は無いということだと受け取り、指を鉤状に曲げ、僅かにざらついた肉壁を撫でる。

 

「あ、あ、やだ、やぁ、ぁぁ……、ん、ぅ……」

 

 腹部を曲げて屈む少女、俺の頭を抱えて団子状に丸まろうとする園子は意図せず俺の顔にふくよかな乳房を押し付ける。ぎゅむりと形を変える双丘の感触を愉しみながら、入り口付近と弱点の間をピストンするようにして指で花弁を掻き混ぜると、唐突にその時が来た。

 

「ぁ、ぃ、くっ、~~~!!」

 

 しょわわ、と俺の顔に噴き出す愛液は小水の如き弧を描き、湯舟に水音を立てる。

 ビクンと身体を痙攣させる園子は顔を俺の後頭部に埋め、悲鳴を押し殺そうとする。

 そんな少女の声を至近距離で聞く事になりつつも、少女を絶頂させた事に安堵し立ち上がる。これでお礼は行った。さてここからがスタートである。

 

「は、はー、 !! ……はふ、ぁ! かっきー!?」

 

 収縮を繰り返す媚肉に再度中指を挿入すると、慌てたように園子は声を上げる。

 珍しく取り乱す園子の様子を見ながら壁のタイルに少女の背中を押し当てて、もう一度「弱点」付近と陰核を片手の指で弄り始めると園子は必死で俺の手首を掴む。

 

「い、今は少し敏感だから~」

 

「もっとしてって?」

 

「ちがっ!! ひぁ!? あ……っっ!!」

 

 口端から涎を垂らし、しかし拭う事を忘れて抵抗する園子の手首と背中を背後の壁に押し当て媚肉に指を挿入する。奇しくも今日の部活動中に部室で行った股ドン、或いは壁ドンと似た状況ではあるが決定的に異なる点がある。

 それは――、

 

「いっぱい、イっていいんだよ」

 

「や、ぁぁ、ぁっ、また……!!」

 

 ぷしゃっと小さく噴き出す園子の愛液が腿を伝い湯舟に垂れ落ちる。

 濃厚な雌の香りが湯気に混ざりクラクラとする視界の中、自然と笑みを湛えて俺は園子を法悦の空へと送り出す。何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も―――

 

「漏らしてもいいよ」

 

「ん、ん~~、んふっ、ん!! ん、んぁ、~~、~~~!!」

 

 彼女が俺に応えてくれるなら、その倍は応え返したい。

 喘ぎ咽る姿を視界に収め、熱に浮かされたような琥珀色の瞳が俺を映し出す限り。

 淫音が響き渡る中、顔を近づけると口付けを拒否するように僅かに少女は顔を背けた。

 

「ぁ、だめ……」

 

「どうして?」

 

「だって、さっき……んむ」

 

 そんな事を気にすると思われていたのは心外だ。

 顔を赤くする園子、重ねた唇はしっとりと柔らかい感触が伝わる。

 酩酊したような表情で虚ろな眼差しに、ただ一人の男だけを映し出す少女。

 

「ぁ、ぁ~……か、っきー」

 

 ぐちゅぐちゅと淫靡な水音が混ざり合った浴室に新たな水音が混ざる。

 視界が白く染まりだす中で、奉仕に夢中になる自らが長湯でのぼせる寸前だと気づかされたのは園子の一言からだった。

 

「ベッドで……ン、ひよ……」

 

「――ああ」

 

 このまま続けても良いがお互いに溺れてしまうだろう。

 一瞬、園子と二人ならそれもいいかもしれないという思考を振りかぶり、水分の摂取と復活した怒張で園子を悦ばせようと縁から湯舟に沈みかける彼女を抱き上げる。

 こんな時でも園子の身体は軽いなとふにゅふにゃの裸体を見下ろす。

 

「……っきー」

 

「ん?」

 

「喉渇いた……」

 

「何か飲みたい物は?」

 

「コーヒー牛乳とかは~……?」

 

「ミルクならさっき飲んでただろ」

 

「……」

 

 無言のまま俺の左脇腹を抓り手でぐりっとする園子。あまり面白くはなかったらしいので口を閉じる俺に対して、お姫様だっこされる彼女は小さく呟いた。

 

「あれは……別腹~」

 

 

 

 +

 

 

 

 獣の交尾というのは一体どういう物なのだろうか。

 ただ相手を孕ませる、子供を産ませる、その事だけに専心する事だと思う。

 互いを求め、身体を重ね、貪るように性に溺れ、ただ相手に、快楽に、溺れる事だと。

 

「~~~~!!」

 

 くぐもった声音が枕越しに聞こえる。

 何と言ったのか、髪の毛を払い形の良い耳の奥に吐息と共に問いかけると、途端に身体が硬直する反応に頬が緩むのは仕方がないのではなかろうか。

 

「耳、弱いね」

 

「! ……!!」

 

「俺に耳掃除されるの好きだもんね。……こんな風に」

 

「ぁ、……ッ!!」

 

 そっと耳朶を指で摘まみながら、縁をなぞるように舌で耳に触れる。

 ぎゅっと枕に顔を埋め、自らのあられもない声と表情を隠そうとする少女。

 両手で必死に枕を掴みサンチョの顔が僅かに歪んでいるにも関わらず、赤らんだ耳朶に甘噛みする度に更に歪んでしまう。

 

 ぎしりと寝台が軋む。

 パンパンと肉が肉とぶつかる音に一切の配慮も遠慮も感じられない。

 僅かに汗を滲ませる滑らかな背中に胸板を密着させ、ぴたりと彼女とくっつく。

 

「――――」

 

「あっ!? ぅ~~」

 

「園子」

 

「ん……! ぁ!」

 

 ぎしりと寝台が軋む。

 腰が臀部を叩く度にむにゅりとした弾力が返ってくる。

 ただの吐息を聞かせるだけで怒張を呑み込んだ媚肉が締め付け、反応を示す。

 耳が弱いのは彼女の特徴で、性感帯になるように悪戯や愛撫をしてきたのは俺だ。

 

 ぎしぎしと寝台が軋む。

 思い付きで彼女の首筋に吸血鬼の如く噛み付くと異様な締め付けが怒張を襲う。

 一番反応が良い事に疑問を抱きながら、肩や背中も甘噛みをして彼女の反応を愉しむ。

 

 ぎしりと寝台が軋む。

 汗と彼女の匂いが混ざる彼女の髪に顔を埋め、背後から彼女の裸体に圧し掛かるようにして緩急をつけて腰を振る。手のひらから溢れる無防備な彼女の生乳、乳首を親指と人差し指で丹念に擦り合わせながら彼女の最奥を臍側の肉を抉るような角度で激しく穿る。

 それが彼女の好みで、それが一番彼女を味わえて、それが一番彼女を悦ばせるから。

 

「こんな風にぎゅっとされて、ぱんぱんってされるの好きだもんね」

 

「ぁ、んん、くっ……、ん!」

 

「上から圧し掛かられて、こんな風に囁かれるだけで軽くイってるの……分かるよ」

 

「ぁ、ぁ、~~~!! ! ……!?」

 

 そろそろ新しいシーツを買うべきだろう。

 がむしゃらに園子を犯すように腰を彼女の臀部に叩きつける度に彼女は啼き声を上げる。その声が恥ずかしいのか枕に顔を埋めて声を抑えようとする。

 その行為が雄の本能を刺激し、ゆっくりとストロークを行いながら――、

 

「――――」

 

「……えっ、あ、やッッ!?」

 

「顔、見せろよ」

 

「や……」

 

「これで最後だから」

 

「や~!!」

 

 ふと枕を取り上げる。

 正常位に持ち込み顔を覗き込もうとすると、慌てて園子は琥珀色の瞳に快楽の涙を浮かべ赤く染まった顔を隠そうとして俺に抱き着き、ぎゅっと背中に腕を回した。

 

「今、……私の顔見たら、死んじゃうから」

 

「……ほう」

 

「かっきーが」

 

「あっそ」

 

「~~~、ぁ、っ、っ~~!!」

 

 無理やり少女の顔を見ようという案は仕方なしに断念して、ストロークに全力を注ぐ。

 何度目かの射精感が高まり、既に注いだ彼女の最奥に真新しい子種を吐き出そうと獣のように腰を振る。

 

 ぎしりと寝台が軋み、音が鳴りやむ。

 やがて女の膣内に、最奥に、何度目かの種汁を注ぎ込み、漸く俺は目を閉じた。

 

「――――」

 

「……すぅ………」

 

 彼女を抱き抱え、繋がったまま寝台に身体を横たえる。

 すや~っと既に寝落ちか気絶した少女の生乳に噛み痕を残しつつ、毛布を被る。

 チラリと見えた時計の針は、とっくに日付が変わっている事を淡々と示していた。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。