ちょうど学校に向かう準備を整えるとタイミング良く家のチャイムが鳴る。
まるで見計らったように鳴る中で、カバンを持ち廊下を通り、扉を開けると目にする美少女。
日に焼けていない白い肌を飾る深緑の瞳が印象的な少女は、俺と目が合うと微笑を浮かべる。
濡羽色の長い髪は触りたいと思わせる絹糸の如く。
その髪を束ねた青いリボンを後ろに垂らした外見は和人形の様な姿を思わせる。
――大和撫子とは彼女の為にあるのではないのか。
「おはよう、亮くん。褒めてくれるのは嬉しいけど、褒めすぎ」
こうして気兼ねなく俺の家に来る数少ない親友、東郷美森の姿を目にして小さく頬を緩ませる。
「東郷さん、おはよ。今日はちょっと曇っているらしいな」
「そうね……。あっ、でも傘はいらないそうよ」
結城家の左隣が東郷家、向かいが加賀家と大赦に仕組まれたご近所関係は良好だ。
穏やかな微笑と黒髪が似合う少女と、太陽の如き笑顔が似合う赤い髪の少女とは仲が良い。
そんな彼女たち――、正確に言うと向かいの少女の様子について最近少し気になる事がある。
ご近所さんの東郷と二人、一日毎に交代で行っている朝に友奈を起こす役割。
今日は俺が友奈を起こす為に、チャイムを鳴らして結城家の玄関より顔パスで入る。
友奈だけでなく結城家とは既に4年以上の付き合いで彼女の両親とも良好な関係だ。
「おはようございます!」
ご両親に挨拶をして二階に上がる。
何度も訪れた事のある少女の部屋の扉を最低限小さくノックして、友奈の部屋に入り込む。
二階の部屋にある友奈の自室はカーテンを閉めつつ小さな常夜灯は点灯している状態だ。そんな薄暗さが未だに残る部屋の床の硬さを足裏に感じながら無言で目的の場所に向かう。
「……友奈」
「ん、……」
この部屋の主、寝台からわずかにはみ出ている布団に包まり昏々と眠り続ける少女。
小さく呼びかけるとわずかに身じろぐ彼女だが反応は鈍く無防備に規則的な寝息を繰り返す。写真に収めたくなる可愛さだが、これが東郷ならばどこからかラッパを取り出し耳元で起床のファンファーレを鳴らすだろう。
「いや、そんな残酷な事、俺はしないけどね」
真面目な少女だが優しさと厳しさを兼ね備えた起こし方は参考にはしたくはない。
そもそもこんな無防備な少女を前にして基本的に悪戯をしない起こし方はあり得ない。
そんな事を考えながら寝台の上で夢の世界にいるピンクのパジャマを着る少女の髪を撫でる。
「んにゃ……、ぁ……りょうちゃん?」
「――おはよ」
「ん……、はよぉ……」
トロンとした寝ぼけ眼、薄紅色の瞳で俺を見上げる友奈は未だに寝ぼけている。
そんな少女の柔らかな胸をそっと揉みつつ、完全に目覚める前に静かに布団を剥ぎ取る。
寝起き故、後頭部の髪は結われておらず無造作な状態の友奈は緩慢とした動きで手を伸ばす。
「ん……?」
「亮ちゃ~ん……」
「どうした? ――おっと」
白い両手が俺に伸ばされ、微弱な力で俺の身体を引っ張る。
無論抵抗するつもりはなく彼女に引っ張られ、甘く、柔らかく、温かい寝台の上に身を横たえる。そうして彼女の寝台に引き込まれた俺は抱き枕の要領で腕を回され抱きしめられた。
「何、しているの?」
スンスンと俺の首筋に形の良い鼻を触れさせ友奈は俺の匂いを嗅ぐ。
こそばゆい感覚を堪えながら、親愛と友愛を込めた声音で友奈に話しかける。
「うーん……、においを……、擦り付け~」
「――?」
「ん~」
「……」
ここ最近の異変。
異様に肉体的なアプローチが、友奈から俺への積極的な触れ合いが増加した気がするのだ。
以前までも彼女が無意識かどうかはともかく、友奈とは肌で触れ合う機会は多々あった。
「んー……」
「……」
だから気のせいだと言えばそれだけの話なのかもしれない。
ただ、以前よりも友奈が何となく、何かにつけて俺に抱き着いてくるようになった理由。
その原因が判らずに、心のどこかで冷静に淡々と悩み考える自分がいる事に気づいていた。
「よしよーし。今日も学校だから起きようか」
「……もうちょっとだけ」
だが個人的に友奈を甘やかさない理由はない。
俺の首筋や胸板にまるで己の匂いを擦りつけるように彼女は吐息と赤い髪で擽り触れる。
何となく園子としている悪戯に似ているなと、そんな事を思い出しながら彼女の名前を呼ぶ。
「……友奈」
「ん――」
「……」
おずおずと手を少女の背中に回し力を入れると微かに吐息が乱れる。
桃色の唇が俺の剥き出しの首筋に這わせるように触れる度に背筋がゾクゾクとする。
更に薄い布越しに押し付けられる柔肌に、身体中が溶かされるような感覚に襲われていく。
「…………」
このまま一緒に寝たくなるような、そんな気分になるのをグッと俺は堪えた。
一人なら遅刻しても良いのだが、東郷も待っていることを思い出し彼女の耳元で囁く。
子供をあやすように、親愛と友愛に満ちた声音でそっと友奈を起こすべく唇を震わせる。
「友奈、眠いだろうけど……ほら、起きないとね」
「……ぅ」
「友奈」
「……ぅ、う、うおぉーーっ!!」
陽だまりのような温かさが腕の中で広がる中、その温かさに溺れず懸命に少女の名前を呼ぶ。
3分ほど俺の身体に全身を密着させていた友奈だが、最後にギュッとハグを強めて薄目を開ける。
薄紅色の瞳にいつもの快活さを宿し、最終的に声を出しながら身体を離して上体を起こした。
「おはよう、亮ちゃん。すぐに準備するから待ってて」
「……ああ」
「……」
「――?」
「ねえ、亮ちゃん。その……着替えるから、……ね?」
「俺は気にしないけど」
「私は気にするの!」
淡い微笑みを浮かべたピンクのパジャマ姿の少女に言われ頷く。
頷きながら、そのまま着替える姿を見ようとしたが、紳士な俺は部屋を出ることにした。
声を大にして言えないような悪戯をし合う関係だが、それでも彼女の羞恥心は変わらず健在らしい。とはいえ恥ずかし気に喋る友奈の表情は、思わず悪戯したくなるような可愛さを俺は感じた。
+
そうして彼女が身支度を整え、制服姿の友奈と東郷と共に学校へと向かった。
最近は少し寒くなってきたからかマスクをして学校に向かう人が多く見える。
周囲の光景を見ていたのは俺だけではなく、同じく周りを見た東郷が心配気に口を開いた。
「友奈ちゃんも風邪には気をつけてね」
「うん! 東郷さんもね!」
「……」
「亮くんもね」
「ああ、お互い気をつけないとな」
通い慣れた通学路のアスファルトの硬さを足裏に感じながら彼女たちと登校する。
時間的に遅刻するという状況でもなく、また今日のお天気お姉さんは『曇り』だと微笑んでいた。
晴れ過ぎず雨が降るというわけでもない穏やかな一日になってくれるだろうと思いたい。
コートを着た俺たちはやがて校門を通り抜け、靴を履き替え、階段を上り教室へと向かう。
今日もまた退屈な授業を聞くのだと思うと少し面倒に感じながら、友人たちに挨拶していく。
「おはよう、亮之佑くん」
「ああ、おはよう坂本さん……今日も寝癖が凄いな。直さないのか?」
「ポリシーなんで」
「そっか……、一世もおはよ」
「おはようございます、亮さん」
多少癖があるが、彼ら彼女らとは以前から仲良くしている。
神樹という神を崇拝する過程で消された萌えを愛する紳士や、人には言えない事を隠す淑女たち。普段はそれらを隠している愛すべき変態たちの弱みを握りつつ、その上で良好な関係を構築した。
みんなキチンと挨拶を返してくれるのは本当に嬉しいと思う。
生前では挨拶しただけで汚物を見るような目で見られ罵倒されたのが随分と昔に感じる。
昔と言っても俺はまだ十数年ほどしか『加賀亮之佑』としての人生を歩んでいないのだが。
そうして、今日は俺たちより先に学校に来ていた勇者部のメンバーにも挨拶する。
朝早くからランニングしている真面目な少女、三好夏凜と適当な雑談をしていると、遅れてきたらしい少女が後ろから背中に指で触れるように、鈴音を思わせる穏やかな声音で挨拶をしてきた。
「おはよ~、かっきー」
「――園子もおはよう。眠そうだね」
「えへへ~、実は昨日凄い夢を見たんよ。……あっ、わっしーもにぼっしーもおはよ~」
「そのっち、もうすぐ授業なんだから、……今日は寝ちゃだめよ」
「分かっているよ~、……すやぁ……」
授業前に寝てしまおうという魂胆なのか。
東郷が真面目な顔で告げた矢先、コクリと頷き垂れた頭から髪が一房垂れる。
稲穂のような黄金色の髪をふと無性に触りたくなるのは園子だからだろうか。
「……」
とはいえ、俺も分別は弁える。
一瞬ブルリと不気味に震える右手を握り締めると、ふと別の少女の声が背後から聞こえた。
「園ちゃん、おはよう!」
「……ん〜? ああ、寝ちゃってた~……ごめんねゆーゆ。おはよう、ゆーゆは今日も元気だね~」
元気に挨拶をする友奈と園子。
にへらっとした笑みを浮かべる友奈の表情に、寝台上での出来事は欠片も残ってはいない。
そんな友奈の呼びかけに鼻提灯をパン!と割り、瞼を擦りながら園子は再び目覚めた。
「私は今日も元気だよ、園ちゃん! せっかくだから分けてあげるね! 元気! ベータ波!」
「おお、身体が温まるよ〜、ゆ~ゆ〜!」
「そ~の~ちゃ〜ん!」
何か通じ合う物があるのか、二人はお互いの『愛称』を呼び合う。
ニコニコ、ニコニコと何が楽しいのか、微笑ましい少女たちの姿が教室で展開される。
その姿に目を向ける人が少ないのは、この平和な光景に慣れてしまったからなのだろうか。
いずれにしても、彼女たち二人が仲良くしているのは嬉しい事だ。
あれが演技であるとは思えず、俺の眼には本当に仲の良い関係にしか見えない。
「まあ、流石にそこまで疑えばキリはないだろうけど……」
「何が?」
最近精神的に耄碌してきたのか、独り言を誰かに拾われる気がする。
会話が成立した時点で独り言ではないかと、そんな事を思いながら一人の少女に眼を向ける。
「――。か~り~ん!」
「りょ~の~すけ、……って誰がやるか!!」
「ナイスツッコミ。朝からキレキレだね、大丈夫?」
「大丈夫よ」
勇者部随一のツッコミの持ち主にして二刀流使いの少女は俺の言葉に低い声を上げる。
こうした反応を返してくれるのが意外と嬉しくて、つい揶揄わずにはいられない少女だ。
こんなやり取りはもう何回も繰り返し、理解しているのか小さく吐息する夏凜は口を開く。
「それにしても、この時期って本当にテストが面倒ね。ちなみに私たちの中でだと、一番不安なのは友奈なんじゃない?」
「ああ、いや、友奈なら大丈夫……のはずだ」
「いや、言い切りなさいよ」
「……あれ、夏凜。背が伸びた?」
「自由か! ……まぁでも、一昨日新しいサプリ買ったからかもね」
「ああ、見間違いのようだ」
「なんでよ!!」
世界を守る勇者ではあるが、学生としての教育の義務を果たさなければならない。
勇者の個人情報は漏れてはいないのだが、御役目として数日程この箱庭を留守にして外の世界で活動していれば、クラス内で気づく人もチラホラといるかもしれない。
こういう時はゴールドタワーで訓練と学業を行う防人は色々と面倒が無いのが羨ましく感じる。疚しい事は無いが、天の神が去ったこの世界が安定するまでは優勢な状況とは呼べない。
300年の神樹を中心とした教育のおかげで、目に見える敵はこの箱庭では見ていないのが救いか。いずれにせよ今は虎視眈々と勝利に向け大社側の準備が整うまで待つしかないのだ。
そうして授業が開始して数時間。
国語の授業で教科書を片手に聞いていた時、ふと友奈の席に目を向けた。
「……、ぼたも……、んっ……」
「……」
確かにこの授業では生徒が当てられる事は滅多にない。
加えて教師の一定音量での朗読は周囲を見る限り人を眠らせる力があるのだろう。
そんな状況だが、唇から透明な涎を垂らし、ペンを片手に瞼を閉じた横顔は愛らしく感じる。
「――――」
だが、先生の眼は誤魔化せても東郷の眼は誤魔化せなかったらしい。
後方の席でわずかに形の良い眉を顰め、静かに怒りを溜めている姿からは目を背けた。
+
あれから数日が経過した。
何か変わった事は特になく、ただ友奈や東郷が授業で解らなかった部分の復習を行ったり、時々高校に進学した風も顔を出してきたり、樹主導の新生勇者部としての活動を行った程度か。
「そんなわけで今日は、東郷さんの家で友奈と勉強をしているんだ」
「亮くん? 誰に説明しているの?」
「独り言さ」
「亮くんって、時々そのっちみたいな不思議な事を言うよね」
「『……ヘイわっしー! ぼた餅食べたいんよ~!』」
「――相変わらず凄い奇術ね」
奇術師たる者、声帯模写程度は出来なければならない。
変装技術含めてある人物に会う際、『大赦』の監視を潜り抜ける為に習得した技術の一つだ。
園子の声や癖ならば模倣するのは容易だと、喉を震わせ園子の声を発して東郷を驚かせる。
「……。確かに、私も東郷さんのぼた餅食べたいな!」
「もう、二人ともしょうがないわね。……そう言うと思って用意しているわ」
「やったー!」
「手伝おうか?」
「ううん、大丈夫よ、ありがとう」
壁に掛けられた時計を見ると、なるほど確かにおやつの時間とも言える時間帯だ。
午前からみっちりと勉強をしてきたので(昼ご飯は御馳走になった)、そろそろ頃合いだろう。
東郷は小型のコタツ布団から曲線美を描く白い脚を出し、襖を開けて静かにキッチンに向かった。
「ふう……」
「疲れたか?」
彼女の後ろ姿が消え、足音が遠ざかっていくのが聞こえる中で吐息が一つ。
目線の先にいるのはコタツに脚を入れ、先ほどまで勉強に凄まじい集中力を見せた少女。
流石に長時間の集中は堪えたのだろうと思い、そう尋ねると友奈は小さく頭を横に振った。
「どうして、私たちは勉強をするのだろうか……」
「お、おう……」
遠い眼で、そんな哲学に思えなくない事を聞いてきて思わず黙り込む。
何故勉強をするのか。きっと答えは様々あるのだろう。良い学校に進学する為とか。頭を良くする為とか。中学生レベルならば一般常識だから人として学ぶ必要があるからだとか。
「まあ、これらは……、勉強っていうのは頭の訓練みたいな物だよ」
「訓練? あのダーってなって、エイヤーっていう?」
「そうだよ。例えばだけど、数字の計算が出来なければ売る人に騙されて、ぼた餅だって高い値段で買わされるかもしれない。――知識とは力だ。悪~い人に騙されないように、自分を守れるように、周囲の人を守れるように知識を増やし、頭を鍛える訓練をしているって感じかな」
「う~ん、でも商店街の人たちは悪い人には見えなかったけどな」
「……まあ、今のは極端な例だから。商店街の人は俺も好きだよ。それより――」
そんな風に適当にお茶を濁しながらコタツから脚を出し、数歩移動して彼女の隣に座る。
先ほどまでは彼女から見て右側の面に座っていたのだが、この行為に対して友奈は小さな疑問を瞳に宿す。
こたつ布団に脚を入れ直しつつ、隣に座り彼女の体温を感じる程度に密着する中で、
「亮ちゃん……?」
「――どうやら頭を使い過ぎたらしいから、特別なマッサージをしてあげよう」
「えっ、なに……ぁ、わきゃ……ッ!」
相変わらず無防備な少女の柔らかく軽い身体をそっと押し倒し、その柔肌をくすぐる。
部屋の中だからか薄着の友奈の服の中に手を入れ、その温度と柔らかさと反応を楽しむ。
絨毯を背中に、抵抗の薄い友奈は困った人を見るような表情でコロコロと笑みを浮かべる。
「……ほらほら」
「くすぐっ……、あひゃっ、あはっ、あははは――ッ!!」
「本当、すべすべな肌だな。どれ味を……」
「あっ、あははっ……、んひゅ、まって、そこ、……んひゃッ」
逃げられないように片足を股に挟み込み、横腹や首筋、腋を指でマッサージしていく。
当然押さえても多少はジタバタとする少女の身体はわずかに汗ばみ、動く度に服が捲れ乱れる。
その結果、中の下着が露わになるのだが、くすぐられ悶える友奈に羞恥を感じる余裕はない。
ジットリと汗ばむ首筋や耳たぶに軽く舌を這わせながら、無言でワシャワシャと指を動かす。
弾力がありながらも滑らかさのある柔肌を指で掻き、円を描く度に笑い声がこぼれる。
「……」
「あははっ――、あっ、んっ……ッ」
やがてグッタリとした友奈の桃色のスカートから覗く純白の下着と上気する乙女の柔肌。
その姿を美しく感じつつ柔肌をくすぐる中、下着越しに性器や胸の突起にも遠慮なく触れていく。どこか乱暴だが確実に与えられる刺激に微かに嬌声を上げる口を友奈は慌てて押さえる。
「まっ、りょ、ちゃ……ここ東郷さんの家だから……、ん――ッ」
「……それが?」
「だって、やめ……、ぁ―――ッ」
「……こんなすぐにいやらしくなる姿を東郷さんが見たら、なんて言うんだろうね」
「ひゃう……ッ!」
くすぐられたからか敏感になった肌を俺は弄り、漏れる声を友奈は両手で必死に抑える。だが体勢的にも力的にも不利であるのは友奈の方で、次第にトロンと薄紅色の瞳を潤ませていく。
両手を口元に運び声を押し殺すが、俺が与える刺激に顔を赤くして小さな声を漏らす。
顔を赤くし、親友がいつ戻ってくるか分からない状況で刺激は溜まり腰が浮かび始める。
チュクチュクと純白の下着に己の愛液で音と染みを作る中、友奈は艶のある声だけは抑えるがやがて限界が来る――、
「――んんっ……ッ!! ……え」
「……」
その直前のことだった。
唐突にピタリと俺が悪戯を止めたことに友奈は心底不思議そうな顔をした。
俺が無言で友奈の乱れた衣服を速攻で直すのを、スカート越しに股を押さえて呆然と見上げる。
上気した顔には疑問が浮かんでいて。
そして、かすかな情欲が瞳に宿っていて。
「――ぇ? なん……――」
「……うん? マッサージは終わりだよ。そろそろ東郷さん来るし」
「ぇ――――」
「どうしたの?」
「ぅ……、ぁ」
どこか唖然とする少女に対して、にこやかに俺は対応する。
感覚的には彼女が絶頂する直前くらいに決め手となる刺激を与えなかったつもりだ。
脚をくねらし何かを言いたげな友奈に対して俺はきっと意地悪な表情をしていたのだろう。
「……勉強、一杯頑張ってもっと成績上がったら、友奈の望むこと、一杯、たくさん、してあげる」
「……っ」
小さく、彼女にしか聞こえない程度の音量で呟き、その言葉に友奈の瞳が揺らいだ気がした。
そんな彼女の下半身をコタツ布団で隠した数秒後に、此方に向かう廊下からの足音が聞こえた。
襖を開けて部屋に入ってくるのは長い黒髪の少女、東郷だ。
彼女は先ほどの言葉通り、両手にぼた餅が入った皿を載せたお盆を持ちテーブルに置く。
「おまたせ、二人とも。……さっき友奈ちゃんの笑い声が聞こえたけど、どうしたの? ……それにちょっと顔が赤いわ」
「――ぁ、えっと」
「ああ、休憩がてら樹と風先輩の面白い話を話したら思いの外、ツボに入ったらしくむせちゃってさ。……な?」
「――うん、そうだよ。心配かけてゴメンね、東郷さん。私は大丈夫だよ!」
「……? そう、それならいいのよ。……さてお待たせ、お茶とぼた餅よ」
「わ、わあ! 美味しそうだね! 東郷さんのぼた餅、私大好きだよ」
「ふふっ、一杯あるから遠慮せずに食べてね」
「わーい!」
先ほどの悪戯でわずかに上気した顔と潤んだ瞳ながら、どうにか友奈は取り繕う。
親友にだけは己の痴態は見せたくないのだろうと思うと、その姿に思わず含み笑いをしてしまう。下着を濡らしながら、そして今もこたつ布団の下で俺に弄られながら笑みを浮かべる少女。
――その姿は本当に、
「っ、……お、おいひいね」
その健気な姿は本当に可愛らしく、何よりも愛おしい。
東郷から受け取ったぼた餅の入った皿を取り、友奈の言葉に同意する形で俺は口を開いた。
「……本当に、美味しそうだ」