※この作品はR-18です。

果てなき夜で、貴方に愛を   作:毒蛇

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花結い 終わらぬ空編
第一話 それは別世界で


 ──映画の終わり方はどんなものが望ましいだろう。

 

 映画の終わり方は知りうる限りで二通りあると思う。

 一つ目はハッピーエンド。誰もが笑って誰もが幸せ。万々歳だ。

 二つ目はバッドエンド。登場する主役、最も共感を抱きやすい役者のバッドエンドは見るに堪えない。勿論、バッドエンドながらも作品全体を通して面白いと思う作品は多くある。

 

 俺は両方とも好きだが、結局はその作品が面白いか否かである。

 見終わった後で、この作品は素晴らしかったと、名作であると、その終わり方はともかく、心に深く残る作品に出合えた時は興奮が止まらない。

 有象無象の中で輝く作品に出合えた瞬間は決して忘れない。

 

 では。

 それでは。

 今、視界の先で広がる映画はどうだろうか。

 

『ん……、ぁ……、は』

 

『ん、ふ……もっと……』

 

 唇が重なる。くちゅっと水音。

 まるで蛇が絡み合うかのように、男女が唇を重ね合う。

 それなりに大きな液晶画面はねっとりとベッドの上で絡み合いを映し出す。

 

 興奮状態の彼らを止める者は、もう誰もいない。

 百二十分というそれなりの時間の中で外敵要因の全てを蹴散らしてく様を共に見届けたからだ。銃弾が飛び交い、ビルは倒壊し、車はよく爆発して、最後は熱い殴り合い。

 そんな熱くも刺激的な戦いの後に主人公とヒロインが結ばれるシーンへ。

 

 困難を乗り越えて、大きな危険を乗り越えた男女がベッドインするのは一種のお約束。

 そのお約束を知りながらも、それでもこの思いを口にせずにはいられない。

 

「この作品、濡れ場シーン多すぎ……」

 

 それなりに名作な方の作品であるとは思う。

 今まで見てきた作品において七割はヒロインと主人公の濡れ場のようなシーンを目撃することは往々にしてあり、もはや興奮よりも早く話を進めてくれと思う程度には見慣れた光景だ。

 それが悪い訳ではないが、二回も三回もそういうシーンが入ると微妙な面持ちになる。 

 

 残念ながらこの作品を作った監督が何を考えていたのかはもう分からない。

 何しろこの作品が作られたのは、もう三百年以上も前の事なのだから。

 

 自宅にあるそれなりに大きなテレビ。

 そこに映る映像から目を逸らし、同じく二時間の時を共に過ごした相手に目を向ける。

 

「────」

 

 肩に感じる柔らかく温かな感触。

 半口を開いたままのピンク色の物体は僅かに気まずそうにしながらも目を逸らすことはない。じぃっと見つめる双眸は映画のワンシーンを余すことなく捉え、その奥に宿る興味を隠せない。

 ピンク色の物体は角と羽を生やした牛のようだ。

 ──否、それはよく見ると彼女の精霊、牛鬼を模したパーカーを着た少女であった。

 

 少女は俺の肩に寄りかかり、静かに映像に目を向ける。

 ホットパンツから覗く健康的な太腿を擦り合わせ、真剣な眼差しを液晶画面に向ける。

 パーカーを被った少女の横顔を見つめると、ふと少女の眉が小さく寄せられる。その様子に何があったのかとチラリと横目に見た映像は終わりを迎えエンドロールが流れ始める。

 

「はぁ……」

 

 珍しく溜息をこぼした少女。

 その吐息は二時間という時間を無駄にしたことへの失望を含んだものかと僅かに身体を硬直させる俺を余所に、腕を天井に伸ばす彼女はようやく視線に気づいたかのように此方に目を向ける。 

 柔らかそうな衣服越しに膨らみを主張する彼女と目を合わせる。

 

 その瞬間、にっこりと太陽のような笑みを浮かべる少女。

 可愛らしい牛の角付きのフードからは薄紅色の髪と瞳を覗かせる。

 

「面白かったね!」

 

「お、そうだな」

 

「特にあの……ドッカーン!! って爆発するシーンとかビュンビュンって飛んだりするシーンとかすっごい迫力だったね!! ……途中はちょっとエッチだったけど」

 

「凄い興味深々そうだったけど」

 

「そ、そんなことはないよ」

 

 俺の腕を掴んでにこやかな笑顔を向ける彼女はとても朗らかだ。

 明朗快活な少女、その薄紅色の瞳には不満など一欠片も存在しないようだ。

 

「ねえ」

 

「ん?」

 

「旧世紀のアメリカとか東京ってあんな感じなのかな?」

 

「そうだと思うよ。大体いつもどこかしらで世界の危機とか怪物とかと遭遇している。基本的にどこもかしこも滅んでいるけど友奈が行ったら大変なことになるよ」

 

「そうかな? ……確かに昔の人みたいに銃弾を拳で砕いたりとかは出来ないかも」

 

「いや、昔の人でもそんな事は出来ないんじゃないかな」

 

 楽しそうに柔和な笑みを浮かべる少女。

 俺の腕をその身に抱く彼女は、むにゅりと衣服越しに双丘の柔らかさを押し付ける。

 

「普段はこういうの見ないからね……凄く面白かったよー」

 

「まあ、面白かったけど」

 

「でしょう? あっちにいた時はこういう映画自体見る機会ってあんまり無かったから……。だから今日は一緒に見ることが出来て凄く嬉しかった!」

 

「────」

 

「また一緒に見ようね!」

 

「友奈は可愛いな」

 

「え?」

 

「じゃあ、次はホラー見よう。二人だけだとアレだからタイトルは告げずに何人か呼んで苦しみを分け合おう。風先輩は絶対に誘いたい」

 

「あはは……。たぶん吊るされると思うよ……」

 

 屈託のない笑顔が心に染み渡るようだ。

 薄紅の純粋な瞳を大きく開いて、眦を和らげる彼女の声色に頬が緩む。嘘を吐くのが下手な彼女からの賛辞は、明日を生きていく事への活力にすら成り得るのだ。

 そんな少女、結城友奈の笑顔を前に何となく頭に手を置きながら、その瞳を見つめ返す。

 

 まるでキスをするかのような距離感。

 元々俺の肩にもたれかかっていた彼女を抱き寄せると僅かに視線を左右に揺らす。 

 

「……も、もぉ~」

 

「牛?」

 

「今の似てた? もぉ~」

 

「かわいい」

 

「えへへ……ありがとう」

 

 楽しそうに牛の鳴き真似をする牛パーカーを着た少女。

 可愛らしいその姿を素直に褒めると、友奈はほんのりと頬を赤らめる。

 

「パジャマ用に買ったんだっけ?」

 

「家用かな。この前ね、ゆーゆに似合うから~って園ちゃんに貰ったんだ。今度何かのお礼をしなきゃね。あと、東郷さんに見せたら急に鼻血を出しちゃったんだけど、どうしたんだろう?」

 

「気にしなくて良いと思うよ」

 

 ピンク色の少女は自然な動作で抱き着いてくる。

 それが当たり前の態度で、男女の距離感など最初から無いかのように接する。

 子供がじゃれつくように笑みを浮かべながら抱擁を求めて、首筋に吐息を漏らす。

 

「ん……」

 

 頬が触れ合う。

 パーカーが捲れ上がりやや乱れた薄紅の髪の毛が露わになる。飛びつくように俺に抱き着いてくる友奈、その身体を両脚の間に挟み込むとそのまま自然と唇が重なった。

 まるで先ほど見たばかりの映画のシーンを再現するように。

 

「えへへ……ちょっと暑いね」

 

「……服脱いだら?」

 

「脱がして欲しいなぁ……なんて」

 

 甘えるのが上手くなった、そんな感想を抱く。

 瑞々しく柔らかい唇の感触を味わいながら、ちゅっと触れるだけのキスをする。

 

「ん、ぁ」

 

 両手で頬を挟む。

 パン生地のような柔らかな感触はいつまでも捏ね繰り回してしまいたくなるが、少し困ったような顔をしている彼女を放置する事は出来ず、どさくさに紛れて背後から抱きすくめる。

 

「……ぎゅーってして」

 

 腕を掴み、軽く首を動かし俺の耳にキスをした。

 脳を直接震わせるような甘い声音に俺は従わざるを得ない。

 

 彼女の要求を叶えながら、俺は彼女の解体作業を行う。

 牛のようなパーカー、前を留めるチャックをゆっくりと下ろしていく。

 

「ぁ」

 

 小さく声を漏らした友奈が身をよじらせる。

 下ろした髪の毛を揺らし、座椅子に身体を預けるような彼女の肉体はどこまでも柔らかく、衣服越しに触れた腹も胸も手が沈み込んでしまいそうだ。

 牛の衣服を剥いてくと、白い肌がゆっくりと露わになる。

 

「んっ」

 

 注がれる視線に羞恥を覚えた少女は小さく呻く。

 鎖骨、ブラジャーに包まれた双丘、臍、鼠径部と手足よりも僅かに白い肌。

 彼女を抱きしめたまま、俺は両手で下着越しに胸を揉む。

 

「ゃ、ん!」

 

 くしゃりと潰れるブラ越しの乳房。

 プリンのような質感は、ふわ、むにゅという弾力と柔らかさを楽しめる。

 

「もうすぐ春も終わりか。桜も散ってきたし……」

 

「……どこを見て言っているの」

 

 からかうように呟く友奈に、俺は無言のままピンクのブラを捲る。

 指の腹で硬くなりつつある乳首を擦り、きゅっと挟む。

 

「んぁ……、ん、ふっ」

 

 濡れた呼吸を繰り返す彼女の首筋に顔を埋めると、濃厚な友奈自身の香りがした。シャンプーと僅かな汗と彼女の甘い香りに思わず舌を這わせる。 

 ツンと尖った乳頭を指で弄りながら椀状の乳房を揉む。

 

「あむ」

 

 とろけたような表情には妖艶さが混じる。

 艶やかな唇をなぞるとパクリと指を捕食する彼女はそのまま咥え続ける。

 指から伝わるゾクゾクとした舌の感触と口内の熱さは言葉にし難い快感があった。指の腹を、爪を、関節を、疑似的な肉棒に奉仕するかのように舌先が動く。

 子種を吸い取ろうとばかりにちゅぅぅっと指先を吸引する唇は──、

 

「おいひい……。あぅっ!?」

 

 驚きの声を伴って開かれる。

 ホットパンツに包まれた下腹部、そこに空いた片手が侵入する。

 

「ゃ、くすぐった……っ! っは!」

 

 友奈の吐息は熱い。

 程よく脂の乗った下腹部、蛇のように下着の中に滑り込んだ手は少女の秘所を晒すことなく、ただ一方的に揉み解すように愛撫する。

 汗ばんだ恥骨、指先を僅かにくすぐる恥毛、その奥の花弁。

 

 貝状の肉を人差し指と中指で開いたり閉じる。

 彼女を抱き抱え乳房を揉みながら、忘れずに陰核を親指で愛でる。

 

 くりくりと硬度を増す肉粒を指に感じながらも愛撫を止めない。

 俺にされるがままの彼女は全身から甘く湿った匂いを漂わせ、脚をくねらせる。

 

 ホットパンツを脱がせずに、ただ指先の感覚だけで彼女を弄ぶ。

 トロトロに解されてきた少女は目元をとろんと潤ませながらも俺の頬に口づける。

 

 愛おし気な表情で俺の名前を呼ぶ。 

 秘裂から溢れる蜜液を陰核に擦り付ける度に内股をビクリと震わせる。

 淫らな熱を隠すことを諦めた肉体が、声が、視線が俺を惹きつける。

 そうして求めてくる彼女に応えたいと手は下腹部に置かれる。

 

「ぁ、っ……!? そ、それっ! ッ!」

 

 直接恥部に触れる訳ではない。

 掌でマッサージするかのように下腹部の奥にある子宮を外から刺激する。

 

「ぁっ、ぁっ!」

 

 振動を加えながらゆっくりと外から刺激を与える。

 甘く蕩けた友奈の声は外からのポルチオへの愛撫に厭らしく腰をくねらせる。

 

「んっ、ぅ、……!」

 

 明朗快活な姿とは程遠い快楽にのめり込む少女の姿。

 熱い身体を抱きながら、胸元の谷間を伝う汗を舐めとると程良い塩味。

 

「ぁ、ィ、く……!!」

 

 下腹部に置く手に重ねる掌。

 柔らかく熱い掌を感じながら彼女が静かに絶頂を味わったことを感じた。

 だが、それで終わる訳ではない。

 

「はい、気持ち良いねぇ。じゃあ、次イこうか~」

 

「ゃっ! ちょ、まだっ……! ぁっ、ぁ……!」

 

 外から子宮を揺らし、今度は恥部も一緒に刺激する。

 被虐の表情は俺の獣性への支配を容易にさせ、彼女を愉しませ悦ばせる。

 

 思うことはただ一つだ。

 友奈をもっともっと滅茶苦茶にして気持ちよくさせたい。

 

 

 

 そうして一時間ほど俺は彼女を悦ばせた。

 友奈の反応は見飽きることなく俺をひたすらに興奮させた。

 悲鳴を上げたり、俺の肩を叩いても、決して止まることは無かった。

 

「は……、はー……っ」

 

 息絶え絶えの彼女の身体は熱い。

 ホットパンツは既に脱がされ、クロッチを愛液で濡らしたショーツが片方の足首に絡みついている。下着を残して殆ど裸体を見せる彼女の恥部は愛液が光る。

 

 俺に背中を預けた友奈は頬を朱に染め、あられもない表情を浮かべている。

 普段は見られない彼女の顔を見下ろし、形の良い乳房を揉んでいると、ふと違和感。

 

「……私ばっかりされるのはズルい」

 

 自らの腹部を摩り、天国から帰ってきた友奈が呼吸を整える。

 彼女の痴態に反り立っていた肉棒を柔らかな手で掴む少女は四つん這いになっていた。

 

 膝まで下ろしたホットパンツ、乱れたパーカー、艶めかしい首筋。

 違和感の正体を探るべく本能の赴くままに視線をむける俺は気が付く。

 

 いつの間にかズボンも下着も脱がされていた。

 被虐的な反応に反り立っていた肉棒は柔らかな手に包み込まれている。

 にっこりとした笑みは、何故だろうか。少し怖く感じる。

 

「次、私の番ね」

 

「いや、良いよ。友奈が気持ちよくなる姿を見て堪能出来たし……」

 

「駄目だよー。一緒に気持ちよくなろうね! えいっ!」

 

 

 

 +

 

 

 

「風先輩もわりと唐突なんだよな。場所の変更って」

 

「うーん。でも午後には一回集まろうって言っていたし……。凄く重要な事だからって」

 

「そのことを思い出したが約束の一時間前で。余裕だろうと風呂場で洗い合いしてたら時間ギリギリで」

 

「あれは……! だって、変なところを触ってくるから!」

 

「いや、同じ風呂場で目の前に友奈のエッチな身体があったら触らない訳ないじゃん」

 

「開き直ったー!」

 

 それから本気になった彼女と泥沼化するプロレスごっこを繰り広げ、俺が二回友奈が五回ほど天国を見ることになった頃にスマホに連絡が届いたことに気が付いた。

 午後からは俺と少女が所属している部活の活動があることを思い出したのだ。

 

「そもそも議題って何だろうね」

 

「ほら、補習とか今後の勉強についてとかじゃない?」

 

「うっ……。べ、勉強は勘弁して欲しいのです」

 

「駄目です。折角だから満点をキッチリ取れるようになろうか。どのみち同じような範囲なんだから。このまま年を重ねたら誰だって点数取れるようになるって」

 

「東郷さんみたいなこと言ってるー」

 

「まあ、最悪戻ったら何もかも忘れてるかもしれないけど」

 

「……忘れないよ」

 

 勉強よりも遊んでいたいという気持ちはよく分かる。

 一応学生という身分である以上、一定以上の成績を取っておく方が色々と役立つ事を前世を通じて経験しているのだ。学力があるに越したことは無い。

 ただ、目を左右に泳がし始める彼女にそこまで強いるつもりは無い。あくまで俺は、だが。

 

「途中で猫に構ったりしなかったら余裕で間に合っただろうけど」

 

「でも猫ちゃんが木の枝に登って降りて来れなかったら誰だって助けるでしょ?」

 

「いや、助けないけど」

 

「……そういうのってツンデレって言うよね」

 

「俺には夏凜みたいな属性は付いてないから」

 

「最近の夏凜ちゃんはツンデレよりもツッコミ属性になったからねー」

 

 ちょうど指定された時間になりつつあった。

 ただ、それで泡を食って走ったところで車にでも轢かれたらどうする。俺の手を引いてくれる小さな手の持ち主に何かあったらこの国の、この世界への損失になり兼ねないだろう。

 

「本当に走らなくて良いの?」

 

「猫関連含めてもう連絡してるから大丈夫。このまま帰ろうか」

 

「だ、ダメだよ! そうやってさぼろうとしたら! 怒られちゃう」

 

「働きたくないもので」

 

「さっき私が猫ちゃんを助けようとするのを手伝ってくれたよね」

 

「無理に木登りとかすれば友奈が怪我する可能性の方が高かったからだ。肩車だって何度もしてるだろう。俺は太腿を堪能出来て、友奈は愛玩動物を助けられた。それだけじゃん」

 

 既に過ぎた話だ。

 目の前の少女が助けると決めた時点で彼女に甘い黒髪の少女を通じて先方には既に連絡済みだ。顔を上げると薄紅色の少女に似合う葉の付いた木々が風に揺れる。

 見上げる空は晴天と心地良い。どのみち遅れるのだから慌てても仕方がない。  

 

「でも、私を助けてくれたから」

 

「────」

 

「──ありがとうね、亮ちゃん」

 

 偽りの空の下で唯一輝く笑顔に、俺は頬を緩めるのだった。

 

 

 +

 

 

 

 世界は唐突にその在り方を変えた。

 空想が現実に。非日常が日常に。

 危険は常に傍にいて、足掻いた先で、神様に召喚される。

 

 失くした領地を、力を、多くの勇者と巫女と共に取り返す。

 そうして神の駒として戦って全てが終わったら元の世界に戻れるのだ。

 

 ──ただ、その終わりはまだ見えない。

 

 

 

 +

 

 

 

 神樹の中に俺の、加賀亮之佑の魂は取り込まれたらしい。

 離反した神を撃退する為とか、何かの予行演習だとか、よく分からないことの為に神樹の力によって作られた偽りの世界に送り込まれたらしい。

 

 呼び出した先で巫女が言った。

 行うことは単純明快。バーテックスと戦い、奪われた日本全土を奪還する。

 

 なんて面倒で身勝手なことか。

 やはり神には人の心が分からないのだ。これなら悪魔の方がまだ良い。

 

 一人だったら即座に諦めてゲーム盤を破壊する事に専念しただろう。

 ただ、それを見越したのか或いは俺自体はおまけなのか、見目麗しい多くの歴代勇者や巫女たちもまたこの謎の世界に送られ、同じ目的の為に召喚されてきたのだ。

 彼女たちはこの先に勢揃いしているだろう。 

 

 無人の讃州中学校、その内部にある家庭科準備室。

 三年以上は見慣れた少し傷のついた扉に手を掛けて、静かに引く。

 

 途端、此方を見る目の多さに身体が硬直する。 

 全員見知った、殆どが故人か違う時間に存在する、見慣れた顔だった。

 

「おっ、来たわね二人とも」「……まったくどこに行っていたのよ、友奈も亮之佑も」「……ふふっ、夏凜ちゃんってばさっきから心配そうな顔をしていたじゃない」「夏凜さんは素直じゃないですから」「かっきーもゆーゆも遅いよ~」「かっきー先輩こっちに座って~」「そのっち? 椅子なんてどこにも……ハッ、まさかまた亮之佑さんの太腿に乗ろうなんて! 破廉恥よ!」「アハハ……亮さんがいるとすぐに甘えん坊になるな園子は」「おーい、結城も亮之佑も遅いぞー何やってたんだ?」「タマっち先輩、あんまり詮索しちゃダメだよ」「……今日は……遅かったわね」「確かにそうだな。何かあったのか?」「何でも猫を助けていたら時間が掛かったそうですよ」「わ〜! 二人ともお疲れ様っ!」「見知らぬ猫を颯爽と助けるなんてアメイジーング!」「うたのん、ほら座って。狭いから」「……扉を開けた瞬間、何故か海の音が聞こえた」「つまりどういうことかにゃ? あっ、いや説明は大丈夫かな」「雀さんも今度木の上にいた猫を助けては如何ですか?」「えっ!? なんでこの場面で私に無茶ぶり!? そういうのはメブが担当するから私はちょっと……」「雀。このあとのトレーニング倍ね」「加賀城はいっつも一言余計……」「お二人とも怪我が無いようで本当に良かったです」

 

 怒涛の勢いで話しかけてくる少女たち。

 三人集まればどころではない。

 この空間に馴染みはしたがこうして硬直する事はたまにある。

 それは大量の異性という、美少女たちの空間に突撃することになる黒一点だからか。

 

「俺も女装すれば良いのか? つまりそういうことか?」

 

「何言っているの? ……遅れてごめんなさい。結城と加賀、ただいま到着しました!」

 

「うむ。ご苦労であった」

 

「それで風先輩。今日はどんな議題なんですか?」

 

 そんな会話をしながら、友奈は自然な動きで俺の手を引く。

 そこに複数の視線を感じながらも明朗快活な少女は手を離すことなく俺を引き入れる。

 ──まるで壊れ物を扱うように、優しく接してくれる。

 

「ふっふっふ……。今日は重要な議題。勇者部の今後を左右すると言って過言ではない!」

 

「それは一体どんな議題なんですか!」

 

「聞いて驚け、見て笑え! なんと、今回勇者部うどんを作る事に決定しました!」

 

「はい、勇者部そばが良いです!」

  

「ええいっ! そば組は黙っておれい!!」

 

「戦争よ! 戦争の始まりよ!」

 

 この異世界に来て新たに見知った関係の少女たち。

 見渡すと俺の事を敵対する視線は無く、そばVSうどんという仁義なき戦いに参戦していた。

 正直に言ってどっちでも良い。でも吊るされたくは無かった。

 

「友奈、亮之佑! アンタたちはどっち! まあ知っているけど!」

 

「それはもちろんうどんですよ。ねえ?」

 

「唐突だけど、今日はそばの気分なんですよ」

 

「はい、一票入りました! やはりそばこそグレートな存在よ!」

 

「やっぱりややこしくなるから、アンタは黙って!」

 

「というか両方作れば良いのでは?」

 

「あとは骨付鳥の気分」

 

「それならやっぱり雛だよな!」

 

「いや、骨付鳥は親の方が良いだろう!」

 

「ちょっと待って! 議題が進まないんだけど!?」

  

 前世から異世界に来たのだ。

 そこから更に見知らぬ異世界に来て少女たちと戯れる。ただそれだけ。

 

 ここがどこであってもやることは変わらない。

 戦いの果てにあるものがハッピーエンドになるように。

 この少女たちと、終わらない空の下で、どこまでも──。

 

 

 




お久しぶりです。ゆゆゆいのショートアニメがやってましたので。
友奈ちゃんカワイイヤッター!
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