「それでも大きくなりたいのーーー!!」
響き渡る少女の声、それは部室の外にすら届く。
言葉に込められた思いは一体どれほどのものか、叫んだ本人にしか理解できないだろう。深く、重く、魂に響かせるような少女の叫び声は、脚を止めてしまうほどの何かがあった。
──いったい、何が、そんなに大きくなりたいというのか。
「だ、大丈夫よ樹。私たちは中学生。サプリを飲んでしっかり眠れば大きくなるわよ!」
「ぅぅ……サプリだけだとダメだと思います」
「樹ちゃん、唐揚げとかが良いんだって。諦めたら駄目だよ……ほ、ほら、勇者部五箇条」
「みーちゃん? それ前にもしたけど効果が無かったって。野菜も摂らないと駄目よ」
「……うたのんには分からないよ!! この気持ちは!!」
「ワッツ!?」
「……私は別に……そんなに大きくなりたい訳じゃ。ぁ、でも高嶋さんや……くんも……」
混沌とした空間が扉の先に広がっている。
嘆きの声音は、伸ばした手が扉を開かせることを拒否させる。
樹の望みが叶うかはともかく、身体的な特徴について笑い飛ばすことは出来ない。
胸が小さい、身長が低い。そういった先天的な特徴を笑うことは最低であり、俺が樹に対して出来ることは曖昧な笑みを浮かべ何も聞かなかったことにするか、その薄い胸元を揉みほぐすことだけだ。後者は非難殺到だろうが。
部室前で立ち尽くす俺を他所に、扉の先の集団を扇動するように一人の少女が口を開く。
「──ふむ。ペタ同士の慰め合いのなんと空しいことか。そんなことをしても山は育たないぞ?」
「ちょ、別に私は大きくなりたい訳じゃないわよ! 剣を振るのに胸なんて邪魔だし!」
「うんうん、そうだな。夏凜の言う通りだとも。……で、本音は?」
「ほ、本音も何もあるかー!! だ、大体球子の方が小さいでしょうが!」
「なんだとー!! 言ってはならないことを言ったな!」
勇者部部室は今日も賑やかだ。
少女たちが数人どころか十数人も集まると本当に騒がしい。
讃州組だけだった頃とは違い、勇者部に加入する少女は随分と増えた。三百年という時代の中、神樹によって選ばれた少女たちの集団は如何なる男でも参加を躊躇いそうになるものだ。
加えて、美少女揃いの部員たちの中で唯一の黒一点ともなると気遣いは必須だ。
「そもそも大きくなっても良い事なんて殆どないのよ、樹ちゃん」
「そうよ! 東郷のなんて片方で1.5キロよ! 身体壊すだけよ!」
「お姉ちゃんも反対よ? 樹がそんな重たい物を背負って生きていくなんて、見ていられない!」
「ぅっ……ぅぅ……。それでも、それでも!! 大きくなりたーーーい!!!」
それでも、という少女の叫びが部室の扉を震わせる。
女性のデリケートな話題、そこに入っていくのは多少の勇気が必要だ。今更そんな物は必要ないのではと思うかもしれないが、親しき中にも礼儀ありである。
こういった時は──、
「タイミングを見て入るのが一番だ」
この異世界では時が幾度も繰り返されている。その中で、変わる物も変わらない物もある。
いつまで経っても学生のまま精神だけが成長していく。若葉のように精神だけが成長していき、年を経る度に見た目との乖離に悩み始める者もいるのだ。
そんな淑やかな彼女たちは、男という存在を気にしてこういった話題を中々出さない。
大人になるということは我慢すること。
精神年齢の上昇に伴い、鬱屈とした想いを溜め込み隠しているのではないのか。それを吐き出してやろうという建前で、少女は、勇者は立ち上がった。
勇者部のムードメーカーの一人である土居球子がそれを発したのは何年前だったか。
「クックック……今こそテラロ・メガロの諸君に問おうではないか!! 君たちが抱えている者は冷たいペットボトルか? いいや! 温かく、柔らかく、尊い物に他ならない!」
「ええ……ええ!! その通りです球子さん! ビバーク!」
「登山部の魂を思い出したか銀! ビバークだ!!」
「とう!」
「ぁん! もう……銀ってば……」
「タマっち先輩! 恥ずかしいからやめてってば!」
「元気だね~、でも私も恥ずかしいからタマ坊にビバークはさせないよ~」
「いやあああ!? 女子力が吸い取られるぅぅぅ!!!」
多種多様な勇者が存在すれば当然そんな勇者もいる。彼女たちがそういった淑やかさを吹き飛ばし、紳士らしさの欠片もない欲望とセクハラで彼女たちを翻弄するのだ。
巨乳率の高い少女たちの双丘を好きに揉む。最終的にお仕置きがあれども、本格的に厳罰が下らないのは我慢しがちな少女たちの感情を発散させる、そんな意図があるからなのだろう。
日々の戦いにおいて鬱屈とした空気が続くよりも、こういった空気の入れ替えを彼女たちは意識的か無意識なのか、ムードメーカーとして機能しているのは、きっと間違いないのだ。
そうでなければ、少女たちのマウンテンの話が定期的に出てくることはないのだ。
だから──、
「だからこの話題が終わるまで、俺は扉の隙間から覗くのだ……」
「──いや、球子がそこまで考えているとは思えないが」
「わあ!」
囁くような声音に思わず耳を押さえる。
振り向くと、仕返しに成功して喜ぶ子供のような顔をした少女がいた。気配を消すのが上手くなったのか、或いは少女たちの戯れに意識を割き過ぎたのだろう。
揃えられた前髪から覗く紫紺の瞳は他人の痴態を前に目を輝かせていた。
「何の真似だ」
「いや、お前の真似だが。普段されっぱなしなのだから、こういう時にやり返さないとな」
床に片膝を立て、捲れたスカートを気にせず脚を開いては悪戯を優先する風雲児。
顔を下に向けると健康的で肉の乗った太腿と、その付け根に薄い緑色のショーツが覗ける。
悪戯を優先した結果自らの状態に思考が行かないのは、鈍感さと天然によるものか。
訓練で鍛えられた腿肉には、マーキングするように虫刺されのような痕が複数あった。
若葉が選んだにしては可愛らしいリボンと柄付きのショーツにジッと目を向け続けると、凛々しさと男らしさのある彼女も羞恥を抱くのか、慌てたようにスカートの裾に手が置かれる。
「……? ……ぁ! じ、ジロジロと見るな、変態」
「自分で見せたんだろう? エッチなパンツだった」
「み、見せたつもりはない! え、エッチでもない! 普通のパンツだ!」
「いたっ! 暴力反対! イエス恥じらい! ノー暴力!!」
「まったく……」
「今更それくらいで怒るなよ。俺と若葉の仲だろう?」
「それとこれとは別だ」
眉間に皺を寄せ、顔を僅かに朱に染めた若葉は俺の肩を叩く。
勇者の戦衣を身に纏っていないが、常人にしてはやや力の籠った拳が肩を通じて身体に衝撃を与える。乃木若葉のラッキーパンチラ、その代償としては安い物ではないだろうか。
ただ、友奈並に無防備なこともある彼女のパンチラ率は巫女がいないとそれなりに高いので、そこまで珍しい物ではないが。
「ん……それで球子の例の発作が始まったのか。何故部室に入らずこんな所にいたんだ?」
赤らんだ顔を誤魔化すように咳をする若葉。
下着どころか、恋人か夫しか知らないような所を見られ、知られている彼女。少しでもそういった話題を避けたいのか、露骨に話を逸らそうとする若葉を見ながら口を開く。
「登山部員たちの邪魔はしたくはないんだ」
「亮之佑の場合は寧ろ加勢する方だろう? 球子たちに名誉部員扱いされているじゃないか」
「あれは勝手に登山者扱いされているんだ。……まあ、登ったが」
「……こっちを見るな」
半眼で此方を睨み、男の視線から身を守るように自らの身体を腕に抱く若葉。
彼女の言葉通り、俺は球子や銀といった登山部の仲間扱いをされている。男の子っぽい性格の球子や銀たちと男子的なノリが噛みあうことがあるからか、彼女たちにはそういう認識をされている。
認識をされているからといって、別に白昼堂々と乳房を揉んで回ることはしないが。
「それより、大丈夫だったか?」
「何がだ?」
「ほら……ひなたさんと帰った後」
「……ああ」
そう尋ねると、揺れる紫紺の瞳は虚空を見つめ、薄く笑みを浮かべる。
過去を思い出しているのか、諦観の笑みを浮かべるほどの物だったのか。
よほど怖い目に合ったのか、女の嫉妬とは恐ろしいものだ。プルプルと震え始める少女に寄り添い、無人の廊下で彼女の身体を抱き寄せる。
「そうか……可哀そうに。散々エッチなお仕置きをされちゃって……」
「お、おい、抱き着くな。ひなたに気づかれたら──」
「三十秒だけハグをするとストレスが半減するんだって。これは科学的なアレコレで立証されているから合理的な行動だ。だから、黙って俺に抱かれろ」
「──、三十秒だけだからな」
戸惑いの声音に拒絶はない。
放課後の、誰も立ち寄らない部室前。柔らかく温かい身体は僅かに強張るも、僅かに力を入れて抱擁すると少しずつ肢体から力が抜けていく。
やがて俺の肩に自らの顔を置く若葉は、乳房が胸板に触れる程度に密着する。
「少し、だけ」
サラリとした金髪は絹のように指の間を抜けていく。
ふわりと舞う数本の髪の毛すら甘い香りを漂わせている。
「ん」
若葉の背中を手で上下すると息を呑むのが分かった。
制服はやや硬いが女性らしい柔らかな感触と香りを感じる。形の良い耳を撫でる手を若葉が掴み「まて……」と小声でたしなめるも少女の柔肌を撫でる手は止まらない。
指の腹で耳の穴をなぞると、小さく身体を震わせた若葉はキッと俺を睨みつける。
「どんなことをされたんだ? 教えて欲しいな」
「い、言う訳……んっ……」
顔を背ける若葉、その耳元にキスをすると頬が朱に染まる。
体温と鼓動の高鳴りを覚えながら、紺色のスカートに手を入れると掌に下着に包まれた尻肉を感じる。下着と柔肌の境目をなぞり、若葉の鼠径部を手でなぞる。
肌触りの良い下着越しに温もりが伝わり、熱を帯び始める少女は唇を噛む。
「ま、待て……亮之佑。今は別に……そもそも部室の前で……っ!」
「しー」
「……っ」
言葉にして、改めて状況を理解する。
放課後の誰もいないといっても、絶対に人が通らない保証はない。何よりも、すぐ目の前の勇者部の部室からは見知った少女たちの声が変わらずに聞こえる。
小声で話をするのは、彼女の聡明な頭脳が状況を理解している証拠だ。
「その……他には、よく聞くのが……人に揉んでもらうとか」
ひなたの声に若葉は目を大きく見開く。
制服のブラウス越しに揉むとブラと乳房の感触を掌に感じる。部室の扉、その横の壁に若葉を押し付けながら、扉越しに聞こえた声の通りに少女の乳肉を揉む。
端正な顔を横に振る若葉は、自らの手で口元を押さえて涙目で俺を睨む。
「ちょっと大きくなったか?」
「……そんなことはない、と思うが……、それよりもう十分だろ……? 第一、流石にこんなところでするのは、んッ、せ、せめて空き教室で……。わ、分かった、ひなたにされたことを言うから──」
言葉は続かなかった。
蜜の染みた下着越しに陰核を指で触れられると、声を漏らすまいと必死に口元を手で押さえる。
彼女の言葉はもっともだった。
いつ、人が通るのか分からない、不安定な場所でこんなことはしなかったのに。
散々東郷たちに搾り取られて、若葉に手を出すほどの必要性もないのに。
大胆になったと、考えれば良いのか。
或いは見つかっても、また繰り返すだけだと、思っているのか。
「んっ……っ、イっ……~~~!!」
爪先立ちになる若葉を追いかけるように、指先で恥毛に隠れていた陰核を捏ね繰り回すと若葉はあっさりと気をやった。
ガクガクと脚を震わせながらも、しかし座り込むことはない。
勇者のリーダーに相応しい、凛々しい姿を見せる彼女のスカートを捲る。数日前よりも敏感になったのか、透明な雫が腿を伝い、床に小さな水たまりを作る。
「ふっ……ペタたちよ。アレを忘れているんじゃないか?」
「アレ?」
「健康診断」
少女たちはいくつになっても数字に拘りを抱く生き物だ。
少し太った、大きくなった。大きくなって、或いは減らして自分を良く見せたいという考えは理解出来る。だが、直前になってから行動しても変化はしにくいものだとも思う。
わざわざ空気を壊すつもりはないので、ファスナーを下ろし反り立った怒張を恥部へ。
「ん……」
声を出してバレることを恐れているのか。
口元を手で覆い、鼻息荒い若葉の腿を肉棒で擦る。
「いつだっけ? 確かもうすぐだったような」
「えっと……このあたりじゃない?」
「ああ……ここか! まだ予定表届いてないけど去年もこの辺りだった!」
下着をずらし、ゆっくりと挿入する。
ぬぷぷ、と熱く濡れた肉は容易く怒張を受け入れ、いつもよりも締め付ける。
彼女の緊張が伝わるような蠕動と襞の一つ一つが剛直に絡みつく。
「ん……!! く、ぅ……ぁ、ん……っっ!」
突き、抜く度に嘆息が出るような快感を彼女はもたらす。
壁に背中を押し付けられた彼女の口端から漏れるのは熱い吐息だ。逃げることは許されず、頭ごと身体を抱かれた若葉は俺のピストンにされるがままだ。髪の毛からは汗と淫靡な芳香が漂う。
「はっ……ぁっ……」
結んだ口から時折嬌声がこぼれる。
口元に当てた手は下ろされ、俺の腕を掴み、喘ぎ声を嚙み殺す。
必死に我慢しようと唇を震わせる若葉は助けを求めるように俺を見る。
背中に回した手は力強く、キスをねだる彼女の唇を唇で塞ぐ。
「んっ」
口腔行為を通じて、たっぷりと唾液を交換し合う。
互いの声を隠すように、水音を無人の廊下に響かせてキスをする。
嫌がる仕草を見せながらも、前よりも上手に、協力的になった口づけは浮気の味がする。
こくん、と唾液を飲んだ若葉が喉を鳴らした。
とろん、と蕩けた顔の女は喜悦に甘い声音を聞かせる。
扉越しに聞こえる少女たちの話題が変わり始めた頃に射精衝動が限界を迎えた。
このまま、彼女の奥へと注ぎ込むことを耳元に囁くと若葉の身体が震える。
「く、くちに……」
膣内と口腔、どちらが良いのか。
そんなことを尋ねると彼女は後者を選んだ。学校という環境で後処理のことや証拠隠滅を咄嗟に考えたのか、耳元で喘ぎ声を漏らす彼女は懇願する。
ほかほかの肉壺から怒張を引き抜く。
床に座り込み、震える彼女の顎を持ち上げ、肉棒を唇に擦り付ける。
ぷっくりとした肉厚の唇に亀頭を宛がい、陰唇と同じように怒張を挿入する。
膣に劣らず熱くぬめる口腔に誘われ、そのまま白濁を吐き出す。
「~~~っっ!!」
びゅうっと数度にわたり汚濁が彼女の口腔を犯す。
大きく見開かれた瞳から涙が落ち、歯茎も舌も頬も汚れたのが分かる。何度か肩を震わせる若葉は噛みつくことも吐き出すこともせず、ただ静かに雄汁を受け入れる。
鼻息を荒くする若葉の口に最後の一滴まで放った俺は怒張を引き抜く。
「……」
無言の彼女の艶やかな唇は汚濁に濡れ、怒張の先端と白濁の糸を結ぶ。
ぷつりと千切れた糸が珠になり若葉の唇に付着するのを見届ける。
呆然と口元を押さえる彼女の再起動には少し時間がかかりそうだ。
雄汁を飲むのか、それとも吐き出すのか、衣服を整えながら暫く見届けようと──、
「かっきー先輩?」
「────」
この世に絶対はない。
人が通らない時間ではあっても、絶対に人が通らない訳ではない。
思わず息を止めた俺に近づいてくるのは、鈴音の声をした金髪の少女。
「園ちゃんか」
中学生の方ではない。小学生の頃の園子は呼ばれるとほにゃりと笑みを浮かべる。
無垢な彼女は何をしていたのか分からないのか、不思議そうに俺と若葉に視線を向ける。
「こんなところで何しているんですか?」
あまりにも真っ当な質問に思わず息を呑む。
小首を傾げて、部室に入る訳でもなくその近くで抱き合っていた男女の衣服が乱れている。敏い彼女は俺と若葉を見る幼い頬を染めて、玩具を見るようなキラキラとした眼差しを向けてくる。
いったい、どう答えるべきか。今更ながら頭を回すも、良い答えが浮かばず──。
「……少し躓いてしまってな。ここで休憩していたんだ」
「休憩?」
「そうだ。だからなんでもないんだ」
「それならどうしてハグしているんですか……?」
「分かったな? 乃木。ひなたには、皆には内緒にしてくれ。頼む。なんでもするから」
「……分かりました~」
──ごくん、と若葉が喉を鳴らした。
精液を嚥下して、苦々しい顔を見せながらも苦しい言い訳を口にする。
力尽く、パワーに物を言わせて封殺した若葉に園子(小)の続く言葉はない。
躓いた方の脚を見せる彼女の髪はやや乱れ、ブラウスから覗く赤らんだ肌と淫靡な香りは見る者が見れば理解するだろう。
彼女自身も隠しきれているとは考えていないのか、或いは混乱で思考がそこまで至らないのか。
僅かに震える腿からさりげなく蜜を拭い、なんでもないように若葉は立ち上がる。
「さて、では行こうか」
「あれれ、ご先祖様~。喉の調子も悪いの?」
「ん、んんっ。い、いや……昨日、……カラオケ。そう、亮之佑とカラオケに行ってな。つい熱唱してしまったんだ」
「若葉は声もいいからな。デュエットすると楽しいんだ」
「そっか~。かっきー先輩も上手いもんね。今度またカラオケに行きませんか?」
「も、もちろんだ」
「ありがとうございます~。あっ、そうだ! ご先祖様、これ飲みかけだけどいる?」
「うん? 蜂蜜の……ジュースか。頂こう」
用意の良い園子(小)の差し出したペットボトル飲料を、腰に手を入れて飲みだす若葉。
或いは浮気していた父を咎めず、弱みを握った娘に見えたのは気のせいか。
休日の父親と娘のような関係を幻視する俺を他所に、ゴクゴクと飲む若葉は大きく吐息する。ニコニコと笑みを浮かべる園子は抱えたサンチョ枕を手にしながら頷く。
「私には少し苦かったので全部あげます~」
「……ああ。これは美味しいな。この程度なら苦い内には入らない」
「わ~大人だご先祖様~。……そんなに苦かったんですか?」
「ん、そうだな。まあ、飲めなくは……、………」
「口元も拭った方がいいですよ~。まだ白いのがついてますよ~」
「──、取れたか?」
「取れました~」
さりげなく髪や衣服、下着を整える若葉に、園子は関心を向けない。
直前に何をしていたのか、見た目が年下であろうと無知である訳ではない。察しと思いやり、そして見て見ぬふりをしているのだと感じて、俺もその演技に付き合う。
「それにしても」
自分でも自制が効かなかったのは、いったい、どうしたものか。
乃木若葉が襲いたくなるほどに興奮を覚えるほどの美少女であるのは明白ではあるが、それでも場所は弁えるべきだった。
こんなバレるかバレないか、一歩手前の博打を行うようなことは以前まではしなかったのに。
今日の行為だって、偶然園子(小)以外にバレなかったに過ぎないのだ。
唐突な破滅願望が芽生えていたのか、もしくは──、
「……本気で自制しないとな」
「ところでかっきー先輩ってご先祖様のことが好きなんですか? ラブ~?」
「なっ!?」
「そうだよ。勿論、園ちゃんのことも好き。乃木家は皆大好き」
「そ、そうか……私も亮之佑のことは好きだ」
「私も好きです~。……かっきー先輩」
「ん?」
「耳、貸して下さい~」
片手を口元に添える園子。
若葉が部室の扉を開ける直前、腰を下ろし小さな園子に耳を貸すと、
「──貸し、一つね」
いくつであろうとも、彼女は乃木園子なのだと実感するのだった。
筆が乃木家に取られがち。後悔はない