※この作品はR-18です。

果てなき夜で、貴方に愛を   作:毒蛇

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第三十五話 交渉中

 ──勇者部では様々な依頼を請け負う。

 労働力、もとい勇者を自称する容姿端麗な多種多用な性格と特技を持った美少女たちが、勇んでボランティアや雑用、手伝いをしてくれるのだから学校内外の人気は高い。

 容姿だけではなく、それこそ神が見初めた少女たちが率先して人の為になること、人が進んで行わないようなことを行う姿に尊敬や感謝の念を抱く者も多い。

 

「友奈ちゃんに手伝って貰っておいて文句なんて……絶対に言わせないわ!」

 

 と、鼻息荒く告げたことがあったのは東郷だ。

 しかし讃州中学校では、というよりも神世紀時代の人間の精神性は西暦とは違い、神を中心とした道徳教育が施されている。

 性格が穏やかで優しい子が多いからか、実際に東郷が出撃した回数は少ない。

 寧ろ、友奈に気安く触れる輩は許さないと暴走することの方が多い。

 

 そんな東郷を始めとした癖のあるメンバー、あらゆるタイプの美少女を含めた派遣会社勇者部、その代表である犬吠埼風は図書室の本の整理という依頼を受注した。

 メンバーは行きたい人か、彼女の目利きにより選ばれる。

 今回は後者であり、テンションの高い風は俺とひなたと杏に出向を命じる。

 

「ヨシ! 課長の亮之佑はじゃんじゃん出向して稼いで来なさーい! 女子力を稼ぐのよ!」

 

「お姉ちゃん、課長なのに出向させるの……? もしかして左遷しちゃうの?」

 

「甘いわね樹会長、使える人材は使うのよ。大丈夫、我が社はアットホームだから」

 

「私って会長なんだ……ちょっと待って、アットホームだから何なの?」

 

「樹、風のボケにいちいち細かくツッコんでちゃ日が暮れるわよ。……ちなみに私は部長ね」

 

「じゃあじゃあ私は……! えーと、私は……なんだろう? オーエルさん?」

 

「友奈ちゃんはそこにいるだけで十分! 働く必要なんてないよ。私が食べさせていくから」

 

「フーミン先輩! 私は~?」

 

「乃木は……我が社の株主ね。ほら、みんなも役職はもういいでしょ。行きなさい」

 

 学生らしい適当なノリは付き合いの長さか。

 敏腕社長により社員が次々と現場に向かわされる。

 

「ん? 球子、なんだその手は……なぜ此方に向けるんだ」

 

「いや、おっタマげというか、気づかない間に高尾山も少し成長していたのだなと。ビバークの時を思い返すと妙に柔らかかったような……冷静になるとブラが……ずれていたような……んー?」

 

「……っ、どうやらまだお仕置きが足りないようだな」

 

「い、いや、言ってみただけで、ぎゃーー!!」

 

「……乃木さんも土居さんもなにしているんだか」

 

「ぐんちゃーん! 一緒に行こうよ!」

 

「ええ、高嶋さん! その、……ちなみに高嶋さんも大きい方が……」

 

「ほえ?」

 

「な、なんでもない! ……はぁ、今日も筋肉痛になりそうね」

 

 口々に騒がしくしながら部室を出る少女たち。

 胸元を押さえてトイレに向かう少女や、折檻される少女。適度に触れ合う少女たち。

 素直で優しい彼女たちは依頼を解決するべくその美脚を進める。例外はなく俺も部室から外に出ようとする中で、突然風がニヤリと笑みを浮かべた。

 するりと俺の首に背後から腕を回す彼女の双丘がむにむにと触れた。

 

「……なんですかベタベタと。当たってますよ」

 

「なによー、今更アンタそんなの気にしないでしょ。年頃の男子じゃないんだし」

 

「ピチピチの男子ですが」

 

 警戒心なく風に抱き着かれるのは年月と信頼の積み重ねか。

 年頃の男ならば今の抱擁に乳房を押し付けられれば簡単に堕ちるだろう。

 そんな気安い身内に接するような態度を見せる風の行動に、しかし俺は冷静だった。彼女の体温や髪から漂う甘い香りを始め、制服に隠された身体の柔らかさに狼狽えたることはない。

 

 そもそも距離感ならばもっと近い少女たちがいるのだから驚くことはないのだ。

 鼻で笑う俺に、背後から抱き着く風はムムムと形の良い眉をひそめる。

 

 そんなやり取りをする中、このあと部長と部員の面談でもするのだろうかと周囲の女子たちは気を利かせたのだろう、狭い部室で何も言わず俺と風を避けて、次々と退出していく。

 此方を見て怖い顔をする東郷も園子に背中を押されて部室を出る。

 目が合った友奈もまたニコリと向日葵のような笑顔を見せて部室を出て行った。

 

「東郷の機嫌が物凄く良さそうだけど、昨日アンタたちナニかしてた訳?」

 

「……そういうこと聞くと女子力下がりますよ」

 

「ほら、あんな分かりやすい態度だと察するというか、思わず聞きたくなるじゃない」

 

「興味あるんですか?」

 

「え!? そういう訳じゃないけど……興味本位です、はい」

 

 部室において犬吠埼風とは対等、やや逆セクハラをしてくる先輩とその後輩という関係だ。

 先輩後輩という形式は一応守られてはいるが、年の差などほぼ無意味に近しい。

 何かと風は俺を気に掛けて犬吠埼家での夕ご飯の誘いをしてくれる。家庭的で料理上手な彼女の料理は年数を重ねるほどに美味となり、定期的に訪れる彼女の誘いは基本的には断らない。

 

「──まあ、冗談は置いておいて……アンタ今度ウチで食べて行きなさいよ。前からそれなりに空いたでしょ? 樹も寂しがっているし」

 

「この前千景や夏凜も行っただろうに。……俺がいないと駄目か」

 

「はいはい、そうね。それより好きな物を言いなさい。骨付き鳥も用意しておくから」

 

「社長! よっ、女子力の塊!」

 

「そうでしょー!」

 

 器の大きい彼女は時々勇者部の部員を食事に招くことが多い。

 決して俺を特別視しているという訳ではなく、夏凜や千景など一癖ある少女たちを名誉姉妹という扱いにして時々夕飯に招いていたりする。俺の場合は名誉姉弟だろうか。

 そんな素晴らしい人格の持ち主である風が意味なく性的なウザ絡みはしない。

 彼女の話を前座に、周囲に目を向ける彼女が声を潜める。

 

「それで……──ほら、そろそろ、また、ね?」

 

 耳元で囁く風の身体は僅かに熱を帯び吐息には淫熱が混じり込んでいる。 

 大剣使いである風もまた一人の勇者、敵バーテックスが押し寄せる度に戦闘に参加する。

 戦いは決して楽ではない。油断は出来ない。

 だから、時に満開や切り札を使用して、身体に淫熱が籠り始める。

 

「あと、樹もお願い」

 

「────」

 

「あの子、最近夜にしてるんだけど……あんまり効果ないようで。学校にいる時は普通なんだけどお風呂とかでしているっぽくて……。この前なんか玩具を買ったらしいんだけど、樹ったら無くしちゃったみたいで……私にバレていないかチラチラと気にしながら探しているのが可愛くてさー……、まあ部屋の掃除をしている時にアタシがベッドの隙間で見つけて机に戻したら怒っちゃって……でも、結局コソコソしているというか、必死に声を抑えるのが可愛くて──」

 

 「最近寝不足なのよ」と呟く姉は、可愛い可愛い自らの妹の性事情を暴露する。

 相槌を打つこと五分。妹について話す風のトークはしばらく続く。

 双丘の大きさどころか、身内ですら聞かれたくないような事を本人が聞いたら家出か憤死不可避な事を小声ながらも、可愛いを間に挟みつつ暴露していく姉は仄かに頬を赤らめる。

 

「それで……樹のためにも出来るだけ早めに来て欲しいんだけど、来れる?」

 

 戦闘において身体に熱や疼きが生じてもその程度は個人差があるらしい。

 満開や切り札の多用もそうだが、そうでなくとも性的治療が必要になる少女もいる。

 自慰で我慢出来る子もいるが、徐々に我慢が出来ずひなたに相談した結果、最終的に恥を忍んで俺に治療を求めるという、まさしく藁にも縋る少女もいる。

 治療頻度は低いが風や樹もそんな一人であり、姉の方は恥じらいはあれど順応は早かった。

 

「チアガール姿が見たいなぁ。風先輩の家で先輩のチアガール姿見たいなぁ。応援されたい」

 

「二回も言わなくてもいいから。……アンタもそういうの好きよね。どうせ友奈とか東郷とか乃木とかにコスプレさせて虐めて悦に浸ってるんでしょう?」

 

「そんなことはしませんよ~。──じゃあ、二人の治療に行くので。日付とかは携帯で」

 

「……うん」

 

 彼女たちの助けを拒否することはない。そんなことは出来ない。

 俺はそんな彼女たちに守られている立場なのだから、出来ることはしなくてはならないのだ。仕方のないことだと理解していても罪悪感と喜悦を見え隠れさせる風に俺は笑みを見せる。

 その日を想像したのか、僅かに頬を赤らめる風は小さく頷き口を開くと、

 

「──風先輩。依頼完了しました」

 

「と、東郷!? 流石に早くない!?」

 

「冗談です。話は聞いてました」

 

 部員のいなくなった部室に東郷が戻ってきた。

 長い睫毛に縁取られた深緑の瞳を俺と風に向ける。

 何気なく俺に触れ合う風に対してやや冷たい眼差しを向ける彼女は、

 

「風先輩、私の亮くんをよろしくお願いします。仕方のないことですけど……ほどほどに。それと少し近づき過ぎですので離れてくれますか?」

 

「え~、東郷だって亮之佑と普段からイチャついて……あ、分かったから。その顔止めて」

 

「亮くんもね」

 

「はい」

 

「はいって……」

 

 絹のような黒髪と白い肌、学校の誰もが振り向くような絶世の美少女。

 震える風を尻目に東郷が小声で「嫉妬させないで」と分かりやすく独占欲を俺に見せつけることが、口には出来ない昏い感情を胸中に過らせる。

 ぶるりと風と同時に震える俺の姿に東郷は僅かに首を傾げた。

 

「今の震えは東郷さんの可愛さに思わず。俺の嫁可愛いなって」

 

「あら、ありがとう。亮くん、ちょっと来て」

 

 有無は言わせない、そんな雰囲気を醸し出す東郷は笑み一つで年上の少女に首肯させる。彼女が如何にヤベー女であるのかを知っている風はそっと俺から身体を離す。

 何食わぬ顔で俺の手を一瞬だけ握り、見せつけるかのように俺に抱き着き豊満な乳房を押し付けた東郷は、風の目の前で柔らかな唇を重ねてくる。

 背中に回す力強い腕力に比べて、触れるだけのキスは柔らかい。

 数秒ほど経過した頃、ゆっくりと彼女から唇を離すと俺に見惚れる微笑を見せる。

 

「──今はこれだけ」

 

 今は。ならば後には何をしてくれるというのか。

 風に対してどこか得意げな顔をする東郷は両手でハートを形作る。

 ハート、つまり愛。これが愛なのか。

 愛の前には公衆の面前だろうと口づけも躊躇わない。

 

 車椅子時代よりも機動性と面白さとリミッターをぶっちぎった大和撫子。

 日頃、自制心が強いからか寝台の上では色々と凄い女。ストレスを発散させるかのように、全身で俺を求め、時に近しい親友とも愛を育む彼女。

 そんな彼女は大胆にも風に見せつけるようなキスと抱擁、そして小声で夜の約束をして満足したような顔を見せると、部室を飛び出し友奈を追いかけて走って行った。

 

「────」

 

「あ、じゃあ行ってきますね。加賀、出向しまーす」

 

 一連の出来事に半口開けて瞠目する風を置いて、俺は部室を出る。

 部室の外、何故か壁に張り付いて隠れていた夏凜と目が合う。まるで告白でもするかのように、顔を赤らめた彼女は乙女の表情で唇を震わせる。

 そんな夏凜の姿に依頼先へ向かう脚を止めて、少女の前に俺は立った。

 

「あ、あのさ亮之佑。今度さ……その……」

 

 潤んだ瞳を見せる夏凜、その顔近くの壁に手を叩きつける。

 ビクリと震える少女の顎を持ち上げて、俺は少女を見下ろす。

 

「ん……っ、なによ……こんなところで何するつもりよ……」

 

「そのくだりはもうやったんだ。猫耳ビキニメイドとか逆バニーガールセットをプレゼントするからそれ着て。夏凜は可愛いから似合うよ。今度ご主人様がキミの家に遊びに行くからよろしく」

 

「は!? ちょっ、ちがっ、いや、違ってないけど……! って誰がご主人様──」

 

「前に新調した水着でも可。じゃあねー」

 

「なんで知って……って、聞きなさいよーー!!」

 

 

 

 

 

 

 讃州中学校の図書室は今日も静かだ。

 学校の図書室に脚を踏み入れる機会などあまりない。生前を思い返しても、放課後にわざわざ行こうとも思わず古臭い本ではなく最新の書籍や漫画を求めて書店に向かっていた。

 この場所も、人が増える時はテスト前くらいだろうか。

 

 本日は本の整理の為に勇者部の貸し切り状態。

 文学少年少女もおらず、静寂と古い本の香りに静かに瞼を閉じる。

 

 瞼を閉じるとペラリとページを捲る音。

 本を棚に戻し、黙々と作業をするのは黒髪と金髪の少女だ。西暦時代の初代勇者とされる一人、伊予島杏と巫女である上里ひなただ。彼女たちは俺よりも早く来ており作業を進めている。

 

「……」

 

「……」

 

 ページを捲る音。

 黙々と本の整理作業を進め、暫く時間が経過していた。

 

 俺は誰とも会話をしていなかった。そもそも、誰も口を開かなかった。

 作業自体は難しいことではなく定期的に発生する依頼だ。

 

「……」

 

「……」

 

 ページを捲る音。

 あらかた作業を終えた俺は、無言のまま他の部員の背後に歩み寄る。

 思わず手に取り鼻を押し付けたくなるようなふわふわのミルキーブロンドの髪に色白の肌。病弱な令嬢という印象を持たせる彼女は一つの本を手に取り、背後から近づく俺の存在に目もくれない。

 

「……ふむ」

 

 無言でページを捲る彼女は自他共に認める文学少女。

 その横顔は真剣で、創作された世界に没頭する杏の集中力は凄まじい。

 

 文学を愛する彼女は園子のことを尊敬し、先生と呼んでいる。

 園子が書く小説、その内容に惚れ込み、彼女が作る独特の世界観に誘われた読者の一人。園子が書いた小説は俺も読んだことがあるが無言で読み耽る程度には面白いと思う。 

 周囲の棚に目を向けると殆ど整頓されており、途中で興味のある本を開いてしまったのだろう。

 

「────」

 

 なんとなく悪戯心を刺激される姿だ。

 図書室に置かれていた本なのだろうか古そうな紙面に少女の指が置かれる。

 いったい、どんな本を読んでいるのかと杏の背後から彼女の持つ本に目を向けると、

 

「……」

  

 欲望のままに快楽を女の膣に刷り込んでいる男。

 その行為中の状況を、感想を女に述べるように命令を下し。

 身動きの出来ない、自由の利かない体勢で女の身体も心も犯していく──。

 

「──官能小説か」

 

「……ひゃ!? むぐ──」

 

 真面目な顔で官能小説を読んでいた杏。

 背後から話しかけると驚く彼女の反応を読んで、悲鳴の零れる口元を掌で覆う。わずかに体勢の崩れかけた身体を背後から抱くと、やや熱を帯びた肢体が硬直する。

 ふわりと髪から漂う甘い香りと此方を振り向いた杏の顔が徐々に赤面していく。

 

 驚愕、焦燥、羞恥。様々な感情が瞳を揺らす彼女の唇は震える。

 何かしらの言い訳か、或いは驚かせたことへの文句か、艶のある柔らかな唇はいずれにしても俺の手に塞がれ、モゴモゴと動くばかりだ。

 勇者服を纏われると少女たちの誰にも勝てないが、素の状態の杏は腕に抱かれたまま柔らかく豊かな身体を揺らし、俺の腕を掴む力は驚くほどに弱弱しい。

 男に背後から襲われた状況に頭が追いついたのか涙を目端に浮かべ始めた杏に俺は囁く。

 

「騒いだら、杏が過激な官能小説を読んでも平然としている変態娘であることを皆にバラす」

 

「────」

 

「図書室ではお静かに。……分かった?」

 

 しー、と耳元に囁くとビクリと身体を強張らせる彼女は、やがて静かに頷く。

 口元に当てた手を外すと、小さく吐息する杏は半眼を俺に向ける。

 

「……驚かせないで下さい」

 

「ごめんね。そんな過激なのを読んでいるとは思わなかったから」

 

「こ、これは……たまたまここに置いてあっただけで……っ、別に興味があるとかじゃ──」

 

「このまえ、園子と似たようなことをしたよ」

 

「え」

 

 さらりと脅し文句を口にしたが、実行しないと杏は踏んでいるのだろう。

 要求した通りに小声で、怒りや焦燥、見られたことへの羞恥を綯交ぜにした眼差しは、手に持つ本に似たような体験を尊敬する先生と目の前の男がしているという言葉に白黒とさせる。

 本を持つ手に震えが生じるも、それを床に落とさないのは本を大切に思っているからか。

 ふわふわとした金髪から漂う甘い香りを嗅ぎながら、囁く。

 

「想像出来ない? でも杏の大好きな園子先生が、その本みたいにされるんだ」

 

「園子先生が……!? そんな激しいことを……」

 

「たまにエッチな小説も投稿しているだろう? 薄々気づいているだろうけど、あれは全部自分がされたことや実際に見た物を参考にしてるんだよ」

 

「全部……」

 

 想像してしまったのだろう。

 ゴクリと喉を鳴らし、園子が背後の男に女にされている情景を。

 

「そ、れは」

 

「裸に剥かれて、一杯気持ちよくさせられるんだ……後ろから突いたり、羽交い絞めにしたりして、抵抗出来ないようにして、どこが気持ちいいかを口にさせる」

 

「────」

 

「乱暴に胸を揉まれて、激しく犯されて……でもどうしようもない快楽に何度も何度も……」

 

 官能描写を口にして、片手で制服越しに豊満な乳房を揉む。

 囁かれる耳は赤く染まり、制服から覗く両脚をくねらせる。そんな風に触れられて、しかし逃げる訳でもない彼女のセーターの下、ブラウス越しに腹部を摩る。

 

「何度もイかされる」

 

「ん……ッ」

 

「ここに、俺の物を何度も注ぎ込むんだ。その度に囁くんだ」

 

「は……! ぁ……!」

 

「俺の物になれ」

 

「~~! んくっ!!」

 

 西暦組では遠距離射撃と頭脳を武器とする彼女は、しかし若葉に鍛えられているからか、無駄な脂肪は少ない。

 自らの身体を触られて、他の女の痴態を耳にする杏は抵抗することなく背中を俺に預ける。

 瞼を閉じて、自身の妄想力と俺に身を任せたのだろう。

 触れた腹部から電流が走ったように、一瞬杏の下腹部が震えたのが分かった。

 

「俺の物になれ」

 

「それ……、だめ……」

 

「俺の物になれ、杏」

 

「ん……ッ!! ぁ……っ!」

 

 振り向き「だめ」と小声で告げる杏の瞳は熱で潤んでいるも抵抗は少ない。

 されるがままの彼女の身体に手を這わし、スカートを捲る。

 白いタイツに包まれた純白のショーツは初々しさがあり、クロッチ部分が湿り気を帯びているのが見えた。むわりと中から漏れる雌の香りは、彼女の想像力の高さと感度の良さを如実に伝える。

 真顔で官能小説を読みながら、その身体は最初から淫熱を帯びていたらしい。

 

「白か」

 

「そ、それは……だめですから」

 

「何が駄目なんだ。こんなに濡らして。いけない女だ」

 

 白タイツとショーツ越しに恥部をなぞると水音を響かせながらビクッと杏の身体が震える。

 俺の腕を掴もうとした彼女はもたらされる絶頂の予感に自らの口元を押さえた。

 

「……! ~~!! ぁぁ……」

 

 浅い呼吸を繰り返す彼女は薄く瞼を開く。

 酩酊したような眼差しと、蕩けたような表情は、男を迎え入れようとする女の物だ。

 

「だらしない雌だな。もうイったのか」

 

「……ッ、そ、それは」

 

「──なんてね」

 

「ほえ?」

 

 簡単に悪い男に食べられそうな彼女は、俺の言葉に呆けた顔をする。

 このまま図書室の床に押し倒されても彼女は受け入れる。

 その確信があったが、俺は苦笑と共にすっかり熱を帯びた少女の身体を離す。

 顔を赤らめてパクパクと開閉する杏の口が言葉を紡ぐ前に、

 

「──これ以上が欲しい?」

 

「あ、え……? ──!」

 

 初々しさを見せる杏の頬に悪戯心と共に口づけをする。

 そうして、頬に手を当て赤面する少女から本を奪うと棚に戻す。

 

「いっぱい、凄いことしてあげる。色んなシチュも一緒にしてあげる」

 

「──ぁ」

 

「優しいのも、激しいのも。後悔はさせない」

 

「…………なら」

 

「おや、顔が少し赤いな。風邪かもしれない。残りは俺がするから今日は帰った方が良いよ」

 

「ぇ、あ……」

 

「そんな状態じゃ依頼どころじゃないだろう? 今日は帰った方が良いよ」

 

「……今日は」

 

「近い内に杏の部屋に遊びに行くから。いい?」

 

「……、分かりました。……その、待ってますね」

 

 気障な言動も無垢な少女にはすうっと効く。

 小さく頷く杏は、スカートを押さえふらふらと揺れる身体で出入口に向かう。

 その足音が遠ざかっていくのを確認すると、背後から声が掛けられる。

 

「──少し強引だったんじゃないですか?」

 

 やや背の低い少女の声音。

 清楚さを感じさせる雰囲気の少女に俺は振り返ると口を開く。

 

「でも、杏も悦んでくれていたので。あと官能小説を読んでいたから、つい」

 

「何がついですか。私の若葉ちゃんもそんなことはしませんよ」

 

「というのは建前で、前に切り札の後遺症の治療を恥ずかしがって頼めない子がいるって言ってたでしょう? 俺からすることで言い訳を作りやすくしました」

 

「……もしかして今思いつきませんでしたか?」

 

「俺って信用ないですか? これでも四国随一の奇術師ですが」

 

「だからこそと言うべきでしょうか。亮之佑さんと数年は過ごしましたから。普段なら信用してますがそっち方面となると……その……」

 

「酷い言い草だ」

 

 言外に女たらしだと告げる彼女に肩を竦めて、近づく。

 杏との一連の流れを見ていたのか、半眼で俺を見上げるひなたが半歩下がる。

 警戒するように腕に己を抱いて豊満な乳房を腕に乗せる巫女の背後には壁と、横には本棚しかない。あっという間に逃げ場を無くし、壁を叩くとビクリとするひなたは無言で俺を見続ける。

 

「な、何ですか? 杏さんみたいなことをするつもりですか? 叫びますよ」

 

「いや、ほら、昨日のことで謝りたくて」

 

「……まさかと思いますが二人だけになる為に杏さんにあんなことを? 亮之佑さんならもっと穏便に出来たと思いますよ。わざわざあんなことをしなくても」

 

「さっき言ったように治療的な面もあったけど……思ったより反応が可愛かったから」

 

「女の敵ですね」

 

 やや冷ややかな眼差しを受け、少女の背後の壁を叩いた腕を曲げる。

 肘を曲げて、やや小柄な少女に近づくと、戸惑うようにひなたは瞳を伏せる。

 

「昨日のことで謝ることなんてありませんよ。寧ろ謝るのは私の方ですね。……変でしたか?」

 

「変って?」

 

「その……胸とか、あそことか。大きさとか色とかもそうですよね、剃った方が良かったですか? いえ、以前にも若葉ちゃんにムチムチだとか太腿が太いとか濃いとかセクハラ親父みたいなことを言われましたし。こんな背は低い癖に胸だけは大きいアンバランスな体型で──」

 

「とんでもない!」

 

 返信一つで随分と大袈裟な反応をするものだと思ってはいけない。

 基本的にメールなどのやり取りは早いことを彼女は知っている。だが、丸一日放置されるという機会はこれまで無かったことと自らの恥部の写真を送ったタイミングだったこと。

 それらが絡み合い、ひなたに悲しい勘違いをさせてしまったのだろう。

 

「とってもエッチな身体で変なことは無いよ。ただ、昨日はちょっと返信を忘れて」

 

「……本当ですか?」

 

「不安にさせてごめん。若葉と似たようなことを言うけどひなたさんの身体は凄く女性的で綺麗だよ。何も変なところはない。じっくりと直接見たいくらい」

 

「────」

 

 ひなたの裸体は一つの美と呼んで良いくらいに美しかった。

 いずれも写真や動画による自撮りだが、乳房の大きさや色、腹部や、臀部、太腿の肉付きの良さや、髪色と同じ黒色の恥毛、チラチラと見え隠れする乳首や恥部は下半身に血を巡らせる。

 アンバランスと言うが、男目線としては東郷のような完璧な身体をしている。

 

「本当に中学生なのかなって思うくらい。凄く魅力的でエッチだよ」

 

「……あ、ありがとうございます。ただ、あんまりエッチと言われるのもちょっと」

 

「どうしろと」

 

「ふふ……冗談です」

 

 ひなたとそんなやり取りをしていると、徐々に強張っていた身体が柔らかくなるのが分かった。

 俺を見上げ、上目遣いを見せるひなたは小さく笑みを浮かべた。

 困ったように雪肌の頬を僅かに赤らめながらも、小さく咳をして話題を変えさせる。

 

「昨日は何があったんですか?」

 

「実はかくかくしかじかで」

 

「なるほど。それは単純に亮之佑さん側のミスですね」

 

「はは……、なのでひなたさんの自撮り写真、もう一回送ってくれませんか?」

 

「そうなりますよね……」

 

 壁ドンされる巫女は、僅かに目を伏せる。

 思考を纏めているのか、ひなたは手で自らを扇ぎ、僅かに赤らんだ肌を冷ます。

 

 上里ひなたという少女は強かな所がある。

 親切心で自らの卑猥な写真を送ってくれるかと言うと厳しいところだろう。

 彼女の肌色満載の動画や写真をもう一度取得するとなると、交換材料として若葉の痴態写真が必要になる。もしも交渉事になったら此方の損失である以上、不利な条件になるだろう。

 

 とはいえ、自宅ということで背後を許すのは仕方ないのではないだろうか。

 自宅という聖域で油断をしないことは難しい。確かに友奈や東郷のいない時にコッソリと見るべきであったのかもしれないが、思わず見たいという欲求が上回ってしまったのだ。

 誰にでもうっかりミスという物はあるのだ。

 

「……その、亮之佑さんは直接私の身体、見たいんですか?」

 

「……うん? そうですね」

 

 そんな俺の思考を切り裂くように、ひなたが俺の制服を掴む。

 目を向けると、目を伏せていた彼女の顔が徐々に赤らんでいく。

 いったい、何が起きるのかと見ていると、ひなたは上目遣いで俺を見る。

 

「……私とも、したいですか?」

 

「したいって?」

 

「先ほど杏さんにしていたみたいな……その、エッチなことです」

 

「したいな」

 

「…………でしたら、こうしませんか?」

 

 か細い声で、羞恥が混ざったような声色はやや高い物で。 

 

「今までと、そしてこれからの若葉ちゃんのエッチな画像や動画を全てくれるなら、……私のことを好きにして良いです。私の自撮りも全て差し上げます」

 

 そう提示して、どうしますか、と言う言葉には。

 俺ならば断わらないだろうという響きがあって。

 

「ひなた」

 

「はい」

 

「ここでする?」

 

「──私の部屋で。それと、優しくお願いします」

 

 若葉を犠牲に、ひなたを抱く。そんな交渉が成立した。

 成立の記念として図書室で奪った彼女の唇は、柔らかく、背徳の味がした。

 

 

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