夢は見なかった。
昏々と泥に浸かり沈み込むような静かな睡眠だった。
揺蕩うような、川に延々と流されていくような眠気は、それでも時間が来ると乖離していく。
「――――」
いっそこのまま目覚めなければいい。
そんな欲求が意識の中で湧き上がりながらも、重い瞼を懸命に上げる。
霧がかった視界でぼんやりとしながら布団の中、自らが何かを抱いているのに気づく。
「……ぁ?」
弾力としっとりとした肌触りが手のひらに広がる。
その感触に咄嗟に身体を動かそうとして、右腕が動かない事に俺は気づいた。
右腕が封じられている原因は、俺の腕の上に柔らかい身体を乗せている少女のようだ。
「――――」
「……、んっ……」
枕に頭を預け口端から小さく涎を垂らす赤い髪の乱れた少女。
時折、此方の心臓に負担を掛けるかのように、朝目覚めると布団の中で彼女が寝ている事はあった。
その時は主に私服や制服姿などだったが、無事な左手で布団を捲ると度を越えていると判明する。
寝台に身体を預ける少女。
その白い両脚は剥き出しで脚の付け根に薄桃色のショーツのみを履いているのが見える。
上半身は黒いシャツではあるが、寝相が悪かったのだろうか捲れており白い乳房を晒している。
「……」
己の頭は枕からずり落ち、ちょうど目の前に少女の双丘がある。
桜色の先端が純白の果実の中でツンと上を向き、可憐ながら反抗するように主張をする。
未だに少女と布団の暖かさに微睡む中で、本能に釣られて幼子のように先端を口に含む。
「……んッ」
ただぼんやりと目の前の肉粒を唇で揉む。
ころころと、唾液で馴染ませながら弄ると少女の身体が震える。
布団の中で辛うじて動く左手で胸を揉む。
むにゅ、と形を変えるマシュマロの如き双丘は、紛れもない母性の象徴である。
ただ何も考えず、小さすぎず大きすぎない成長中の果実を優しく揉みながら先端を舌で転がす。
飴を舐めるような優しさで上唇と舌で挟むと少しずつ先端が硬さを主張する。
口を離し唾液で濡れた桜色の先端と乳輪に小さく吐息すると少女が小さな反応を見せる。
「――ふ」
「んんっ……」
ふと顔を上げる。
周囲を見渡し現在時刻を確かめようと目覚まし時計を探す。
デジタルタイプの小さな時計は寝台のすぐ傍にあり、左手だけでもなんとか届いた。
日頃の柔軟の大切さを知りつつ、時刻を確かめると朝の5時だった。
カーテン越しに映る窓からは一切の光は無く、まだ日が昇っていないのが分かった。
それだけを確認し、念の為と6時半にセットしていた目覚ましのアラームを切っておく。
平日ではなく既に今日は休日である。
用事は特になく、無理して早起きする必要はないだろう。
どのみち、この至福とも呼べる時間を台無しにするつもりはない。
「……ぁ、……っ」
寝汗を掻いているのか、わずかに甘くしょっぱい。
ふにゃりと形を変える胸に吸い付き、独特の味わいがある少女の肌を吸う。
徐々に友奈の吐息に熱が帯びるのを無視して俺は執拗に片方の乳首をコリコリと責め立てる。
刺激を与えられる事によって漏れる少女の吐息が心地よい。
薄暗い中でも分かる程度にほんのりと頬に朱を交らせる少女は目を開けない。
眠っている故に抵抗はない。
ただ刺激を与える度に逃げようとせず声を漏らすばかりだ。
「ん……ふッ」
それでも身体が無意識に逃れようとしたのだろう。
寝言を言いながら友奈は寝相を変えようと寝台の上を転がる。
潜在的な意識が快楽を求めているのだろうか、此方に寝転がる友奈の身体は軽く熱い。
ちょうど俺の身体に覆いかぶさるように少女の身体はうつ伏せとなる。
その動きに一瞬息を止め、無言で少女の寝顔を見ていると何事もなく寝息が聞こえる。
同時に解放された右腕はかすかな痺れが奔りながらも、ただ動かす事には問題はない。
「――――」
改めて両腕で、白く、柔らかい少女の身体を抱きしめると全身が充足感に満たされる。
未だ未覚醒の意識、黙々と悪戯をする中で己の逸物は甘い空気を読み取り眠ったままだ。
眼を閉じ、己の両手に感じる少女の背中に手のひらを回して少女の甘い香りを楽しむ。
「……ん、むぅ……」
紙一枚の隙間すら無い程に身体が重なる。
それはただ身体と身体を寄せ合うようにお互いの肌で体温を交換するだけだ。
少女が身動きする度に胸板に乗る少女の胸が潰れる。
むにゅむにゅ、と柔らかさの中にある確かに主張する小さな突起を感じながら、
「……っっぁ……!!」
自由となった両腕でやんわりと臀部を揉む。
薄布に覆われた尻肉は布団に覆われて見えずとも確かなハリのある柔らかさだ。
ちょうど両手を少女の体温で温めながら、意識が揺蕩う中で悪戯をするべく弄る。
「……ふ、……ぁ……っ」
しっとりと汗ばむ尻肉を手のひらでこねながら弄り続ける。
いつの間にか閉じていた瞼を開けると薄暗い中で少女の無防備な寝顔が見える。
顔色は分からないが、寝息と共に上げる嬌声は俺の耳の鼓膜を優しい快楽に浸らせ震わせる。
「――?」
「……ぁぅ……んっ」
ショーツ越しに秘裂をなぞると、蜜液による染みが出来ている事を指先で感じる。
下着を引っ張り刺激を与えていると少女は俺の太ももに股を擦り付け小さく動き始めた。
股に太ももを挟み、まるで自慰をしているように腰を動かす。
寝ながらのただ焦らすような手姦では、友奈に天上へ至らせる刺激を与えなかった。
その結果、無意識ながら絶頂を求めるかのようにうつ伏せで眠る少女はかすかに腰を動かす。
自分よりも他人を優先する少女。
それは優しく愛おしく、時には危険だが、それでも美しいと感じる。
そんな少女も、こうして寝ている時は素直に己の快楽だけを求めているのだ。
そんな少女を絶頂に導く為に、小さく脚を振動させる。
強く押し付けるように少女は秘部を擦り付け、やがてビクン、と小さく震え止まった。
「……、……あ……ッッ!」
太ももに感じる温かさ。
決して小水を漏らしたわけではなく、ただ小さく果てただけ。
だがソレを、寝ながらであれど、その行為をしたのは紛れもなく友奈自身だ。
無言のまま友奈の下着に触れる。
寝る前に履かせたショーツは蜜が溢れたような滴で濡らしていた。
友奈の鼻息は乱れ、口端から垂れる小さな涎は俺のシャツを汚し、染みにしていく。
「……ん」
鼻先を掠める匂いが俺を眠りに導く。
何とも言えない達成感と充足感が泥のような眠りに誘う。
「……」
少し眠ろう、と思った。
二度寝になるが、目の前の少女を乱雑には退かせられない。
---
次に目覚めた時には、胸に感じる圧迫感はなかった。
「……ゆう、な?」
寝起きで掠れる声音。
喉の奥が乾いたような声で周囲を見渡す。
鼻腔をくすぐる甘い甘い残り香を残して、彼女は布団の中から消えていた。
「……」
何となく口の周りがべたつく。
それを拭い、布団を剥いで寝台から降り、念の為寝台の下を見るがいなかった。
顔を上げ、寝台のすぐ傍にある目覚まし時計を手に取ると、既に時刻は朝の7時半だった。
「帰ったのかな……」
そう口にするが、即座に首を振り否定する。
そんな唐突に行方を眩ませる真似を、人を不安にさせる行為を、あの少女はしない。
盲信ではなく、これまでの付き合いに基づいた彼女と過ごした経験が俺に冷静になれと囁く。
「――――」
深呼吸すると新鮮な空気が肺に流れ、再び吐き出される。
一先ず彼女の名残がある服から普段着に着替えて自室の扉を開ける。
階段を伝い、二階から一階へと降りていくとキッチンの方から物音が聞こえた。
調理をしているような音が響く。
階段を降りる度に小さく軋む音を聞きながら音の方へと向かう。
「――ん? あっ!」
「……」
快活な笑顔に迎えられる。
フライ返しを手に持ち、恐らくは卵料理を作っているのだろう。
奥のフライパンに見えるスクランブルエッグの香ばしい香りが鼻腔をくすぐる。
「おはよー!」
「おはよう、……起こしてくれてよかったのに」
「ううん。ぐっすり眠ってたし……それに」
「それに?」
「あっ、えっと……それより勝手に食材使っちゃったけど……大丈夫だよね?」
「ああ、そんな事か。前にも言っただろ? 友奈なら変な遠慮はしなくていいって」
陽だまりのような笑顔を浮かべる少女。
友奈と話していると遅れて頭脳が稼働を開始する。
ひとまず勧められるままに洗面台に向かい、顔を洗いながら日課の擬態の確認を行う。
「手伝う事はないか?」
「もう終わっちゃったよ!」
「流石、我が弟子」
「師匠が素晴らしかったのですよ」
身内の茶番を繰り広げ、朝からノリの良い少女に近づく。
風呂と寝ている間は外していたゴムで後ろの髪を結いポニーテールを作っている。
見慣れた少女の髪型ではあるが、フリフリと誘うかの如く揺れ動く姿に俺は吸い寄せられる。
友奈の現在の姿は、昨夜俺が着せた黒色のシャツと、昨日履いていたスカートだ。
赤色のエプロンを着てテキパキと行動する姿は数年前の不出来な頃を思わせない成長ぶりである。
「あっ! 駄目だよ……」
「ちょっとだけ」
そんな、今も変わらず可憐な少女の背後に屈みスカートを徐に捲る。
その動きに対して咄嗟に隠そうとする左手を掴みながら、中の布切れを確認する。
薄桃色のショーツではなく、似た色で苺柄の可愛らしいショーツだった。
寝ながらの悪戯で濡れたままでは気持ち悪いから脱いだのだろうと思い離脱する。
「ゴメンゴメン」
「もう……。はい」
「ああ」
頬を赤らめる少女は小さく怒る。
ショーツの色を確認し満足した俺は謝りながら皿を運ぶ。
もはや俺の腕など超越したのではないかと思う程に少女の料理は美味しく思う。
基本的に自炊する故に誰かに食事を作ってもらう機会は少ない。
その為か、こうして友奈や東郷、最近は園子に作って貰う料理は最高に美味しい。
朝からこうした気持ちになれる事を、神棚から神樹に感謝の念を送りながらカップを傾ける。
「ご馳走様、片付けは俺がするから」
「うん」
和やかな団欒。
これこそが俺が欲していた時間だ。
生前、死が引きずり出した他者への羨望と絶望、そして己への深い深い失望。
ずっとこうしていたいと俺は思う。
傲慢でも我儘でも、それを邪魔する障害は何であろうとも滅ぼそうと思う。
少なくとも、それを可能とするだけの覚悟と力、知識、経験は磨いたつもりだ。
きっと己の大切な人の為だったら世界だって滅ぼせそうだ。
そう、比喩抜きで思考が至る部分に苦笑しながら、テーブルから立ち上がる。
「――――」
食器を運び水につける。
トーストの味も、ココアの味も、サラダも美味しかった。
満足な吐息を吐きながら、ふと俺はある事を思い出して、慌てて二階の自室に駆け上がる。
浮かれている場合ではないと頭脳が騒ぐ。
その通りだと身体は自責の念と共に慌てて目的の物を探し出す。
「……?」
部屋の中の机、鍵を掛けた引き出しからあるモノを取り出す。
そして部屋を出た時、ふと下を見ると部屋の前に落ちていた長い金色の糸を見つけたが意識は向けず、特に気にする事なく赤い髪の少女がいるであろうリビングに俺は向かった。
「そんなにバタバタして、どうしたの……?」
「ああ、ちょっとな。これ飲んでくれ」
「何これ?」
「えっとだな……」
コップに水を注ぎ小さな薬品と共に渡す。
今更ながら、俺は昨日の出来事に多少なり頭に血が上っていたらしい。
お風呂での少女との情事で、欲望に呑まれた俺は彼女の膣内に白濁を吐き出した。
少女に渡した薬品は端的に言えば避妊薬だ。
アフターピルとも呼ぶそれは、様々な事情によって大社より渡されていた。
一応コンドーム等も揃えていたが、肝心な時に忘れてしまっていたと奥歯を噛みしめる。
3日以内の服用で妊娠の確率を極限まで下げ、副作用も非常に少ない薬品だ。
昨日、少女の膣内を指で掻きまわし精を出して一応綺麗にはしたが飲むべきだ。
それらを理解しやすいように説明すると、理解した友奈は逡巡した後に口を開く。
「あっ……、大丈夫だよ。昨日は、その、大丈夫な日だったから」
「――それでもだ。昨日は悪かった、本当は俺が気づくべきだったから」
「……そんな事は」
「だが許可もなく……」
「――勇者パンチ」
口を開こうとする頬、そこに軽い力で拳が触れる。
柔らかい少女の拳から伝わる暖かさと、向けられる少女の微笑に口が動きを止める。
思わず黙り込む俺の両頬を包み込むように友奈は手のひらを触れさせて微笑む。
「そんな事言ったら私だって悪いよ。だから両成敗、ね?」
「――――」
「亮ちゃんは心配性なんだよ。私が言うんだから大丈夫!」
「……友奈が楽観的なんだよ」
「そうかもね……、えへへ。……さて、結城友奈、一気飲みしまーす!」
そう言うと、薬を含みごくごくと喉を鳴らして友奈は水を飲んだ。
ジッと見ていると少女が片手に持つコップ一杯分の水がものの数秒で消えていく。
ぷはーっと飲み干した友奈は可愛らしい笑顔を浮かべて、最後にこう言った。
「それにね、――私だって、そういう覚悟もしているんだよ?」
「――――」
小首を傾げ、何てことないように少女は口にする。
その瞳に浮かぶ感情に偽りが欠片もない事は、過ごした日数の長さが語っていた。
「……ところで。ねえ、亮ちゃん」
「……なんだ?」
「おはようのキスはしないの……?」
「――――」
悪戯をする子供のような瞳と目が合う。
楽しそうな、愛おしそうな、嬉しそうな視線を向けられ、数秒交錯する。
そこに誰も邪魔する者はおらず、小さく心の鼓動が高鳴るのが分かった。
その設定まだ続いているのかという言葉を呑み込む。
薄紅色の瞳は美しく、椅子に座り俺を見上げる少女と数秒視線を合わせる。
これも一種の我儘なのか、それとも空気を読んだのかは、残念ながら俺には判らなかった。
ただ一つ判るのは――、
「目を閉じろ」
「ん―――」
――この少女を大事にしようという思いだけだった。