──俺は一度死んだ人間だ。
それは世界中の誰が知らなくても、俺だけが知っていることだ。
もう随分と前のことで、色褪せていることもあるけれども、間違いなく覚えている。
何の因果か第二の人生を送ってはいるが間違いなく死んだ。そんな俺だがいわゆる天国や地獄といった死後の世界を知っている訳ではない。
意識が薄れたと思ったら、次は赤子になっていた。
もしかしたら記憶がないだけで神と対話したり天国に行ったのかも。
実は何かしらのチートと呼ばれる優れた武器や能力をくれたのかも。
手違いで死んでしまって別の異世界に飛ばされる話、そんな小説を読んだ覚えがある。
「確か杏から借りたんだっけ? 園子だっけ?」
確かにこの身体は多少物覚えや器用さはある。
とはいえ、怠けていたら何も身につかなかったのも事実だろう。
加賀亮之佑の能力は間違いなく俺が鍛えた物で、それが自信にもなった。
仮にそういった力があったとしても記憶にないので意味のないことだ。記憶がないのだから神が特典を授けてくれたかどうかも、死んだと言っても天国や地獄があるかも分からない。
死んだと言っても死んだ先がどうなっているかは俺には分からない。
もっと言えば──、
『あ・な・たのうしろよ』
──本当に幽霊がいるのかどうかは死んでみても分からなかった。
「「────ッ!!?」」
少女の悲鳴と共に腕を力強く掴むのは園子だ。
やや隣では友奈の声が聞こえる。ブルブルと震える手で身体ごと抱き着く園子の双丘の感触と体温を感じ取りながら俺は無言で視線を前に向ける。
『ねえ? どうして? どうして浮気したのよぉおおああ!!』
「……っ!」
暗い密室で、大画面に映り込む黒髪の女が迫り来る。
井戸から出てきた女は長い髪に顔を隠し、四つん這いとなって画面内を動き回る。ホラーに相応しい音楽が鼓膜を震わせぞわぞわと腕に鳥肌を立たせる。
冷房の効き過ぎか、随分と身体が冷えてきたのを感じながら瞬きを繰り返す。
所詮はフィクションだ。虚構だ。
幽霊というのならそれに近い少女を知っている。一度口にして怒られたことも。
『くーるーきっとくるーきっとくるー』
「ひっ……」
『そばあぁぁああ──ッ!!』
「ッ──」
本物に近い存在を知っているのに、虚構の存在に思わず息を呑む。
悲鳴を超えて絶句し、無言で俺に抱き着く園子の体温が画面から目を逸らすことを食い止めていた。右腕を園子に貸して、空いた左手を劇場用の椅子に置くと周囲に目を向ける。
「────」
「お、お姉ちゃん……あ、あれ、また気絶……」
「……ッ」
「……!」
「ぅぅ……」
「む……」
「はわわ……」
小さく悲鳴を漏らす者。気絶する者。
少女たちが見せるリアクションは様々だがそれを理由に怒られることはない。
他の観客たちも大体そんな状況で、周囲に対して注意をしている暇はない。
シリーズ物の映画の続編が始まるから皆で見るんよ! と誰が言い始めたことか。日頃の行いが良いからか運良く並んでチケットを手に入れた俺たちは映画館に来ていた。
せっかくだからと買ったポップコーンやらコーラやら準備していたが口にする暇はない。
以前から続いていた作品のジャンルがまさかホラー物に変わるとは。
「──凉を取れていいわね」
ぷるぷる震える友奈の手を握る東郷が小さく呟いた。
暗闇の中、ホラー映画の光源が彼女の深緑の瞳をキラキラと反射させる。
唯一余裕の表情を浮かべる東郷の美しい横顔。
白い柔肌に青いリボンで纏めた黒髪が僅かに揺れ動く。
悲鳴の一つも上げず微笑を浮かべて画面に目を向ける彼女は相も変わらず美しかった。何となしに東郷を見ていると、彼女の頬がほんのりと朱色に色付いていく。
ホラーにエロは付き物だ。
前作にはなかった濡れ場が序盤にあったが、また似た展開になったのか。
美少女の横顔とちょっとしたエッチなシーン、どちらに注力するべきなのか。
そんなことを考えていると、チラリと翡翠の瞳が映画から俺に向けられる。
僅かに交錯する視線。
彼女の人差し指が俺の頬を突くと、ゆっくりと前を向かせる。美少女から変わって目に映り込む幽霊にめった刺しにされるスプラッタなシーンは視界を通じて脳を狂わせそうだ。
「────」
──映画に集中しなさい。
彼女の行動の意図は明白な物だろう。
自分ではなく映画に目を向けさせながらも、空いていた左手の指の一本一本に絡みつくように東郷の白魚のような手に握られる。
じんわりとした熱が彼女の掌から伝わってくる中で、俺は無言で握り続けた。
握り続けた。
続編の映画が思っていた内容と異なることはよくあることだ。
大体は期待のハードルを越えられず、やっぱり一作目こそが最高だったなとなる。
「そもそも前作と内容が変わり過ぎでしょうが!? 絶対評価が大変なことになってるでしょ!」
「監督が変わったんじゃない?」
「うどん要素も殆どなくなっちゃったね」
「まさか蕎麦を食べただけであんな悲劇が起きるなんて。風評被害もいいところよ!」
そう絶叫するのは勇者部部長の風だ。
殆ど気絶して起きると同時に気絶するコンボを繰り広げていたホラー弱者の叫びに頷く少女が数人。シリーズ物の続編ということで跳ねあがった期待値に達しなかったと嘆くのが数人。
名作もあれば迷作もある。
本日は勇者部の部活も無かったこと、運良くチケットを手に入れたので映画を見に来ていた。
何作も続いている作品なので勇者部全員が知っていて、なおかつ楽しめる筈だったが──、
「──まあ、こんな日も悪くない」
「わかちゃ~ん」
「そうだな。帰ってうどんを食べよう。きつねうどんだ」
園子の頭を撫でるのは保護者面した少女、若葉だ。
男女問わず、容姿に秀でて文武両道な彼女はさりげなく子孫を甘やかす。土日は大抵若葉やひなたと共に過ごすことの多い園子にとっては慣れたスキンシップなのか気にする様子はない。
その周囲を囲むのは、勇者に見初められるだけの清らかな精神の少女たちだ。
直前に見た映画が名作だろうとそうでなかろうと、そのことでどうこう言うことはない。
「よく遊んで、よく食べーる!」
「もう友奈ちゃんったら……」
「メッチャクチャ怖かったしよく分からない所もあったけど、皆と映画を観れて楽しかった!」
「子供か。……でも、そうね」
学生らしく遊ぶ時は遊んで、美味しい物を食べる。
少女たちが醸し出す和やかな雰囲気で、一日が過ぎていく。
季節が夏だからと言って世界に変動はない。
表の世界はいつも通りに爛れていて、裏では一握りの少女たちが戦う。
犠牲の上に成り立つ世界だが、その少女たちのケアは更に一握り。
汗ばんだ熱い肌から熱を奪う為に俺は自らの唇を捧げる。
「……ん」
淑やかに、ねっとりと舌が絡んで放さない。
甘い唾液と舌が口腔を満たし、脳を眼前の少女で染めていく。
「浮気防止しないと」
唇を少しだけ離した黒髪の少女が吐息の掛かるような距離で囁く。
深緑の瞳を妖艶に灯し、味わうように俺の胸板を撫でる。
胸板を、鎖骨を、二の腕を、首筋を、脇腹を──。
二本の腕でくすぐるような愛撫に俺も腕を伸ばす。
「んっ」
処女雪のような白い肌も、幾度となく踏み荒らした。
それでも男の足跡など無いと主張する白い乳肉はずっしりとした重さを掌に返す。
「いっぱい触って良いのよ」
この肢体は、乳房は、髪の毛の一本から爪先まで貴方の物だ。
掌からこぼれる豊満な乳肉を俺の手でいやらしく形を変えさせながら、そう目線で語る少女。むにゅりと形を変えては元に戻ろうとする弾力を楽しみ、乳首を手で愛撫する俺の真似をするように黒髪の少女は俺の乳首を指で愛撫する。
指で弾いては、転がして、摘まんでは愛おしそうに撫でる。
ぬちゅぬちゅと唾液と甘い果実の匂い。
半裸の少女、自ら腹部まで水着を下ろして晒した白肌がジワリと熱を帯びていく。
全身から男を誘う匂いが理性を狂わせ、鼓動が高鳴りを覚える。
「ぁ……」
目の前の少女のさらりとした黒髪を手にとった時だった。
雄を求める雌との口腔を邪魔するように、背後から怒張を無遠慮に掴まれる。
ボトムの中に手を入れて、怒張を掴んだり擦られる刺激に思わず呻く。
目の前の黒髪の少女の奇行っぷりは凄まじいが腕は二本だけだ。妖艶に笑みを浮かべては唾液を絡めた舌を差し出す彼女を前にして振り返ることは出来ない。
「忘れてたでしょ、私のこと」
否、振り返る必要はない。
むにむにと豊満な乳肉を背中に押し付けては耳を甘噛みする少女。
耳穴から直接声を届かせるように、背後の少女の金髪が視界で揺れる。
コリコリと乳首の存在を背中に伝えては、指先で的確に亀頭を擦る園子。
ちゅぷちゅぷと耳を舐めたり吸ったりする彼女は揶揄うように笑う。
「両手に花だね」
「────」
遠くから蝉の鳴き声が聞こえる。
冷房もなく、僅かに開いた窓からは少女たちの声が聞こえる。
園子の言葉に何も返さず、それを咎めるように怒張への責めが行われる。
背中に密着しては自らの身体を擦り付ける園子を咎めるように、鷲掴みにした乳房を揉みしだくと甘い息遣いをする東郷が俺の身体に触れては唇を求める。
前面の東郷と、背後の園子。両手にではないが彩りのある花たちに挟まれている。
臀部に園子の恥部が押し付けられては、身じろぎする。
桜色の突起を擦りつけて、指で弄ぶ度に東郷の身がくねる。
園子の掌の中で肉棒が涎をこぼして、指先が亀頭と雁をこねる。
膣とは違う手淫での蠕動に背筋を快感が伝っては陰茎を反り立たせる。
やがて背後の彼女が俺のボトムスを下ろして怒張を出す。
先走りで濡れた熱い性器が東郷の滑らかな腹部に触れると、
「亮くんの、熱いね……」
恍惚の表情で見下ろし、頭を垂れては躊躇うことなく剛直に口づける。
くぷぷ、と慣れた様子で当たり前のように奉仕を始める。
そのことに俺が言及するよりも早く、背後の園子の掌が俺の頬に添えては振り向かせる。
「ん──」
直前まで東郷とキスをしていた分、園子とキスをすると差異が分かる。
ひたすらに唾液と舌を深くまで求めようとする東郷に対して、園子は啄むように唇を重ねる。肉竿への奉仕と同じく彼女たちの口という性器が俺に快楽をもたらす。
陰茎を口に頬張っては頬肉に擦りつけて吸い付く東郷。
唇と歯茎を甘えるように口腔で愛でて擦り付ける園子。
示し合わせたように二人が夢中になって俺を求める。
黒髪が上下する度に怒張を甘く蕩かして、金髪が唾液を啜っては脳を蕩かす。
どこか満足気な表情を見せる園子は俺の頬を撫でて、数秒唇を離した。
「かっきーってさ」
「──?」
「スクール水着とビキニ、どっちが好きなの?」
そんな問い掛けに思わずマジマジと園子を見る。
半裸の少女、しかし全裸という訳ではない。膝立ちになる俺に媚びを売るかのように豊満な乳房を押し付けているも腰から股までは紺色のスクール水着が張り付いている。
裏地が腰まで垂れ下がり上半身裸の状態は東郷も同じだ。
二人をジックリと見てみると僅かながら色白の肌に日焼けの痕が目を引く。
「────」
どちらが?
脳が絶頂に抗う為に逃避的に水着について考えさせる。
そもそも、どうして二人に奉仕をさせているのか。
浮気防止と言いながら子種を搾ろうとしてくる淫魔のような二人と。
全身から汗が湧きだしそうな暑い密室で、そもそも何をして──。
「どっち?」
「そうだな。どちらかというとビキニだけど……二人とも美人だからスク水も良いと思うよ」
「──。かっきーってこういうこと言うもんね~、わっしー」
照れ臭そうに微笑を見せる園子が東郷を見下ろす。
俺の股に顔を埋めていた東郷は二人の視線を受けて顔を上げる。
「む?」
「……エッチな顔〜」
「んぷ──! そのっち!!」
雄竿への奉仕で蕩けていた表情に園子が言及する。
恥じらいを思い出したように怒張を口からこぼした東郷は雄汁で汚れた唇を手で隠すと、思わずとばかりに口を開いた園子を顔を赤らめながら睨む。
肩を竦める園子が東郷から目を逸らし、限界寸前のように反り立つ肉竿に目を向ける。
「かっきー」
「ん」
「パンパンだね。……どっちとする?」
細く白い園子の指が怒張の裏筋を根本から撫でる。
小首を傾げて、小悪魔的に笑う半裸の彼女は思考の余裕を与えるつもりはないらしい。
そして少女たちは選択の余地など最初から与えるつもりもなかった。
「ん……しょ」
怒張の前に屈み込んでいた東郷が立ち上がる。
ぷるりと豊満な乳房を揺らし、腹部まで下ろしていた水着に手を掛けて一息に下ろす。
白い腹部からくびれた腰肉。
鼠径部と黒い茂みと濡れた恥部と、少女の隠すべき物が露わになる。
──学校のプールの更衣室で全裸の東郷が俺の前にいた。
丸まったスク水を床に置き、スリムベンチに横たわる。
生まれたままの姿の彼女に引き寄せられ、背中を園子に押される。
「──」
「……!」
考える余裕すら与えられず何を口走ったかまでは思考が至らなかった。
ただ東郷が脚を開いては、自らの陰唇を僅かに開いていやらしい言葉を囁いた。小さな声音は子種を求める物で、雄の本能を刺激する。
自ら開いたピンクの陰唇から透明な雫が垂れる。
「……お願い、亮くん」
脳が焼け付きそうだった。
東郷の腰肉を両手で持ち上げて、挿入する。
「く……ぁ」
熱くとろけた媚肉が俺を迎え入れ、本能に腰を振らせる。
怒張を奉仕するだけで水音を立てるほどに濡れた膣襞がぎゅっと締め付けた。
「りょう……くぅん……!」
根本まで怒張を呑み込んだ東郷の甘い声に恥部を指で弄る。
汗を吸った恥毛ごと硬くなった肉芽を指で擦る度に黒髪が乱れる。
そのままスリムベンチで仰向けになる東郷を押し倒すように抱き着くと両脚が腰に絡みつく。腰を揺すり、美少女を喘がせて悦ばせる交尾に征服感を覚える。
杭を打つようなピストンの度に乳房がぷるぷると震えて思わずかぶりつく。
「ッ──! ぁああっ……!」
汗ばんだ肌を擦り合わせて交尾を愉しむ。
生乳を口に含み、乳首を舌先で転がすと膣が反応する。
言葉よりも分かりやすく東郷の膣肉が締まっては俺を求めて来る。
「んんっっ……!!!」
ビクッと腰を浮かせて絶頂を迎えた少女が震える。
媚肉が怒張に吸い付き、結合部からは淫水が床に垂れる。
「あ……っっ!」
彼女の膣の蠕動に合わせて射精衝動が限界を迎えた。
抵抗の叶わない快感に、普段ならば少女の最奥へと出す所だが、視界の端に金髪が揺れるのを捉える。俺の一瞬の挙動を見逃さなかったのか、園子が顔を結合部に近づける。
仰向けとなった東郷の腹部に手を置いて、あーんと口を開く園子。
東郷の膣から抜いた剛直から勢いよく噴き出す白濁が彼女の口内で弾ける。
「ぅぷッ──! ンっ、ん……んっ……」
先端に吸い付いては喉を鳴らして白濁を嚥下する園子。
それでも飲みきれないとばかりに口端から伝う白濁は東郷の下腹部に落ちた。
「園子ー! そっちは掃除終わったー?」
「うん! もうすぐで終わるよ~」
「手伝うー?」
「大丈夫だよ〜にぼっしー」
男子更衣室の扉越しに夏凜と園子が会話する。
なんてことない会話の最中も、気にすることないように東郷は白濁を口に含む。園子の端正な顔に付着した雄汁を指ですくっては舐めとる姿は下半身に血を巡らせる。
「そのっちはしなくて良いの?」
「流石にバレちゃうよ。それに昨日もしたから……」
肌艶の良くなったような二人は満足気な笑みを見せる。
「わっしーのエッチな姿も見れたしね」
「もう! そのっちったら」
身を清めて、改めてスクール水着を着直した二人。
俺の腕を手に取って扉の向こうを指す彼女は笑みを浮かべる。
「じゃあ、本番はあっちでしちゃう~? わっしーのエッチな身体も、エッチな表情も皆に見られちゃうね~」
「そのっちぃ?」
「冗談だよ~。……そ、そんな怖い顔しないでよわっしー」
「冗談よ」
ひとしきり冗談を交わした後、東郷が俺に目を向ける。
大きな瞳に俺を映し、先ほどの情事を思い出させるようにさりげなく俺の身体に触り手を引く東郷と更衣室を出る。
下腹部を撫でる東郷がこっそりと東郷が耳元に囁く。
「学校の水着じゃなくてビキニなら中に出したの?」
「……根に持つじゃん」
「わっしーの大きくなったからまた新しいの買わないとね~」
扉を開けると昼前の光が差し込む。
勇者部の少女たちがスクール水着に着替えた姿が勢揃いだった。艶やかな少女たちが見せるスクール水着姿は普段の制服姿とは異なるエロスを醸し出す。
少女たちを見る俺を他所に、東郷が部長である風に報告する。
「風先輩。男子更衣室、清掃完了しました」
「はい、お疲れ。エッチな本とか無かった?」
「ありません!」
体操服よりも水着の方が濡れても大丈夫だから。
そんな言葉で始まった勇者部によるプール掃除。
更衣室とは違い、勇者部の大半を導入して行われたプールはピカピカだ。
「しかしだな……これだけピカピカにしても実際に水を張る時まで入れないのは残念だぞ。掃除の後にプールに入って好きなだけマウンテンをビバークしたかったのに」
「タマっち先輩。流石に今日いきなり水を張る訳じゃ……今なんて?」
「う~ん! ピカピカになったプールを見るのは気持ちいいね!」
「ええ、そうね。高嶋さん」
プロの業者顔負けの掃除力を発揮した勇者たち。
一人欲望を感じる者がいるが、友奈族を始めとして依頼とはいえ普通の学生なら面倒臭がる雑務を勇んで行う彼女たちの行動は賞賛に値するが球子の言葉も理解できる。
「フーミン先輩~」
「ん? どったのよ乃木?」
「近所のプールなら開いてるって~。スク水が嫌って人もいるだろうから一度解散してその後に現地のプールで遊ぶっていうのはどう?」
この暑い時期にプールが空くのだろうか。その疑問は発した相手を見て解決する。
携帯を片手に金持ちパワーを遺憾なく発揮したらしき園子に何かを察した風は周囲を見渡す。
「あー……じゃあ乃木もこう言っていることだけど、このあとプールに行く人ー?」
「私は……別に」
「行こ! ぐんちゃん!!」
「行くわ」
しゅばばっと手が上がっていく光景を見ながら東郷が園子に笑みを見せた。
「流石ね、そのっち」
「これくらいはね。頑張ったらやっぱり報われたいよね~。分かるんよ~」
「じゃあ、園子も報われないとな」
「え?」
「優しい子にはいっぱい俺は尽くしたいと思います」
「私も手伝うわ」
「……そういうつもりじゃなかったんだけどな~。しょうがないな~……えへへ」
はにかむ園子と微笑をこぼす東郷。
流石にスクール水着を着たまま行くつもりはない。
一度着替えて自宅に帰る中で、俺の隣を歩く友奈はスカートを押さえて告げた。
「下着忘れちゃった……」