いつかは終わるのだろうなと思いながらも寂しいです。
これまで幾度となく友奈について東郷と語る機会があった。
結城友奈が如何に可愛らしい少女かというところから始まり、優しい性格や天然なところ、いざという時は頼もしいところなどエピソードを織り交ぜては東郷と語り合う。あの太陽のような存在にどれだけ救われたのかを。
別に重い話ではない。彼女と過ごす中で培った思い出を共有するだけ。
俺からは彼女が来る前の友奈の話を、東郷からは友奈と二人きりの時の話を。
「──でも友奈ちゃんって気が付くとスカートが捲れていたり脚を上げたり色々と無防備なところが多いのよね……亮くんもチラチラと見るだけであんまり注意はしないし」
「いや、周囲に人がいたらちゃんと直させるから」
「……やっぱり今からでも助平な精神は叩き直すべきかな?」
「東郷さんってそういう所厳しいよね。でも頼んだらコッソリ俺には見せてくれるから好き」
「ちゃ、茶化さないの!」
「ゔッ」
隣人である東郷は照れると偶にだが急所を狙ってくることがある。
その際は彼女の手刀を受けることも、回避と共に押し倒して反撃するなど対応は様々だ。そんな風に友奈を話題に、東郷の自室だったり加賀家別邸だったりでじゃれ合うことが多い。
東郷が大好きな友奈の行動は確かに無防備なところが多い。
活発的故に生じるパンチラなど男を前にしても行動に隙が多い。誰隔てなく優しいから勘違いする人間も生まれてしまうのでその度に東郷と二人で守りを固めざるを得ない。
学校のマドンナという訳ではないがその優しさは校内の少年少女を惑わせている。
「友奈可愛いからモテるよね。優しいしエッチで」
「エッチなのは余計だけどありがとう」
「でも誰にも渡さない」
「独占欲だ!」
「こんな面倒くさい男だけどよろしく」
「うん! ずっとよろしく!」
苦笑と共に俺と雑談する友奈はスカートの裾をそっと押さえる。
普段は捲れて中身の布切れが見えても、指摘されない限り大して気にしない彼女が見せる羞恥の表情は写真を撮りたくなるほどに可愛らしい。
柔らかな頬を朱で染めて、スカートの布地に手を置く彼女は片手で自らを扇ぐ。
「それにしてもまだ暑いね。帰ったらシャワー浴びたいなー。アイスも食べたいね!」
「そうだな」
「何アイスが食べたい?」
「……抹茶とか?」
「渋いねー」
普段通りの姿を見せる友奈の笑みは僅かにぎこちない。
サイドに纏めた髪を揺らしては、昨日見たテレビの内容や学校で起きたこと、俺が見ていない知らない間に起きた友奈視点の話を登下校中に聞かせてくれる。
それ自体は彼女と過ごす中でよくあることだったが、
「うんうん。それで?」
「それでね、昨日高嶋ちゃんに勧められた総合格闘技の番組で格好いいキックを見たんだ! えいっ、ていやーって一撃でズバン! って!」
「ハイキックか! 昨日見てなかったな~。ちょっとやって見せてよ」
「えっとねー…………ぁ、えへへ。今は駄目だよね」
興奮したように拳や選手の口調を真似する友奈は当然のように脚を上げる。
キックを再現するのはスカートだろうとお構いなしの無邪気な彼女だが本日は違う。上げかけた脚を下ろしては困ったように笑みを浮かべるだけだ。
スカートから覗くのは彼女が好んで履くニーソックスに包まれた太腿。
僅かに見える健康的な腿肉は生地が揺れる度に陽光に照らされる。
「……見すぎだよ」
俺の手を握っては風除けにするかのように身体を近づける友奈。
大きな瞳で俺を見上げては小さく頬を膨らませては欲望の視線を咎める。
「友奈がエッチだから」
「私はエッチじゃないよぉー」
「でも下半身スカートしか着てないじゃん。エッチじゃん」
「こ、声が大きいよ」
人差し指を唇に触れさせて上目遣いをする少女は周囲を見渡す。
一瞬不安げな顔をする彼女だが、周囲に人がいないことは確認している。ぎゅっと手を握る手に力が籠るのを感じながら下着を着ていない制服少女に目を向ける。
「今日の亮ちゃんは意地悪だ……!」
「いや俺はいつも友奈には優しいだろ。ところで制服の下に水着を着てきたのは去年もだったな」
「ぅぅ……面目ないです」
「去年はどうしたんだっけ?」
「えっと……園ちゃんに送って貰いました」
「さらに前の時は?」
「東郷さんに下着の替えを貰いました……」
「スケスケだったよね」
「楽しみにするのは良いけれど、後のことも考えなさいって怒られちゃったっけ」
上目遣いで子犬のような庇護欲を誘う表情の友奈。
尻尾があったならば下に垂れ下がっていただろう、あははと彼女は曖昧に笑う。
暑いが甘えるように抱き着いてくると制服越しに控え目な乳房の存在を感じさせる。下着が無い分、むにゅりと形を変えたのが分かる柔らかさだ。
彼女の肢体の柔らかさを肌で感じていると、半眼の彼女が小首を傾げる。
「その後って大体亮ちゃんにエッチな悪戯とかされたりしたんだよね」
「今ここでしよっか?」
「それはちょっと……恥ずかしいから」
東郷も園子もプール掃除の後で少し用事があるらしい。
このあとのプールの準備もあるのだろう、他の少女たちも忙しそうだった。
いつも一緒に帰れるという訳でもないが彼女たちがいれば替えの下着なりの対応もあったかもしれない。先に家に行っててと見送ってくれた二人に事情を話すべきだったか。
そう呟く俺に友奈はそんなことはないと首を振る。
「東郷さんや園ちゃんは頼りになるけど、なんでもかんでも頼っていたら駄目だと思うんだ」
「東郷さんなら喜びそうだけど」
「うーん……大丈夫、亮ちゃんもいるから安心できるもん。それにもうすぐお家だ!」
さりげなく告げる言葉に滲ませる俺への信頼に思わず息を止める。
今のような思わせぶりな発言で多くの少年少女たちを勘違いさせてきたのだろう。
陽光に照らされる笑みを見せる彼女はスカートの裾から手を放して頷いた。
下着が無くても問題ない。
羞恥心を隠しているのか、或いは本当に慣れてきたのか。
「慣れてくると結構涼しいよ」
「痴女め」
「あー、そういうこと言うんだー!」
慣れてきた頃が一番危ない。
そういったのは誰だったか。
讃州中学校を出てからそろそろ自宅が見えて来る距離。
閑静な住宅が広がる中で、すれ違う人も随分と見なくなってきた頃だった。
その突風はまさに神の悪戯のようなタイミングで起きた。
神樹も見たかったのか、その悪戯な風は少女の制服を揺らしふわりとスカートを捲り上げる。
「……ぅぇ?」
まず肌色が目に映った。
スカートが捲れて露わになったのは下着ではない。
ニーソックスに包まれ、そして隠された太腿の付け根から鼠径部まで。
花弁のような秘裂とそれを隠しきれぬ陰毛が風に揺れる光景に目を見開く。
学生であろうとそうでなかろうと乙女ならば簡単に晒してはならない秘所が、一秒程度も無い時間街中で確かに披露される。
眼福とはこのことを言うのだろう。そしてこの神風は彼女の羞恥の限界を容易く超えた。
「~~~ッ!!」
目に焼き付く一瞬は、友奈自身がスカートを手で下ろして終わる。
顔に紅葉を散らした彼女は目尻に涙を浮かべて無言で悶えた。
「ぅぅ~~!」
「よしよし。他に人はいなかったから」
「……本当に? 見られてないかな?」
「俺は見たよ」
「わああ……ッ!」
恥ずかしそうに身じろぎする女子学生をあやしながら歩みを進める。
ポカポカと恥ずかしさを誤魔化すように胸元を軽く叩く友奈を連れて歩く。やがて友奈の自宅が視界に入る距離になると俺はごく自然に彼女の臀部に手を這わせる。
ピクッと身体を震わせる友奈は周囲を見渡して、俺を見上げる。
薄紅色の瞳に男を映して、逃げることもせず小声で呟く。
「……エッチ」
程良い弾力のある尻肉には下着の質感はない。
スカートの中に忍ばせた手はむわりとした熱気と共に汗ばむ尻肉を撫でると背筋を伸ばす彼女が眉根を寄せた。
しっとりとした尻肉は独特の弾力を返す中、人差し指で恥丘に触れる。
「んっ」
彼女の脚が止まる度に陰唇をなぞる。
生々しい温かさと共に秘裂から滲む愛液がくちゅりと指先に絡んだ。
「……もう濡れてる」
「ゃ、ぁっ……」
熱に浮かされたような吐息を漏らし始める友奈。
陰唇を指で挟み込んでは恥丘をなぞる度に、彼女は無言で俺を見やる。
腰を引かせる友奈を追いかけ、湿る恥部を指が這う。
「こんなに濡らして、下校中ずっと興奮してたの? 俺と話している間も?」
「ちがっ、違うもん……」
「友奈はエッチで悪い子だね」
「悪い、子……」
地面のアスファルトに雫が落ちる。
肉粒に僅かに触れると彼女は熱っぽい目で荒い息をする。
「……うん、そうだね。私、悪い子だ」
結城家に到着する。
人が通る気配はないから、彼女の耳元に囁く。
「たくし上げて」
形の良い耳に顔を寄せるとふわりとした甘い香りが鼻孔をくすぐる。
彼女特有の香りと僅かな汗が混ざり合った匂いで肺を満たしながら告げる。
「たくし、上げて」
ゆっくりと、区切って命じる。
お願いではない。ただ主がメイドに何気なく命令するかのように。
「────」
柔らかな唇が震えて、上目遣いをする瞳が見開かれる。
大きな瞳を揺らしては周囲に見られることへの不安と喜悦に喉を鳴らす。ブラジャーもショーツも身につけず秘所を濡らすようなはしたない少女の手がスカートの裾を掴む。
「……ッ」
チラリと周囲に目を向けて、やがて俺だけに見えるように角度を変えると、まるで舞台の幕が上がるように彼女のスカートが友奈自身の手で上げられる。
短めの腰布が捲られてハイニーソから覗く太腿の肌色の面積を広げていく。
健康的な脚は僅かに内股になろうとしては、妙なところで勇気を発揮したのか閉じようとする脚を控えめながらも外側へと開こうとする。
は、ふ、と吐息しながらも手は止めない。
興奮か羞恥かジワリと涙で瞳を滲ませながらも日に焼けていない肌を見せていく。
さきほどの神風とは異なり、今度はジックリと。
友奈自らが、命じられるままに、秘部を見せる。
滑らかな太腿の内側には透明な雫が垂れ、鼠径部と恥部が再び姿を見せる。
何か物欲しげに恥部を震わせては恥毛から覗く肉粒が触れて欲しそうに尖っては震える。人影はないものの、いつ人が通るか分からない公道で彼女の秘所は愛液で濡らしていた。
ツンと肉粒を指で弄るとビクッと身体を硬直させ、引いた腰に追いすがる。
「~~ぁっ」
敏感な部分を触れられて友奈が掠れた喘ぎを漏らす。
頬に差した朱は色濃く、震えた腰肉を支えると淫らな熱を帯びていた。
「友奈」
「りょぅ……ちゃん」
甘い声音は何度聞いても鼓膜を優しく震わせる。
スカートを下ろして、薄く目を開いた友奈が甘い声で鳴く。
他の人には見せられない男を求める顔をしていて、
「これ以上は遅くなるから、また後でね」
「──え」
終わりを宣言すると、聞き間違えたと言わんばかりに少女が俺を見る。
冗談だよね、と俺の腕に手を置くも、頭を振って友奈から一歩距離を取る。
「なん、え、なんで……」
「あんまり遅くなったら怒られるだろう? 人も来るかもしれないし」
「あ、えっと……」
唖然と口を開ける彼女に背を向ける。
彼女を愛でる手を止めて、密やかな遊びを終わらせる。
「またね」
背後から強い視線を感じながらも、一歩進む。
二歩、三歩と彼女との距離が生まれていきながら歩みを止めないで。
「──待ってよ」
四歩目で俺の脚が止まった。
否、止まったのではない。止められたのだ。
抱き枕にするように、俺は友奈に背後から強く強く抱きしめられていた。遠慮もない抱擁は、失いかけた少女の熱と甘みに身体が震える。
「……そんなのずるいよ」
縋るような、咎めるような言葉を友奈から聞く。
以前だったらただ我慢して曖昧に笑うだけだった彼女から。
「待って」
渇望するように、酷く求められていると感じさせる声音で。
「行かないで」
他の誰でもない自分が求められていると。
その吐息が、身体が、腕の力強さが、その眼差しが。
「どうして欲しいの?」
「……続き、してよ」
続きの快楽を求めるということは。
それを行える俺を求めていることと同義だから。
「────」
ふにゅっと制服越しに乳房の存在を感じさせる。
背中に身体の全面を押し付けて、柔らかく細い腕が俺の身体に触れる。
無邪気さとも明朗快活とも程遠い彼女の吐息。
肩に顎を乗せて、此方を振り向かないからと耳元に直接囁く。
「今ね」
頬に触れた唇からは底知れぬ熱を感じさせる。
俺を抱く腕が僅かに下がり、硬くなった下腹部に触れた。
「……お母さんとお父さん、家にいないから」
友奈の身体は凄く柔らかい。
肉体的な意味合いではどの少女たちも驚くほどに柔らかいのだが、彼女の場合は柔軟的な意味合いで凄く柔らかいのだ。柔軟に関しては勇者部で随一ではないだろうか。
そんな彼女が片足を大きく広げて、I字になる。
「……」
すっかりホカホカになった彼女の花弁が口を開けては涎を垂らす。
今か今かと雄棒を待つように、むっちりとした太腿を上げていた。
既に制服を脱いで身軽になった友奈の恥部に反り立つ勃起を押し付ける。
にじゅりと水音を立てながら先端が媚肉と擦れる度に彼女を俺を見る。
期待している。それだけは口に言わずとも分かった。
やや虚ろな薄紅色の瞳は濡れ、羞恥よりも喜悦に身体を揺らす。
「ぁぅぅっっ……!」
彼女の片足を肩に掛けて、腰を掴んで真下から突き上げる。
ぬぷっと竿が根本まで入り込んでは、奥深くまで届いた。
「ひ、ゃぁっ……ッ!」
一突きで達したのかぱくぱくと口を開けた友奈。
虚空を見上げる彼女の入り口を怒張で抜き差しを繰り返す度に膣襞が蠕動する。奥の奥まで突く度に甘露が竿を伝うのが分かった。
「ひゃ、んぁ、ゃっ」
甘い声をこぼす彼女の乳房を揉むと身体を震わせる。
腰を引かせても、根本まで竿を押し込むと俺の腕の中で彼女は体勢を崩す。
少女の最奥は俺専用であるかのように竿を呑み込み引き締まる。
一突きごとに蠕動する肉穴は、膣襞の一つ一つが俺の子種をせびる。悪い子だと告げると、俺の意思を無視して締まりを強め、俺の腰を勝手に動かさせる。
「んんっ、ぁ、ぁっ、ぁあっ!」
甘く蕩けた声音で友奈が抱擁を求める。
鼠径部が彼女の腿を叩くと、結合部からいやらしい音が聞かせる。
口端から涎を垂らして、頭を振る度に髪の毛から甘い芳香が漂う。
彼女の自室で、部屋の壁に彼女を怒張で串刺しにしては腰を揺する。
「ぁぁ……! あっ! ぁんっ」
ぱんぱんと肉を叩く音を聞かせながら、結合部に手を伸ばす。
奥まで貫く度に新たな蜜が流れては恥毛に絡まる。生え揃った若草を指で撫でては硬さを帯びた肉粒を指で擦ると友奈の媚肉が精子を搾り取ろうと引き締まった。
「んっ、んんっ、ぃクッッ……!!」
汗の粒を飛ばし背筋を反る友奈。
最後の一突きに極上の快感が背筋を這い上がり、視界を白く染める。
びゅうっと温かい汚濁で彼女の中を汚していく。
「ふわぁぁ……!」
吐精に目を閉じると、子種を注がれる友奈の声に耳を傾ける。
絶頂に身体を震わせながら、甘えた鳴き声でそっと胸に頬ずりをする。
小動物の愛情表現なのかそっと甘噛みをしては、肩に歯形を残した。
「白髪増えたね」
頭皮を自分ではない指が這う。
マッサージも兼ねているのかトントンと指で押しながら髪の毛を撫でられる。自分以外の他人に髪を触られる感覚はなかなか慣れるものではない。
「若白髪って言うの? なんか格好良いね!」
「染めろとか言わないんだ?」
「え? 染めたりしなくても全然普通だよ」
「────」
「昔に比べたら確かに白いなーって思うこともあるけどいい感じだ! 亮ちゃんは亮ちゃんだよ」
「そうかな?」
「うん!」
柔らかな掌が俺の頬を撫でる。
壊れ物を扱うような手付きに優しさと愛おしさを感じさせる。まるで力をこめたら壊れてしまうかのような、絶妙な力加減。
薄紅色の瞳はどこまでも俺を見つめていて。
「今から行ってもプールに間に合うかな?」
「遅刻は確定だろうな。ごめん」
「ううん。私こそだよ」
ぎゅっと抱く枕にするように彼女の胸元に頭を抱かれる。
ふにゅりとした感触と耳をすませば聞こえる鼓動に腕を伸ばす。滑らかな背中を抱き寄せて、彼女の胸元で目を閉じれば心地よく意識も、何もかも手放してしまえるのではと。
彼女に抱かれていると、そんなことを思ってしまった。
「こうして亮ちゃんと抱き合っているとね……すっごく心がふわふわする」
ゆっくりと身体を起こしてからも、お気に入りの人形を放さないかのように抱擁を続ける友奈。その裸体を手で這い、慎ましい母性の象徴を掌で揉み続けると、ゆっくりと衣服に手を伸ばす。
事後感を漂わせる少女の着替え姿を見ながら一言。
「ブラを着け直す時の動きとか仕草がエッチだなって思う」
「……恥ずかしいからあんまり見ないでね」
えへへ、と恥ずかしそうに笑いながら事後処理を始める少女と共に着替える。友奈に誘われて彼女の自室で行為に及んだ時間は短いようで長い気がする。
ピンク色のブラを着け直そうと背中に手を回す彼女がなんてことないように告げる。
「亮ちゃんといると、あっという間に時間が過ぎちゃうね」
「エッチが上手いってこと?」
「気持ちいいのもそうだけど普段から一緒にいると楽しいってこと!」
「友奈はあれだよね。俺の心をキュンキュンさせるよね。もう一回する?」
「ひゃう!? ……もう、どこ触ってるの」
素直な少女の笑顔を添えた一言は心を晴れさせる。
無邪気な彼女を見ているだけで、この世界も悪くないのではと錯覚させる。
「あ」
着替え途中だった友奈の困り声、その原因は見るまでも無かった。
端末から響く樹海化警報、バーテックスが、敵は此方の事情も状況も考えずにやってくる。
精神的な年齢をこの世界で積み重ねても学生の彼女たちは遊びたい。
タイミング悪く訪れてきては、着替え途中で出撃したことだってあるらしい。脳筋の若葉は構わず戦闘を始めてひなたに怒られたこともあるが、敵は時間を考慮してくれる訳ではない。
「すぐに戻るね」
行ってくるねとか。またねとかではない。
友奈との挨拶はいつからか『戻る』という言葉に収束していった。
まるで、こちらが置いて行かれることに対して何を考えているのかを分かっているように。
「うん」
キスも抱擁もなくて瞬き一つで彼女は消える。
幾度も感じる喪失感、その度に壊れそうな屈辱感と絶望感は長くは続かない。
有言実行。
友奈の言葉は咄嗟に吐かれた嘘ではない。
すぐに戻る。それは必ず守られるだろう。
それが破られる時は彼女が死ぬ時で、俺も死ぬ時だろう。
10分か、15分か。
もう少ししたら一人で帰ろうかと思い始める頃に、友奈の部屋の窓が開いた。
「──ただいま!」
「……おかえり。玄関はそこじゃないよ」
「えへへ、見逃して」
結城家のベランダの窓から入ってくるのは東郷だけではない。
怪我一つなく、向日葵のような笑顔で無力な存在に近づいてくる友奈。
ピンクを基調とした勇者服を纏った彼女は、
「戦っている途中に話してたんだけど、これなら間に合うね! プール!」
両腕をこちらに差し出す友奈は、俺が何かを言う前に抱擁する。
そのまま脚を持ちあげて強制的にお姫様抱っこの体勢にする彼女に遅れて口を開く。
「ゆ、勇者の力の私的利用は駄目とか誰か言ってなかった?」
「……大丈夫!」
「なんでお姫様だっこ?」
「え? 私がしたいから! 亮ちゃんを抱きたい!」
有無を言わせずに行動する姿はいったい誰に似たのか。
窓辺から外へと連れ出そうとする彼女の拳は幾千の敵を滅ぼしてきたのに、俺を持ち上げる力加減は絶妙だった。
首に腕を回すと、その薄紅色の瞳を俺に向けて、薄く微笑む。
「お疲れ、友奈。無事に帰ってきたので気持ちいいこと一杯してあげよう」
「うーん。それも嬉しいけど」
「けど?」
「……エッチなことだけじゃなくて、普通に遊びたいな。無理にエッチなことをしなくったって、私は亮ちゃんの前からいなくなったりしないから」
「────」
「約束するから。前にも言ったけど、自分のこと負担だなんて思わないで」
口元に指を置きながら告げた友奈の言葉に閉口する。
隙も無防備なところも多い彼女だが、それは目の前のことに全力だから。
いつだって全力で、本気で。──常日頃から偽りなく生きている彼女の言葉だから。
凛々しい姿を見せる彼女に外へと、お日様の当たる場所へと連れ出される。
景色が移り変わる中で、変わらぬ彼女の顔から目を逸らして深呼吸する。
「……友奈」
「何?」
「せめておんぶにしてくれ」
「やだ! このまま行く! 落とさないから大丈夫!!」
「そこは心配してないよ」