世のため、人のためになる事を進んで行える部活動が勇者部だ。
ゴミ拾いや迷いネコを探したり、劇を披露したり。両手があれば足りる程度の人数で物理的に対応出来なかった依頼も、若葉や千景などの西暦組や亜耶といった防人組などの神が見初めた少女たちの加入により対応できるようになった。
勇者らしく訓練だけしてれば良い。そう声高に告げる訓練大好き少女もいたが周囲の言動に感化された結果、今では立派な勇者部の戦力の一人である。
ありがとう、そんな一言の為に彼女たちは依頼に真摯に取り組む。
奉仕精神を育んで本気で他人の為に行動が出来る。
そんな少女たちがいると前世の俺が聞いても鼻で笑っていただろう。
「まずこんなブラック企業ならぬ部活に入って、皆文句言わないのが凄いよな」
気がついたら戦力の一人となった俺も決して他人事ではないため、ジャンプを繰り返しては車よりも速く移動をする奉仕精神の塊に言葉にならない衝動をぶつける。
勇者服の隙間から慎ましくも掌に馴染む肌を弄ぶと、長くなったピンクの髪を風に揺らす友奈は頬を緩ませながらも、ぎゅうっと俺の身体を抱く腕に力を籠めて自らと密着させる。
地面に着地すると僅かに眉根を寄せた少女がめっと叱る。
「もう、悪戯しちゃ駄目だよ。危ないからね」
「ああ、ごめん。友奈の横顔が凛々しくてつい」
「……もうすぐ着くから我慢してね」
「分かったよ、もうしないから」
「うん。ぎゅー……」
再び地面を蹴って、周囲の景色を勇者が置き去りにしていく。
弾丸のように跳びながら、彼女の腕の中から見る臨場感のある景色は流れ星のように通り過ぎていく。そんな景色よりも視界を上に向けて可憐な少女の横顔に目を向ける。
首に腕を巻かれても微動だにしない少女の横顔。
きめ細かな肌と確かな意思を宿した薄紅色の瞳は遠くへ向けられている。
十数分前まで淫欲に溺れ、羞恥に涙を浮かべていた人物とは思えない彼女は普段を知れば知るほどに凛々しさと天然さでギャップ差が生まれる。
こういう所で東郷の脳は鷲尾時代から甘く狂わされてしまったのだろう。
正しく、無自覚の淫魔とも呼ぶべき彼女は俺を抱き上げたまま跳躍を繰り返す。
「……!」
ジッと横顔を見ていたから、彼女が何かを口にする前に気づけた。
友奈の大きな瞳が向けられる先、遠景でも分かる大きな建物が見えてきた。
讃州市と丸亀市の中間ほどの距離にその建造物がある。
瀬戸内海を一望することが出来るプールやスパを楽しめる施設だ。元々建物自体はバーテックスの襲撃を受けた際のシェルター及び勇者の拠点の一つとして作られていたという。
星屑にコンクリートが嚙み砕けないとは思わないがひなた曰く霊的な処置が施されている拠点は、普段は市民のスパ施設として大赦に経営されている。
「凄いよね~。ジムとか旅館とか色々合体しちゃってるよ。かめやの三号店も入っている!」
「そうだな」
「赤嶺ちゃんも来ているといいね」
「──、ここってゾンビが来ても生きていけるようにをコンセプトにしたとかなんとか」
「そうなの!?」
「流石に冗談だけど数年前に乃木家主導で改装したらしいし、年々遊ぶ施設とか色々詰め込まれているから。最終的にはここで皆と遊んでうどんを食べてイチャイチャするんよ~って」
「アハハ! 園ちゃんらしいね」
マイペースなお嬢様についての話をしていると、普段と比べて無人となった施設に脚を踏み入れる。俺を抱き上げた腕を下ろすことなく堂々と進む姿に思わず口を噤む。
スパ施設を勇者部で使用する時は気を利かせてか、貸し切りで施設を使わせて貰うことが多い。
最初は風を始めとした少女も遠慮していたが最近では年に数回ほど使用させて貰っている。無人の施設の中を勇者服で歩く友奈はクルクルと俺を抱いたまま、
「勇者部“夏”五箇条ひとつ! よく遊んでよく食べるー!」
快活に告げる彼女の言葉には賛同しかない。
普段は奉仕に専念する彼女たちにも休む場所は必要なのだ。蓄積された疲れを取る為に大赦が用意した貢物とも言えるのがこの施設だ。
大赦という組織に貢がれる対象、友奈に抱かれたままの俺だったが、ふと彼女の頬に触れる。
柔らかな頬は少しだけひんやりとしている。
「……もしかして寒かった?」
「え? うーん……ずっとジャンプしていたからかな。最近は急に暑かったり寒かったりコロコロ気温も変わるよねー。でも私は今日も元気だ!」
友奈の告げる通り、バーテックスの影響か気温の変動も激しい。
急に雪が降るほどではないが寒暖差で寝込む人も多いほどだ。スリスリと俺に頬ずりをして暖を取る友奈は元気な様相を見せ、その様子になんとなく襟を捲って彼女の肌を覗いて怒られる。
相も変わらず傷一つない肌色と膨らみと先端を拝むと、半眼で耳元に囁かれた。
「……エッチなこと、したいの?」
「友奈とだったらいつでも」
「もう……」
「──いや、いつまでイチャついてんのよ」
えへへ、と可愛らしい笑みをこぼす彼女を見上げていると声が掛かる。
呆れ声に聞き覚えがあって、友奈と共に目を向けると水着の美少女。
「みっ!? きゅ、急になによ! というか何でお姫様抱っこされてんのよ!」
「え? 私がしたかったから亮ちゃんを抱いてるんだ! それよりも……」
早口でツッコミを入れながら二人分の視線に身体をくねらせる夏凜。
俺と友奈は一瞬視線を交わしながらも、彼女の肢体を舐めるように見る。
「な、なによぉ……」
メイドビキニ。見覚えのある、黒を基調とした水着を夏凜は着ていた。
健康的な太腿をスカートから覗かせ、白いエプロン付きの丈の短いスカートが辛うじてボトムスを隠す。リボンをあしらった付け襟に引き締まった腹部と慎ましい双丘を包むトップス、手首にはカフスをつけ、やや赤らんだ顔と頭頂部にはホワイトブリムが乗っている。
普段のツインテールは誰かが弄ったのか編み込まれているという気合いの入りようだ。
それらを見て、友奈と顔を見合わせて、代表して俺が口を開いた。
「夏凜ちゃんが可愛いなって」
「ねー」
「な!?」
「その恰好をするんだからご主人様って呼べよ」
「はあ!? 偉そうに、いい加減に友奈から降りなさいよ」
「わあ、ボトムスまで一緒だぁ……」
「ちょ、捲んなあ!」
何でもないような態度で友奈が夏凜のスカートを捲る。
彼女のショーツが覗く訳でも、恥丘が覗く訳でもなく、ピンクのリボンの付いた黒のボトムスが露わになり、目の前のメイドが慌ててスカートを下ろす。
異性間でも顔を赤くして声を荒げる夏凜の事情については彼女の背後から伝わる。
「実は罰ゲームで着ることになりまして……」
「樹ちゃんも着てるの!?」
「樹は俺のこと、ご主人様って言うよな?」
「……ご、ご主人様っ」
「これだよ、これ。この従順さがたまらんのよ。ツンデレも見習って」
「馬鹿言わないで!」
勇者部の妹、否、樹もまた普通の水着ではなくビキニメイドとして現れる。
一瞬、メイドビキニが標準の水着になった世界に来たのかと脳内を弾けさせる俺の視線をくすぐったそうに樹は身体をくねらせる。
罰ゲームと口にした彼女は恥ずかしそうにしながら俺の要求に答えつつも、
「駄目ですよ夏凜さん。負けたんだから皆のメイドにならないと」
「ぐっ」
「罰ゲームなんですから」
年下に諫められた夏凜はぐぬぬ……と悔しそうな顔を見せながらも、上目遣いで俺と友奈を見上げる。羞恥か屈辱故か、その瞳に涙すら浮かべる姿は嗜虐心をそそる。
友奈すら黙って(そして俺を抱いたまま)彼女の次の言葉に目を向ける。
「ご、ご主人、さまぁ……」
「夏凜ちゃん……可愛いね!」
「そうですよ夏凜さん。今日は完成型メイドとして皆に奉仕をしないと」
「……はい、メイド長」
「メイド長!?」
気づかないうちに序列が出来上がっていた。
違います誤解なんですと首を振る樹に頭を下げてはちょっとした報復に笑みをこぼす夏凜。一体何があったのかを聞くと、プールの匂いを漂わせる目の前の少女たちは俺と友奈が来る前に遊んでいた時のことを話しだす。
「流れるプールで泳いだり、波が出るプールで普通に遊んでたんだけど」
「いつの間にかチーム別でバレーや水鉄砲での撃ち合いをしたり」
「で、それだけじゃつまらないからって、負けたら罰ゲームとしてこんな格好して他の子の言いなりをすることになったのよ」
「二人とも凄く似合っているよ!」
「ありがとうございます……ところで、どうして友奈さんが亮さんを、……その、お姫様だっこしているんですか?」
「えっ? うーん、なんでだっけ?」
「しっかりしなさいよ」
メイド二人に輝かしい笑みを見せる友奈は薄紅色の瞳で俺を見下ろす。
なんとなくメイドビキニか普通の水着か選べと言外に告げられているような気がしたので、普通の水着でとアイコンタクトをする。
「アタシの妹にメイドの恰好なんて百年早いわぁあああ!! 女子力スマッシュ!!」
「甘い! 一閃っ、ひなたーーっ!!」
「若葉ちゃ〜ん♡」
「そんな破廉恥な物を着せたらひなたのムチムチ具合が皆に見られてしまうだろーー!!」
「若葉ちゃん?」
バトルロワイアルなのか。
或いは指定した者の水着を元に戻せるルールでもあるのか。ビーチバレーからいつの間にかドッチボールになったらしい白熱しているバトルを余所に友奈は俺を夏凜に渡す。
「夏凜ちゃん。亮ちゃんのこと持てる?」
「いや、なんでコイツを持たないといけないのよ」
「……あっ、流石に勇者にならないと亮ちゃんは持てないよね、ごめんね夏凜ちゃん」
「はあ? 馬鹿にしないで。これくらい余裕よ。……ッ! き、筋トレになるわね」
「じゃあ、私着替えてくるから!」
文字通りの荷物扱い。勇者からメイドに俺が託され、ついでとばかりに頬にキスをされる。
小悪魔のような笑みに喜色を見せて、衆人の中での行為でも堂々とした姿は勇者そのものだ。
「……まったく、しょうがないわね」
「いや、そろそろ下ろしていいぞ夏凜。おい無視するな」
「樹も持つ?」
「流石にそれは……」
そろそろ下ろして欲しいがチョロ過ぎて心配になってくる夏凜の細腕に持ち上げられる。樹や敗北者の証たるメイドビキニを着た他の少女たちに見守られてプールに進む。
普段から鍛えているからか、思ったよりも安定感のある夏凜に連れられる。
友奈よりも薄い双丘をさらりと撫でると、無言でメイドが睨むも俺を放り出すことはしない。
「今凄い自然に触りましたね」
「樹。言葉にしなくていいの」
「俺と高嶋さんの手が千景の胸を少し大きくしたのは実証済みだよ、樹」
「……! そうでした。あ、あの、その手をお借りしても良いですか?」
「ちょっと待ちなさい! 何をする気よ」
「そこの茂みで一揉みする?」
「お願いします!」
乳房を大きくする為ならなんでもします。
そんな必死さを感じたのか夏凜は何も言わず、俺は樹の胸を揉む。
姉を見る限り成長の可能性はあるが、いったい何が原因なのか夏凜と似たような絶壁具合だ。
コリコリと乳首を指で擦られる度に肢体を揺らすメイドに話しかける。
「んっ……」
「ヘイヘイお嬢ちゃん、最近どうだい?」
「そうですね……お姉ちゃんのご飯を食べて、園子さんの真似をして寝る時間を増やしているんですけど……」
「別に胸なんて大きくたって邪魔よ……っ」
「夏凜さんだって揉んで貰っているじゃないですか……ぁっ」
「手持ち無沙汰なだけ……だからっ、んぁ!」
とはいえ、本気で悩んでいる少女に対して笑うことなど出来ず、真面目な顔で合法的に彼女たちの胸を揉む。トップスごと柔らかな乳肉を揉みながら大きくなりますようにと祈りをささげた。
これから樹の乳房が大きくなるかは誰にも分からない。
恥ずかしがるどころか、無言で期待の目を俺に向けて来る彼女からそっと目を逸らした。
「──はい、本日の施術は終わり」
「ありがとうございました」
「ちょっと大きくなってきたと思うよ」
「本当ですか!?」
水の流れる音と少女たちの喧騒が聞こえてくる。
律儀にルールを守っては水着を着替えた彼女たちもノリは良いのか、或いは既にそれらが終わった後なのか、誰も何も言うことはない。
「友奈は着替えに行ったけど、亮之佑は着替えなくて良いの?」
「もう着替えてる」
「流石ね。これでいつでもプールに叩き落せるわ」
「……夏凜?」
「なによ」
「思ったよりも早くコスプレしたな。エッチだ」
「……ッ、これは、今日はそういうのじゃないわよ。エッチとか言うな!」
「じゃあいつまでその恰好でいるんだ? 夏凜の普通の水着姿も見たいな」
「あとで見せてあげるわよ。この後のリベンジマッチをした後でね。そのためにも亮之佑は私のダンベルになりなさい」
メイドに筋トレ器具扱いをされたまま、プールの外縁部に出る。
広々とした水面を泳ぐ少女や、バレーや水鉄砲で遊んでいる者、特に意味もなく水面にプカプカと浮いている少女や、そもそも水中に入ろうともせずに読書をしたりボードゲームをしたりと自由な空間が目に入る。
いずれも、色とりどりの水着と肌を見せる可憐な少女たちだ。
「アルフレーッド! アルフレッドはおりませんの!」
パラソルの下にピンクのビキニを着たブロンドヘアの美少女が声を上げていた。
白い丸テーブル、白いチェア、白い陶器のティーポットとカップ、艶やかな唇をカップに触れさせてアイスティーを飲むのは事あるごとに名家の令嬢を強調する弥勒夕海子だ。
お家復興という目的の為に防人で活躍していたという彼女は風や千景と同じく一年年上の少女。
外見はお嬢様と呼べなくはないのに、色々と残念扱いされている少女だ。
「見られて減る物でもないですわ。私の身体は磨き上げられていますもの」
「昨日、必死になって身体洗ってたもんね」
「お黙りなさい」
「チュン助とゆみきちは仲良いね~」
水着姿の彼女は普段から制服越しに存在を主張していた胸を張る。
たゆんという音が聞こえるような双丘に舌打ちする音がどこかで聞こえた。豊満なそれを堂々と主張しながらも、周囲の視線など気にしないという態度でカップを傾ける夕海子は、
「あら……おかしいですわ。どうやら執事のアルフレッドはお休みでしたの」
「いや、弥勒さんの所の執事はいつも休みじゃない」
「メイドの小雀が何か言いましたか?」
「別に~」
彼女は一人寂しく紅茶を啜っている訳ではない。
丸テーブルを挟んで本物のお嬢様が座っている。いつものハーフアップの髪型にカラフルな桜の花の装飾が施された薄紫色のミニスカ付きビキニは、彼女の柔らかくも白磁の肌を映えさせる。
防人組のやり取りに笑みをこぼしながらもメモに何かを書く園子はチラリと此方に目を向ける。
「そんな日もあるよ~。なら、今日は私の執事のカガフレッドを呼ぶんよ~」
執事を呼ぶ柔らかい声がした。ついでに此方に、俺に向かって手を振っていた。
普段は隠されている乳房も揺れ動き、少女の細い腰肉や太腿に思わず目が向かう。学生とは思えない色気を感じさせる存在に歯軋りする音が聞こえたが目は向けない。
勇者部でも度々発生する胸部のぼた餅を持たざる組と持つ組の溝は深いのだ。
「紹介しよう。執事のカガフレッドとメイドのにぼっしー!」
「誰がメイドよ」
「ええ~、にぼっしーだったら私の専属にしちゃいたいくらいに可愛いんよ」
「なあっ!?」
「カガフレッド~、私アイス食べたいな~」
「それでしたらお嬢様。足元にあるクーラーボックスから高知名物アイスクリンをお取り下さい。夕海子様もどうぞ。ああ、もちろんお付きの方も」
「あらあらまあまあ! アイスクリンとはカガフレッドもやりますわね。では頂きましょうか」
「役に入り込むの早くない?」
「カガフレッド……今日も夫はいないから、今夜も寝室に来てくれる?」
「しかも不倫設定!?」
見た目はアイスクリーム、専門的な分類ではかき氷に該当するスイーツ。
高知に関しては正直に言って、鰹と千景くらいしか分からないが後悔はない。あーんと口を開けて待っている園子の口にアイスクリンを放り込んで、樹の口にも同じく放り込む。
「というか、なんで亮之佑さん夏凜さんにお姫様だっこされているの!?」
俺も一口食べてみると独特のサクサクショリショリした食感を楽しむ。
癖になりそうな味わいを楽しみながら、夏凜にも食べさせてみる。ほんのりと頬を赤くしながら、しかし両手は空いていないので仕方ないとばかりに開いた口にスプーンを入れて、
「間接キスだ」
「ぁ、ぁ、……ぬわぁああッ!!」
「カガフレッドーー!!」
一言添えた結果、羞恥に顔を赤くしたメイドにプールへと投げ出された。
貧乳を触るのは良くても間接キスは駄目らしい。水中に沈み込んでいくと深い底で人魚のようにヌルヌルと身体を動かしては、底にある貝殻の玩具を取っている少女と目が合った。
日に焼けた健康的な肌と水泳技術は旧時代の沖縄県で培われた物。海を愛し、海に愛される勇者、古波蔵棗が急速接近してくる。
海──否、プールの救助隊でもしているのか俺の背中を掴んでは浮上した。
「掴まれ」
無言で腹筋を掴ませてプールの浅瀬、子供でも脚のつく場所に連れて行って貰った。
「ぷはぁ………ありがとうございます、棗さん」
「礼には及ばない。……前よりも泳げるようにはなったが深い所は厳しいからな」
「今度何か差し入れしますね」
人を浅瀬に届けた少女は再びプールの深淵へ。
彼女は陸上よりも水中の方が活き活きとしているのだ。今度何か海鮮料理を風と共に作って労おうとクールに素潜りを披露した棗の影が見えなくなると前を見る。
浅い場所は流れるプールとなっており比較的若い少女たちが遊んでいる。
キャッキャと戯れていた年下の少女たちはプールから浅瀬に出された俺に気づいた。
最初に近寄ってきたのは園子(小)を始めとした小学生組だ。
「かっきー先輩だぁ〜! ハグ〜」
「おーい、亮之佑ー! 鬼ごっこに入るかー!」
「はいるー!」
「はぁ〜ん♡ みんな可愛いなぁもう……待ってー須美ちゃん!」
若葉たちは未だに白熱したバトルを繰り広げている中で幼い少女たちの戯れに思わず眦が緩む。何がそんなに彼女たちを熱くさせているのかと思いながら年下の遊びに混ざる。
決して熱量的に途中参加は出来そうにないからという訳ではない。
なんとなく今日は平和な方で普通に遊びたかった。
やっていることはシンプルで、水を掛け合って追いかけ合う。
鬼ごっこの参加者は小学生組や中学一年生組が大半で構成されていた。可愛らしいワンピースやセパレートタイプの水着を着ている少女や背伸びをしてビキニを着た少女もいる。
「フハハ! ビバーク!!!」
「ひゃあん!? ……タマっち先輩あとで覚えといて。……待って須美ちゃ~ん」
「こっちに来ないでくださ〜い!」
追い掛ける鬼は土居球子、続いて伊予島杏。
タッチをされたら鬼になる為、追われる側も水鉄砲で抵抗を見せる。パシャパシャと浅瀬を走るのは足腰の運動にもなる中で、園子(小)が俺の背中に隠れる。
「ハァ……ハァ……えへへ、楽しいねかっきー」
「そうだな」
「こういう所に来るのはかっきーがいなくなる前までだったから」
走り回ったのだろう荒い呼吸で俺に背後から抱き着く令嬢。
既に成長を始めている少女の柔肌を腰に感じながら、隙あらば抱き着いたりハグを求めたりと甘えて来る彼女を俺は退けることは出来ない。
今とはやや髪色の違う長い金髪を撫でながら、
「毎年二人っきりでこういう施設に来てたっけ」
「うん。……でも、皆ともこうして遊ぶのは楽しいな~って思うんよ」
「園ちゃんが楽しいと俺も嬉しいよ」
うりうりと頭を擦り付けては子犬のように甘えてくる少女。
このまま家にお持ち帰りしたくなるのは園子だからか。ロリコンになってしまったのか。
自分の新たな可能性に慄く間にも俺と園子(小)は動く。
何度か鬼の入れ替わりがある中で、遂に追われる側が鬼と共に此方に走ってくる。
鬼に人気なのは須美、そしてセクハラに定評のある球子は怪しい手の動きをしていた。
「ヒャッハー! タッチって、うぁあああ!?」
「ふえ?」
球子が転んだ。
浅瀬とはいえ足場はやや不安定な場所だ。珍しくはない。
その姿に皆で笑って、また追いかけっこをするだけの話だ。
問題は球子が伸ばした指先にある。
伸ばした手は辛うじて須美は回避したが、彼女の水着の紐に触れた。
年上の少女たちの真似か、影響を受けたからか奥ゆかしい彼女もまたビキニの姿を披露していた。いずれ東郷になる少女の身体は小学生ながら大人顔負けのスタイルの良さだ。
最初の頃は肌を隠すようにワンピースタイプの水着だったが、年を経るごとに少しずつ肌面積を増やしていたのだ。
そんな彼女の未だ成長中である豊かな双丘を支えるトップスは背中で結び目が作られており、それを球子の指が解いた。
白とネイビーブルーを基調としたビキニ、フリルがついた可愛らしい生地がずれる。
葡萄の皮を剥くように、ぷるんと白い双丘と薄いピンクの先端が露わになった。
ラッキースケベの降臨だ。
球子はともかく須美が倒れると怪我をしてしまうかもしれない。悲鳴を上げる前に目の前で倒れ込もうとする彼女の前に腕を出すと、掌にむにゅりとした感触が伝わる。
倒れ込むのを阻止して、体重の掛かった乳房が掌で潰れた。
「きゃあああああぁーーーっ!!?」
自身に何が起きたのか、誰に見られたのかを理解した須美の悲鳴は耳によく残った。
「わぁ〜、もう夜になっちゃった!」
そんな風なハプニングはあれども平和的に少女たちと遊んでいた。
東郷と友奈と合流して一緒にウォータースライダーを満喫して、園子ズと一緒に浮き輪で休んだり、杏からどんな行為をして欲しいかの分厚い要望書を読んだりしていると、あっという間に時間が経過した。
照明が灯り、空を見ると既に闇夜が広がっている。
「この不思議な空もすっかり慣れちゃったね」
確かに彼女たちと過ごした時間はあっという間だったが時期的にはまだ明るい筈だ。この世界に来て、早めに訪れるようになった夜空に急かされるようにプールから上がる。
「楽しかったね!」
園子と同じカラフルな桜の花柄のビキニを着た友奈や東郷。
新調した水着が似合うことを告げると嬉しそうに微笑を見せる彼女たちと共にシャワーを浴びる。目線で洗ってと告げる少女らの肌の弾力と柔らかさを掌で感じていると、
「そういえばここは混浴も出来るんだよね、そのっち」
「うん、出来るよ~。水着が必要だけど私たちしかいないから。それに色んなお風呂があるから色々出来るよ。勿論、普通に裸で入れるスペースや個室もあるんよ~」
「至れり尽くせりね」
思い出したように口を開いた東郷に首肯する園子。
十分に遊んで生まれた健全な疲労のある身体にお風呂は最高だろう。年少組は流石に眠たそうな顔をしており、小さい方の園子は既に俺の背中で眠っている。
「流石に風紀を乱すようなことはしないし、させないからな。園子」
「冗談ですよ~」
「そうね。流石に年長者として見過ごせないわよ、乃木ぃ〜?」
「な、なんで私を見るんですかフーミン先輩。前に入った時は悦んでたじゃないですか~。それに今回は大赦から勇者様にって新しいお風呂も導入したらしいですよ。美白に良いとか~」
「皆の者! 風呂じゃ! 冷えた身体を温めて女子力を回復させねば!!」
「ここまでされると、また大赦が何かを企んでいるんじゃないかって思うわね」
ともあれ、年頃の少女たちにとって美肌効果とか美白とか毛穴の引き締まりとか、陰ながら努力しているそれらに効果があると分かったからにはシャワーで済ませる者はいない。
プール後に冷えた身体を温めることくらいはするだろう。ついでに色々な風呂を試したり。
風呂はいつだって開放的でなくてはならない。
混浴に入ろうとも入らなくてもそれは個人の意思次第だ。
「────」
プールから浴室に移動する水着美少女たちに囲まれながら。
突き刺さる視線には何とも言えないねっとりとした熱を感じた。