水中から顔を出すように目を覚ますも、すぐに瞼を閉じる。
呼吸して鼻孔をくすぐる甘い香りと柔らかい感触が顔に触れる。柔らかく温かい感触に思わず顔を押し付けながら余韻に浸ると緩やかに意識が覚醒していくのを感じる。
緩慢としつつも回り始める脳と意識は暗闇の中、満場一致で睡眠を選んだ。
「すやぁ……」
寝起きの布団の柔らかさと温もりは格別なのだ。
あと五分とふかふかの何かに顔を埋め動かしながら二度寝を決断する。
昨夜の淫舞は流石に疲れたのか、疲労感も相まって極上の布団に意識を溶け込ましていく。
目を閉じていると耳が周囲の少女たちの声を拾った。
「あっ、今絶対起きた! 起きたわよね風」
「むにゃむにゃ……」
「亮之佑……なのよね」
昨日の出来事を覚えているかどうかは置いておき、声を掛けてくる美少女たち。
どこか不安げな様相は此方が昨日の内容を覚えているのかどうか、そしてその時に自分がどういった対応をするかを決めかねているような、そんな顔に見える。
片目のみを僅かに開いて薄暗い視界に捉えたのは此方を見下ろしている夏凜や風といった勇者部の面々だ。白い肌に浴衣が似合うも寝起きなのかやや乱れた浴衣からは下着が覗いている。
大人びた黄色のブラと機能性を重視した紺のスポーツブラ。
夏凜はともかく、意外と風のガードは硬い認識なのだが、誰にでも無防備な時はあるのだろう。
浴衣から谷間を覗かせながら、しかしそちらを気に掛けることなく風が口を開く。
「……りょ、亮之佑なのよね。弟とかじゃなくて」
「……?」
と、四つん這いになって見下ろして来る彼女の言葉に眉を顰めるも寝ていることを思い出し可愛い寝顔を見せつつも、風の言葉の意味を睡魔に沈む脳で考えてみた。
もしかして、酒の影響でまだ寝ぼけているのかもしれない。
そんな事を考えながら俺はようやく周囲の状況を薄目で見る。この状況下でもしっかりと睡魔に自らを預けて寝顔を見せる若葉のふかふかな双丘を顔に、背中には千景の柔らかな肌と、サンドイッチ状態だった。
「ふわぁ……二人ともどうしたの~? 朝からお盛んだね~」
「あっ、園子……って下着ぐらいつけなさいよ」
「……乃木、これどう思う?」
「どうって、かっきーがわかちかに挟まれて修羅場不可避な──」
園子も絶句するほどの修羅場になるのだろうか。
言い訳不可避、特定の誰かに見られたら大変なことになりそうだ。
思った以上に密着しているのか、ピクリとも動かせぬ身体、若葉と千景は俺を間に挟み込んで抱きしめ合った状態だった。
せめてどうにか動かせないかと肢体に力を入れて、
「……かっきー?」
「────」
筆舌とし難い違和感を感じた。
二度寝どころではないと目を開いてむにゃむにゃと寝言を聞かせる若葉の頬に手を置く。
はむりと指を甘噛みする若葉。
柔らかい頬と温かさを感じると同時に、俺自身の手の大きさを確認する。
ほんの数時間前までもう少し長く大きかった手や腕の長さが違っていた。
ぺたぺたと首や顔に触れて、そもそも着ていた浴衣が大きいことに気づいた。
「これは……!」
声に出してみて気づく違和感。
否、周囲の視線やこれまでの出来事、直感が自分の身に起きたことを気づかせるも、それを口にすることに躊躇を覚える。
だって今までは勇者や巫女にのみ起きていた筈の現象だから。
「んぅ……朝から騒がしいわね」
「……小雀でも騒いでますの?」
「ふわぁ……、……!」
「あ、あれ? なんで裸に……」
「友奈ちゃん? 私、友奈ちゃんと一緒にこんな格好で……」
「えへへ……東郷さんあったか〜い……もう五分だけ……」
そうしているうちに騒がしかったのか、周囲の少女たちも目を覚まし始める。
照明を点けておらず、あられもない姿に辛うじて浴衣のみを着けたような少女たちの起床は連鎖するように他の少女たちの覚醒を促していく。
欠伸をする者。下着どころか何も着ていないことに気づき毛布で隠す者。
乳房や恥毛をチラリと見せつつも気にせず欠伸する者。無言で赤面し周囲に目を向ける者。
そそくさと自分の下着を探して此方に目を向けもしない者。
スマホで誰かが絡み合う動画を目にして暗い笑みを見せる者。すやすやと眠り続ける者。
目覚めの朝がやってきた。
「……ふぁ……もう朝? なんで私、乃木さんと抱き合ってるの……は、離れて」
「んぷ……なんだ千景か……」
若葉も千景も目を覚ました。
そうして周囲の声を耳にして、自らの身体で挟み込んだ俺に目を向けた。
「……加賀くん……?」
「ん? 何かいつもと違うような……」
寝起きながらどこか信じられないような顔を見せる者たち。
そして。
「かっきー!!」
「お」
どん、と身体に感じる衝撃。
抱き着かれたのだと気づいた時には甘い香りと長い金髪が舞う。
「園ちゃん?」
身体は彼女の衝突を受け止めきれずに背後に倒れ込む。
それを誰かに受け止めて貰いながらも、俺は目の前の彼女に目を向ける。乱れた浴衣に白い肌、力強く抱き締める少女は唯一俺の知らない時代から来た乃木園子。
「かっきーだ……かっきーかっきーかっきー!」
「お、おい乃木。急に……」
「私の、私のかっきーだ!」
その言葉に、胸元に擦り付けていた顔を上げた瞳に映る姿に認めざるを得なかった。
将来美人になるであろう、幼さの残る園子の大きな瞳に映る少年。
そこに揺れているのは、黒髪黒目の勇者でもなんでもない、ただの子供がいた。
俺は加賀亮之佑が好きだ。
自分が好きだ。
ナルシストだと言われることもあるが、それでも自分自身を愛している。
想像するのは常に最強の自分だ。
ああなりたい、こうなりたいと思い描いた先に理想の自分が出来上がる。
前世で死んでしまって、二度目の人生で思い誓ったことは後悔しないということ。それを成し遂げる為には偉大な両親から授かった才能に頼るだけではなく努力の必要がある。
怠惰であって良い筈がないのだ。
もしも前世と同じような展開に遭遇した時に努力不足で対応出来ないなんてことが無いように。出来ることを増やして、将来のことも考えて、考え尽くして。
ない頭で作り上げた最強の自分なのだ。
俺が生まれた瞬間からひたすらに磨き上げてきた宝石なのだ。
それでも第二の人生を歩んで後悔したことがあるし、宝石を嫌いになりかけたこともある。
そもそも後悔をしないという事など不可能なのだ。選択などどちらを選んでも後悔はしてしまうもので、前世からの経験があってもどうにもならないことはある。
口にしてしまえば挫けてしまいそうだったから。
一度でも口にしてしまえば、誓いが破れてしまうと思ったから。
「────」
ジッと鏡を見る。
幼さの残る顔。艶やかな黒髪。
この世界に来る前、本当の意味でこの世界の真実も知らなかった頃を思い出す。
前世の嫌なことも忘れ始め、ぬるま湯に浸かり両親や園子と離れ離れになって後悔した時期。
まだ満開の代償で瞳の色が変質する前の頃だ。
白髪が増える前の黒髪、血紅色でない瞳を見る時が来るとは思わなかった。
幼き日の加賀亮之佑。その姿に覚えるのは懐かしさよりも、喪失感だった。
『──これは契約だ』
昏い瞳には欠片ほどの血紅色は何もない。
まるで溶けてなくなってしまったように、無機質な漆黒が見返してくる。
──もう勇者だった名残すら消えてしまった。
なら、ここにいるのはいったい誰なんだろう。
考えれば考えるほど根幹部分が崩れていくのを感じる。
「……やはりバーテックスとの戦闘の影響か中立神やそれに連なる神による影響なのでしょう」
「今まで私たちに起きてた子供になったり大人になったりする現象が亮ちゃんにも発生したってこと?」
「はい。恐らくは……」
「でも亮之佑は今まで戦ったりしてないだろ? どうしてなんだ?」
「そこまでは……神樹様からも神託はなくて」
「私たちの例を考えればそのうち治るってことなんだろう?」
少女たちの会話を俺は聞く。
真剣な顔をした彼女らを見ながらぼんやりと頭を回す。
今まで子供の姿になったり大人の姿になったりした少女たち。
元に戻る保証もなかったのに彼女たちは明るく元気だ。闇夜に瞬き続ける一番星。これから先どんなことがあったって決して折れない芯の強さを俺は羨ましいとも妬ましいとも思う。
芯の強さとは、努力でどうにか出来るとは思えない。
どれだけ外見や特技を磨き、出来ることを増やしても性根は簡単には変えられない。
不安だ。
心配だ。
もう勇者であった面影も何もないのにどうしてこんな仕打ちを受けなくてはならないのか。
ぐるぐる、ぐるぐると頭の中で昏い感情が渦巻いていく。
言葉にはし難い、口には出来ない感情が、肩に、頭に、身体に圧し掛かっていく。
自然と視線は下へと下がって俯きそうになって、
「──そんな顔しないで」
耳元で囁く声。
ぎゅうっと身体を包み込む温かさに思わず息を呑む。
背後から回される手。背中に感じる柔らかさ。
滑らかな髪が頬をくすぐり、耳朶に響くは鈴音の声色。
「そんな顔しなくても大丈夫だよ」
根拠も何もない。だが、いつだってその声は勇気をくれる。
落ち着かせるように、優しく頭を撫でる彼女の体温に瞬きを繰り返す。椅子に座る少女のスカートから伸びる健康的な脚。黒ニーソに包まれた太腿の上に座らされて背後から抱かれる。
根拠などない。それでも信じたくなる声の持ち主。
「友奈」
「うん!」
僅かに声が震えた。
それを気にすることなく、抱く腕に力を込めて結城友奈は応える。
「大丈夫だよ亮ちゃん」
ぎゅーっと口にしながらぬいぐるみにするように友奈は全身で俺を抱く。
背中から感じる柔らかさに、自然と強張っていた肢体が解れるのを感じた。いつの間にか緊張していた身体を解きほぐすように彼女の指や吐息や匂いに目を上げる。
「亮ちゃんは一人じゃないよ! みんながいる!」
「────」
「私もいる!」
太陽のような眩しい笑みは決して真似出来ない純粋さがある。
髪を撫でられて頬ずりされながら、俺はみんなを見る。
制服を着た美少女たち、可憐な花々が見返していた。
安堵させるような表情で俺を見る。
敵を見るような、部外者を見るような目ではない。
純粋に俺を心配してくれているのだと反発なく理解出来る眼差し。
一人の勇者部の仲間として、男として、俺を、加賀亮之佑を見ている。
「そうだぞ亮之佑! 小さくなったからって私とおまえの関係は変わらないぞ」
「ええ……小さくても加賀くんよ」
「おねショタから始まる物語も良いですよね」
「なんていうか弟が急遽出来たみたいだな! でも中身は同じか」
「ふふ……そんなに怖がらなくて良いんですよ」
「私もなでなでさせてー!」
「まあ……これだけの仲間がいるのだから怯える必要なんてないわ。ねえ雀?」
「あっはい……みんなあんな事しておいてスルーする感じなんだ。もしかして私だけ覚えてる?」
「おーほっほっほ! カガフレッドが小さくなろうともこの弥勒夕海子、それでどうこうするほど安い女ではありませんわよ! 舐めないで下さいまし!」
「いや舐められてたのは弥勒さん……すみません黙ってますチュンチュン」
「亮之佑先輩は亮之佑先輩です。あっ、でも少し目線が近くなりましたね!」
「んー……へへ、見た目が変わっても亮さんは亮さんっスよ」
「そうです! 私でよければ……ハ、ハグしちゃいます」
「樹がやる気を見せてる!? ……なんてね、悩んだら相談よ。今更見た目が変わったくらいで亮之佑のことをどうこう言う人なんてこの中にはいないわよ、安心しなさい」
「ふん……当然じゃない。あんたはアレよ、男のプライドか何かしらないけど変なところで本心を隠そうとするんじゃないわよ。友奈みたいになるわよ」
「夏凜ちゃん。それってどういう意味?」
みんなが口々にそう言ってくれる。
西暦組も防人組も年少組も、不安を胸中に押し隠す俺を憚ってくれた。
きっと他に何か言いたいこともあったのかもしれない。
それを些事だと投げ捨てて目の前で困った人を助ける姿は、正しく勇者だ。
心の弱った人にとって、彼女たちは神に見初められた存在なのだと、そう強く実感させる。
「ティッシュはいるかい?」
「泣いてないけど」
「心が泣いてるんよ~……私には分かるよ。おいでかっきー」
「おいでって……」
「エッチなことしちゃう?」
「ちょっと、ここ部室よ! そういうことする場所じゃないでしょ」
「……」
芽吹の吐いた言葉はあまりに強かったのか、無言で顔を背ける少女が数人。
それを誤魔化すように気がつくとぬいぐるみのように彼女たちに好き放題された。
抱きしめて、頭を撫でて、大胆に頬にキスをしたりして騒いだり。
「東郷さん……?」
「ハァ……ハァー……な、なに? 亮くん」
「……東郷お姉ちゃん? 身体熱いけど大丈夫?」
「おねえ──」
「東郷。鼻血」
小さく喉を鳴らす東郷の熱を持った身体は柔らかいが、なんとも言えない危険性を感じさせられる。制服越しに彼女の鼓動を感じつつもその高鳴りを耳にする。
さらりと腹部を撫でたり耳に唇を一瞬触れさせたり、どこか虚ろな眼差しで愛撫に近いことを始めた辺りで、何かを感じ取った周囲の少女たちに引き剥がされそうになる。
我が子を抱く母のように必死に抵抗する東郷も友奈に諭されるとあっけない。
「東郷さん」
「ハッ! 友奈ちゃん……私は……亮くんの可愛らしさに……いったい何が」
「おーい東郷、涎を拭きなさい。ついでにカメラも置いて」
「大人しくみんなに抱かれる亮くん……いいわね」
「ほら、次交代だ」
「ただいま十分待ちです~」
思い思いにお姉さん力、もしくは母性に類する何かを発揮する少女たち。
お姉ちゃんと呼ばれるのが良いのか、その胸元に抱き寄せては柔らかさと温かさを教えてくれる。慎ましい胸元や豊かな胸元も、そっと顔を埋めても誰も何も言わない。
それどころか眦を下げて頭を撫でる西暦組や勇者部の面々に思わず黙り込む。
「ヘイ、ハグ!」
「ほ、抱擁ぐらいは……まあ」
「須美ー、なに恥ずかしがってんだよ」
「べ、別に恥ずかしがってる訳じゃ……」
年下組とは背丈は変わらない。
ニコニコと友奈に見守られながら須美や銀とも抱擁を経て。
「わかちゃん知ってる? この時のかっきーの背は私よりも小さかったんよ~」
「ほう……なんだか私とひなたを思い出すな」
「若葉ちゃん……ポッ」
自慢げに語る園子(中)の言葉を耳にしながら、園子(小)とも熱烈な抱擁をした。
すりすりと頬ずりをする彼女は思い出すように柔らかな口調で当時を語る。
遠い目をする須美や銀が一言、思い出し笑いを見せる。
「そのっちは何かと『かっきーが……』って話をしてくるから」
「須美が嫉妬したりして、いったいどんな奴なのかって二人で話してたこともあったな」
「え~、写真見せなかったっけ?」
小さな姫が揶揄われては僅かに頬を膨らませる。
指で突くと萎む頬は柔らかく、その仕草の一つ一つが過去を思い出させる。微笑を見せる園子とくるりくるりとその場でダンスをするように抱き合い続けた。
少しだけ心が軽くなった。
もしも一人で突っ走っていたらどこかで耐えられなかったかもしれない。
「ここがかっきーのハウスね」
「もともとは園ちゃんの家の別荘の一つらしいけど」
「なら私とかっきーのハウスなんよ。愛の巣って奴~……?」
小さくなってからは園子(小)との密着時間が増えた。
昔は殆ど毎日ずっと一緒にいたから問題ないのだが、そのことに対して嫉妬を見せたりする者はいなかった。聞いたところでは俺のことに関して少女たちの間で色々と話があったらしい。
自らの薄い胸を撫でおろして、その瞳を俺に向けて微笑む。
「今日は誰も来ないから~、二人だけだって〜」
「そっか」
「今日もかっきーの作るご飯が食べたいな~」
「鍋焼きうどんとか如何ですか?」
「美味しそう~」
背格好の大きさに関わらず、元の世界では中学校に進学する前から一人暮らしをしていた。生活自体は問題ない筈なのだが、お節介焼きな少女たちは毎日誰かが料理を片手にやって来る。
まるで一人にしては大変なことになると言わんばかりだ。
元々このくらいの歳にはやっていたことなのにと思いつつも相応のお礼は身体でしてきた。
与えられるだけの関係なんて嫌だから。
最近はそんな状態だったのだが、本日は誰も来ないらしい。
「だから今日は私がかっきーを貸し切りにしちゃうんよ」
「園ちゃんの為ならいつだって俺は貸し切りになるよ」
サンチョの枕を抱いた彼女を連れて階段を上がる。
自室の扉を開けては、寝台に二人で座り込む。
るんるんと鼻歌を歌わんばかりに機嫌の良さそうな園子。
彼女の柔らかな手と手を繋いでいると、昔を思い出す。
隣にいる少女とは、いつでもどこでも出会った時から一緒だった。本家と分家、そんな垣根も越えて最初の友達となって、色んな思い出と時間を共有してきた。
「……昔はいつだって貸し切りだったのにね」
「────」
「でも、私のかっきーがこんなに良い男だぜ~って皆に知って貰えて鼻が高いんよ」
「そのちゃん」
呟く彼女に返す言葉を考える間もなく、そっと押し倒される。
枕に頭を置いて見上げる俺から目を離して、ベッドの隅に置かれたやや古いサンチョ枕を手に取る園子。愛おしむように古い枕を撫でる彼女はどこか妖艶な表情を見せる。
「そして~……今日はお泊りセットも持ってきてるから安全安心!」
「今日は、じゃなくて今日も、だろ?」
「迷惑だった?」
「まさか」
元の位置に古いサンチョ枕を置いては俺の腰の上で両手を広げる園子。
「かっきーのご飯もお腹一杯食べちゃうぜー! かっきーのご飯とわっしーのぼた餅が将来の私に繋がるのだ!」
「そのちゃん」
「それで……それで……」
ゆっくりと仰向けの俺に重なるように園子は倒れ込む。
長い髪の毛から覗く耳は朱色に染まり、その頭を撫でると小さく震える。
その震えが無くなるまで抱きしめると、耳元で彼女は囁く。
「かっきー」
「うん?」
「……エッチしよ?」
照明が消える。カーテンを閉めた薄暗い部屋で。
内緒話をするように、顔を近づける園子が瞳だけを輝かせる。
昔ならば、そのまま一緒に抱き合って眠っただろう。
あの頃よりも少しだけ大人になった俺と彼女は、唇を交わして、音もなく指を絡めた。
今年もありがとうございました! 皆さんの温かい感想に感謝です