「歩夢くん、今月も来てくれたんだっ!」
「どうも」
俺は今懐かしい夢を見ている。
場所はとある風俗店の一室。
転生前に俺が月一ペースで通っていたお店だ。
「今日も親のすねかじって来ちゃった」
「あはは、浪人生だから仕方ないよ」
「そうそう。浪人生だから風俗に行くお金を親に出してもらうのも仕方ない」
「相変わらずクズ発言するね~」
俺のブラックジョークに愛想よく笑ってくれるのは、このお店でナンバーワンの子だ。
転生前は気づかなかったが、橘茜に激似の彼女に俺ははまってしまい、月一でお世話になっていた。
「それじゃ早速しよっか」
「よろしく」
初めて来店した時は童貞だったこともあり、凄く緊張したが、半年も通えば慣れるものだ。
セックスも彼女がリードしてくれるおかげで、スムーズに行えるようになってきた。
彼女は必ずフェラかパイズリで射精した後に本番を行う。本来なら俺がいつも選んでる90分コースは、2発までなのだが、彼女はいつもサービスしてくれて毎回3発も俺の欲望を吐き出させてくれた。
「歩夢くんの……今日も濃いね……」
彼女はいつもうっとりした様子で俺の精液を呑んでいた。ちなみにこの『ごっくんプレイ』も追加で二千円かかるのだが、彼女はこれもサービスしてくれていた。
「そろそろ歩夢くんの入れちゃおうか。生でしちゃう?」
「いや、駄目でしょ」
「部屋には監視カメラないから大丈夫だよ」
「いや、ばれたらお店の人に殺されちゃうから」
「ふふ、ざんね~ん。それじゃ口でつけてあげるね」
通いだして三ヶ月を過ぎた頃から、彼女は冗談を言うようになった。
最初は本気で言ってると思ったのだが、すぐに引いてくれるので、俺はたちの悪い冗談だと判断した。
「あんっ、んぁっ、やぁっ、はぁんっ!」
「うぐ……っ!」
転生前の俺は早漏の部類だったと思う。……いや、プロ相手なんだからすぐに射精させられてしまうのは当たり前か。
とにかく彼女しか経験がなかった俺は、彼女のテクで絶頂されまくっていたのだ。
「うぁっ……はぁ、はぁ……今日も沢山出してくれたね……」
「そ、そりゃ……」
「ねえ、キスしよ」
彼女は射精後に、繋がったままキスをするのが好きだった。
そのままいちゃいちゃ過ごすのが、いつの間にか習慣になっていたのだ。
彼女いない歴=年齢の俺を彼女は気遣ってくれて、恋人のような甘い時間を過ごさせてくれているのだと俺は思っていた。
「ねえねえ、歩夢くん」
「なに?」
「今日はいいニュースがあるんだよ」
「いいニュースって?」
「実は貯金が500万溜まったんだ~」
彼女は自慢げに鞄から取り出した通帳を見せつける。
「おいおい、客にそんなの見せていいのかよ」
「歩夢くんだからいいの~。ね、凄いでしょ?」
「凄いね。彼氏の借金を返すだけじゃなくて、こんなに貯金出来るなんて」
「でしょでしょっ! もっと褒めてっ!」
彼女が全裸のまま俺に抱きついてくる。
胸板に彼女の美乳が押しつけられて、俺の息子が反応してしまうので、正直止めて欲しいと俺はいつも思ってた。
「それとこれもっ!」
「うん、大分目立たなくなってるな」
「でしょ。これなら半袖着ても大丈夫だよね」
彼女の手首と腕には無数のリストカットの跡がある。
俺が通った当初はリストカットをしていたが、通いだして三ヶ月を過ぎた頃はしなくなったと彼女は言っていた。
自傷行為を止めた彼女は、ファンデーションで傷跡を隠していたが、俺がネットで調べて病院で治療できると教えたところ、すぐに病院に通いだした。
「そうだな」
「これも歩夢くんが教えてくれたおかげだね」
「いや、調べたらすぐにわかることだし」
「そうだけど……わたし、馬鹿だからさ……」
そうだ。彼女は馬鹿な女だった。馬鹿で、不幸で、どうしようもない哀れな女だった。
彼女が女優を目指して秋田から上京したのは高校を卒業してすぐのことだった。
高校のミスコンでグランプリに選ばれた彼女は、同級生から女優になれるともてはやされ、大学進学をやめて上京した。ちなみに親からは勘当されたらしい。
彼女はバイトに励みながら、大小とわず色んな劇団のオーディションを受け続けた。
けれど演技経験がない彼女が受かるわけもなく、オーディションに落ち続ける日々を送ってしまう。
また彼女はドジ属性があるようで、バイト先でもいつも怒られたらしい。
そんな憔悴しきった彼女に近寄ったのが俺の兄貴以上のクズ野郎だった。
心の拠り所を欲していた彼女はすぐにクズ野郎に依存するようになってしまった。
最初は優しかったようだが、すぐに本性を現したようで、付き合って一ヶ月が経った頃には暴力を振るわれるようなったらしい。
彼女が稼いだお金をギャンブルで使い、お金がない時は彼女に暴力を振るい、彼女が少しでも文句を言おうものなら、一晩中リンチされたとのことだった。
結局、そのクズ野郎は借金を彼女に押し付けて行方をくらませてしまった。
彼女は200万の借金の保証人になってしまった。
当然フリーターの彼女に返済できる財力があるわけもなく、借金のカタにソープに堕とされてしまった。
いまだに何故、彼女が俺に過去を語ってくれたのかわからない。
もしかしたら年の近い俺に自分の苦しみを知って欲しかったのだろうか。
転生してしまった今では確認することも出来ない。
「でも元カレには一つだけ感謝してることがあるんだよね」
「あんなクズ野郎に?」
「うん。だってこのお店で働いてなかったら、歩夢くんと出会えなかったでしょ」
「……それ、他の客にも言ってるんだろ」
「言ってないよ~!」
この時は、一瞬ときめいてしまった。
危うく風俗嬢に恋してしまうところだった。
「信じてくれないと、またリスカしちゃうよ~?」
「いや、駄目だから。可愛い子が傷つくの見たくないから」
「……うん」
この子は容姿を褒めるとすぐに顔を赤くしていた。
風俗嬢なんだから色んな客に可愛いと褒められているだろうに。
「私、可愛いかな」
「可愛いだろ。自分の顔、鏡で見たことある?」
「あるよっ!」
俺たちは行為を終えると、終わりの時間が来るまで、こうしたくだらない会話をしながら楽しい時間を過ごしていた。
「それじゃ時間だしそろそろ帰るよ」
「え、もう?」
「もう90分近いし」
「……私がお金出すからもう少しいようよ……」
服を着ようとする俺に背後から彼女が抱きついた。
「駄目だって。ばれたらお店の人に怒られるでしょ」
「そうだけど……」
「また来月来るから」
そうだ。これは俺が最後にお店に通った時だ。
「本当に?」
「ああ」
「わかった。また第四土曜日に来てくれるんだよね?」
「今のところは」
「待ってる」
これが彼女がナンバーワンと言われる所以だろう。
切ない表情で、こんなことを言われたら、通い続けるに決まっているじゃないか。
「歩夢くん、あのね……」
「ん?」
「次来た時に大事なお話をするから……だから絶対来てねっ」
「わかった」
彼女が愛おしそうにお腹を擦っているのが印象的だった。
結局、俺は餅を喉に詰まらせて死んでしまい、彼女との約束を果たすことはできなかった。
彼女は俺に何を話したかったんだろう。
俺はアニメと彼女が気がかりだった。
直後に、視界が暗転する。
どうやら懐かしい夢も終わりを迎えたようだ。
「……ん……」
ゆっくりと目を開ける。
そこには見慣れた天井がある。
転生した俺の住処である高度育成高等学校の学生寮の一室だ。
「まったくなんて夢見てるんだか」
今日は橘先輩とデートだ。
だから橘先輩に激似の彼女が夢に出てきたのだろう。
「……気にしたって仕方ない。とりあえずシャワー浴びるか」
夏休み終了まであと四日。
今日は橘先輩を落とす予定だ。
そして橘先輩を美味しく頂かせてもらう。
☆☆☆
「すみません、お待たせしました」
「いえ、俺も今来たところです」
待ち合わせ場所であるケヤキモールの入口。
真面目な橘先輩は約束の15分前に必ず来るので、俺は20分前に到着するよう早めに待ち合わせ場所に向かった。
「今日も私服可愛いですね」
「そ、そうですか……。あ、ありがとうございます……」
橘先輩はTシャツにミニスカートとシンプルな恰好をしており、すらりとした白くて美しい脚を惜しげもなくさらしている。
「それじゃいきましょうか」
「は、はいっ」
想い人ではない男子に褒められて、すぐに照れてしまう橘先輩。
チョロ過ぎて心配してしまうレベルである。
「とりあえずお昼まで適当にお店をまわりましょう」
「そうですね」
今日の予定はお昼までウィンドウショッピング。昼食を済ませた後は映画鑑賞する予定だ。
映画館で伊吹と鉢合わせしないか不安だが、人前では声をかけないよう指示をしているので問題ないだろう。
問題があるとすれば、伊吹が不機嫌になることくらいだ。
ケヤキモールに入り、雑貨屋、本屋、家電量販店と様々なジャンルのお店を見て回った。
雑貨屋では軽井沢、本屋では椎名、家電量販店では長谷部と遭遇した。
軽井沢は俺と橘先輩を見ると不機嫌な表情になり声をかけずに去って行った。
椎名はいつもの無表情な顔つきで、俺と橘先輩を見つめ、暫くすると本選びを再開していた。
長谷部はおもちゃを与えられた子供のような笑みを浮かべ、俺たちに話しかけてきた。
「今日はやけにクラスメイトと遭遇します」
「そうなんですか。長谷部さん以外にも見かけたんですね」
ウィンドウショッピングを終えた俺たちは、昼食を取るためにファミレスに来ていた。
橘先輩はこのお店のナポリタンが好物のようで、熱心に俺に勧めてきた。
本当はハンバーグを注文したかったが、橘先輩のご機嫌を取るため、俺もナポリタンを注文した。
「私はまったく会いませんでしたね」
「やはり3年生なので、Aクラスでも受験勉強とかしてるんですかね?」
「してる人もいますね。Bクラスに落ちる可能性もあるわけですから」
卒業までAクラスが確約しているなら、受験勉強は必要ない。
だがこの学校は確約などしてくれない。
実力至上主義なのだ。
そんな学校で、俺は先生や先輩から情報を仕入れようとしてるわけだけど。
「ですよね。橘先輩は進路決まってるんですか?」
「大学に進学しようかと思っています。まだ進学先は決めてませんが」
「やっぱり高卒で就職する人は少ないんですかね?」
「どうでしょう。やりたいことが決まってる人は就職するかもしれませんが」
俺は料理が運ばれてくるまで、橘先輩に質問をし続け、それなりの情報を得ることが出来た。
「あ、美味しいです」
「本当ですか? お口に合ってよかったですっ」
橘先輩のお勧めのナポリタンは絶品だった。
パスタならペペロンチーノ派の俺だが、このナポリタンなら週一で食べてもいいと思える。
俺は橘先輩のペースに合わせて、ナポリタンを食べ終えた。
この女性の食事のペースに合わせるテクは、愛里や帆波とデートを重ねるうちに身につけたモノだ。
(ナポリタンも食べ終えたことだし、そろそろ攻めるとするか)
今日の目的は橘先輩を堕とすことだ。
好きな人がいるヒロインを落とすのは初めてなので、やや緊張している。
「橘先輩、今さらなんですけど俺と二人で出掛けて大丈夫なんですか?」
「え? どういう意味ですか?」
「ほら、橘先輩って堀北会長が好きじゃないですか」
「っ……!?」
俺の発言に目を見開く橘先輩。
もしかしてばれてないと思っていたのだろうか。
「だから好きな男がいるのに、他の男と出掛けて大丈夫なのかと思って」
「~~~~~~っ!」
さらに追い打ちをかけると、橘先輩を顔を真っ赤にして、目に涙を浮かべ始めた。
やっぱりこの先輩を見てると、虐めたくなってくる。
「そ、それはですね……あの、その……あぅ……」
本当に堀北兄のこと好きなんだな。この反応を見ればすぐにわかる。
「すみません。踏み込み過ぎましたかね」
「い、いえ。そんなことは……」
「いや、俺のせいで橘先輩と堀北会長が上手くいかなかったら嫌だなと思いまして」
「……大丈夫ですよ。私と堀北会長がそんな仲になることなんてありえませんから……」
橘先輩の表情が明るさを失った。
「そうですか。俺はお似合いだと思いますけど」
「そんなことないです。私なんかが会長と釣り合うわけないじゃないですか」
どうやら堀北会長に相当コンプレックスを抱いてるようだ。
「私はいつも会長に迷惑を掛けてばかりですので……。だからこんな私が堀北会長の恋人になれるわけないんです……」
「そうですか……。すみませんでした」
「上里くんが謝る必要なんてありませんよ。私を心配して言ってくれたわけですから」
橘先輩は作り笑いで応える。
こんな切ない笑顔を見せられると、余計虐めたくなるからやめてほしい。
「この話は終わりにして、そろそろ映画館に行きませんか」
「そうですね。もう時間ですし行きましょうか」
「はいっ」
☆☆☆
「私、この映画見たかったんです」
「原作小説読んでましたもんね」
「はい。覚えてくれてたんですね」
「もちろん」
上映5分前。伊吹の時と同様にネットで座席指定をしており、俺たちは固定された椅子に座っていた。ちなみに橘先輩は俺の右隣の席である。
「それよりやっぱ恋愛映画ってカップルが多いんですね」
館内には多数のカップルがいちゃいちゃしながら上映を待ちわびている。……いちゃいちゃしてるから待ちわびてはいないのか。むしろ上映なんかしないで、このままいちゃいちゃしてようぜと思えるほどいちゃつきまくってやがる。
「そ、そうですね……」
「これは風紀委員の出番では?」
「うちの学校に風紀委員はありませんよ」
「そうだったのか……」
そういえば原作でも風紀委員は見なかったな。
学校側は敷地内に多数の監視カメラがあるので、風紀委員がいなくても、風紀は乱れないと思っているのだろうか。
もしそうなら、それは甘い考えだ。
なぜなら俺を筆頭に風紀を乱す奴らは大勢いるからだ。
むしろ風紀を乱さないと存在をアピールすることが出来ない生徒がいるまである。
「あ、そろそろ始まりますよ」
直後に、館内が暗転した。
それから俺と橘先輩は上映が終わるまで、会話をすることはなかった。
上映中に俺がしたことは一つ。
右手で橘先輩に触れたことだ。
ひじ掛けに乗せていた橘先輩の左手に、誤って右手を重ねてしまった体で
「先輩、そろそろ帰りましょうか」
「え、あ……ふぇっ!?」
「そろそろ帰りますよ」
「ぁ……はひ……」
橘先輩の顔を見て、間違いなく発情していることがわかった。
後は彼女から求めてくるのを待つだけだ。
帰り道。
橘先輩は発情に抗いながら、帰路に就く。
息を切らしながら歩き、時折色っぽい声をあげる。
どうやら鈴音よりは忍耐力があるようだ。
「そ、それじゃ……私はこれで……」
「はい、今日はありがとうございました」
「いえ。私こそ……」
「また遊んでくださいね」
「もちろんですっ」
結局、寮に着くまでに橘先輩が求めてくることはなかった。
だが焦りはない。
なぜなら
あの伊吹澪さえも、
「しかし別れてから二時間か。思ったより粘るな」
橘先輩と別れてから二時間が経過した。
まだ橘先輩からの連絡はない。
今頃必死に体の疼きに堪えているのだろう。
「もしかして明日になったりして」
別に明日になっても問題はない。
元々、今日、明日の二日間で橘先輩を落とそうと思っていた。
「ま、気長に待つか」
スマホをテーブルに置いた瞬間、電話を知らせる着信音が鳴り響いた。
発信者はもちろん橘茜だ。
橘茜も
5分後には牝の表情を俺に見せてくれるだろう。
そして明日にはセックスの虜になっているはずだ。
俺は下衆な笑みを浮かべながら、橘先輩の電話に応答した。
橘先輩の処女は次回散ります!