※この作品はR-18です。

ようこそ発情ヒロインがいる教室へ   作:御米粒

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暑くなってきたから熱中症に気をつけましょう!


63話 櫛田桔梗は女王

 中間テストの3日前の放課後。今日も俺は図書室でクラスメイトに勉強を教えていた。

 二週間前から勉強会を実施したこともあり、半数以上の生徒が過去問で70点以上の高得点を出した。ちなみに過去問は橘先輩におねだりして頂いたものだ。

 また、高得点を出した生徒は自主学習に切り替えさせ、現在、勉強会に参加している生徒は恵、佐藤、三馬鹿、そして講師役の櫛田のみになった。そのため問題児につきっきりで勉強を教えられる環境になっている。

 

「恵はケアレスミスが多いから、解き終わったら全問チェックするんだ」

「ケアレスミスってなに?」

「そんなのもわからないのかよ」

「そんな専門用語わかるわけないじゃない」

 

 専門用語って程のものでもないんだけどな。

 俺は恵が分かり易いように説明した。

 

「そういうことね。日本語で説明してよねっ」

「お前は日本語も怪しいだろうが」

「あたしのこと馬鹿にしてる?」

「いや、お馬鹿さんだろ」

 

 自分で勉強はできない方だって言ってたからね。

 お馬鹿さんだからいまだに勉強会に参加してるわけで。

 

「ムカつく!」

「悔しかったら中間テストでいい点数とるんだな」

「……わかった。もしあたしが全教科50点以上だったら何か奢りなさいよ」

「いや、50点って低すぎだろ」

「低くないし。一学期のあたしの点数知ってるでしょ」

 

 見事に全教科40点から50点以下の点数だったね。

 頭は切れるタイプだから勉強もできると思うんだけどな。

 

「……わかった。パフェでも奢ってやる」

「約束だからね」

 

 ちなみに俺と恵がこんな会話が出来ているのは、佐藤がトイレで席を離れていること、櫛田と三馬鹿は離れた席で勉強しているためだ。

 二学期中に平田と別れる予定だが、恵は平田の彼女として認識されている。こんな会話を聴かれたら俺が友達の彼女に手を出すクズ野郎と思われてしまう。

 

「しかし佐藤遅いな」

 

 もう10分以上離席をしている。

 

「そう? 女子なんてこんなもんでしょ」

「10分もかかるか?」

「じ、女子にそんなこと訊かないでよっ!」

 

 お前が教えてくれようとしたんじゃないか。

 

「そんな怒らなくても……」

「これセクハラだから。わかってる?」

「世知辛い世の中になったもんだ……」

 

 これくらいでセクハラと言われるなんて。

 母親に「今日は残尿で遅くなる」と下ネタ連発していた俺の父親は大丈夫だろうか。

 

「それと佐藤さんの気持ち、気づいてるでしょ?」

「まぁな」

 

 恐らく佐藤は俺に惚れている。

 原作では綾小路に告白して玉砕した佐藤だが、一学期から俺に少なからず好意を持っていることには気づいていた。

 体育祭以降にアピールが積極的になったことから、原作の綾小路のように足の速さに心を奪われてしまったのだろう。

 足が速くてモテるなんて小学生かよ……。

 

「どうすんの?」

「どうもしないけど」

「ふーん。歩夢には彼女が沢山いるもんね」

「彼女ってわけじゃないんだけど」

 

 全員セックスフレンドなんだよね。

 こんなこと言ったら恵が赤面しながら罵倒してくるのは確実なので言わないでおこう。

 

「歩夢に何人も彼女いるのはいいけど……あたしとの約束は守ってよね」

「わかってる」

 

 恵は平田から俺に寄生先を変えた。

 原作の綾小路ポジションを俺が担うことになってしまった。

 

「あ、今のうち報告しておくけど、うちのクラスの女子に関してはDクラスに嫌がらせされてる子はいなかった」

「そっか」

 

 俺は恵にDクラスにちょっかいをかけられている女子がいないか確認をお願いした。

 伊吹の情報でDクラスが大人しくしていることは知っていたが、念のため恵に依頼をしていたのだ。

 

「相変わらず仕事が早いな」

 

 恵に依頼したのは二日前。さすが女子のリーダーである。

 

「まぁね。あたしだし?」

「恵からは他のクラスの女子にちょっかい出してないよな?」

「出してないわよ。ただ……」

「ただ?」

「堀北さんと言い争いしちゃった」

「なんで鈴音と?」

「……言いたくない」

 

 恵に問うとばつが悪そうにそっぽを向いた。

 鈴音と恵は原作でも、この世界でも反りが合わないようだ。

 

 

☆☆☆

 

 

 佐藤が戻ってきたのは離席してから30分後だった。本人の申告によるとトイレで居眠りしたらしい。夜中までテスト勉強をしてるのかと訊ねたところ、少女漫画を一気読みで夜更かしをしたとのことだった。

 この日も予定通り18時に解散し、寮に戻ろうとしたところ櫛田に一緒に帰らないかと誘われた。ちょうど櫛田に訊きたいこともあったので、俺は申し出を受けた。

 

「佐藤さんがいない間、軽井沢さんと盛り上がってたね。なに話してたの?」

 

 学校から寮までの帰り道。隣で歩く櫛田が問う。

 

「他愛もない話だよ」

「本当かな? 軽井沢さん照れてる様子だったし……もしかして他人の彼女に手を出してるのかな?」

「まさか。さすがに他人の彼女にまで手を出すつもりはないぞ」

「でも上里くんは女たらしだからなー」

 

 にやにやしながら俺をディスる腹黒女。

 その笑顔ぶん殴りたい。

 

「うるさいぞオナペット女王(クイーン)

「なっ……!?」

 

 櫛田がこの学校で唯一ナンバーワンになったもの。

 それが一年女子のオナペットランキングだ。

 櫛田は他のクラスにも友達が多く、男子ともグループで外出することがあるようだ。一緒に遊んでるうちに色々と妄想するようになったんだろうな。

 

「マジ最低」

「最低なのはお前を一位に押し上げた男子どもに言ってくれ」

 

 表の櫛田しか知らない人にとって、彼女は最適なオナペットだろう。

 一部のマニアは櫛田の本性を知ってもズリネタにしそうだが。

 

「はぁ……。なんで男子ってキモイ奴らばっかなの?」

「思春期なんだから仕方ないだろ」

「今日だって私の胸ばかり見てくるし……マジ最悪っ!」

「山内か?」

「そう。山内死ねばいいのに」

「死ねは言い過ぎだろ……。それに櫛田にも原因があると思うぞ」

「なんで私に?」

「そりゃ櫛田が可愛いからに決まってるだろ」

「っ……!?」

「ま、俺は櫛田でしたことないけど」

「死ねっ!」

 

 櫛田の右ストレートが炸裂した。俺の肩に30のダメージを与えた。

 

「暴力はやめろ!」

「上里くんが馬鹿なことを言うからだよっ!」

「つまりお前をズリネタにすれば殴られなかったのか?」

「殴ってたよっ!」

 

 どっちの選択肢も殴られるのか……。

 どうすれば櫛田に殴られない世界線になるのだろうか。

 

「上里くん、私の弱み握ってから下ネタ多すぎじゃない?」

「そうか?」

「そうだよ」

「うーん、もしかしたら櫛田が色仕掛けで迫ってきたからかもしれない」

「え……?」

「ほら、抱きついておっぱい押し付けたり、谷間を見せつけたりしてきただろ」

「うっ……」

 

 思い出したのか、櫛田の顔が徐々に赤くなってきた。

 自分から仕掛けたくせに、照れるとは意外と純情なんだな。

 純情ビッチと心の中で呼ぶことにしよう。

 

「あ、あれは……」

「俺と綾小路は理性的だからいいけど、他の男子にしない方がいいぞ。種付けされちゃうから」

「た、種付けっ……!?」

「思春期の男子は夜になれば獣になるんだ」

 

 そういえば綾小路って性欲あるのかな。最初の頃は櫛田や帆波にドキドキしてたけど物語が進むにつれて枯れてるように思えた。

 

「け、獣……」

「ま、好きでもない男子に抱かれないよう気をつけろよ」

「へ、へぇ……裏切者の私でも心配してくれるんだ……?」

「少しは」

「っ……。そ、そうなんだ……」

 

 純情ビッチが照れてらっしゃる。

 もしかして案外チョロかったりするのだろうか。

 櫛田は寮に着くまで黙ったままだった。

 

 

☆☆☆

 

 

「あゆむー、オレンジジュースもらうねー」

「俺のも入れてくれ」

「りょーかい」

 

 夜の9時半。今日も長谷部は俺の部屋に居座っている。

 最初は遠慮しがちだった長谷部だが、何日も俺の部屋に通ったことで慣れたようで、冷蔵庫から飲み物を漁ったり、ベッドでごろごろしたりと、まるで自分の部屋のように過ごしている。

 

「はい、どうぞ」

「ありがと」

 

 勉強で頭を使った後のオレンジジュースは格別だ。100ポイントで購入した物だが、とても美味しく感じる。堀北会長に教えてもらった喫茶店のオレンジジュースには負けるけど。

 

「あゆむーはオレンジジュース好きだね」

「そうだな。ドリンクバーもずっとオレンジジュースだな」

「飽きない?」

「まったく。長谷部は飲み物で何が好きなんだ?」

 

 鈴音なら精液と答えるんだろうな。

 

「うーん……カルピスかな?」

「カルピスか」

 

 俺のカルピス飲んでみないか?

 長谷部なら言っても怒らなさそう。

 

「今、エッチなこと考えたでしょ?」

「少しだけ」

「もう、あゆむーは正直すぎるって」

「友達に嘘はつきたくないんだ」

「かっこつけてるつもりだろうけど、全然かっこよくないからね?」

 

 俺と長谷部は毎日このようなくだらない会話を続けている。

 長谷部は狙っている女だが、もしかしたら一番気を遣わずに会話ができる相手かもしれない。

 

「そういえば篠原さんなんだけど、最近池くんといい感じなんだって。知ってた?」

「知らなかった」

 

 いずれ二人が親しい間柄になるのは知っていたが、原作より関係が進展しているようだ。

 

「犬猿の仲だったのに意外だよね」

「喧嘩するほど仲がいいっていうからな」

「そうだけどさ」

「つーか、長谷部って友達少ないけど、同級生の恋愛事情には興味あるんだな」

「そりゃ私も女子高生だし。恋愛ごとには興味あるって」

  

 芸能人のゴシップも好きそうだ。

 

「そんなもんか」

「そんなもんだよ。ちなみにみやっちって女子に人気あるんだよ」

「そうなの?」

「うん。根暗なだけなのにクールだと思われてるみたい」

「おい友達をディスるな」

 

 三宅は物静かなだけで根暗じゃないだろ。元ヤンキーだったみたいだし。

 

「ごめんなさーい」

 

 明らかに反省していない声色で謝る長谷部。

 

「それよりなんだか眠たくなってきちゃった」

「今日もみっちり勉強したからな。帰って寝たらどうだ?」

「部屋に戻るの面倒くさーい」

「エレベーターですぐだろうが」

 

 同じ建物なので、移動に5分もかからないだろう。

 

「だって面倒くさいだもん」

 

 癇癪を起した子供のようにベッドの上でじたばたし始めた。

 今日の長谷部はミニスカなので、パンツが見えそうになる。

 もっと暴れるんだ。

 

「それじゃまた明日ね」

 

 結局、長谷部のパンツを見えることはなかった。

 

「おい、パーカー返せ」

 

 10月下旬というのに薄着だった長谷部は俺の部屋に上がってすぐにパーカーを拝借していた。

 

「寒いからそのまま貸してよ」

「……わかった」

「ありがと。お礼に私の匂いたっぷりつけて返すね」

「すぐに洗濯するから気を遣わなくていいぞ」

「うわー、相変わらずノリ悪いし」

 

 女子の匂いだけでオナニーするほど飢えちゃいないんだよね。

 

「はいはい。また明日な」

「うん、おやすみ」

 

 長谷部は明らかに大きめのサイズのパーカーを羽織りながら帰っていった。

 ぶかぶかなシルエットが何気に可愛かった。

 

 

☆☆☆

 

 

「うーん、今日も手を出されなかった……」

 

 自分の部屋に戻った私は落ち込んでいた。

 あゆむーの部屋に通いだして二週間近く経つのに、一度も彼に手を出されていない。

 自分の容姿にはそこそこ自信があったので、余計にショックが大きい。

 

「ちょくちょく胸は見てくるから、興味はあるんだと思うんだけど」

 

 あゆむーがたまに私の胸を見てくるのは気づいている。

 昔から胸が大きい私は、男子のいやらしい視線には敏感なのだ。

 

「やっぱり私から迫らないと駄目なのかな……」

 

 私の想い人であるあゆむーは女の子にモテモテだ。

 堀北さん、佐倉さん、一之瀬さん、橘先輩と学校が誇るトップクラスの美少女たちと付き合ってるらしい。

 らしいというのは本人が否定しているからだ。

 ただ本人は否定していても周りは複数の美少女と付き合っている女たらしだと認識している。

 

「はぁ……なんでこんな人好きになっちゃったんだろ」

 

 始めはイケメンなのにアニメオタクという珍しい人だと思うくらいだった。

 その頃は彼を奪い合う女子たちの争いを面白おかしく見ていた。

 特別試験で、共通の友人であるみやっちを通じて、少しだけあゆむーと話すようになった。

 

 彼と急接近したのはケヤキモールで偶然出会ってからだ。

 私はあゆむーに荷物持ちとナンパ避けを兼ねて買い物に付き合うようお願いをした。

 あゆむーはいやな顔一つせず付き合ってくれた。

 

 私は中学時代に友達と恋愛トラブルで軽い虐めにあった。だから私は高校では女子たちとトラブルにならないよう気をつけていた。教室であゆむーに話しかけなかったのも注目されるのが嫌だったからだ。結果、二人で買い物をしているのがみんなにばれてしまい、注目される羽目になってしまった。

 翌登校日から女子たちに質問攻めにあった。

 私はあゆむーの彼女であることを否定したけれど女子たちは質問してきたくせに聞く耳を持たず、私はあゆむーの新しい彼女として認識されるようになってしまった。

 

 私はまた面倒事に巻き込まれると憂鬱になっていたが、そんなことはなかった。

 堀北さんにはたまに睨まれるけどそれだけだ。佐倉さんも一之瀬さんも橘先輩も私に絡んでこなかった。

 私の中学校がたまたま面倒くさい女子が集まっていたのかもしれない。

 そう結論付けた私は積極的にあゆむーに絡むようにした。

 

 あゆむーは不思議な人だった。

 同級生だけど年上に見えたり、年下に見えたりする時がある。

 「今日は風が騒がしいな」など意味が分からないことを言ったりする。

 勉強も運動もできるのに、家事がまったくできない。

 色んな女の子に手を出してるため、他クラスから嫌われているのに堂々としている。

 クラスの男子たちからはモテ神様と崇拝されている。

 

 他に不思議なところが一杯あるけれど、そんなあゆむーと仲良くなるにつれて異性として好きになってしまった。

 私の理想は高かった。

 あゆむーみたいに複数の女子に手を出す人なんて対象外だ。

 対象外だったのに、私は好きになってしまった。

 

 みやっちの個別勉強会に無理やり参加したのもあゆむーと一緒にいたかったからだ。

 みやっちは勘がいい人なので、私があゆむーに気があることを知ってると思う。

 だから勉強会が終わるとすぐに帰って、私とあゆむーを二人っきりにしてくれているんだと思う。

 みやっちには感謝してもしきれない。

 

「みやっちのためにも頑張らないと」

 

 私はあゆむーに勉強を教えてもらったお礼にハンバーグを奢ることになっている。

 勝負はその日だ。

 私の気持ちを素直にぶつけよう。

 それでだめだったら仕方ない。

 あゆむーとは悪友として付き合っていくつもり。

 もしオッケーをもらえたら。

 

「私、どうなっちゃうんだろう……?」

 

 異性と付き合ったことがないので、あゆむーの彼女になった自分が想像出来ない。

 その前に、オッケーをもらえたとしても彼女になれるのだろうか。

 あゆむーが特定の彼女を作らない人なら、告白を受け入れられても友達以上恋人未満の関係になるだけなのかもしれない。

 

「はぁ……前途多難かも……」




軽井沢と長谷部は恋愛に関して正反対な感じかも
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