週末。俺はこれから二日間、鈴音と過ごすことになる。
体育祭で結果を残したご褒美に、俺の時間を鈴音に与えることになったのだ。
最初にこの要望を聞いた時は二日間部屋にこもりセックスし続けるのだと思っていたが、それは俺の勘違いだった。
現に俺は鈴音とケヤキモールに足を運んでいる。
「やはり休日は人が多いわね」
「ここくらいしかデートするところないしな」
高度育成高校のカップルの休日はケヤキモールでデートするか、部屋にこもってセックスするかの二択しかない。
「そうね。歩夢くんとデートするのも久しぶりね」
「そうだな」
鈴音は人が多い場所を嫌うので、最近はスーパーに食材を買い出しに行くくらいだった。
鈴音の手料理を食べて、セックスをする。
これが俺と鈴音の休日の過ごし方だ。
「その服、初めて見るな。最近買ったのか?」
「ええ。……どうかしら?」
「似合ってるよ」
鈴音は黒のチェックワンピにベージュのカーディガンを合わせた清楚系コーデだ。
「ありがとう。歩夢くんもカッコいいわよ」
「ど、どうも……」
橘先輩が選んでくれた洋服なので、褒められると後ろめたくなる。
俺はファッションセンスがないので、自分で選ぶと黒一色になってしまう。
だから服を購入する時は女子に選んでもらっている。
そろそろ冬服も購入したいので、何気にお洒落な長谷部にコーデしてもらうか。
「最初はゲーセンでいいんだよな?」
「ええ」
今日は鈴音の希望でゲーセン、ランチ、カラオケ、本屋の順で店を回るプランになっている。
本屋以外は鈴音が興味なさそうな場所だが、俺が好きな場所で遊びたいという鈴音の強い希望である。
ゲーセンに着くと俺はポイントでコインを10枚購入する。
現金が使用できないこの場所は、1コインが100円となっており、ゲーム機にコインを投入してプレイするシステムになっている。
「歩夢くんはいつもどのゲームで遊んでいるのかしら?」
「一番はウイイ○かな」
「確かサッカーゲームだったかしら?」
「そうそう。よく知ってるな」
「兄さんが小学生の時に遊んでいたから」
「堀北会長もゲームするんだな」
「昔はね」
意外だ。ゲームとは無縁の子供時代を過ごしていると思っていた。
「鈴音はプレイしたことあるのか?」
「ないわ。ゲームは両親に禁止されていたから」
「兄貴は遊んでたのに?」
「私と違って兄さんは完璧だったから。両親に娯楽を制限されることはなかったわ」
「そうなのか……」
鈴音がここまで拗らせたのは両親が原因かもしれないな。
鈴音には悪いけど、原作で堀北家の話は掘り下げられていないから、今の情報を訊いて得した気分だ。
「それより遊びましょう」
「そうだな。鈴音も一緒にやるぞ」
「ええ」
やはり鈴音はスペックが高く、2試合プレイしただけで、基本的な操作をマスターしていた。
もちろん経験者の俺が負けることはなかったが、このままやり続ければいずれ負けるだろう。
ウイイ○をプレイし終えた俺たちは格ゲー、レーシングゲーム、UFОキャッチャーをプレイして楽しい時間を過ごした。
時刻が11時半を迎えたのでランチに行こうとしたところ、鈴音にせがまれてプリクラを撮ることになった。
プリクラを撮るのは帆波を調教して以来だ。
「ねえ、キスしていい?」
機械を操作していると鈴音がそんなお願いをしてきた。
「いいぞ」
「ありがとう」
鈴音を辱めることなく、彼女の希望通りにキスをして撮影をした。
舌を入れられると思ったが、唇が触れ合うだけの軽めのキスだった。
なんだろう。
こうしてると鈴音と恋人のような気分になる。
「ふふ、好きな人とのキスプリ。やってみたかったのよね」
「そうなのか?」
「ええ。クラスの女子が話しているのを聴いて、興味があったの」
「なるほど」
鈴音もクラスメイトの会話は聴くんだな。
俺以外に興味なさそうだから、音もシャットアウトしてるのかと思った。
「これスマホの待ち受けにしてもいい?」
「そりゃ鈴音のスマホなんだから好きにしていいと思うぞ」
「……そうよね」
俺の回答を聞いて、一瞬悲し気な表情を浮かべる鈴音。
俺と鈴音が正式な恋人なら「俺も待ち受けにする」と言えるのだが、俺は複数のヒロインに手を出しているので、だれか一人を特別扱いするわけにはいかない。
俺と鈴音のキスプリを待ち受けにしているのが他のヒロインに見られたらどうなることやら。
今のところ病んでるヒロインはいないので、大丈夫そうだが、用心するに越したことはない。
「それじゃお昼にしましょうか」
「ああ」
向かった場所はケヤキモール内にあるピザ専門店。
カロリーが高いので鈴音に却下されると思ったが、夜に沢山野菜を食べることを条件に許してくれた。
なんで俺はヒロインたちに食事の管理をされているのだろう……。
店内に入るとすぐに席を案内された。
「思ったより空いてるわね」
「客が俺たち生徒と施設で働く大人しかいないからな」
「そうね。歩夢くんは何を食べるの?」
「俺はマルゲリータかな」
「そう。私は野菜ピザにしようかしら」
ここでも健康に気を遣うのか。
意識が高いぞ堀北くん。
「鈴音は自己管理が徹底してるよな」
「そうかしら?」
「俺から見たらな」
「でも歩夢くんだって毎朝10キロもランニングしてるじゃない」
「あれは走るのは好きなだけだよ」
「それでも凄いわ。さすがに私でも毎朝10キロは厳しいもの」
「そりゃ男と女じゃ体力が違うからな」
「そうね」
鈴音はそう言うが、彼女の運動能力ならすぐに慣れると思う。
実際、ヒロインで一番体力があるのは鈴音だ。
最高15回戦まで付き合ってもらったこともある。
体力がない性奴隷になった牝教師とは大違いだ。
「美味しいな」
「そうね」
店員にオーダーしてから5分ほどで料理が運ばれてきた。
俺は一切れ一切れ味わって食べている。
「歩夢くん、口元にチーズがついてるわよ」
「え? どこだ?」
「拭いてあげるからじっとしてて」
「わかった」
鈴音はしょうがないわね、という表情をしながら俺の口元をナプキンで拭う。
「とれたわよ」
「悪い」
「ふふ、もう子供なんだから」
クスッと笑い、慈愛溢れる顔つきで俺を見つめる鈴音。
あれ? 鈴音が可愛いのは知ってたけど、こんなに可愛かったっけ?
なんだか心臓の鼓動が速くなったような気がする。
「それにしても本当に美味しいわね。たまにはピザも悪くないわ」
やはり鈴音の食べ方は上品だ。
それに食べる時の仕草に色気を感じてしまう。
鼻フックで豚鼻にされて豚の鳴き真似をする変態と同一人物とは思えない。
「歩夢くん、どうかした?」
「い、いやっ! なんでもないっ!」
「そう?」
見つめているのがばれてしまった。
あれだけ見つめてたらばれるに決まってるか。
なにせ真正面に座ってるんだもん。
「さすがに量が多いわね」
「そうか?」
「ええ。よかったら一切れ食べない?」
「それじゃ頂こうかな」
残すのは勿体ないからね。
こっちはお金払ってるんだから全部食べないと損だ。
「はい、あーん」
「あーん」
鈴音に差し出されたピザを躊躇なく口に咥える俺。
転生前なら恥ずかしくて、美少女とあーんなんてできなかったが、今の俺は違う。
鈴音のような特上の美少女にあーんをされても、余裕で対応できるのだ。
「美味しい?」
「美味しい」
「まだ半切れ残ってるわよ」
「あーん」
なんだか恋人というより、お母さんと子供に思えてきた……。
食事中の鈴音は母性溢れるんだよな。
帰ったら母乳が出るか確かめてみようかな。
☆☆☆
時刻は12時半。昼食を食べ終えた俺と鈴音はカラオケに来ていた。
「誰かと思えばヤリチン野郎じゃねえか」
ドリンクバーでジュースを注いでると、特殊性癖野郎に声をかけられてしまった。
龍園はクラスメイトと思われる女子数人といた。
「……最悪だ」
「そんな冷たいこと言うなよ。今日は堀北とデートか?」
「……誰?」
鈴音が龍園を一瞥して俺に訊ねる。
「俺のこと知らねえのか?」
「ええ。彼以外の男子に興味はないから」
「ククク、そうとう惚れられてるようだな」
「おかげさまで」
自分のことを知らない鈴音に切れるかと思ったが、逆に嬉しそうにしている。
やっぱ龍園って変わった奴だ。
「俺はお前のことを知ってるぜ。堀北鈴音。生徒会長の妹だろ?」
「正確には元生徒会長だけれど」
「そうだったな。まさか元生徒会長の妹が落ちこぼれクラスだとはな」
鈴音を嘲笑う龍園。
原作の鈴音なら切れただろうけど、この世界の鈴音は違う。
「その落ちこぼれクラスに負けてるのはどこのクラスかしら?」
「言ってくれるじゃねぇか」
「私は事実を言ったまでよ。私を不良品扱いしたいなら、私たちより上のクラスになることね」
「……ああ、すぐになってやるよ」
「寝言は寝てから言った方がいいわよ」
鈴音と龍園のやり取りに、Dクラスの女子たちがおろおろしている。
ちなみに伊吹と椎名はいなかった。
名前も知らない女子たちだけど、それなりに可愛い。
もちろん手を出すつもりはないけど。
「ククク。俺にここまで言った女はお前が初めてだぜ。上里と一緒に俺が潰してやるよ」
「そう。無駄な努力になるけれど頑張りなさい」
俺とDクラスの女子たちが空気な件。
会話に入れないのでついオレンジジュースを飲み切ってしまった。
「歩夢くん、お部屋に行きましょう」
「ああ」
「おい、もしそいつで満足が出来なかったら俺の部屋まで来い。昇天させてやるよ」
確か龍園もあそこが大きいんだっけ。
俺とどっちが大きいんだろう。
合宿の風呂場で見比べてみるか。
「あなたの粗チンじゃ無理よ」
龍園の股間を嘲笑いながら見下ろす鈴音。
俺とDクラスの女子たちは鈴音の強烈な発言に吹き出しそうになってしまう。
「行きましょう」
俺は鈴音に腕を引っ張られその場を後にした。
龍園から殺気を感じられたのは言うまでもない。
「せっかくの休日だというのに、不快な人物と出くわしてしまったわ」
「そうだな」
「気分転換をするためにも歌いましょう」
「鈴音も歌うのか?」
「そうだけれど。なぜ?」
「前にカラオケに行った時は歌わなかったから」
俺と鈴音は特別試験中に豪華客船のカラオケに行ったことがある。
その時は愛里ともいたので三人でカラオケに行ったのだが、二人とも俺の腕に抱きついたままだったので、一曲も歌えなかったのだ。
「あの時は佐倉さんがあなたから離れなかったから」
「そ、そうか……」
「そうよ。私だって歌える曲くらいあるわ」
「それじゃ鈴音から歌うか?」
「わかったわ」
鈴音は最近のヒット曲は知らないようで、80~90年代のヒット曲を中心に選曲した。
もちろん俺はアニソンばかりだ。
鈴音は知らないだろうに、手拍子をしてくれたり、頑張って盛り上げようとしてくれた。
そんな健気な鈴音を見て、つい抱きしめてしまう。
「あ、歩夢くん……」
「悪い。つい抱きしめたくなった」
「そう。でもここ監視カメラがあるわよ」
「抱き合うくらい問題ないだろ」
「……そうね」
鈴音も俺の背中に腕を回してきた。
モニターから流れるカラオケチャンネルの音を聴きながら、俺たちは息が止まるほどぎゅっと抱きしめあった。
「鈴音」
次に唇で鈴音を感じたいと思い、冴えた美しい鈴音の唇を奪おうとすると、人差し指で止められてしまった。
「駄目。夜まで我慢して」
「……プリクラでしてあげたのに」
「そ、それは……。よ、夜になったら好きなだけしていいから……ね?」
「わかったよ。夜まで我慢する」
「ありがとう」
チュッと頬にキスをされた。
「……頬はオッケーなのか」
「私からわね。唇同士は夜までお預け」
「了解」
いつもの鈴音なら俺が求めればすぐに受け入れるのに。
やはり今日の鈴音はいつもと違う。
心境の変化でもあったのだろうか。
☆☆☆
カラオケで3時間ほど喉を酷使した俺たちは本屋に来ていた。
会計時に龍園と遭遇するか不安だったが、あれから遭遇することはなかった。
「買いたい本は決まっているのか?」
「ええ。図書室に置いていない海外小説よ」
「また難しいそうな本だこと」
「そうでもないわよ。歩夢くんはラノベ?」
「ああ。こっちも図書室に置いてないもんで」
ラノベといえば、椎名に禁書の旧約全巻貸したな。24巻もあるので読み終えるのに相当時間がかかるだろうな。
本当は巻数が少ない作品を貸そうとしたが、アニメ一期を見て気に入った椎名が全巻貸すようお願いをしてきたんだよな。
今頃部屋で読んでるんだろうな。
「お互い本に出費がかさむわね」
「だな」
なお、一般小説にかんしては図書室で借りるようにしている。
椎名も図書室にある本をお勧めしてくれるので、ラノベと漫画以外に本でお金を使うことはあまりない。
「それじゃ後で合流しよう」
「わかったわ」
鈴音と別れてラノベコーナーに向かう。
この本屋はそれなりの規模のお店なので、ラノベのラインナップも充実している。
どの出版社も新刊は全て揃っており、有名シリーズなら多くの在庫を抱えている。
また、店員にオタクがいるようで、作品を紹介する手書きPОPも素晴らしい。
「とりあえず二冊でいいか」
お目当てのラノベを無事に手に入れた俺は鈴音の元に向かったが、海外小説の棚に鈴音の姿はなかった。
スマホに連絡しようと思ったが、すぐに見つかると思い、店内を回って鈴音を探すことにした。
3分ほどかけて鈴音を発見した。
鈴音は珍しく雑誌を立ち読みしていた。
「鈴音?」
「っ……!?」
「お待たせ。そっちはもう買ったのか?」
「あ、いや……まだよ」
「そっか。立ち読みしたいならもう少しここにいるか」
「い、いえっ! お目当ての小説は見つかったから会計して帰りましょうっ!」
「あ、ああ……」
俺に見えないよう雑誌を戻す鈴音。
裏にして戻しても無意味だぞ。
だってその下の雑誌が表向きになってるんだもん。
そっか。鈴音も結婚に興味あるのか。
ゼクシ○って女子高生も読むんだな。
次回はセックスだけどアンケートの結果を踏まえていちゃラブだから安心してくださいね!
次の汚れ役は星之宮先生が引き受けてくれましたので!