とうとう終業式の日を迎えた。龍園から宣戦布告をされた俺だが被害にあうことはなかった。
襲われてもいいように秘密兵器を持ち歩いているので、一人で下校しようとしたが、ヒロインたちがそうはさせてくれなかった。日替わりでヒロインたちと登下校をする日々が続いている。
「結局龍園くんは何もしてこなかったね」
終業式を行う体育館に向かう途中で櫛田が言った。
「今日あたり狙ってくるかもな」
「なら今日は私が一緒に帰るね。いいよね?」
「……帰りに寄るところがあるんだけど」
「付き合うよ」
櫛田も俺を一人で下校させてくれないようだ。
「どこに寄るの?」
「本屋」
「ならケヤキモールだね」
学校の敷地内で本屋があるのはケヤキモールだけだ。
本屋で思い出したが三日前に椎名が久しぶりに俺の部屋にやってきた。
彼女も俺のことを心配してくれたようで、殴られてないか頬を触られまくった。俺が無事であることを確認した後はいつも通り小説とアニメの話で盛り上がった。
原作なら綾小路が龍園を潰してくれる日だが、彼らが衝突するのはもう少し先になるだろう。
「そのままいろんなお店回らない?」
「櫛田も買いたいものあるの?」
「特にないけど……上里くんとデートがしたくて」
近くにクラスメイトがいるため、櫛田はいつものかわいこちゃんモードで誘ってきた。
「駄目かな……?」
あざとく上目遣いでおねだりしてくる。
俺と綾小路と平田以外の男子ならいちころだろう。それほど櫛田の上目遣いは破壊力がある。
「……いいよ」
「やったっ。ありがとう」
先日。何がしたいか自分でもわからないと言っていた櫛田だったが、俺に絡むのは止めてくれない。
おそらく今日もデート帰りに俺の部屋に来て愚痴を吐いていくのだろう。
教室を出る前に山内に執拗にデートに誘われていたから、だいぶストレスが溜まっているはずだ。
「それよりいいのか?」
「なにが?」
「近くに男子がいるのにデートの誘いなんかして」
「……むしろ男子がいるから誘ってるんだけど?」
「なんで?」
「……ちょっと来て」
櫛田に左腕を掴まれて人気のない場所に誘われる。
「ここなら大丈夫かな」
「終業式があるんだからすぐ戻らないと駄目だぞ」
「一分もかからないから。……それで男子たちの前で上里くんを誘った理由だよね?」
「ああ」
「理由は一つしかないよ。山内に見せびらかすため」
そうなんだ。てっきり恵に挑発するためだと思った。
「いいのか? 特定の男子を誘ったら、みんなの人気者ポジションを失うかもしれないぞ?」
「それは大丈夫だよ。クラスメイトからの信頼は揺るぎないものになってるし、私を彼女にしようとする男子も山内だけになったから」
「……そうなの?」
「うん。もちろん私に好意を持っている男子は大勢いるけど、本気で私を落とそうとしているのは山内だけ」
「確かに池は篠原といい感じらしいけど……」
「うん。だから山内が私を諦めてくれれば、恋愛トラブルに巻き込まれる可能性はぐっと低くなるんだよ」
「他のクラスの男子は?」
「今はそれどころじゃないと思うよ。誰かさんが活躍してくれたおかげで、ほかのクラスの子たちと遊ぶ機会もめっきり減っちゃったし」
誰かさんっていったい誰だろうな。
「それに……」
蠱惑的な笑みを浮かべて近寄ってきた。
「上里くんには私を守ってもらわないといけないから」
「……もう龍園はお前を狙わないと思うけど」
「でも可能性はゼロじゃない」
櫛田は「だから」と付け加えて宣言する。
「私、上里くんと今まで以上に仲良くするつもりだから……よろしくね」
くすっと小悪魔スマイルを浮かべて言った。
「これ以上仲良くって……セフレになるしかないんだけど」
「だからなんでそうなるのっ!」
☆☆☆
櫛田と遅れて体育館に行くと、鈴音、愛里、長谷部、恵に睨まれてしまった。特に恵は櫛田と犬猿の仲なので面白くないだろう。
終業式が終わったらメッセージで文句を言ってくるかもしれない。
だが問題ない。
近いうちに抱いてやればすぐに大人しくなるだろう。
恵は完全に俺に依存している。
三日前の昼休みに屋上で恵に奉仕してもらった。もちろんカメラの死角になっているところで、学校側にばれないよう欲望を吐き出させてもらった。
学校なので恵が吐かないように軽めにイラマチオをさせようとしたが、恵の方から喉奥まで犯すよう懇願してきた。
一発射精すれば満足すると思ったが、涙を流しながら苦しそうに奉仕する恵の顔に興奮してしまい、三発も口内に精液を注ぎ込んでしまった。
最初は美味しそうに飲んでいた恵だったが、途中から飲み込むのが苦しくなり、吐き出してしまった。
恵は俺に怒られると思ったのか、号泣しながら「ごめんなさい」と何度も何度も謝ってきた。
恵には鈴音や帆波と違って鬼畜なプレイはしていないので、そんな恐れられていると思ってなかったのでショックだった。
二日前の早朝は帆波を空き教室で呼び出して身体を重ねた。
学校でプレイするシチュエーションに帆波の興奮度はマックスだったようで、声を押し殺しながら何度も絶頂していた。
ショーツが精液とマン汁で汚れてしまったので、その日はノーパンで授業を受けさせた。
ショーツを履かないで授業を受ける証拠をちょうだいと言ったら、休み時間のたびにトイレの個室で撮ったであろうスカートを捲し立て股間を晒す写真が送られてきた。
付き合う前の恋愛に初心な一之瀬帆波は完全に消えてしまった。
昨晩は久しぶりに星之宮先生に呼び出された。新しい情報は原作8巻で行われた合宿だけだった。
星之宮先生は情報の対価として快楽を要求してきた。しかもお持ちの玩具をすべて使用するフルコースである。何個か使い方がわからない玩具があり困ったが、星之宮先生は絶頂し過ぎて薬物中毒者みたいになっていたので恥をかかなくてすんだ。
ほかの先生たちにばれないよう早朝に帰ろうとしたところ、たまたまトイレで起きた淫乱教師に捕まってしまった。
結局、今朝は三回子種汁を星之宮先生に注ぎ込ませてしまった。
「今思ったらよくばれないな」
場所は変わり、俺はケヤキモールの休憩スペースで一人休んでいる。
櫛田はランジェリーショップでお買い物中だ。
俺も一緒にお店に入るよう言われたときは焦った。
相当しつこく誘ってきたので、お得意の下ネタで櫛田を怒らせて、一人で店内に入らせることに成功した。
「お待たせっ」
10分ほどして櫛田が戻ってきた。
「随分早かったな」
「あんまり待たせるのも悪いと思って」
「そっか。エロイ下着は買えたか?」
「うるさいよ!」
顔を真っ赤にした櫛田が紙袋で叩いてきた。
「櫛田はオナペット女王なんだから自覚を持たないと」
「そんなことを言ってるのは上里くんだけだからねっ!?」
「うるさい。高校生なんだからもう少し落ち着きを持てよ」
「……本当に殺す」
「すみません、調子に乗りました」
ブラック櫛田が現れたので俺はすぐに謝罪をした。
普段なら謝らないが、今にも刃物を出しそうな雰囲気だったので、反射的に謝ってしまった。
「待ってる間、誰かに絡まれたりしなかった?」
「しないよ。櫛田も心配しすぎだろ」
「だ、だって……。上里くんがやられたら私を守る人がいなくなっちゃうし……」
俺じゃなくて自分の身を案じてるのね。そうだよね。櫛田が他人の心配をするわけがないよね。
「そろそろ夕食食べに行こうか?」
「……もう17時半か。少し早いけどそうするか」
「うん」
この日の夕食は敷地内で一番美味しいと評判のラーメン屋ですませた。
俺は醤油ラーメン、櫛田は塩ラーメンを頼み、二人とも大満足のお味だった。
夕食後は軽くカフェでお茶をして帰宅した。俺はお茶が飲めないからオレンジジュースだったけど。
案の定櫛田は俺の部屋に来て、溜まったストレスを発散させるため、愚痴を吐きまくった。
どうやら山内のエロイ視線以外にも、女子同士のトラブルなど、櫛田の悩み事は俺が思ったより多かったらしい。
「マジで軽井沢死んでほしい」
今も俺の所有物を呪い殺すようにぶつぶつ言っている。
「顔も胸も私より下のくせに勝ち誇った顔しやがって! 堀北よりムカつく!」
さっきから俺のセフレの名前が挙がってる件。
櫛田をセフレにすると、彼女たちとの関係が崩壊しそうだ。
やはり櫛田に手を出すのはやめようか躊躇してしまう。
「上里くんからもあのギャルに言ってやってよ!」
「何を言えばいいんだよ?」
「私の方が可愛いって! なんだったら身体の相性も私の方が上だって言ってもいいよ!」
「俺と櫛田はやったことないだろ……」
「うっ……。でも私の方が絶対気持ちいいでしょ!」
怒りのせいか、櫛田が下ネタを連発してらっしゃる。
いつもなら俺に言われて怒るのに。
「そんなの抱いてみないとわからないだろ。それよりもう遅いし帰ったらどうだ?」
「明日から冬休みなんだからもう少しいいでしょ」
「お前の愚痴を延々聞かされる俺の身にもなってくれ」
「上里くんだから大丈夫だよ」
「何が大丈夫なんだよ……」
「だって上里くんは丈夫だし」
「俺の何を知ってるんだ!」
こう見えて陸上を始める前は毎年風邪を引いてたんだぞ。
クズ兄貴にネギをアナルに入れられそうになったのが懐かしく感じる。
そういえばクズ兄貴は、仕事を続けているのだろうか。
同僚であるデリヘル嬢を食いまくってるようだけど、ばれて茨城の海に沈められていなければいいけど。
「ねえ、小腹空いたからコンビニ行こうよ」
「寒いから嫌だ」
「二人でくっついていれば寒くないよっ」
「でも厚着だとおっぱいの感触がいまいちだし」
「誰がいつ胸を押し付けると言ったのかな?」
「だって櫛田が人より優れてるところって顔とおっぱいだけじゃん」
「~~~~っ!」
10分後。夜のコンビニに美少女を連れた、顔に紅葉マークを作った男子が来店したそうな。
結局、櫛田は22時まで俺の部屋に居続けた。
さっさと帰ってオナニーでストレス解消をすればいいのだ。
「そうだ。あいつが来るから連絡しとかないと」
櫛田を早く帰らせたかった理由。
それは櫛田以外に狙っている女子が俺の部屋に来る予定があったからだ。
その女子は諸事情により、ほかの生徒に俺と接触しているところを見られるわけにはいかない。
『友達が帰ったから30分後以降ならいつでもいいぞ』
そうメッセージを送信するとすぐに返信がきた。
『ご連絡ありがとうございます。それでは23時ごろにお伺いさせていただきます。もちろん誰にも見られないよう気を付けますのでご安心ください』
『わかった』
こんな丁寧口調でメッセージを送ってくるのは一人しかいない。
椎名ひより。
1年Dクラスの文学少女で、俺とは小説とアニメを語り合う貴重な友人である。
「しかし珍しいな」
椎名が前回俺の部屋に来たのは三日前。いつもなら一週間か二週間おきに俺の部屋に来る椎名だが、今回は間隔が短い。
もしかしたら椎名も明日から冬休みなので、浮き足立っているのかもしれない。
「すみません。お邪魔します」
23時過ぎ。約束の時間に椎名がやってきた。
私服姿の椎名を見るのは四度目だが、今回はゆるふわサイドテールをしており、いつもと若干雰囲気が違う。
「やはり外は寒いですね。もう少し厚着をすればよかったです」
「もう12月下旬だからな。暖房がないと生きていけない」
「それは同意です。特に私のような体力がない女子はエアコンがないと生きていけません」
「体力があっても同じだよ。ホットミルクでも飲むか?」
「ありがとうございます」
お茶もコーヒーも飲めない俺が、凍えてる美少女に提供できるのはホットミルクだけだ。
「あれ? 今日は小説持ってきてないんだ?」
椎名は必ずおすすめの小説を持参するのだが、今回は手ブラだった――いや、手ぶらだった。
「はい。そんなに私の小説を楽しみに待っててくれたのですね。嬉しいです。ありがとうございます」
「ど、どういたしまして……」
若干会話のテンポがずれるのも椎名の特徴の一つだ。
「ふぅ。美味しいです。それに身体が温まります」
ホットミルクをちょびちょび飲みながら椎名は満足そうな表情を浮かべる。
「上里くんがだしてくれるホットミルクは、牛乳と砂糖のバランスが絶妙ですね」
「まぁな。それでどうする? この前のアニメの続きでも見るか?」
「魅力的なご提案ですが、それは次の機会にお願いします」
「そっか。それじゃラノベでも読む?」
「それも次の機会に」
なら椎名は何しに来たのだろう。
俺と椎名から小説とアニメをとったら何も残らないじゃないか。
「あまり時間をとらせるのもなんですので単刀直入に言いますね」
「ん?」
椎名は覚悟を決めたような顔をすることはせず、いつのも眠たそうな顔で俺を見据える。
「私とセックスしていただけませんか?」
ひよりがなぜセックスを要求したのかは次で説明します!