※この作品はR-18です。

真っ黒ダンジョン(仮)   作:クラクモ

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宝?と俺と水の音

 

 

 

 

 

「うーん、解るような、解らないような」

 

 召喚陣から目を離して、ぐーっと背中を伸ばすようにしながら一人呟く。

 

 召喚陣と言っても呪術師ちゃんの寝床ではなくて、最初に召喚された中階層の外れにある方の部屋である。壁際には出会い頭に姐御に殴られて俺がぶち撒けた血の痕が赤黒く点々と落ちていて、様々な邪悪っぽいレリーフが刻まれて胡散臭い気配を漂わせる室内へと何とも猟奇的な彩りを添えている。

 

……あの時は痛かったなぁ。いきなりの事で何がなんだか意味がわからなかったし。というか、命のやり取りが日常茶飯事の世界に来て受けた一番大きな被害が味方である姐御からのパンチって、運が良いのか悪いのか。

 

 

 まぁこんな俺が今まで生き残れているという事は、きっと幸運なんだろう。数分の間ぼんやりと思考を漂わせ、そんな結論が出た所で気を取り直して再び意識を召喚陣へと集中していく。

 

 先日、狩人さんが居た探索者パーティと戦っている最中に何度か行っていた構造体へのアクセス。その能力を召喚陣へ向けて使えば何か解るのではないか……と、やってきたのはいい物の。何と言うか、うーん……例を出すなら、本を読むのに言語は学んだけれど内容が理解出来るかは別の話、という感じ?

 

 大まかな術式の構造は視えるけれど、それが何を意味するのかは解らない。これは実際に動いている所と動いた結果を何回か観察しないと、どうにもなりそうにない気がする。好都合にも召喚陣には結構な力が溜まってきている。こちらからも少し力を流して発動を促してみよう。

 

 

 

「……あれ? こんな所でどうしたの?」

 

「うわっっひょ!」

 

 いつの間にか入り口の所へ先輩が現れていた。力を篭めてみようと集中していた所にいきなり声がかかって、思わず変な悲鳴を上げてしまう。

 

「あぁ、先輩……ビックリさせないで下さいよ。ちょっと召喚陣を見てたんです、これってどんな術式なのかなーって」

 

「ふーん、箱を探しに来た訳じゃないんだ?」

 

 気安く近寄ってくる先輩からじわじわ下がりながら返事を返す。

 

あれ? 普段は誰も立ち寄らない部屋に二人っきり……何かヤバいような。こういう場合は適当に質問して関心を別の方向へ向けるに限る。

 

「箱……ですか?」

 

「そうよー。階層が警備員でいっぱいになってくると、魔物の代わりに色んな物の入った箱が召喚されるの」

 

 言われてみれば最近は獣人さん達をはじめ、他の見知らぬ女性淫魔が率いているグループなんかも頻繁に見るようになって非常に眼福……じゃなくて、警備員の総数が増えてきているように感じる。最近は探索者がこの付近まで入ってくる事も減っているしなぁ。先輩の言う箱とやらが召喚される可能性は高いのかも知れない。

 

「まあ箱以外の物の事もあるけど……どっちにしても最近はお客さんも少ないから魔物は減らないし、そろそろ出てくる頃かも」

 

 得意げに人差し指を立てて教えてくれる先輩へ軽く相槌を打ちながら改めて召喚陣へとアクセスを行い、強くなる輝きに意識を向けていく。

 

 それにしても箱か……どういった理由でそんな物が召喚されるんだろうか。侵入者が来なくなるように頑張った魔物達へのご褒美? あるいは構造体の部屋から失われた備品の補充的な意味だろうか。それならば姐御の部屋にあったベッドみたいに、妙に豪華な家具がある事も頷ける。

 

「良いものが出てきたら二人で山分けね?」

 

 そう話す先輩の関心も召喚される物に向いているようだ。近寄って来る事もなく、わくわくした様子で召喚陣を見守っている。

 

 山分けかぁ。先輩が欲しがるような物となると……うーむ。確か侵入者を排除した時に先輩が拾っていたのは宝石や装飾品の類だった。普段着ている紐……もとい服(仮)には装飾品を付けている様子はない……というか付けるほどの面積も無いけれど。それでも、そういった綺麗な品を集めたくなるのが女性のサガという物なのかも知れない。

 

 過去の戦闘後に先輩がしていた事を思い出しながら脈動する輝きを見つめる事しばし。一際輝きが強くなり、アクセス先から術式が発動したのが伝わると同時に召喚陣の中心へナニカが現れる!

 

「――――」

 

 

「えーと……」

 

「あはは、残念」

 

 どんなお宝が出るかと少し期待していたのに……捕らぬタヌキのなんとやらかっ。俺と先輩の前に現れたのは水のような透明な塊。いつか見た魔法生物っぽい気配を持っているスライムだった。普通の獣人や淫魔のような魔物が呼び出される可能性も有った訳だし、一応珍しいと言えば珍しい……のかな?

 

 じっとりと失望の眼差しを向ける我々を気にする事無く、うぞうぞと表面を波立たせて移動を開始するスライム。何ともマイペースというか、無機質な反応である。量はドラム缶二、三本分位だろうか。以前遭遇した個体はもっと大きかったので、あれは割と長生きしている奴だったのかも知れない。

 

 ぼーっと様子を窺いながら「ぷるぷる、ボク悪いスライムじゃないよ?」等と脳内でセリフを当てて遊んでいれば、彼(?)は床に残っていた俺の血の痕へと辿り着き、その汚れを溶かし始めた。どうやって汚れを感知しているのか謎だけど、おそらくこの調子で構造体の内部を"掃除"するのがスライムの役割だと思われる。

 

 

 スライムの様子を観察しながらあれこれ考えていると、隣で動く気配が感じられた。

 

 やばっ、先輩と二人っきりだったの忘れてた! このままでは先輩に喰われて(性的な意味で)しまう。折角今まで逃げ延びてきたんだ、こんな所で終わってたまるか! 咄嗟に身構えて逃げようと――おや?

 

 とことこ歩いて、こちらではなくスライムへ近寄っていった先輩は、そのまま足を止める事無くって……ええ!?

 

「うぅん……この感触、やっぱり出来たては違うわぁ」

 

 なんて事を口にしながら、ずぶずぶとスライムへ沈み込んでいく先輩。スライムに絡みつかれる美女……見かけだけは生唾ゴクリな興奮ものの光景が完成だ。

 

「あー、その……先輩? 一体何を?」

 

「ナニって、おふろよー」

 

 ぬらぬらと光る妖しい色気全開な先輩の肉体を視覚で堪能しつつ問い掛けてみれば、きょとんとした先輩からそんな答えが返ってくる。オフロ? ああ、お風呂ですか……なるほど風呂。スライム風呂ね…………っ!? 思わず目をカッと見開く。まさか全自動掃除機と思っていたスライムにそんな使い方があったとは……流石は先輩、発想が素敵にえろえろだ。いやこの場合は、そう連想してしまう俺がエロいんだろうか。

 

 しかし、うーむ、おそらく警備員という事で生きている魔物は溶けたりしないと思うけど、装備品は大丈夫なのかな。そう思いつつふと足元に目をやれば、そこには脱ぎ捨てられた紐というか服というか下着というか……やっぱり紐が。あぁ……なるほど、ちゃんと服(仮)は脱いであるんですね。後ろ姿だったし普段と隠れている面積がほぼ変わらないから気付かなかった。つまり先輩は今、全裸な訳だ…………ごくり………

 

「あら……うふふ。一緒に入る?」

 

 先輩の"食事"中の姿を思い出し、ちょっとドキドキしているとそんな声がかかった。げっ、さっきまでは召喚物の事に関心が行っていたみたいだけど、今は視線がエロい感じになっている。体中に絡みついたスライムと相まって、もう最高で……なんて言う前に逃げよう! 危険が危ない感じがプンプンするぜ、性的な意味で。

 

「ちょっと考えたい事があるので俺は移動しますね。 それじゃ、ごゆっくり~」

 

 くるりときびすを返して「えー、せっかくイイ感じなのに行っちゃうのー?」なんて声を背中に受けつつ、その場から逃げ出した。

 

 

 

         ……◇……◆……◇……

 

 

 

 自分の部屋へ向かう通路を一人で歩きながら、先ほど調べた召喚陣の術式をチェックしていく。

 

……動いていたのはこの部分で、力はここから流れてこうなって……で最後にココがこうで、ででーんとスライムが現れた、と。なるほど……召喚時の挙動に関しては姐御から流れてきた魔法の中にあった眷属召喚と似たような感じか。それ以外の部分が構造体の力の循環やら蓄積、警備員の設定等である可能性が高いのかな。うむむ……

 

 

「……るる……」

 

 動作の確認がとれた術式を頭の中で整理していると、視界の端に二人連れの人影が映った。あの背中は狼人君だろうか。隣に居るのは先輩……じゃないか、さっき別れたばかりだし。しっぽと羽の生えた後姿をよくよく見てみれば髪が短いし色も先輩とは異なっている。羽も少し小さいかな。どうやら俺の知らない淫魔♀の人らしい。

 

「……じゃない……には…………ないで……」

 

 微かに会話が聞こえる。ふむん、別のグループメンバーと何をしているのか気になるし、ちょっと追跡してみよう。

 

 

 

 む……数分のあいだ刑事物やスパイ映画のノリで足音を忍ばせてストーキングしていると、二人の姿がフッと見えなくなる。見失ったかな? と、動揺しそうになる耳に扉の閉まる音が聞こえた。

 

 どうやら先にある部屋の中に入ったらしい。壁に張り付いて慎重に近づき、扉に耳をつける。

 

「……ン…ふふっ、せっかちさんね…………」

 

 部屋の中からはそんな声が漏れていて、同時に狼人君の興奮した様子も窺うことが出来た。

 

 

……あー、なんというか……狼人君もヤる事やって愉しんでたのね。扉に張り付いた自分の姿が急にアホらしく感じられて、そそくさと扉の前から離れる。

 

 他の人の行為を出歯亀している暇があったら呪術師ちゃんの所にでもシケこんだ方が良いし……って、そうだ。この前行こうと思った時には狩人さんのパーティと遭遇したり、シたりしていて結局行かなかったから、また今度行こう。

 

 それにしても、アニキはマッチョさんの時にそういった場面を見ていたけれど、狼人君もしっかり発散する場所があったんだなぁ。バトルマニア一直線ではない一面を知る事ができて、何となく安心する。まぁ望めばずっと続けられる淫魔が相手じゃ相当絞り取られるに違いない。明日集合した時に濃縮回復薬でも差し入れてあげよう。

 

 

 

 

 

         ……◇……◆……◇……

 

 

 

 

 

 さて、そんなこんなで一夜明けた、お仕事中のこと。

 

「――そう言えば、もうそろそろ"再生"が起こるかもしれないから……一応、皆も気をつけなさい」

 

 溜まり場で狼人君が差し入れた濃縮薬を小皿に移して舐めている姿をぼけっと眺めて「あぁなるほど、人間用のビンは狼の口には合わないんだなぁ」なんて種族の差を実感している時に姐御がそんな事を言ってきた。

 

 

 "再生"……なんでも、構造体内部の壊れた扉や罠がリセット、復元される一定の期間をそう呼ぶらしい。探索者側の知識にも似たような"組替え"というものがあったので、おそらく同じ期間の事を指すのだろう。

 

 上の方じゃ構造体の機能が不安定になっているのか、割と多くの部分の壁が脆く壊れている部分もあったりしてそれがおかしな事になっている機能のままに無理に再構築されて、通路全体が変化してしまう程の影響があるという事である。この中階層では構造体の機能に大きな異常は無いので"組替え"とまではならず、普通に破損個所が直る"再生"が起こる感じなのかな。

 

「マ、この階層じゃそれほど危険はないけどね。始まったら入ってくる人間も居なくなるし」

 

 確かに上の方じゃルート全体が変わったりしてるんだから、その渦中を通ってここまで来るような人間は居ないだろうなー。壁の中にいる! なんて事になったら目も当てられない。

 

 そんな事を考えていると、姐御は気楽な様子でさっさと集まりを解散させてしまった。まだ"再生"が始まった訳でもないのにこんな調子で大丈夫なんだろうか。

 

 まぁいいか、今日こそは呪術師ちゃんの所に行ってイチャイチャしてこよう。

 

 

 

 

 

 一人中階層から出て、もう歩き慣れつつある浅い階層を進んでいる最中に、ふと考えが浮かぶ。

 

……あれ? もしかして、ようやく把握できたこの浅い階層の地理がまたリセットされるって事?! 地上への出口なんかの位置は変わらないだろうけど……ここしばらく歩き回っていた努力は無駄だった、のか。

 

 せっかく得られた浅い階層の知識がほぼ白紙になってしまう事がショックでフラフラと覚束ない足取りで石畳の通路を進み、ある扉の前を通った時の事だった。

 

「がッ!」

 

 ― 15のダメージを受けた ―

 

 突然の衝撃に視界がブレて、身体から力が抜けそうになる。クソっ、構造体へのアクセスでレーダーみたいな事ができるからと油断してた! 一体、なんだ……げ、もう一発!?

 

 ― 15のダメージを受けた ―

 

 よろめく身体を動かして何とか背後に振り向き、黒い影を視界に収めると同時に再び頭に衝撃を受けてしまい、意識が完全にシャットダウンした。

 

 

 

 

 

         ……◇……◆……◇……

 

 

 

 

 

 ─ 再生…10ポイント ─

 

 痛てて……鈍い頭の痛みに意識が浮上する。

 

 ダメージというか怪我そのものは回復しているみたいだから、これは痛みの感覚が残っているだけかなぁ。確かダメージが構造体からの供給による再生で回復するのは20ポイントごとなので、二度目の再生……そんなに時間は過ぎてないだろう。

 

――ちゅ……っ、ぴちゅ…………

 

 そんな事をぼんやりと考えつつ状況を確認してみれば、ここは……すっかり見慣れた、構造体の中によくある普通の小部屋、か? 壁にある装飾の窪みにペンライトのような明かりを灯す棒状の魔法具が差し込まれていて、部屋の中をうっすらと照らし出している。扉は一つのみ。鍵が掛けられて、ご丁寧にクサビが打たれて固定までされている密室状態だ。

 

 

――ちゅぷ…………ちゅ、ちゅるる……ちゅっ

 

 そして、さっきから聞こえるこの音は……何か下半身が暖かくてぬるぬるして気持ちいいし……視線を向けてみれば、薄暗がりの中で上下に揺れる淡い色の金髪が見えた。

 

「ン…………これで」

 

 観察している間にも事態は進行している。身を起こした人影がローブを剥がれた俺の腰の上に跨って、そのまま――

 

「あぁ……っ! ふ…………く、はぁ……はぁ」

 

 口でされた事で元気になり上を仰いでいた俺自身が、濡れた襞にずっぽりと包まれる。

 

 

 

 あぁ――これは盗賊さんだね。うん……身体を起こしてはっきり見えるようになった顔も、しっかりと盗賊さんだ。女のコの泉に入り込んだ感触で人物の見分けがつけられる淫魔の性質が地味に凄いと思う。

 

 と、言うか……盗賊さん!? ……謎は全て解けた、犯人はこの中に居る!

 

「い…んっ…………はぁ、あぁ……」

 

 まぁ特に物陰も無い密室の中に二人だけだし、推理という程でもないけれど。しかしなんでまた、鈍器と思われるもので殴りかかるような事になったんだろうか。

 

「ねぇ、ちょっといいかい?」

 

 こちらの胴体の横に膝を突いて、言葉を発する事も無く一心不乱に腰を動かしている盗賊さんに視線を向けて話かけてみる。

 

「ん……駄目」

 

 一瞬動きを止めた盗賊さんはそれだけを口にして行為に戻ってしまった。むむ、なにやら不機嫌? ラインを意識してみれば、快感と共にそんな感情が流れてくる。悦んでるのに不機嫌とはどういう事なんだろうか。

 

 ふてくされた顔で、でも肉体は前後に動かしながら、着たままだった上着を脱いでいる盗賊さん。わーお……こんな時だけど、固く固定されていたサラシからふくらみが解き放たれる瞬間が大迫力だ。ふやん、というか、ぶわん、というか……って、そうじゃなくて。

 

「ほら、話を聞いて」

 

「……ぅ…………やだ」

 

 「やだ」って盗賊さん、子供じゃないんだから……こちらの胸や腹に手を触れさせてきて、求めている割には頑なな態度である。しかし、これは……うーん、一回落ち着かせるしかないかな、どうもヤリたいのは確かみたいだし。盗賊さんの望むままに、このまま愉しもう。

 

 そう考えて両手を眼前で揺れるふくらみへ――触れようとした所で手を掴まれてしまう。掴んだ盗賊さんをじっと見つめてみると……視線を逸らされた。えー、どういう事なの、盗賊さんが満足するまで見ていろってコトデスカ?

 

「……ん、はぁ……はぁ…………ぃ、ふぁ……」

 

 掴んだ俺の両手を肩の外側で床に押し付けると、盗賊さんは腰をくねらせて行為に没頭していく。どうでもいいけど、これ普通男女逆の体勢だよね……ボク汚されちゃった……

 

 まぁ……たまにはこうしてシて貰うもの中々良いかな。盗賊さんに納まった俺自身は、ぬるぬるとした暖かさに包まれている。腰の動きによってずるんと擦られて、くっと掴むように締め付けてくる感触が心地良い。

 

「あぁ…………は、ぅ……んっ……はぁ…………ちゅ」

 

 口寂しくなったのか、肉体を屈めてこちらの胸板を啄ばんでくる盗賊さん。俺が抵抗しないのをいい事に鎖骨や首筋にまで吸い付いて舌を這わせてくる。

 

 されてる側ってのはこんな風なのか。気持良いというよりはくすぐったいという感じだ。むしろ……ふふ、意識しているのかいないのか、こちらに覆い被さって来ている形だから。重力に引かれた魂、じゃなくてふくらみがやわやわとソフトに触れているのがたまらないぜ! そのツンと固くなった頂が盗賊さんの動きで肌の上を転がっている感触が最高です!

 

 

 

「……はぁ、ふぅ…………ん、そろそろ…………」

 

 しばらくそうして俺を貪っていた盗賊さんは、ぽつりと呟くと肉体を起こして大きく腰を上下に揺らし始めた。小さな明かりで照らされた部屋の中、盗賊さんの白い……今現在は上気して薄桃色に染まった素肌が浮かび上がってよく見える。肉体の動きに伴って、ぶるんぶるんと暴れている見事なふくらみの姿が何とも興奮を誘う。

 

「ふっ……うぅ、あぁ……はぁ、はぁ……あぁ、あぁあ……」

 

 こちらの腹に手をついて肉体を支え、抜けてしまう寸前まで上に動いて、それから一気に根元まで。盗賊さんはじゅぶっ、じゅぶっと音をたてそうな程激しく、ただただ快楽の頂点を求めて肉体を動かしている。

 

「くぅ……あっ、ふ…………ぅ、あぁっ…………んん、あふ」

 

 機嫌が悪いせいか抑えられた声だけど、その肉体は汗を浮かばせて震え、確かに悦びを感じているようだった。おそらく終わりの時も近いだろう。

 

 

「……うぅっ、んん……んぅ、あっ…………ぅあ、ああぁッ!」

 

 程なくして、俺の上で艶めかしい腰使いを見せて踊っていた盗賊さんが、その茂みをこちらに押し付けるようにして動きを止める。熱く震え強く締め付けてくる結合部から液体が溢れて床を湿らせていた。

 

 さて、これで落ち着いてくれるかな?

 

 

 

         ……◇……◆……◇……

 

 

 

 絶頂を迎えた後、力を抜いてもたれ掛かって、俺の胸に頬をつけている盗賊さんが口を開いた。

 

「……呼んでくれるって、言った」

 

 え゛……呼ばれるの待ってると言ったのは盗賊さんで、確か俺からは特に言ってなかったよね? そんなに会いたかったの? そりゃもちろん、暇が出来たら呼んで愉しもうとは思ってたけれど。

 

「だからって、これはないんじゃない?」

 

 軽く批難する色をみせて話し掛けてみても、盗賊さんは首を振って頑なに口を利いてくれない。この体勢でそうやって頭を動かされると髪が触れてこそばゆいな。

 

 そんなやり取りの最中でも、盗賊さんの肉体は余韻を愉しむように軽く動いてるんだけども……ふふ、かわいいなぁ。

 

 

「女を運んでた……フラフラで、私と同じ」

 

 怒っている風なのにこちらから離れない様子に内心ニヤニヤしていれば、盗賊さんはなんだか危険な目つきでそう口にした。

 

っ!?

 

 あちゃー……そういう事か。運んでたって事は狩人さんの時かな……見られてたのか、気付かなかった。隠れたり追跡したりする知識の吸収元になった盗賊さんだから、より上の技能があるのも当然と言えば当然か。おそらく狩人さんを背負って運んでいる最中に目撃されたんだろう。

 

 いやー失敗したな。いま一瞬反応したのって盗賊さんの言った事を認めているのと同じじゃないか。もしかして、べったり密着していたのも反応を見逃さない為か? 「これは嘘を吐いている味だぜ」みたいな。

 

 とりあえず現場は見られてないみたいで助かった。仮に行為を直接見られていたら後ろから刺されていたかも知れない……俺じゃなくて、狩人さんが。

 

 

「あぁ、見てたんだ」

 

 さて、どうしたものか。何となく繋がったままの盗賊さんのお尻をむにむにと揉みながら考えてみる。

 

「ぁ……うぅ…………ん」

 

 怪我をしていた所を助けたとか適当な嘘を吐いても意味はないだろう。こういった話をする時点で、盗賊さんの中では俺と狩人さんがナニした事は"真実"になってしまっていると思う。まぁ、普通に事実ではあるのだけど……うーん。「男は理性で動き、女は感情で動く」って何の言葉だったかなぁ。

 

……あーとりあえず、アレだ! ヤって誤魔化そう!

 

「確かに彼女とは一緒に居たよ」

 

 盗賊さんのくびれに腕を回して支えながら、自分の肉体を起こした。そのまま今度はこちらが上になる体勢へ持ち込む。

 

「……あの、女」

 

 うヒ、盗賊さんの表情がさらに危ない感じになった。どうみてもこれは狩人さんの刺殺フラグ。

 

 しかし顔は鋭いままだけど、肉体の方はこちらに腕と足を絡みつかせて、繋がりを離すまいとしている。違う形とは言え一度恋人を失ってしまった経験から寂しさや不安を感じて、それが排他的な衝動に繋がってしまっているんだろうか。

 

 

 そんな事を考えながら腰の動きを再開させて、盗賊さんの内部を掘削していく。

 

「……ぅ…………んっ……んん」

 

 うん、やっぱり落ち着かせるにはコレが良いみたいだ。ぬるぬると暖かい襞の中を前後していると、次第に固かった表情がほぐれてきていた。

 

「こうして、今キミといる……それじゃあ不満かい?」

 

 動く度に、きゅっきゅっと俺自身を締め付ける力を感じながら、優しく耳元で囁いてみる。

 

「あっ……ぅ、でも……」

 

 ぷいと顔を逸らした盗賊さんは、快感に悦びつつも怒っているという何とも微妙な表情だ。

 

「……あいつ、ン……居なければ」

 

 自分をもっと見てくれる、盗賊さんはそう言いたげに言葉を切って口を閉ざした。やっぱそんな感じの事を考えていたか……これはクギをさして置かないと。

 

「キミが危険な事をして死んでしまうのを許さないように、あのコに危ない事をするのはダメだよ」

 

「だ、だって……」

 

 ううむ……くちゅくちゅと音を立てている肉体は素直なのに、結構ワガママな……というかこれは感情が先走ってしまってるのかなぁ。思えば中階層で出会った時も、感情のままに一人で侵入するなんていう危ない事をしていたっけ。仕方ない、少しだけ辛く当たって一度冷却してみよう。

 

 

「まだ解らないのか」

 

 意識して冷たい声を出しながら身体を屈めて、固く充血したふくらみの先端を血が出るギリギリの強さで噛む。それまで緩やかな快楽に浸っていた盗賊さんの肉体がこわばる。

 

「キミは俺のモノだ。勝手は許さない」

 

 膨張した俺自身を盗賊さんの内側、際奥の壁に苦しさを感じるであろう強さで押し付けながら、もう一方にもキツく歯を立てた。

 

「ぁ、ぐっ…………痛ぅ……」

 

 苦痛の声を漏らす盗賊さんの意識がはっきりこちらに向いたのを確認してから口を開く。

 

「同じようにあのコも俺のモノだ……傷つけるような事は、許さない」

 

 涙を滲ませた盗賊さんへ、強い視線を送りながら強調するようにそう言った。

 

 

 

「……」

 

「……ゃだ、捨てないで」

 

 しばらくの間動きを止めて見詰め合っていたら、唐突に盗賊さんが瞳から涙を溢れさせてそんな言葉を漏らした。

 

……ほあ?

 

 どういう経緯でそういう結論になったのか謎だけど。威圧感を出す為に身体を起こして見下ろしていた事で距離を感じて、俺が盗賊さんを捨てて離れてしまうとでも思ったのだろうか。神官ちゃん、盗賊さん、三つ編みちゃんに呪術師ちゃん。俺が悪魔だと知っている女のコ達から完全に目を離してしまうなんて事は絶対にないんだけども……まぁ、女心は色々難しいね。

 

「ごめん、ごめんなさい……」

 

 手の平で顔を覆って、涙声で謝り続ける盗賊さん。ふむ……とりあえずこんな所かな。あんまり追い詰めるのも良くないだろう。盗賊さんが情の深いコだってのは解っていた事だ。

 

「大丈夫さ」

 

 優しい声をかけながらゆっくりと腰の動きを再開させ、先ほど痛みを与えたふくらみの先端にぞろりと舌を這わせる。苦痛を散らすように、少しだけ回復薬も分泌しながら丁寧に……

 

「あ……っ…………うぅ……」

 

 恐る恐る、という感じで行為を受けている盗賊さん。その柔らかなふくらみをたっぷりと味わってから、鎖骨に口付けして、首筋を舐め上げていく。

 

「キミは俺の女だ……だから、わかるね?」

 

 何の理屈にもなっていないけど、ここまで来たら後は勢いだ。

 

 肉体の奥深くに突き上げをくり返しながら、顔を覆っていた手をどけてそのまま両手で盗賊さんの顔を挟み、至近距離でその瞳を覗き込みながら告げる。

 

「危害を加えない、これを守るのなら捨てるなんてしないよ。ずっと一緒に居てあげる」

 

「……うん、うンっ」

 

 その言葉を聞いて、盗賊さんは先ほどまでの怯えた泣き顔とはうって変わって嬉しそうな様子で微かに喘ぎながら頷いている。けど……ホントに解ってるんだろうか。再開された行為に悦んでいるだけって事もありそうな気がする。

 

 手をつけた女のコ同士が軽い嫉妬心を抱く位するのは良いけれど、血みどろの争いなんて見たくないしなぁ。魂に仕込む術式にこの手の確執を防止する機能を組み込んで、ラインを通じた暗示でもはっきりと禁止しておく必要があるかも。くくく、今のところ手放す予定のないコは神官ちゃんに盗賊さん、呪術師ちゃんあたりかな。いやぁ……皆と一通りまたスるなんて、ふふ、たいへんだなー。まぁそんな用事が無くてもスるけれど。

 

 という訳で、先ずは目の前……どころか繋がっている状態の盗賊さんだ。さっそく新しい術式を打ち込んであげよう。淫魔の性質で制御できるとは言っても、長い時間魅力的な女のコと繋がっていれば当然ながら衝動を強く感じる。

 

「ふふふ、素直なコは好きだよ」

 

 充分に高まっている欲望のままに、腰の動きをだんだんと早めながらそう告げる。一応返事はしてくれた訳だし、誉めてあげないとね。

 

 

 

         ……◇……◆……◇……

 

 

 

 横たわる盗賊さんの肉体に覆い被さって、男女の行為を深めていく。

 

 神官ちゃんや呪術師ちゃんとは異なる盗賊さんの熟れた女の肉体。命をかけて遺品を捜しに来るほどだったんだ、死んだ恋人とは長い付き合いで、その関係の中で何度も何度も行為を行っていたんだろう。男を受け入れる事に慣れているその肉体は、それでいて決して緩んでしまっている訳でもない。引き締まった肢体から受ける印象そのままに、突き込む俺自身をしっかりと包み、締め付けてきている。

 

「……あっ……んん…………はぁ、いい……」

 

 不慣れなコ達が見せてくれた本能の反射的な反応とは違って、意識的に行為に応えて動く盗賊さん。内側にある俺自身を擦り上げる淫靡なその腰使いは、何とも男を昂ぶらせてくれる。

 

「んっ…………ふぁ……あ、あぁ…………」

 

 盗賊さんは色白だからかな。声は静かなままだけど欲情して肌が染まっているのがはっきりと見てとれた。そうして赤く上気した顔に蕩けるような表情を浮かべているのが、なんともまた……イイ、良い感じだ。もっと俺を感じさせたくなる。

 

 

 お腹に手をやって、泉の端から突き出た突起に親指の腹を添える。前後する腰の動きを受けてその部分が擦れるようにすると、俺自身を熱くぬめる肉がより強く挟み込んできた。

 

「あッ……く、んぁっ……あぁ……っ! そ…こ……」

 

 盗賊さんはその細い顎を突き出し、足を大きく開いて、最も敏感な部分への刺激を受け入れている。この様子ならいつでも大丈夫だろう。そう考えて体勢を整え、二人の結合部に勢いよく音を立てて腰を打ちつけて、一気に行為の終わりへと追い込んでいく。

 

「んっ……あっ! アっ、あっ……あぁッ!」

 

 急激に変化したペースを受けて、盗賊さんは応えるように高い声を上げ始めた。

 

 

 

くくくっ……淫靡な熱が篭り、ドロドロになってしまっているその部分の感触に思わず笑みが浮かぶ。ヌメリを帯びて絡みつく襞と触れ合い、擦りあわされる度にこみ上がる性の悦び。淫魔として、食欲と性欲が同時に満たされるこの感覚は何度味わっても飽きる事は無い。

 

「ぅあ! あッ……あふっ、く……ンっ、あぁあっ!」

 

 さぁて……盗賊さんはどんな味になったかな。ヒクヒクと終わりの兆候を示す内部を愉しみながら、腰の動きを深く、奥へ、細かく押し込むような動きに変えて――そのまま、最後まで。

 

「んッ、あアっ! あぁッ! ふぁ、あアぁぁあっッ…………!!」

 

 本能の深い所から沸き起こる衝動に、肉欲に染まった声を上げていた盗賊さんの肉体がガクガクと揺れて強張る。こちらも準備は万端だ。高みへ辿り着いて震えるその肉体をしっかりと抱きかかえ、深く突き込んだ俺自身から一気に欲望を注ぎ込む!

 

 

 

         ……◇……◆……◇……

 

 

 

「アっ、は…………はっ、はふ……ぁ…はぁ……はぁ」

 

 どくん、どくんと、より深くへ送り込むように盗賊さんの胎内を押し上げながら、その魂に術式を染み込ませていく。

 

 

 欲望を吐き出し終えて、肉体を起こそうとすると下へと引っ張られる感覚があった。盗賊さんが腕を離さずにまだ掴まっているようだ。

 

「どうしたの?」

 

 あれだけナニしといて、どうしたのもないけれど……一応聞いてみれば。盗賊さんは火照った顔のまま口を開いて――

 

「…………もっと」

 

 なんて、上目遣いでおねだりしてきた。

 

 

 

……

 

…………はは、ははは

 

 ふふふ、ご要望とあらば仕方ない。例の"再生"の時期に会えなくなる事もあるから、ここはもう嫌っていうほど存分に可愛がってあげよう!

 

 

「……っ! んぁ……あっ! あぁ、あぁ……アぁっ!」

 

 繋がったままだった腰に腕を回して、身体全体を使い大きくグラインドさせる。盗賊さんは絶頂が納まったばかりだというのに、再び強く女としての反応を開始していた。

 

「ふぁ……ああっ! あぁ、すき、好きッ!」

 

 高ぶる感情を吐き出すようにそんな声を上げる盗賊さん。魂への暗示によって作られた感情とは言え、こんなにいじましい姿を見せられて男として興奮しない訳が無い。

 

「アっ、あぁっ……あぁあッ! す…いイっ、あッ、あう! ぅン、あぁああっ!」

 

 縋りつく肉体をきつく抱き締めかえして、ギアをトップスピードに入れた。これはもう行き着く所まで行かないと、止まりそうにない。

 

 

 

 

 

         ……◇……◆……◇……

 

 

 

 

 

「はぁっ……はぁ、はっ……はぁっ……」

 

 赤く染まった艶やかな肢体を力無く無造作に投げ出して、荒い呼吸を整えている盗賊さん。そのヒクついている内部から俺自身をズルリと引き抜くと、二人の体液が糸を引いて橋を作るのが見えた。

 

 くく、あれからたっぷり5回は術式を打ち込んであげたから、充分満足してくれたに違いない。おかしくなる程の強さではシなかったけど、最後の辺りなんて啜り泣きのような悲鳴を上げてたし。しかしあれだけヤっても意識が飛ばないなんて……盗賊さんは凄いな。これは大人の女としての余裕だろうか。

 

 

 行為の跡が残る淫らな姿を目で愉しみながら、注ぎ込んだ術式の確認を行っていく。三つ編みちゃんの事があって修正した吸精の為のライン、肉体の操作に、追加した健康の維持。今回一部強化した意識の誘導、などなど――うん、問題無い。

 

 それにしても、あー……今落ち着いた状態で考えると、普通にラインを通じた暗示を与えるだけでも何とかなった気がする。浮気を知られた人と似たような感じで、俺も動揺してしまっていたのかも知れない。まぁそういったプレイと考えれば悪くは無かったかな。

 

 

「落ち着いたかい?」

 

 問いかけにコクンと頷く盗賊さんの肉体をシャワー魔法で綺麗にしていく。

 

 白い素肌、引き締まった肢体、柔らかなふくらみ……女として綺麗に花開いている泉の中心。盗賊さんとは今回も突発的な遭遇になってしまって、行為そのものも全体的に急ぎ足であまり時間を取れなかった。次に会う時はどこかベッドの上で、この熟れた肉体を一晩中ねっぷり奥深く味わいたいものだ。

 

 

 

 

 

 ああ、そうだ。その手のルートを知ってそうな盗賊さんにアレを預けてしまおう。

 

「……それ、何?」

 

 そう思い狼人君の協力で大量に作った粉の包みを荷物から取り出していると、近くで座って服を着ていた盗賊さんが真剣な表情で質問してきた。毒物を扱う者として、こういう薬っぽい品には関心が高いのかな。

 

「これは……あー、夜のお薬だよ。キミにはもう必要ない物だけどね」

 

 そう前置きしてから一回の分量に分けた包みを一つ渡して、表向きの各種効能を話していく。媚薬効果に精力増進、美容健康、加えて避妊効果まである上に効果も二、三ヶ月は持続する夢の薬だ。

 

 と、まぁご大層に言ってみても……その正体はいつも精液に乗せている術式を、同じように悪魔の一部であった角の粉末に篭めただけの品だ。この薬は一回使ってしまえば肉体の奥に染み付いて、そう簡単には剥がれない。練り込んだ改良済みの術式による適度な誘導で、いつかのゴロツキのように命を落とす程の危険も無く。それでいて服用者は行為の時に強い快楽を得られる筈である。

 

「これを流通させて、なるべく多くの人に行き渡らせて欲しい。そうしたら……こちらからもキミに会いにいけるようになるんだ」

 

「……うん、わかった」

 

 盗賊さんはじっと包みを見つめたままこちらの要望を聞いて、しっかりと頷いてくれた。

 

「一回の分量はその包み位だから、売る時は気をつけてね」

 

 了解が得られたので、袋に詰めた残りの粉末も盗賊さんに渡してしまう。今までは探索者の荷物にあった依頼内容が書かれた紙やら何かの手入れ用の油紙みたいな物を使っていたけど、その辺の品は構造体の中じゃ安定供給が望めないから、ちょっと包装に困ってたんだよね。薬物を扱う事の多そうな盗賊さんならば、これに適した包み紙も用意できるに違いない。

 

 

 

         ……◇……◆……◇……

 

 

 

 まともに立てなくなってしまった盗賊さんをおんぶして、背中にふくらみの潰れた感触を味わいながら"正面玄関"へと向かう。前回ほど辛い体勢の体位では無かったけれど、今回のこれは回数をこなしたせいかな。

 

「……♪」

 

何か必要以上にきゅっとしがみ付かれて、足もぴったりくっ付いてきているけど……本当に歩けなくなっているんだろうか。疑問を抱きつつも落とさないように気をつけて、他の探索者やゴロツキ達と出会わないようなルートを選んで通路を進んでいく。

 

 

 それにしても、会おうと思い立ってから、なかなか呪術師ちゃんの所に行けないものである。一度目は狩人さんと遭遇して、二度目は盗賊さん。二度ある事は三度有るとは言うけれど、流石にもう無い……と思いたい。浅い階層への移動時間の事もあるし、いくらずっと続けられる淫魔の肉体でも、ヤるだけヤったらその場はすっきりしてしまうし。一応ヤる事だけが目的では無いので"再生"が始まる前までには会っておきたい。

 

「……だめ」

 

「ぃつッ?!」

 

 ― 1のダメージを受けた ―

 

 今後の予定をあれこれ考えていると、唐突に盗賊さんが胸元を抓ってきた。えっ、他の女の事を考えていたでしょって? ……なにそれこわい。

 

 ─ 再生…1ポイント ─

 

 特にラインから感情を流している訳でも無いのに察知してくるなんて……盗賊さん恐ろしいコ……!

 

 

 

「……ここまででいい」

 

 女の勘の鋭さに戦々恐々としつつも浅い階層を中ほどまで進んだ所で、ぽつりと盗賊さんが言葉を発する。ゆっくりと背負った肉体を床に下ろすと、別れの口付けをせがまれてしまった。

 

「んむ……ん…………んふ……んぁ……」

 

――ちゅる……ちゅっ、ちゅく……

 

 勿論俺が拒む事なんてない。引き締まった肉体を腕の中に抱き寄せ、深く唇を合わせて、舌を互いに絡ませて……ついでに唾液を飲ませたりしながら、近い内に始まる"再生"の期間に入ってこないようにラインを通して暗示を与える。

 

「ン……ぷは…………ぁ、はぁ」

 

「しばらくはお別れだ。次は町で会おう……薬の事は頼んだよ?」

 

 流石にここで行為を始める訳には行かない。盗賊さんの吐息が熱を帯び始めた所で口を離して、名残惜しそうにしている盗賊さんに別れを告げた。

 

「ん、まかせて……楽しみに、待ってる」

 

 暗示が効いているのか、盗賊さんは素直に頷くと、音を立てる事の無いしなやかな動きで立ち去っていく。

 

 自分でも近い動きはできる筈だけど、やっぱり本職は凄いなぁ。まったく音がしないから実体の無い幻を見ているかのようだ。

 

 そんな事を思いながら盗賊さんの姿が見えなくなるまで見送った。

 

 

 

 

 

「んーー」

 

 さて……と、盗賊さんをおぶっていたからか、ちょっと固くなった背中をぱきぱきと伸ばして気分を切り替える。やった事と言えば盗賊さんに襲われてアレな一時を過ごしただけだけど、何故か一仕事終えたような開放感があった。

 

 ん、よし! 明日は呪術師ちゃんの所へ行くぞ! 行くんだ! でもってイク!

 

 わけのわからない気合を入れて、ねぐらへ戻るために踵を返す。愉しい明日に備えて、全力でぐったりするぜ!

 

 

 

 

 

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