「ふふ、お疲れ様」
ふわふわとしていた意識に誰かの声が届いた。
お疲れ様? 一体、何が?
上へ引っ張られていた腕が急に自由になって、落ちていた外套の上にぺたんと座り込んでしまう。震える手足には力が入らなくて、立つ事ができない。"月の訪れ"の時に似た、奇妙な疼きが身体にある。
ええとわたし……、…………?
…………そうだ、逃げないと。
今という状況がよくわからない。でも……逃げなければいけない。おぼろげに浮かんだ考えに何とか動く四肢へと力を篭めて、手と膝を突いて進もうとする。
「そんな恰好で……クク、誘ってるのかい?」
また誰か、男性の声が聞こえる。
それと同時に片足に暖かい何かが触れて、それ以上進めなくなってしまった。くい……と、軽く足首を引かれてバランスを崩す。倒れこんだ身体を森の柔らかい落ち葉が優しく受け止めてくれた。
あれ? ……進めない。どうして……行かないと、ダメなのに、でないと、私は。
意味も解らず焦る気持ちだけがぐるぐると頭の中を廻り、途切れ途切れの思考が綺麗にまとまらない。混乱したまま、うつ伏せになった身体を肘をついて起こし、何かに引っぱられて真っ直ぐ伸びた足の先を振り向く。
肩越しに後ろを向いた視界へと、ローブを脱ぎ捨てて素裸となった男性の、男の……股間のモノが飛び込んできた。
「あ……」
意識がはっきりとして、直前までの出来事を思い出す。葉の擦れる音と共に森を吹き抜けていく風が、晒したままの素肌を撫でていった。
目の前で自分と同じように肉体を剥き出しにしている男。夢の記憶、その中で何度も男が女に突き立てていた、しかし現実に見るのは初めてである……筈の、雄のモノ。大きく反り返ったソレに目を奪われ、息をのむ。
……無理だ、あんな、入るなんて。
――あぁ…………あれが、私を。
上を仰いだソレに魅入られてしまったかのように視線を外す事はできなかった。逃げないといけないのに、軽く掴まれているだけなのに、どうしてなのか。
そうこうしている内に、すぅっと男の手が動きを開始して、肉体がピクリとなる。気味が悪いほどの優しさで、肌に触れるか触れないかの所をじわじわと這い進んでくる男の大きな手。そこから伝わる感触に皮膚が粟立つのを自覚する。
それでも、身体は動かせなかった。
――そうだ、動いてはいけない。こうしていれば、このまま……私を。
どこか肉体の奥の方から、ぞわりと背中に走る刺激に紛れて誰かが囁いている。その声は……求めていたモノがようやく得られる、そんな悦びの響きを含んでいた。
「ほぅら、捕まえた」
近くで聞こえた男の声と、素肌に感じられる自分のものではない温度。気がつけば、男は伸ばした足に覆い被さるほどの距離にまで迫っている。
「ひぁっ…………あ、や……」
どうにかして立ち上がろうと膝を曲げていた、男に掴まれていない側の足。その太ももの内側をゆっくり撫で上げられるぬらりとした感触に、されていたコトを思い出す。
最中と同じように下腹部の内側が きゅうと疼いた。鼓動が、また早くなっていく。先ほどは男の指だった、では……次は? 夢の中の、乱れてあられもない声を上げていた女性達と、この先の自らの姿が重なった。
はぁはぁと自分から聞こえる吐息がうるさい。
私が、ああなってしまう。逃げようとしていた時とはまた異なる緊張が生まれて、ごくりと唾液を飲み込んだ。そうした自分の状態に気付いてはっとする。これでは、まるで期待しているようではないか――男との、あの行為を、私が……わたし、が。
「……ッ…………ぅ……」
沸き起こった動揺が収まらない内に、足の付け根、先ほど弄ばれてべっとりと濡れてしまったままのそこへ、再び男の指が触れた。
「もう、準備はできているみたいだね」
その入り口を広げるように軽く掻き混ぜられて、ヒクリと反応しかける足に男が跨ってくる。うつ伏せの状態から片肘を突いて、上半身を半分ほど捻って後ろを振り向いていた私。伸ばしていた下側の足が体重をかける事で固定されて、男の腕にもう一方の曲げていた脚をより大きく開かされた。完全に逃げられない形で組み伏せられて、お尻の後ろ側にはっきり感じられるようになった異性の体温。
……肉体が、近い。
「ぁ……いや…やめて、ください」
ふと、そんな実のない懇願が空しく口から零れていた。しかし弱弱しい囁きは当然のように聞き入れられず、男は熱い温度を持ったモノを剥きだしのソコに宛がってきて。
――ついに、また。
"されて"しまう……恐れ、不安――そして期待。様々な感情がぐるぐると頭の中で渦を巻いて微熱を帯びた肉体を縛る。あんな大きさのモノが入り込むのだ……初めては痛みが伴う、どこかでそう聞いた覚えがあった。
「諦めたのかい? それとも…………まぁいいか、すぐに解る事さ」
"すぐに"……背後からのしかかる男のなんでもない言葉が、記憶のどこかを刺激してくる。
(――えて、すぐに良くなるから――)
確かに"あの時"、最初は痛かった……でも、男が言った通り、すぐに――
すぐに? どうなった? いつのこと?
「――う、ぃンっ…ぁ、はっ!」
男の体重がかかってくるのと同時に、ずにゅうと肉体の内側が強引に押し広げられる。日ごろ手を使って慰めていても触れることが無い深み。奥まで届くソレに下腹部を圧迫されて、かみ締めた歯の間から声が漏れた。
「くっ…………ぅ、は…………あ……?」
痛く、ない……?
身構えていた意識を緩めて、恐る恐る息を吐きながら思う。先ほどの自分の思考の中で感じた違和感、そして、今現在痛みを感じていない事に対する違和感。自分ではないような、酷く乱れる自分の姿が記憶のどこかにチラついている……では、自分は知っていた? 否、そんな筈は無い。私は純潔を司る月神殿の神官、知らない……知らない筈だ、こんな……コトは、っ!
力が入り、反り返った背筋を駆け上がる心地良い刺激とは別に……ズキン、ズキンと頭の奥が痛む。
「さぁ、愉しもうか」
しかし、悠長に疑問を抱いていられたのも、男が動き始めるまでの僅かな間だけ。
奥まで入り込んだ状態で一度動きを止めて、こちらの様子を窺うようにしていた男。腰がゆっくりと引かれ、圧迫感が薄れた所で再び奥へと進んでくる。クンと奥に突き当たれば、また引かれて……そしてまた深くなって。強く、弱く、何度も繰り返される動作で、胎の奥から耐えがたい何かがこみ上がってくる。
「うっ……あっ、ぁ…………ふ……ぅンっ」
手に触れた知らない間に剥ぎ取られて落ちていた上着をぎゅっと握り締めて、口に含む。はしたなくも、何かを噛んでいないと漏れてしまう声を抑えられそうになかった。
「んっ! ……く、ぅぅう! うぁ…………ぃ、ン!」
突き入れられたモノが内部で動く度に、異物感から足の間に力が入って、より強くその存在を認識させられる。ソレの凹凸が敏感な部分へ密着したまま摺り合わされ、また染み出し始めてしまった液体がちゅくちゅくと淫らな音を立てていた。背中と首の後ろに力が入り、意思とは無関係にお尻を突き出したような体勢になってしまう。
「あっ、い…………ん、んんっ……はぁ、はぁ、あぁ……あぅうっ」
動かれる度に、痺れるような感覚が頭の中を走り抜けていく。
――そう、これが、私の。
「ほら、"良くなった"でしょ?」
腰の動きを緩めた男がそう言いながら胸に手を回してくる。その先は既にもう、先ほど指で弄ばれた時のように、いやそれ以上にツンと充血して固くなっていた。
「やぁっ……は、あぁ…………こんな……」
転がすよう摘まれたそこから、じぃんと甘美な刺激が肉体全体へと滲み出す。知らず知らずの内に腹に力が入って、強くなった男のモノとの接触で、また刺激が……
肉体が、熱い。
「ふぁ、あ……あぁ……ンっ…………んあッ……あぁ、だめ……」
波紋のように広がる快感に、ゆさゆさと揺れながら思う。
男に……抱かれてしまった。逃げられなかった私は今、獣のように組み伏せられて。清らかであるべきこの肉体で、こんなに深く、奥まで男のモノを受け入れてしまって。
「あ……う、ン…………んっ……くぅ……はぁ、はぁ、わ、わたし……」
ああ……繋がって、いる……これが、男との交わり……
背中に口付けされて、後ろから抱きしめられた時。密着した男の肌と汗の臭いが、今更ながらにその事を強く感じさせた。
「それじゃ……うん、そろそろ、本格的にイこうか」
そう口にした男が片手で私の腕を引きつけるように掴んだ。もう一方の手が腰へと回されて……少しずつその背徳の動きを強くしてくる。ずぐっ、ずにゅっと、続けざまに勢いよく肉体の内側を貫かれた。
蕩けるような感覚に理性が焦げ付いていく。
「や…待っ――あ! んっ……うぅ、ああ…………アっ!」
首を小さく左右に動かして静止の声を発しようと開いた口からは、気付けば上ずった声が漏れていた。逃げようとしていた時には、まったく力を入れられなかった自分の肉体。その肉体が、ヒクンヒクンと強く……男からの行為に応えている。
……まるでこうなると知って、求めていたみたい。
ふと浮かんだ考えにぞくりとする。
「ふぁっ…………う、あっ……あぁっ! ……うぁ……駄目、んんっ! だめっ、あっ、あぁ……」
違うっ、わたし、こんな事。ちがう、こんな……知らない、しらないっ、しらないっ! 休みなく突かれながら、乱れた呼吸に定まらない思考が、それだけを必死に繰り返した。
それでも現実は変わらない。
力強い男の動きに合わせて、くぃくぃと奥へ迎えるように自分の腰が動いている。そしてそこから這い上がってくる快感で、そうするのが当たり前であるように肉体がきゅうきゅうと反応してしまう。ちゅっちゅっちゅっちゅっと、男と繋がった場所から聞こえるいやらしい水音は途切れない。
「いぅ、あっ! んっ……は、ンっ、あっ…あっ、あっ、あぁ……あぅッ!」
何度も何度も、次第に深くなり、強く、甘く、熱く、連鎖して広がるその感覚は、堪えきれるものではなかった。頭を振ってそれから逃れようとしながらも、それを感じていた……快感を、感じてしまっていた。
知らない筈の、知っている感覚――だから、わたしは"あの時"。
「あッ、んっ…あん! イぁっ! あっ……あ、あぁっ! あっ、アっ! あっ! ぁンんっ!」
お尻へとぱんぱんと力強く男の腰を打ち付けられて、乳房を男の手の平で巧みに揉みしだかれて。しとどに濡れている肉体の内側、奥深くを熱く滾った男のモノで繰り返し蹂躙されて……その全部を受け入れてしまって。荒い呼吸を繰り返す口からは、意味の無い声が……女としての、悦びの声がひっきりなしに漏れ出していた。
強くて、気持ち良くて。熱くて、きもち良くて。突かれて、気持ちよくて。ぜんぶが、きもちよくて。背中がぞくぞくとして……こんなの、拒むなんて、できなくて。
淫らな熱に支配されたわたしを揺さぶる、永遠に続くかのようにも感じられる男と女の行為。しかし、わたしには何故かその終わりがあると"解って"いた……あぁ、そうだ……既にもう、知っていたのだ。知らない筈だったそれが解る事を不思議にも思わないまま、全身がまた甘い痺れに満たされて、昇りつめていく。
「あんっ、あッ! アっ、あっ…あぁっ! ゃうっ! んぁっ、ふァあぁっ!」
欲しい、欲しい、ほしい、ホシイっ!
欲望に身を任せて、肉体を動かした。ピンっピンっと跳ねるようにしていた手足の内側にぎゅぅっと力が篭り、ブルリと上半身を揺らしながら大きく仰け反って、肉体に咥えこんだ男のモノを離さないよう強く締め付ける。
「あぁッ! ヤっ、あっ! あぁっ! アあっ!?」
男の無骨な腕に抱えられた腰がぐいと引き寄せられて、これ以上ない位に深く、奥に。
肉体のナカで。
灼熱が弾け、て……っっッ!
「……ア、あぁアあぁっーーーーー!!」
快楽の奔流に意識を灼かれながら――心の深い部分に、ビシリと亀裂が入るのを感じていた。
「あッ! あ、あっ…あぁっ……」
びゅく、びゅく……と胎の奥に押し付けられたモノからナニカを注がれる度に、満たされる悦びで震える。
それは、初めてではない、もうどこかで味わった事のある感覚だった。
……◇……◆……◇……
「はぁ、はぁ、ふぁ……は…ンっ……ぁぅ……はぁ…はぁ、あぁ…………」
心地良い疲労感。じぃん、じぃん、疼く肉体の芯といつかの記憶。ナカにある、自分以外の温度。それらを認識して、でも何も考えられないまま、ただ余韻に浸る。
乱れた呼吸を整えていると下腹部からズルリと圧迫していたモノが消えて、腕を引かれて仰向けにされた。上を仰いだ視界、こちらを見下ろす誰か。木々の葉の間から夕暮れ時の赤い空が僅かに見える。
巣に帰るのだろうか、鳥が鳴きながら飛んでいく。
――月は見えなかった。
「いい表情だね。 そんなに気持ち良かった?」
いつかの夢で感じたような安らぎに包まれて、ぼぅっと鳥を目で追っていれば、からかう様な男の声が聞こえた。今日よりも もっと以前に聞いた覚えのある声。
今ならば、どこで聞いたのか思い出せそうな気がする。そうだ……あれは、"あの時"に……
…………■……◇……◆……◇……■…………
未だ二十歳を過ぎていない年頃の娘を、抱いた……彼女はその瑞々しい肉体を弄ばれ、穢された。それがこの久しぶりとなる再会の結末――でも、終わったのは再会のシーンだけ、まだ夜は始まってもいない。
「……ふぅ」
暖かなお腹の中へたっぷりと新しい術式を打ち込んでから、繋がりを解いた。微かに震える薄桃色に色づいた肉体を投げ出して、ぐったりとうつ伏せになっている神官ちゃんを改めて見下ろす。
乱れた髪が流れる汗で張り付いた肩。荒く息を吐いている火照った横顔。与えられた悦びに翻弄されて涙を滲ませた瞳。夕暮れ時の光に赤く染まる森の中に白く浮かび上がった、曲線を描く背中から腰の陰影……ひと目で事後だと判るその姿。
「う…………ぁ……」
腕を引いてこちらを向かせれば、快楽に蕩けた女の肉体が剥きだしとなってそこにある。
まだほんの少しだけ芯が残る、仰向けとなっても一定の形を保ったふくらみ。激しく動いた事で分泌された汗はきめ細かな肌にむしゃぶりつきたくなるような艶を与え、年不相応にも思える女の気配が絶頂を迎えたばかりの裸身からむわんと匂い立つ。やっぱり神官ちゃんは良いな……これからもこんな素敵なコを抱けるなんて……ははっ、最高の気分だ。
「いい表情だね。 そんなに気持ち良かった?」
無論、そんな事を思っている俺がこれだけで終わる訳が無い。
「あなた、は」
呼びかけてからしばらくの事。反応が無かったので彼女の肉体に付いた土や落ち葉を魔法で流しつつふにふにと凹凸を愉しんでいると、声がかかった。顔へ目を向ければ、快感で満たされていっぱいいっぱいだった心にいくらか思考が戻ってきたのか、先ほどまで虚ろにぼんやりしていた神官ちゃんの瞳がこちらへと焦点を合わせてきている。
「ぅ、ん…………あの時に、助けた」
んん? 助けたというと最初の騙まし討ちの前か、まだ当時の事を完全に思い出せたという訳では無いのかな。一度合った視線をまた宙に彷徨わせて、設定ミスしていた暗示を修正された事で戻りつつあるだろう記憶を辿る神官ちゃん。
「そうそう、迷宮で助けて貰ってね。 ふふ、その後もたっぷり……どうなったか、思い出した?」
「悪魔に追われるあなたを助けて……それから、私達は…………わたし、は……?」
全く……素っ裸で男の下に居るのに、考え事をすると他に気が回らなくなるのは変わらないなぁ、ひひひ。
「っ、何ムぐ…んぅっ、んんんー!」
あんまり無防備なものだから思わずがばりと覆いかぶさって、ふっくり濡れた唇を奪ってみたり。
一応回復薬も飲ませておきたいし、逃げられないように両手で頬を押さえてっと……む、今度は歯を閉じちゃってるか。イッパツ愉しんだ割に神官ちゃんはまだ抵抗する意思が残っているらしい。とはいえ、悦びに蕩けた肉体では大した力も入らないようで、叩いてくる強さも「ぽかぽか」程度の可愛いものだけど。
「んぅむ、んんんっ」
しかし、ぷるんとした唇の内側に入り込んでうねうね動かしてはみたものの。流石に悪魔の二股な長い舌とはいえ、その力だけではしっかりと閉じた歯をこじ開ける事は出来なかった。両手は神官ちゃんの頬を挟むようにして顔を背けられないように抑えているから使えない。
……よし、ここは尻尾に頑張ってもらおう。
見えない位置で尻尾を実体化させて、神官ちゃんの濡れ濡れな内ももを下から蛇のように這い上がらせてみる。
「ッ!?」
思ったとおりだ。不意打ち気味に意識の向いていない所へ刺激を受けて驚き、神官ちゃんの口が開く。
「ぐ、ンんっ! んんぅッ」
一度開いてしまえば、後はもう簡単だ。即座に唇を深く合わせ、口腔内へと舌を入り込ませて、逃げようとする神官ちゃんの舌を絡めとる。触れそうなほど近くにある潤んだ瞳と一瞬だけ視線が交差し、すぐにぎゅっと閉じた目蓋で遮られた。
呼吸するたびに互いの吐息を吸い込んで、小さな……でも酷くいやらしい音を立てて唾液が混ざり合う。口の中を好き放題されている神官ちゃんの動揺は大きいようだ。気がつけば、必死に顔を押しのけようとしていた神官ちゃん手が、ただこちらの腕を掴むだけとなっていた。
「ん、ふ……うぅ! んん、ぐぅ……」
いつかのように神官ちゃんの喉が動いて、舌先から創りだした回復薬をこくんこくんと受け入れていく。
「ぷはっ、はぁ…はぁ……はぁ……はぁ」
息苦しかったのか、神官ちゃんは唇を離すと水から浮かび上がった時のように大きく息を吐いた。僅かに涙を滲ませた瞳がこちらへと非難するように向けられている。
「さて、これでいいかな」
まぁそんな顔をされてもやっぱり興奮するだけな訳で……
「な、なにが、いいと……ぁ」
少しだけ拒むかのように動いた両手を今度はこちらが掴み、肩の外側で地面に押し付けて。そのまま開かれた肉体と肉体を密着させるようにじわじわと距離を縮める。
「こんな風に、前にもしてあげたじゃないか」
言ってから、神官ちゃんの首筋に浮かんだ汗を舐め取った。閉じようとした膝の間に、膝を差し入れて肉体を割り込ませる。
「ひっ、や、嫌です……離して、ください」
両手を押さえられているので、胴体を捩るだけの軽く弱々しい抵抗しかできない神官ちゃん。その動きと共に形の良いふくらみも右へ左へと男を誘うように揺れ動く。
ああ、なんというか、実においしそうだ。
「いや……こんな………………んっ」
そんな風にしていたらどうなるのか、しっかり教えてあげないと……ね。
顔を寄せて、柔らかな丘の上にトッピングされた小さな桜色の実に唇を付けた。軽く吸いながら丸く円を描くように舌先で転がす。
「嫌? 本当は、もっとシて欲しいんじゃないかな?」
一旦口を離してそう声をかけてから、今度は並んだもう一方へ。舌をべろんと出し、小さくツンと立った先端を焦らすように下から上へゆっくりと舐めあげる。
「ぅ、そんな……そのような事、ありません。 あれは、夢だからで……」
与えられる刺激に背中を震わせながら、否定してくる神官ちゃん。
「……へぇ、夢」
一度言葉を切り、またもう片方へ戻って、可愛らしい突起にチュッと反動があるようにキス。組み敷いた肢体がヒクンと動いた。
「キミは、男にこういう事をされる夢を見るのかい? ……淫らな娘だね」
「違いますっ……わた、私は月神殿の、巫女なの……ッ……です。 だから――」
からかう様に声をかけると、神官ちゃんは何故か必死になって自分が巫女であると主張してきた。
「――嘘は、いけないな」
その事が気に入らなくて、少し強く彼女の言葉を否定する。
「っ……嘘なんて、そんな、私は確かに」
「月神殿の巫女は、処女でなければならない」
耳元で囁けば、一瞬の硬直。目を見開いて動揺を露にする神官ちゃん。くいと腰を突き出して、いきりたった俺自身を神官ちゃんの泉に押し当てた。
「ッ!?」
「仮に以前の記憶が夢だったとしても、さっきシた事は覚えているだろう?」
脚の間に触れるモノを感じたのか、神官ちゃんの肉体がまた強張る。
「ぁ…………え、ぅ…………」
ぱくぱくと口を開き何かを言おうとして、でも言葉に出来ないでいる神官ちゃん。少し腰を前に動かすと、ヌルりと濡れたソコが俺自身の先端へ吸い付くかのように感じられる。
「どちらにせよ、キミの初めては僕のものだ。 意味はもう、わかるね?」
「そんな……や、やめて…………私は、巫女で……神官で…………あ、うぅ」
心の内を現すように神官ちゃんの瞳が彷徨い、チラリとこちらの股間を見て……それから、そっと閉じられた。もう激しく抵抗しようとするそぶりはない。その事実に薄く笑みが浮かぶ。
だから――そのまま、深くまで。
「ゃ、ぁっ……ぅんンっッ!!」
ズるんッ、と一息に奥まで俺自身を埋めた。手首を掴んで地面に押さえつけている神官ちゃんの手が、ぎゅっと握られているのが見える。クンと背中が反りかえり、まるで入り込んだモノの分押し出されたみたいに、形の良いふくらみが突き出された。
「ほら、すっかりヌルヌルになってる」
「んぅ…は…………ぁ、はぁ……駄、だめ、です……ぬ、抜い」
さっきのような、イッた直後で快感に飲まれて朦朧となっていた状態とは異なる。直前まで会話をしていた場面からの挿入を、神官ちゃんはどう感じているのかな、くふふふ。
「どうして? こんなに気持ちイイじゃないか」
ゆっくりと前後に動きだしながら、そう問いかける。
「あっ、んん……気持ち、イっ…………きもち良く、なんて、ありまッ……ありません」
奥の扉へ突き当たる刺激に、ふるん、ふるん、とふくらみを敏感に揺らしながら、しかし神官ちゃんは言いかけた言葉とは異なる内容を途切れ途切れに応えた。まぁ彼女が浮かべているこの のぼせたような表情を見れば、答えは解りきったようなものだけども。はは、可愛いなぁ……ホント、良い反応だよ、神官ちゃん。
ふいと顔を背けて口先だけの否定を繰り返している神官ちゃんをよそにふくらみへと吸い付く。
「ふぁ、あ……んっ、ん…………ン、くっ」
桜色の突起を軽く可愛がってから一言告げる。
「胸、前よりも大きくなったね」
「はぁ、はぁ……な、何を言って……ぁ、んぅっ」
戸惑ったような言葉の途中でまたしゃぶりついた。神官ちゃんの中が収縮しきつくなる……が、構わず速度を早めて突き上げる。
「……ひあっ、んッ、あ……あっ」
肉体を捩る神官ちゃんの胴体にがっしりと腕を回してふくらみの先を執拗に嬲った。
「ぅ、くぅ、あぁあ、ア! ……ッ、~~~っ!」
声にならない悲鳴を上げ仰け反る神官ちゃんの首が伝わる刺激に耐えかねたのか右へ左へと振られ、こちらの腰の両側を通る脚にぎゅうと力が篭る。真正面から抱きしめた腕に感じる素肌が震えて、急激に汗が染み出し始めた。漂う女の匂いが濃いものになっていく。
これだけの事で軽くイってしまったらしい。口でどうこう言っていても、神官ちゃんの肉体はいつも正直だ。
「もっとイきたいかい? それとも、イかせられたい?」
腕の中の色づいた肉体から、小刻みなリズムで快楽を引き出しつつそう聞いた。
「やっ、う……あ、いや……知りませ…ンっ、ん……そんな、こと……」
特に意味の無い問いかけだけれど、えっちな行為のまっ最中である事を自覚させて神官ちゃんの羞恥を煽る。言葉と肉体、複数の方向から神官ちゃんの理性を揺さぶっていく。
「クク……そう? この様子じゃ、そうなのかなって思うけど、ホラ」
腰に回した腕で肉体を引き寄せて、ぬっぽりと収まった俺自身をぐにゅうと際奥へと押し付ければ。ひくく、と神官ちゃんの健康的な太ももが引きつり、こちらの胴を挟み込んでくる。
脚をピンとさせながらも眉根を寄せて堪えようとする神官ちゃん。でもその抵抗はほんの僅かな時間しかもたなかった。
「ぁアっ! んッ…………ふぁっ、あ……はっ、あぁっ」
続けざまに何度か同じように腰を送られると、神官ちゃんは懸命に閉じようとしていた可愛い唇からすぐに切なげな……性の高みへと駆け上がっている事を示す色っぽい吐息を漏らし始めた。
「んんっ、ち、違い……ます、んぅ……こ、これはぁ」
ゆさゆさと肉体が揺さぶられる物理的な動き以上に言葉尻が甘く上ずってしまい、上手く話せていない神官ちゃん。今日既に一度、その胎内へ淫魔の精を放たれている若い女の肉体は、すっかり"そういう"状態になっているようだ。
「かわいい声だ。 もっと聞かせて欲しいな」
このまま無言で行為を続けても神官ちゃんはトロトロになってくれるだろう。でも今回はあえて言葉を投げかけ、会話を行うことで彼女の意識を快楽にトばしてしまわないようにして反応を愉しんでいこう。
「話す、ことなんて、ッ……あり、ありませんっ」
ちょっと的外れな言葉を返す神官ちゃんに笑みを浮かべつつ動きを速める。
「あっ……だっ、駄目……くぅ、う……ん、ンっ…………ぃやぁ、腰が……」
くちゅくちゅと深まっていく行為に、神官ちゃんの肉体が彼女の意思を外れて自分から求め始めた。
「解るだろう? キミは、巫女や神官である前に女なのさ」
「そんな、あっ…ん、そんな事っ、ひぁ……ぅ、あぁっ、あっ」
からかい混じりで掛けた声に反論しようとしても、喘いでしまって言葉を続けられなくなってきている神官ちゃん。ぎこちなく腰を揺する彼女の鎖骨へ軽く舌を這わせてから、続ける。
「ほーら、こんなにいやらしい顔をしてる」
「あん、ンっ……あ、ぃやぁ……見な、みないで……くださぃ」
耳元で囁くと、神官ちゃんは握った手を額に当てるようにして顔を隠してしまった。
そんなに恥ずかしい事なのかな。そもそも仰向けになって肉体を開いている神官ちゃんが両手で顔を隠しても もっと恥ずかしいぬるぬるな所やらぷるんぷるん揺れる先っちょのツンツンになった部分が丸見えだったりする。まぁ恥ずかしがる姿も可愛いし、こうして愉しむのには何の問題もないね!
でも、彼女の肉体も積極的な反応を見せつつある事だし、という事で。
「だめだよ、さぁこっちへおいで」
背中へ回した腕でぐいと引き起こして、形の良いお尻を胡坐をかいた膝の上へ乗せてみた。
「ひゃ…………あ、あッ!」
小さく悲鳴のような嬌声が上がる。神官ちゃんの肉体を起こした事で繋がっているソコに体重がかかり、強く締め付けられた。
「ぅあ……はぁ、はぁ……おく…………当って……」
咄嗟にこちらの肩へぎゅっと縋りついた神官ちゃんがぽぅっとした声色で呟く。
「ぁ……ん、ふ…………あぁ……はぁ、はぁ……」
互いの肩の上に顔を乗せた体勢。熱を帯びた神官ちゃんの吐息が耳をくすぐる。胸や腹、露出した肌にぴったりと触れる女の柔らかさがたまらない。
「あぁ……こんな…っ! く、んぅっ」
互いの顔が見えなくなった事で少し心に余裕が出来たのか、神官ちゃんが何かを言いかける。そして、その時を狙ってずぐんと腰の動きを再開した。
「や、あっ……あ、うぅ……ンっ……んっ!」
力強く、ゆっくりと下から突き上げる。肩に掴まる神官ちゃんの腕に力が入り、胴体の左右を通っている足が腰へと絡みついてきた。
「……ふぁ、あぁ……ふ、深っ……あっ、はっ」
心と体の深くに刻み込まれていた"経験"が自然と彼女を導いていく。
…………■……◇……◆……◇……■…………
爛熟した性の匂いと熱を帯びた女の嬌声がその場を満たしてから、しばらくの事。
そっと、深く茂る森の木々の間を抜けて、一筋の月の光が自らに仕える神官を照らし出し始めた。
ゆらゆらと妖しく宙を蹴るピンと反った爪先。
しきりに男の胴を挟み込むしぐさを見せるスラリと伸びた脚。
男を深く受け入れて離さず、ぬめる欲望の蜜を滴らせ、猥雑な水音を奏でる色づいた花芯。
細いしなやかな腰のくびれと、そこに力強い男の腕が回されていなければ倒れてしまう程に後ろへ仰け反った背中。
時の移ろいと共に、狭い小さな光は足元から順に若い彼女の剥きだしの姿を夜の中へと白く浮かび上がらせる。
肉体を突き上げる獣の律動に雫を散らす形の良い乳房には赤黒い口付けの痕が点々と残され。その頂で揺れる桜色の小さな乳首は、男の唾液に てらてらと鈍く光り、更なる刺激を求めてツンと固く立つ。浮かび上がった鎖骨へ流れ溜まった汗が、乱れた呼吸と共に零れ火照った肌を艶かしく彩った。それから、こみあがる悦びに喘ぎ、空を仰ぐようにして言葉にならない甘い声を高く放つ無防備に晒された白い喉へ。
そして……彼女が清らかな乙女であった頃ならば、身を包む加護を感じ祈りを捧げていただろう神聖な輝きは――
「クク、ふふ……ははははっ!」
月の白い光を塗りつぶすように、辺りが紫の色に染まる。
……あるいは、その光で桃色に上気した面を照らしだされて、美しい月をその快楽に濡れた瞳に映したのならば。ともすれば冒涜的なこの場においてさえ、今からであっても過去の信仰を取り戻す事が出来ていたのかも知れない。
しかしそれはあくまでも起こりえなかった仮定の未来。この現実では、清浄な光が神官の顔を照らそうとしたその直前――男の嗤う声と共に、娘の姿は漆黒の翼で覆い隠されていたのだった。
夜よりも昏い黒に包まれた彼女へ、その輝きが届く事は叶わずに。
月が遠い山に沈んでいく。
「ンっ、あっ、あぁっ……く、アッ! あッ……イっあ、ぁくッ! あぁッ、あアぁああっっッ!」
そうして、また。抱かれる女は……男の腕の中で、既に何度となく迎えさせられた終わりへと昇りつめる。
絶頂の悦びが肉体中を駆け巡り、強く放たれた精の温もりで胎を満たされて、それが女の孤独を癒した。荒い息に上下する汗まみれの胸元に吸い付かれて、小さな痛みと共にまた一つ男の所有物であるという印を肌と心に刻まれた。
どこかわからないものが、じくりじくりと変えられていく感覚に女が震える。
それでも、もう、止まれない。
「……はッ、はぁ、はぁ…………ふぁ、はぁ……あっ! いンっ、んっ……クぁっ、深…ぃあッ、あぁっ!」
おちていく。
深くなる――温かい 浅くなる――痺れてく
深くなる――強くなる 浅くなる――蕩けそう
深くなる――気持ちいい 浅くなる――溺れそう
深くなる――満たされる 浅くなる――縛られる
交わる腰の上で、色に染まった女の肉体が幾度となく弾む。
深くなる――――囚われて
浅くなる――――逃げれない
光のない森の中、行為の果てはみえない。
「ふあっ……あっ、あうっ、くンっ……アっ! あぁっ、ハ…んっ、んうッ、ンっ! あっ、あっ!」
夜の底より奏でられる音色は深い闇であっても隠し切れない濃密な情欲の熱を孕み――
混ざり合う男と女は、空が白み始めるまで眠る事は無かった。