少し未来のこと ~春待ちの祭り~
「すみませーん、これくださーい」
冬という一番寒い季節を越えて、もうしばらくしたら暖かくなってくるだろうこの時期。通りに面した店内は、普段の静かな様子とは異なり、がやがやとした賑わいを見せていた。
月神殿や大地の神殿、情熱の神を祭る神殿などが提携して行う一年を通した季節の祭り事。その中の一つに春待ちの祭りがある。
いつの頃からだろうか。春を待つという言葉と恋愛事とを関連付けた年頃の少女達の間では、この祭りの日に純潔を司る月の女神の印……月を模して木を円く削った小さな板の簡単な護符を購入し、それを意中の相手へと送る事が「私の純潔を貴方に捧げます」という意思を伝える告白の決まりごとのようになっていた。
今日はまさにその祭りの日である。ここ月神殿の販売所でも年頃の若い女性達が次々に訪れては、護符を手にしていそいそと帰っていく。
前日まで神殿の皆がかかりきりとなって祝福を与えていた護符が次々に購入されていく。男子禁制の月神殿の者としては、意中の男の事を想う女性達の期待と不安の入り混じった表情が微笑ましく、また少し羨ましくもあった。
……そう、前の年までは。
「……っ」
この一年で自分の肉体が積んだ"経験"を思い出し、下腹部から痺れのようなモノが背すじを走り抜けた。皮膚が粟立つ。
形はどうであれ、自分は男と女の関係が清らかなものだけではないと知ってしまった。そのせいか、家路を急ぐ少女達の表情に、どこか艶めいた欲望が見え隠れしているように感じてしまう。
ああ……あの少女達は今日というこの祭りの夜に、それぞれの愛しい相手へと護符を手渡すのだろうか。そして、男に受け入れられて、二人で行うあの……あの、甘美な行為をするのだろうか……
「ありがとうございました」
「あはは、店員さんありがとー。これと、この……とっておきの魔法の粉を使って、今日こそは彼と……えへへへ」
残り僅かとなっていた護符を無事に買えた事が嬉しいようだ。閉店間際に駆け込んできた少女は、そわそわと興奮した様子であれこれと話しかけてきていた。意中の相手を思って浮かべるその笑みを眩しく思いながら、やんわりと宥めるように受け答えしている時に少女が取り出した簡素な粉の包み。
ッ!!
――その……粉の包みから漂う気配へ、意識がくぎ付けにされる。
「それでー、そこから彼と一緒にゴハンを食べて。それから……」
嬉しそうに夜の予定を話す少女の言葉が、右から左へと意識の表層を通り過ぎていく。この……この気配を、知っている。これは……あの男の……
急に喉の渇きを覚え、ゴクリと唾液を飲み込む。しかし妙に粘ついた感触のそれは喉の渇きを癒す事は無かった。気のせいか、粉の包みから漂う気配が自分を取り巻いているようにさえ感じられる。
……いや、気のせいではない。あの晩秋の日、森の中で思い出した……思い知らされてしまった。自分は最後に迷宮へ赴いたあの時、閉ざされた薄暗い部屋の中で、あの男に、この身の隅々まで、肉体の奥まで。知らず知らずの内に下腹部へとやっていた手をぐっと握り締める。トクトクトクトク……と少し速くなった胸の鼓動が耳につく。
繰り返し肉体の奥底を貫かれて、幾度となくこの気配を、この身の内側へと注ぎ込まれた。そうされた自分は、熱くて……甘く痺れるようなその感覚で満たされ、堪えきれずに、こちらから――
「……店員さん? 店員さんっ!」
はっと辺りを見回せば、先ほどの少女が心配そうな表情を浮かべてこちらを覗きこんでいた。
「店員さん大丈夫? お腹いたいの?」
「あ……いえ、大丈夫ですよ。 ただ、今日は沢山人が来ましたし、少し疲れているのかも知れませんね」
いつの間にか下着が湿っているのを感じながら、何とか平静な声を出して問題ない事を伝える。
「そっかぁ、今日はお祭りだもんねー……あっ、もうこんな時間。 私もう行くね? ありがとー」
時を告げる鐘の音が響き、それを聞いた少女はあわただしく店から出ていった。
あの少女が最後の客だったようだ。祭りの日特有の喧騒が失われて一人だけになった店の中は、日常の状態へ戻っただけであるのに……いつもより広く感じられた。
もう日が暮れる。そろそろお店を閉めてしまおう。
表の扉の鍵を閉めて、店内を軽く片付けていく。それから用意してあった少し遅めの夕食をゆっくりと食べ始めた。
……トン…トトン
丁度食事を終えて片付けをして、今日はもう寝てしまおうかと考えていた時の事だった。ふと、店の扉が叩かれた音が聞こえたように感じて、カウンターの椅子から立ち上がる。販売所を開けている時間は過ぎてしまっているけれど……どうしても今すぐに必要な品物を求めている人なのかも知れない。何かの用事を伝えに、神殿から見習いの子がやってきた可能性もある。
「……?」
ガチャリと鍵を外し、閉店である事を示す看板の掛けられた扉を開いて外を覗く。夕暮れの赤い光に照らされた店の表の通りには、遠くで家路を急いでいる人を除いて人影は見当たらなかった。
風で看板が揺れたのか……それとも他の店の扉の音だったのだろうか。軽く息を吐きながら扉を閉めて、再び鍵を掛けた、その瞬間――
するりと両腕の内側を背後から人の手が通り、ぐっと胴体を抱きしめられた。直前まで全く感じられなかった何者かの吐息にうなじをくすぐられ、背中がヒクリと強張る。
「ふふ……きたよ」
耳へ触れるような近さで囁かれた男の声。聞き覚えのあるその声を聞いて、心の奥底から、意識を灼くような……熱く爛れた記憶が脳裏へと呼び起こされていく。
「……そんな、どうしてここに」
「さぁ? どうしてだろうね?」
思わず口をついて発せられた疑問に、おどけたようにそう返す男の声。その声が耳朶を打つたびに、自分の肉体が別の……淫らなナニカに作り変えられていくような錯覚を覚えた。口の中が、酷く粘つく。
「ま、ここに来たのは喚ばれたからかな?」
男がそう口にした途端。今まで抱きしめるだけだったその両手がもぞりと蠢き、ふくらみと……そして下腹部へと移動を開始した。
服の上を何か別の生物が這っているかのような動きを受けて、硬直していた肩がピクンと跳ねた。その刺激で我に返り、慌ててその両手を掴み、押しのけようと力を加える。しかし、そう力があるようには見えない男の両手は、止めようとする手に構わず目的地へと到着してしまう。
「…………ぁっ……」
服の上からではあるが、二つの敏感なその部分を撫でられて思わず小さな声が漏れる。じんわりと肉体の芯の部分へと熱が点るのを自覚する。血管の中を血液が流れていく音が、妙に大きく耳へと聞こえる。
「くくく……興奮しているね」
その自分の変化を、まるで確信しているかのような男の声が聞こえた。だめだ、このままでは……
「は、離し…てっ、ください。 こんな所で」
「へぇ……なるほど、ここじゃなかったらいいのかな」
……っ!? 男の答えを聞いて愕然とする――今、自分は何を考えていた?
そう、確かに。先ほどの自分が気に掛けていたのは、これから"あの行為"を行われ蹂躙されるであろう自分の身ではなくて……扉一枚を隔てた表の通りへと声が漏れてしまわないか、等という事だった。
「私、は…………ぅ……あっ」
何か、何か言わなければ。そう考える間も男の両手はふくらみと足の間を這いまわる。触れられている場所から広がってくる痺れるような甘い刺激に思考が奪われていく。
「いいじゃないか。誰かに聞かれてしまったら、聞かせてあげれば……ね? ふふふ」
「う…………ぃや、やめ」
ようやく口に出せた拒絶の言葉は、男の口へと飲み込まれてしまった。男の、温かくヌメリを帯びた長い舌がこちらの口の中へと入り込んできて、言葉による抵抗さえ奪われてしまう。
「んっ、ふ……んむぅ…………んんー」
――あぁ……心地良い……
っ!? いや、違うっ。拒絶しなければ、こんな事。
「ちゅ、んぅ…………んく、ぁ…………んふ……」
――そうだ、こんな事では足りない……もっと、深くを。
男の唇に口を塞がれ、混乱する頭の中で異なる思考がせめぎあう。しかし、男の手がふくらみを撫でるごとに、足の間で蠢くごとに。肉体の内側からじんじんと淫らな熱が伝わって冷静な思考が侵食されていく。
あぁ……熱い…………だめだ。はやく、この熱を冷まさないと…………
…………■……◇……◆……◇……■…………
初めて出会った時と、森の時と、今回で……もう三度目の逢瀬かぁ。しみじみと、そんな事を思いながら腕の中の良い匂いがする肢体をまさぐる。こちらを押しのけようとしていた手は、気が付けば逆に縋りつくようにこちらの腕を掴んできていた。神官ちゃんの肉体は……はは、いつも正直だ。
「ほら、熱いだろう?」
はぁはぁと吐息を乱した神官ちゃんから店員用の前掛けを外す。しっかりと締められていた首元の留め紐をするすると解いて、篭った熱を逃すように肩口を大きく肌蹴させる。
外気に晒されたふくらみの上半分を背中側から鑑賞しつつ、そっとその息づく素肌と衣服の間へと手を差し入れた。柔らかさの中で固くなって存在を主張している先端を回すようにしながら優しく揉み解していく。
「な…………ぁ、いやっ」
服の上からではない、その肌へと直接伝わる感触に神官ちゃんが身じろぎする。
「いやかい? ふふふ、嘘は良くないな」
そう声をかけながら首筋をチロチロと舐めるように味わう。同時にふくらみの先端を軽く指で挟んで、神官ちゃんの肉体がピクンと跳ねるのを確かめる。
「あっ……ぃやぁ、私は…………あぁ、はぁ……」
「ほら、もうこんなに固くなってる」
顔を赤く染めて恥らう神官ちゃんの意識を服の内側で動かす手に集中させ、もう片方の服の上から足の間を嬲っていた手を使い、少しずつ裾の長いスカートをたくし上げていく。徐々に露になる神官ちゃんのしなやかな脚が目にまぶしく映る。
「そんな、そんなこと……んっ……ぁ」
完全に露出した太ももを、ツツ……と優しく撫で上げて……
「ぁ、ひぁっ……そ、そこはっ」
おっと危ない、意識の外側からの刺激で驚いたのか、脚から力が抜けて倒れそうになる神官ちゃん。そのふくらみと……茂みの下の泉とに当てていた両手を、こちら側へぐっと引くようにして支えてあげる。
「……っ!」
あらら、咄嗟だったからちょっと乱暴にその泉へと体重がかかるような刺激が加わっちゃったけど。どうやら神官ちゃんは、くっと首を反らして悦びを感じているみたいだ。ふふ……随分とえっちなコになったなぁ。それに支えたココも……
「すっかり濡れているね」
また倒れてしまわないようにしっかりと抱えてあげておいてから、邪魔な下着を尻尾を使ってずり下げていく。触った時から解っていたけど……もう完全にぐしょぐしょになっている。俺が始める前から湿っていないと、今こんなにはならないから……ふふふ。
「んっ、くぅ…………い、言わなっ、ぃで……あっ……」
そんな状態の下着を足首まで下げてしまって役目を終えた尻尾を、片方の足の太ももから膝にかけて、軽く締め付けるようにくるくると巻いて支えてあげる。そうして体勢を整えてから、泉へとあてがった指を使ってその奥から液体を汲み出す。
神官ちゃんは内部で指を動かす度に、肉体全体をピクンピクンと跳ねさせて可愛い反応を返してくる。はぁはぁと、どこか艶を含んだ吐息を漏らす神官ちゃんの瑞々しい肉体は、じっとりと汗を浮かべつつあった。
ちょっと早いけど……神官ちゃんも準備OKみたいだし、先へ進むとしよう。
……◇……◆……◇……
「な、何を…………」
神官ちゃんの肉体をくるりと半回転させて、閉じられた扉へとその背中を押しつけた。こちらへと瞳を向けている神官ちゃんの上気した頬を軽く撫でて、再び今度は正面から愛撫を再開する。
「んっ…………ぁ、だめです。ここじゃ…………う、んん……」
下腹部へと向けた手を軽く押すようにしてくる神官ちゃん。着乱れた、肌蹴られた上着とたくし上げられたスカート、足元に落ちている下着……刺激に身を捩る姿が何とも色っぽい。
「ふふふ、いやらしい顔をしてる」
熱く濡れた泉を掻き混ぜながら、潤んだ瞳を覗き込むようにしてそう声をかける。
「あぁ、そんな……そんな事…………はぁ……あぁ……」
送られる視線から逃げるように顔を背けて、言葉を漏らす神官ちゃん。横を向いて目前に晒された首筋へと口付けを落として、鎖骨へと舌を這わせていく。同時に片方の手でふくらみを押すように揉み、そのツンと固くなった先端をくりくりと指の間で転がす。
「嘘じゃないさ。キミのココも……ココも、ほら、こんなに悦んでる」
「ぅあ……んっ…………ち、違います。私は……」
神官ちゃんは上ずった声でそう言葉を発しているけれど。尻尾で支えられていない方の膝はふらふらと、何かを挟もうとするかのように揺れ動いていて、泉の中を泳ぐ指は今も離したくないと言わんばかりに締め付けられている。
「そう? それなら、今日は止めておこうか」
「ぁ……だ、ダメっ!」
言葉と共に身を離そうとしたこちらを引き止めるように掴む細い腕。その自分の手へと、信じられないものを見るかのように呆然と視線を向けている神官ちゃん。くく……ははは! やっぱり神官ちゃんは正直者だね! まったく……ふふ、可愛いなぁ。
そんな正直者の神官ちゃんにはご褒美を上げよう。
「わた、私は……」なんて、何時かみたいに呟いている神官ちゃんへと一度離した身を寄せる。膝の間へと身体を入れてローブの下から取り出した俺自身をその泉へと合わせて。そのまま、ゆっくりと……
「ぁ、ふっ…くぅうぅぅ…………」
神官ちゃんの脚にぎゅうっと力が篭るのが撒きつけた尻尾へと感じられる。べったりと濡れた柔らかな肉の襞が入り込む俺自身を包み、ずるりとも、ぬるりともつかない甘美な刺激に意識が奪われていく。あぁ、この感触……神官ちゃんはイイな、初々しさと成熟した女が混ざり合ったようなその仕草が愛おしい。
そんな感情と沸き起こる衝動に逆らう事無く腰を動かす。扉を背にして、その場から逃れる事の出来ない神官ちゃんをテンポ良く突き上げる。
「ぁうっ、く……あぁ…………んん……はぁ、中が……」
「感じるかい? ふふ……また一つになれたね」
端整な顔を歪め、細い顎を突き出すようにして悦びを受け止めている神官ちゃん。彼女の桃色に染まった頬へと舌を這わせながら、ふらふらと揺れる腰へと腕を回してしっかりと抱えて。きゅうきゅうと力を加えてきている熱く柔らかなその内部を力強く押し上げていく。
「ンっ! ん…んっんッ…………んンんっ…………ぅんっ……」
ん? あぁ……店の外に聞こえてしまうからと我慢してるのか。まぁ実際は、誰かに邪魔されたくないし、結界張ってあるから大丈夫なんだけどな。
グっと突き上げた状態で内部の……締め付けが強くなる部分をぐりぐりとすり上げながら。眉を寄せて、奥歯をかみ締めて悦びの声を漏らすまいとしている神官ちゃんに目線を合わせて、いつかのように軽く暗示をかける。
「"大丈夫"だよ……"安心"してくれていい」
こちらを見つめ返す潤んだ視線が少しの間だけぼやけて……それから唐突に。ドロリと熱せられたチーズが形を崩す時のように、神官ちゃんの瞳が淫らな色に染まっていった。
「ん、はっ……あっ、んん…………あぁ……わたし、わたしっ……」
それまでこちらから送られる快楽に流されるままだった神官ちゃんの肉体は、悦びに答えるように、求めるように蠢き始める。若く健康な女の肉体……それが、男を欲しがらない訳が無いのだ。
ふふふ……やっぱり女のコは素直なのがイチバンだよね。
「あっ……あッ、あぁっ、く……んはっ! うぅ……あっ……あぅっ!」
不安定な形の交わりだからだろう。こちらへと縋りつき、肩へと腕を回してきている神官ちゃんの湿った吐息を耳元に感じながら、そのしなやかな腰を……淫靡な水音を立てるその内部を思う存分に突き上げる。
「いっ……は、んむ…………ちゅ、んっ…………んぅっ!」
潤んだ瞳を見つめて、唇を合わせながら不意打ち気味に強く身体を揺らし、互いの茂みが擦れるように腰を押し付ける。絡めていた舌先が神官ちゃんの心の内を表すように口内を暴れて、支えている腰や足がビクンと跳ねる様子が感じられた。
「ん……ッ! ぷはっ、はぁ…あぁ……あっ! うぅ、んんぁっ!」
イイ、実に良い……唇を離して、またあられもない声を上げ始める神官ちゃん。その首筋を流れる汗を舐め取りながら思う。二人の結合部から立ち上る独特の匂い、切なげに乱れた息づかい、触れ合った柔らかな肉体、そしてそこから伝わる体温。その全てが、女を抱いているという事実をはっきりと感じさせてくれる……あぁ、最高だ!
「うっ、あぁ……んっ! あっ…あッ、アっ! ひ……っく、ぅう……あぁあっ!」
神官ちゃんの泉から零れた体液がこちらの足を濡らし、二人の間でツンと充血したふくらみの先端が転がる。
ゆさゆさとその肢体を揺らす神官ちゃんの声が、すすり泣くような色を見せ始めた。突き入れた俺自身に絡み付いてくる肉襞も、不規則に、それでいて強い締め付けをきゅうきゅうと行うようになっていく。
「いっ……ふ、あっ! あぁっ…く……ンんっ! アぁっ! あッ! ふあっ!」
ここまでくれば後はもう目前の高みへと追い込むだけである。ぎゅっと目をつぶり抱きついてくる神官ちゃんを抱きしめ返して、そのまま、最後まで……
「あっ! ん……くあっ! あぁっ! あアぁああッ…………っ!!」
熱い吐息をこぼして喘ぎ、がくがくと全身を震わせて絶頂を迎えた神官ちゃん。その胎内へと押し込んだ俺自身から、弾けんばかりに高まった欲望を一気に開放した!
「ふぁ……ンっ…………はぁ…はぁ……あぁふ……」
魂へと久々に感じる"味"を堪能しながら、腕の中で快楽の余韻に震える神官ちゃんの様子を確かめる。衝動のままにちょっと乱暴にイかせたから、軽く意識が飛んじゃってるかな。
どうやら今日は一日忙しく働いて、少し疲れていたみたいだし……次はベッドの上で愉しむとしよう。繋がったまま腕をお尻の下へ回して、ぐっと持ち上げてっと。
「ぁう、ンっ…………んっ…………んぁっ……」
さぁて、俺達の愛の巣へ行こうか……クククク。一歩一歩進むごとに、胸元で何とも色っぽい声を漏らす神官ちゃんを抱えて、店の奥にある階段をゆっくりと上っていく。
恋人達の夜はまだ始まったばかり、時間はたっぷりとある――
…………■……◇……◆……◇……■…………
「ん……うぅ…………」
あぁ……いつもの夢。素肌に触れる甘い微かな刺激に浸りながら、そんな事を考える。
この分ではまた着替えを用意しなければいけない。でも、もうしばらくはこのままで……
「…………ぅ、はっ……く!」
唐突に下腹部へと入り込んできた熱く生々しい感触によって、霞がかっていた意識がはっきりさせられた。開いた目には自分の部屋の様子が映る。
「う……あぁ…………」
あ…………自分は……今まで、何をしていた? 店を閉めて、食事を済ませて……それから、それから…………
直ぐそこにある答えが、わかっている筈なのに、言葉にならない。
「んっ…………はぁ、ぅ…………」
ずるり、と下腹部に感じるモノを引かれる刺激に、少し疲れの残る肉体がピクンと跳ねる。
「目が覚めたかい?」
自分の部屋の中に、本来居る筈の無い男の声が響いた。
……◇……◆……◇……
あぁ……そうだ。祭りの日、店に現れた男に。
――私は、私は…………抱かれたのだ。
そうして、貫かれたまま、店の二階にある自分の部屋へと連れ込まれ。乱れていた衣服を完全に剥ぎ取られて……今、こうして。寝台の上で、素裸になって、膝を突いて、後ろから。
「んうっ…………うぁ、あっ…………っ、くぅ…………」
男はこちらの反応を確かめるように、間隔を空けて、大きく腰を動かした。先ほどの行為で充分に潤っている深みを擦りあげられて思わず声が漏れる。
っ! こんな、こんな格好で、またあの時のように……
そう考えた途端に、一度その頂点を迎えて終息へ向かっていた肉体がカッと熱くなるように感じた。じわりと、男のモノに翻弄される下腹部の内側から体液が染み出し始める。
「ふ…くっ…………あぁ…………あうっ…………んん、ふぁっ…………」
ズッ、ズッと女の中心に繰り返し押し寄せる獣の律動に……呼吸が、鼓動が、体温が、一足飛びに高められていく。ロクに抵抗できないまま、ほの暗い地下で行われた最初の行為が脳裏をよぎった。抵抗……そうだ、抵抗しなければ。
しかし、微熱を帯びた肉体は思うように動かすことができなくて、自然と自分から求めるように腰が動いていってしまう。
「な、なっんで…………こんな……んっ…………こんなに」
――気持ち良いんだろう。
あぁ、ダメだ……このままでは、おかしく……"また"おかしくされる。
「あぁ……だめ…………んぁっ、うぅ……あ…あっ、んぅっ」
じくじくと肉体の芯から這い上がってくる淫らな熱が意識へと溢れてきて。どうにか堪えようとしていた声は、たちどころに決壊してしまい、乱れた呼吸を繰り返す口から漏れ出していく。
「ふふ……いい声だよ。ほら……もっと感じて」
「はうっ、く……あぁ、あっ! ……ゃ、あぁっ……んんっ、そんな……」
ギッ…ギッ、と軋む寝台の音に混じって聞こえる男の声に、足の間からちゅっちゅっちゅっといやらしく響く水音に。今の自分がどうなっているのかを否応なく自覚させられる。
「ぅあっ、あッ! くぅ、あぁあっ……あぁっ、あっ…くン……あぁ」
ああ、明日は寝具を洗わないと……
一階の店の時に注がれた男の精が、肉体の奥を抉る動きによって溢れ、太ももの内側を垂れていくのを感じて、次々に弾ける快楽に意識を灼かれながらそんな場違いな事を思った。
「あふっ! く…アっ! あッ、あっ……あぅっ! ンっ、うぁっ!」
深く浅く、寄せては返す波のように幾度となく肉体を貫く原初のリズムに乗せられ、もうどうしようもなく自分の中の女……雌としての部分が覚醒させられていく。
「あっ! ぁイッ! うンっ、あ! あクっ! ふァっ……はぁうッ!」
肉体の内側の弱い場所を解っているかのように……いや、もうそうであると知られているのだろう。自らを貫いている男の腰が巧みに前後し、執拗にその部分をすり上げられる。
ぬちゅっ、ぬちゃっと聞こえる水音と共に、下腹部の奥深い場所から伝わってくる快楽に頭の中を染め上げられて意思とは関係なく肉体の内側に力が篭り、背中が反り返っていく。
「アっ! あぁッ、あっ……はぁぅ! クんっ! あンっ、ああっ! あぁあッ!」
こみ上げる熱と快感を逃がすために荒い呼吸を繰り返す半開きの口からは、自然と声が……人の言葉ではなく獣のような……甘えるような鳴き声が漏れてしまう。
「――――」
耳元で男が何事かを囁いた。雄と雌の快楽に灼かれ、熱に浮かされた意識には届かない。
しかし欲情に染まった肉体には理解できた、させられた。激しく突き入れてくる熱い男のソレによって、肉体の内側の最奥の壁が何度も押し上げられる。
「クあッ! あっ! あうッ! ンっ! んッ、アっ! あぁッ!」
シーツをぎゅっと握り締めて、ビリビリと強い悦びに曝されながら思う……感じる。あぁ……また、また……心を溶かすような、包むような。あの灼熱を……この胎の中へと注ぎ込まれるのだ。
「あクぅッ! クぅ…くルっ! ぃはッ! あぁっ! 奥ッ、おくにっ!」
もう自分が何を言っているのかすら解らない。欲望に火照った肉体から汗を流し、ただただ本能のままに動く。ぱんぱんと、肉と肉のぶつかり合う音が部屋の中に響いていた。
脳髄へと直接響くその強い律動を受けて、自分の肉体が男の精を受け入れる状態になっていくのが解る。意識が、肉体が……その高みへと、吸い込まれるように浮き上がっていって――
「ふあっ! ああっ! はぁうッ! あぁ…イッ! アあッ! アあぁあアぁっっーーーーッ!!!!」
男の腰が強く押し付けられ、後ろから抱きしめられるのと同時に。肉体の内側で弾けた閃光によって意識が真っ白に染め上げられていく……!
……◇……◆……◇……
この部屋で男との行為が始まってから、どれ位の時が過ぎたのだったか。熱気と……雄と雌の匂いの篭る部屋の空気を呼吸しながら、微かに残った意識の隅でそんな事を考える。
「はアぅ! アんっ、あッ、あクっ! あぁっ…アぁあっ!」
下から突き上げてくる男の腰に跨り、声を上げて腰を振っている自分の肉体。私は何をしているのだろう。男はこちらを拘束してはいない。もういつでもこの行為を止めて、逃れられる……だと言うのに、私は……
「ひうッ、ンっ、あっ! アふ、ぅ…んンっ! っク、あぅっ!」
融けて、混ざり合ってしまっているのではないかとさえ思える程に熱を持った下半身は、ぼんやりと思考を続ける間も咥え込んだ男のモノとの悦びを求めて、上下に、前後に、自らの意思とは無関係に動き続ける。
無関係……本当に、そう? 逃げられないのは、男のせい?
「アあッ! ぃイっ…くぅ……ぅあっ、いクッ! ィ、あアぁあっッ……ッ!」
また絶頂の悦びに包まれて、胎の中へ男の欲望を注がれて、大きく背中を反らせながら、ふっと疑問が生じる。駆け巡る快感の中で疑問に対する答えを探して……そして、気が付いた。
ああ、自分は……わたしは――
ああ……甘く囁く男の声が、太ももを撫でる男の右手が、ふくらみへと優しく触れてくる男の左手が。その温もりを伝えてくれる男の肉体が……そして、今も熱く肉体を貫いている男のソレが……ああ、こんなにも。
「ぁふ……うぅ……はぁ、はぁ…………はぁぅ……ん――アっ! あン! あッ、あぁアっ! ゎた…わタしを、もっとぉ……!」
こんなにも――気持ち良くて、欲しくて堪らないのだ。
これでは、逃げられない。離れられない……離れたくない。
あぁ……そうだ、私の肉体は…………私の、心は。男に捕らえられて、囚われて、この身に女の悦びを教え込まれてしまったあの時から。
もう、既に、ずっと、ずぅっと…………
繋がった二人の間で力と欲望が循環し、混ざり合い、更なる高みを目指して何度も繰り返し求め合っていく。閉ざされた部屋からは、肉欲に爛れた女の声が途切れる事無く祭りの夜の街へと染み出していった。
祭りの喧騒にざわめく街の上、巡りゆく月だけがただ静かに夜を見守っている。
夜明けの時は、まだ遠い。
― 新月の神官♀を手に入れた ―