「うふふー」
「どうしました、鈴さん?」
「こういうの、なんかいいなあって思ったの」
寝室には知尋と鈴、それから愛華と李狐がいた。
愛華は白、李狐はライムイエローの下着姿。鈴は今まさに服を脱ぎ捨てているところで、露わになった肢体はシルク製と思われる黒い下着に包まれていた。
「わ」
「むう」
圧倒的な存在感を持つ胸、見るからに高そうなランジェリーに少女達の表情が変わる。
驚く李狐と、嫉妬を向ける愛華。
二人の反応に苦笑しつつ、知尋は鈴に尋ねた。
「こういうの、ですか?」
「うん。モラルがどっかいっちゃってる感じで、凄く幸せ」
一人の男に対して女が三人。
しかも全員が下着姿で、これから性行為を始めようとしている――極めて退廃的な空間を全肯定する発言が、彼女の業の深さを示していた。
……なお、鈴を奴隷として扱うかはいったん保留としている。
猫の奔放さと犬の従順さを併せ持つ彼女は「放し飼い」の方が可愛いのではないかと思ったりするのがその理由だ。
彼女の気まますぎる性質に年齢差も相まって、愛華達は尚も困惑気味である。
「……うん、やっぱこの人、真里亜と気が合いそう」
「私もそう思う」
「あ、あの子。素敵だよね。あんな子がエッチなことしか考えてない淫乱だなんて興奮する」
なお、その真里亜は華と二人で自室に籠もっている。
なんでも、この前の日曜に起こった知尋と華のプレイに思うところがあるのだとか。
『いい機会ですので、この子にたっぷり『お礼』をさせていただこうと』
一対一で徹底的に責め続ける。泣いて懇願されても止めず、奴隷としての分を弁えさせるとのこと。
ただ、そんな真里亜の決意をよそに、引き連れられる華は妙に嬉しそうだった。並大抵の責めでは何の薬にもならないだろうが――それを承知の上で「徹底的に」行われる責めとはどれほどのものか、気になる一方で、できれば知りたくないとも思う。
ともあれ。
「始めましょうか」
「うんっ。何するの?」
「……そうですね」
弾んだ声に問われた知尋は少しばかり思案する。
ログハウスで鈴と交わった時は抱き合ったままの行為がメインだった。
となると、今日は他のプレイを試してみたい。
「鈴さんに、胸でしながら舐めて欲しいです」
言って目線を自身の股間へ。
ややぼかした言い方ながらも、意図はしっかり伝わった。
「うん、いいよ」
ほわんと頷いた鈴が大きなベッドへ歩み寄っていく。
知尋も鈴に続くと、背後から李狐と愛華の声が聞こえてきた。
「あの大きさは反則だよね、色々と」
「……舐めるのなんて、最初からうまくいくわけないもん」
確かに、フェラチオはどうしても慣れが必要なプレイだ。
まだまだ練習中の愛華だからこそ余計にそう思うのだろうが、果たして。
しゅる……。
ベッドに腰かけた知尋のパジャマが脱がされる。
未勃起状態のペニスを露出させると、鈴は邪魔になるブラを外して床に落とす。下着の値段に見合わぬ適当さが、逆に淫靡な雰囲気を際立たせる。
ふぅっ……。
まず、彼女は遊ぶように竿に息を吹きかけてきた。
そうして、ペニスがぴくりと反応するのを認めてから指が伸びてくる。
力仕事など殆どしたことがないだろう、綺麗な指が竿を握る。
「ん、しょ……」
鈴から手で弄られるのはこれが二度目。
前回、最初に会った時は背中に胸の感触があったことや学園内というシチュエーションも手伝い、そのまま射精まで持ち込まれた。
今回は、完全に手だけによる刺激のせいか不慣れさが際立った。
気持ち良いが、刺激が物足りない。
興奮、快感の大半が、手コキのテクニックではなく指の柔らかさや肌の美しさによるもの。
もちろん、過程がどうあれ鈴の成果には違いないし、手淫が続くうちにペニスは緩やかに大きくなる。
ある程度大きくなれば準備は完了だ。
ペニスから手が離れる。
下着の拘束から解き放たれた豊かな胸が両手に支えられ、身体ごと知尋に近づく。
ふにっ。
白い双丘が、左右からゆっくりペニスを包みこんだ。それだけで先程の指を上回る快感。
手のひらに押された胸がペニスを真っすぐに持ち上げる。そこから鈴は自身の乳房を揉み、圧迫することで間接的に刺激を伝えてきた。
奉仕をしながら自慰もしよう、そんなことを考えているかのように。
「ふっ、ん……」
かすかな吐息。
大人の女性が胸でペニスを挟んだまま自慰に耽る、そんな煽情的すぎる光景に、知尋の分身はみるみうちに硬度を増した。
すると、胸を揉む動作に変化が現れる。
ペニスを持ち上げる角度が変わり、顔に向けて先端が飛び出すような形になると、鈴がふっと微笑む。
ぱっくりと口を開いて。
「いただきます」
「んっ」
躊躇なく口唇が亀頭と、その先の部分を内に含む。
パイズリフェラが始まると胸を動かす動作も激しくなり、同時に舌と唇も蠢く。手は自慰行為の、舌と唇はキスの応用だからか――手コキよりずっと動きに淀みが少なかった。
胸が圧迫箇所を変えながら竿を刺激し、先端は舐めたりしゃぶったり。
否応なく口に溜まっていく唾液はそのままペニスに垂らされてローションの代わりとなり、くちゅくちゅと小さな音を立てる。一つ一つの動作がうまく連動していないのが難点だが、初めての行為でこれというのは。
「嘘……」
鈴の挙げる十分すぎる成果に愛華が愕然と呟く。
すんすんと鼻息が荒くなるのを気にせず呼吸を続けていること、棒状の物体を口に含みながらもえづくような気配があまりないこと。ペニスの味や匂いに嫌悪感を見せていないこと。
淀みない動作の理由――それはひとえに性行為への抵抗の無さだろう。
先程李狐が言ったように、鈴の奉仕はどこか真里亜を彷彿とさせる。
知尋の「一の奴隷」である少女の熱意が、やや脅迫観念じみた性欲によるものだとするならば、鈴のこれは興味や関心が主体となっているように感じるが。
気持ちいいことが好きだ、という根っこの部分は似通っている。
愛華が恥ずかしさで動きが鈍りがちなのも怠慢ではない。むしろ普通のことなのだが、こういう場では頭のネジが外れている人間が勝る。
と、思ううちに知尋のペニスはどんどん射精に近づいていた。
ぴくぴくという反応が頻繁に起こり、竿の内側に熱のようなものが籠もっていく。
「鈴さん、そろそろ出ますっ」
声をかけると、鈴は一瞬だけ上目遣いに知尋を見た。
こくん、と彼女は頷き、更に手や舌の動きを速める。
びゅく、びゅるびゅる……。
吐き出された精液を、鈴は寸前で口を離して上半身で受け止めた。
綺麗な肌が体液に汚れ、より煽情的に彩られる。
鈴は指で白濁をすくい、口に運びながらにっこり笑った。
「あは、ちょっと熱い」
漏れ出た呟きも恍惚としていた。
口で受け止めなかったのは、やはりわざとだったのかもしれない。
すると面白くなさそうにするのは愛華である。
「むぅ……っ」
ぷっくりと頬を膨らませて鈴を睨む。
怒っているというよりは軽い羨望だが、心優しい彼女が見た目に反し、こうして実は嫉妬深いことを知尋は最近、強く実感している。
李狐は、そんな愛華に苦笑して。
「じゃあ、次は愛華がしてあげたら?」
「え? でも」
戸惑う愛華の背を押して知尋の前に出すと、彼女は鈴に囁きかける。
「あたし達も楽しんでいいよね?」
「うん。でも、わたしもまだ物足りないよ」
言いつつ右手を股間に伸ばす鈴。
ここしばらく会っていなかったから快感に餓えているのかもしれない。性奉仕だけでは興奮できても気持ちよくはなれないわけだし。
「それなら、鈴さん。僕の顔に乗ってください」
「え? こ、こう?」
知尋はベッドの中央あたりに寝そべると愛華、それから鈴を招く。
愛華は知尋の下半身に近づき、鈴は知尋の顔の上で股を開いて腰を落としてくる。
何度か位置を調整して口が秘所のあたりに来るように。
そうして始めるのは当然、顔面騎乗された状態でのクンニだ。
唇と舌を使って秘所を割り開き、突いたり舐めたりして愛撫。先程のパイズリフェラのお返しとして鈴の身体を気持ちよくしてやる。
「んんっ! ち、知尋くん。私のあそこ、どう……?」
どこでそんな言葉を覚えたのか。
自称耳年魔の彼女は恥ずかしそうに声を上げながら尋ねてくる。口の辺りを塞がれた今の状態で答えるのは困難なので、代わりに垂れる愛液を音を立てて啜った。
「んー!」
びくん、と鈴が身体を震わせる。
もうイってしまったらしい。
思いつつ口淫を続けると鈴は更にびくびく震えた。かなり感じやすくなっている。
秘所もたっぷりと濡れていた。
愛華達のそれに比べるとぱっくり開いていて、綺麗な色を保ちながらもどこか大人びた雰囲気がある。
愛液の味や匂いは、やや濃い目だろうか。
真里亜も出会ったばかりの頃「毎日自慰を欠かしたことがない」と自慢(?)していたが、鈴に関して言えば年齢が、つまりは一人での性行為を経験した回数が違うのだろう。
こんなになるまで自分で自分を開発してしまった彼女を愛おしく思う。
……頑なに鈴へ手を出さなかった鳳や前理事長は、いったいどれだけ勿体ないことをしたのか。
ただ、まあ、同性である知尋には彼らの気持ちは理解しやすい。
きっと二人とも、鈴のことが大切だっただけなのだ。
前理事長は大事に思い過ぎたから自分の手で手折るのを躊躇い、結果的にタイミングを逃した。
好きな相手に手を出さず付き合い続けられる高潔な精神の持ち主なら、近いうちに自分が死ぬとわかっていて鈴を抱くはずがない。
彼は、鈴が好きになる「次の誰か」のために鈴を清らかなまま残した。
鳳は、兄がそんな風に想っていた鈴を抱けなかった。彼が鈴を女として好きなのか、四葉への負い目がどの程度の割合を占めていたかは定かでないが、彼の自制心も並々ならぬものだと思う。
そして結局、強く想った、想いすぎた二人ではなく、知尋が鈴の処女を奪った。
報われない話だと思う。鳳の怒りも最もだと思う。
しかし、起こってしまった出来事は変えられない。
鈴を抱いた知尋は、知尋なりのやり方で彼女への責任を果たす。
「ん、んー! んー!」
舌で何度も鈴をイかせる。
と、愛華の我に返ったような声。
鈴の身体が障害物になっているため愛華の姿は見えないが――。
「り、李狐ちゃん。ローション取って」
「はいはい」
ローション? コンドームではなく?
疑問に思いつつ鈴を責め続けていると、何度か小さな水音が響いた後、愛華が身体を動かす気配。
「行くよ、知尋君……」
ぐ、と。
愛華が片手で支えたペニスに『穴』が宛がわれる。
想像していたいつもの感触とは違い、狭い。それに締め付けも強いように感じる。そのせいか、愛華も挿れるのに苦労しているようだった。
「う……っ」
苦悶の声とも取れる吐息混じりの喘ぎの後、つぷ、と先端が穴を割り開いた。
途端、先端に強い締め付け。
「んんんっ!」
「あ、凄い……」
愛華の喘ぎ声の後に鈴の呟きが聞こえた。彼女からは様子が丸見えのはずだ。
「……お尻におちんちん入れちゃってる」
やっぱり。
膣でない『穴』だというのなら答えは一つしか残っていない。
このところ開発していた愛華の後ろの穴――アナルにペニスが入り、深く沈もうとしているのだ。
初めてのアナル開発以降も折を見て何度かプレイは行っていたものの、まだ挿入には至っていなかったのに。
「知尋。さっきね、愛華ってば自主的にお尻を洗――」
「李狐ちゃん!」
「ごめんごめん。じゃあ、時々自分でお尻の練習してたことは言っていいよね?」
どうやら知らないうちに愛華はアナル自慰を試みていたらしい。
それを李狐が知っていたこと――女の友人同士の情報交換なのだろうが――になんとなく嫉妬心が芽生え、知尋は鬱憤を鈴への責めに向けた。
「やんっ! 知尋くん、やり過ぎだってばぁ!」
「むっ」
快感に悲鳴を上げた鈴に愛華が嫉妬する悪循環。
気づいた時には既に遅く、直後、ずぷっと一気に貫く感覚があった。
「やあああぁぁぁっ!」
愛華の甘い悲鳴。
彼女もまた挿入時の刺激で軽くイってしまったらしい。それに従い、きゅっと、ただでさえ狭いお尻の穴が更に締まってペニスを責め上げ――。
なすすべもないまま、知尋は二度目の射精を迎えた。
「あ、動いて……っ」
知尋の体液が愛華に注がれる。
直接、避妊具を挟むことのないまま――それは初めて愛華を抱いたあの日以来のことで、たとえ今挿入しているのがアナルだということを差し引いても十分すぎる感動だった。
喜びに打ち震えながら舌を動かし、ふっと顔の上から圧力が消えた。
「鈴さん?」
「ぎぶあっぷ! 知尋くん、イってるのに全然止まってくれないんだもん!」
気持ちいいけど刺激が強すぎる、と鈴が身体をずらして胸の上へ。
するとすかさず、これまで傍観していた李狐が知尋の顔に馬乗りになってきた。
「ごめんね、知尋。あたしも気持ちよくなりたい」
知尋達の行為を見せられて興奮したのか、多少自分で弄っていたのか、彼女の股間も鈴に負けないくらい濡れていた。
「うふふ。じゃあ、李狐ちゃん。お姉さんとキスしよ?」
「え? ちょっ、いきな……んぅ……」
身体の向きを百八十度変えた鈴が李狐に口づけ、舌を絡ませ合う。
愛華も腰を動かして騎乗位アナルセックスを開始。
みるみるうちにペニスは硬度を回復し、知尋は李狐の秘所を舌で責めながら愛華の尻穴を味わった。
それから体位や組み合わせを変えながら何度も交わり、終わった頃には全員ぐったりモード。考えてみれば知尋達は学園祭関連で疲れているし、鈴もお酒をのみまくった後だ。
ここまでハードにしなくても良かったはずなのに、気づいたら雰囲気のまま突き進んでいた。
気怠い雰囲気で各自、余韻を残しつつ――知尋は、ふと鈴に尋ねた。
「そういえば、鈴さん」
「……ん? なあに、知尋くん?」
「『支配』の効果、鈴さんも欲しいですか?」
効果を受けた相手を好調に変える代わりに緩やかに精神を縛る力。
「うん、欲しい」
それを、鈴は二つ返事で受け入れた。
隣り合わせに寝転がったまま手を繋ぎ、鈴の身体に『刻印』を浮かべるための儀式を行う。
悪乗りした李狐が思いがけない言葉を投げかけた。
「鈴さん。あなたは健やかなる時も病める時も、知尋を信じて尽くし、仕えることを誓いますか?」
「あははっ、何それー」
聞いた鈴はひとしきり爆笑した後、瞳に涙を浮かべて答えた。
「はい、誓います。わたしが抱かれるのは、これから先、知尋くん一人だけです」
見事にたった一回で、鈴の身体には鮮やかな『刻印』が浮かんだ。