※この作品はR-18です。

儚き異能は心を映す   作:緑茶わいん

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第百八話  主従 ★

「断る」

 

 両手の自由を奪われ写真を撮られて尚、学園理事長は毅然としていた。

 彼は『落とし物』ではない一般人であり、経歴を見る限り芸術家肌の人間――戦闘や修羅場の経験は殆どないはずだが、それでも彼は四葉を『婚約者』ではなく『敵』として睨みつける。

 対する四葉は悠然と微笑んで。

 

「では、写真を公表するしかありませんね」

「好きにすればいい。もしそうなれば、私は警察に届け出るだけだ」

 

 一蓮托生。

 鳳は周囲からの偏見、信頼の失墜にさらされる。四葉は最悪の場合、逮捕されて輝かしい未来を失うことになる。

 どちらかといえば、むしろ四葉の方にリスクが大きいが。

 

 女帝めいた雰囲気を放つ生徒会長は悠然と、その余裕を崩さずに頷いた。

 

「なるほど。私を通報すれば確かに丸く収まりますね。……由司さんも理事長職を辞することになるでしょうし、そうなると生徒会長と理事長を同時に失った生徒達と職員が可哀そうですが」

「……っ」

 

 実行されない脅しに意味はない。

 本人ではなく周囲の人間への決定的リスクを示してやれば、誠実で善良な鳳は動けなくなる。

 また、例えば顔部分をぼかした「理事長室でスーツ姿の男性が、女子制服を着た少女と淫行している」写真をばらまいたとして、果たしてどの程度の罪になるか。一方で、鳳自身の権威は確実に落ちるのだから割に合うかは微妙なところだろう。

 

「……それでも、私は君の下僕などにはならない」

 

 はあ。

 四葉が、心底つまらなそうに息を吐いた。

 

「仕方ありませんね。では、身体に教え込むといたしましょう」

 

 彼女は右足の上履きを脱ぐと、鳳の身体を軽く蹴りつけて絨毯の上に転がす。それから彼の口へと、靴下に覆われたつま先を近づけた。

 

 ……瞳を興奮で爛々と輝かせながら。

 

「舐めなさい」

「………」

「愚図な犬ね」

 

 ぐいっと、つま先が押し込まれる。

 それでも鳳は足を舐めようとしないようだったが、四葉は構わない。口や身体、顎の力で押し出そうとすれば、その分だけ再度押し込んで口に足を押し込み続ける。

 

「ああ……理想には程遠いけど、気持ちいいわ」

 

 鳳が必死で鼻呼吸を繰り返していることなど気づいてもいないという風に。

 やがて数分が過ぎてからようやく足を取り出すと、靴下には鳳の唾液がべっとりと付いていた。

 いくら抵抗しようと、完全に舐めずにいることはできなかったのだろう。

 婚約者の少女が一日履いた靴下の味は、果たして彼にどんな想いをもたらしたのか。

 

 学園理事長の瞳はどこか呆然としていて、まともに景色を映さなくなっている。

 四葉にとってはそれすらどうでもいいようで、

 

「べとべとして気持ち悪い」

 

 濡れた部分に触れないようにしながら靴下を脱ぐと、半開きになった鳳の口にそれを押し込む。

 

「……!」

「吐き出したら駄目よ?」

 

 もがもがと声を上げる鳳に言いつけ、視線を彼の下半身に。

 ベルトをかちゃかちゃと外し、ファスナーを下ろす。そこからは手を使わず上履きを脱いだ左足を使ってペニスを取り出した。

 ぷっ、と、靴下を吐き出した鳳が慌てたように言う。

 

「な、何をするつもりだ」

「あなたって、簡単な言いつけも守れないのね。くだらない男」

 

 四葉の返答は、返答になっていなかった。

 左足の靴下も脱ぐと、今度はそれを鳳の口に詰め込む。再び彼が呻くのを無視した彼女は、今度はスカートを捲り上げショーツに手をかける。

 

 鳳が驚きから目を見開いた。

 

 初めて見たであろう姿に彼が目を奪われているうちに、四葉はショーツを完全に足から外す。遠目にも濡れているのがわかるそれは、クロッチの内側部分を中心に、半勃起状態の鳳のペニスへと被せられた。

 

「どうして大きくなっているの? 変態さん」

「……っ」

 

 嘲りながら、四葉は次にハンカチを取り出す。

 彼女はショーツの上からそれを被せて呟いた。

 

「間違っても直接手で触りたくなどありませんからね」

 

 少女のたおやかな手が布地越しにペニスを握る。

 たどたどしくも、案外優しい手つきで手淫が開始される。

 くすっ。

 

「どうですか、由司さん? 私の下着とハンカチで擦られている気分は? 気持ちいですね?」

 

 罵り文句が次々と口をついて出る。

 

「気持ちいいに決まってますよね? だって……さっきより硬く勃起していますから」

「~~~っ!」

 

 鳳が不定形の悲鳴を上げながら首を横に振る。

 違う、という主張は、しかし今この場においては説得力に欠けていた。

 四葉もまた取り合わずに手の動きを続ける。あくまで優しく、彼のペニスに快感を送り込む。

 

「シコシコ……って言うんですよね? どうですか? シコシコ気持ちいい? もっとしてほしい?」

 

 淫語が繰り返され、手つきがだんだんと早くなる。

 なおも首を振る鳳。しかしその表情と息遣いは、彼がだんだんと快楽に溺れ始めていることを示していた。

 

「ほらほら、シコシコ、シコシコ……どぴゅどぴゅ」

 

 笑みを含んだ声と共に鳳のペニスが跳ねる。

 咄嗟に手を離した四葉の眼下で、亀頭から溢れた精液がショーツとハンカチを浸透しどろりと空気に晒される。

 

「ふぁ……っ」

 

 四葉がびくんと身体を震わせる。

 その意味が、今の鳳にわかったとは到底思えないが。

 

「あ、ぁ……」

「ふふ。出ちゃったね……精液。年下の女の子に、生徒に、婚約者の下着に白いのぶちまけちゃったね。可哀そうに」

 

 心底から愉しげに四葉は囁き、ポケットから鍵を取り出すと手錠を外す。それを鍵と併せてポケットにしまうと鳳から離れる。

 

「由司さん。では、こうしませんか? 私と婚約を解消しましょう。当然、解消理由はあなたの都合ということにして」

「………」

 

 のろのろと、鳳が手を持ち上げる。

 口の中の靴下を取り出した彼は、それを絨毯へ適当に放り捨てながら答えた。

 虚ろな瞳、投げやりな声に意思を滲ませて。

 

「駄目だ。……それでは、君のご両親に申し訳が立たない」

「………」

「私は君を立ち直らせてみせる。絶対にだ」

 

 はあ。

 何度目かわからない四葉のため息。

 

「好きにしてください。ですが、私は元には戻りませんよ。……絶対に」

 

 吐き捨てるように言って、彼女はそのまま部屋を後にする。

 絨毯に転がる己の靴下と、ペニスに被さったままのハンカチ、ショーツ……そして呆然と転がったままの鳳自身には目もくれないまま。

 

 理事長室を退き、そのまま校舎の別棟へ。

 個室訓練場の一室を借りて中に入ると施錠し、陶然とした声を虚空へ向けた。

 

「……終わりました、ご主人様」

 

 見えているのだ。『認識疎外』の能力によって人目から逃れた鈴と知尋の姿が。

 既に彼女が、知尋の『支配』の影響下にあるために。

 

「ご苦労様、四葉」

 

 知尋は鈴から身を離すと彼女に微笑みかける。

 今の四葉にはたったそれだけのことが嬉しいらしく、子供のような無邪気な笑顔を浮かべて歩み寄ってくる。

 ただし、声には淫らな艶を含ませながら。

 

「ご主人様のご用事は滞りなく?」

「うん。録音されたデータは消してきたよ」

 

 知尋が鳳に「鈴には近づかない」と誓った時の音声だ。

 鈴と共にあの場に居た知尋は、どさくさに紛れてICレコーダー内の音声、それからPC内に保存されていたバックアップを削除してきた。

 外部メディアやクラウドまではチェックできなかったが……まあ、残っていたら残っていたで構わない。もともと退学の証拠にできるようなものではないし、どちらかというと保険、あるいは警告のようなものだ。

 メディアそのものを盗んだわけではないから犯人を特定しようもないだろう。

 そもそも四葉のことがあった後で、知尋に気を回す余裕がどこまであるか。

 

 鳳が「これ以上邪魔をするな」というメッセージを受け取ってくれることを願う。

 

「……これ、完全に悪役だけどね」

「ええ。私も含めて、ですね」

 

 言いつつも、どこか誇らしげな四葉。

 もはや完全に吹っ切れてしまっているらしい。物凄い変わりようだが、どちらかといえばこれが本来の彼女なのだろう。

 あるいは、これまでの抑圧された生活が、今の彼女を育てたのかもしれない。

 

「ところで、四葉。今更だけど、年下に敬語使うのは嫌じゃない? 嫌なら変えるけど」

「構いません。私が敬う男性はあなただけだと、私自身に示すためにもそうさせてくださいませ」

「それは、嬉しいな」

 

 願望の肯定を謳った知尋に、四葉は忠誠を誓ってくれた。鈴を従え、容赦なく四葉を打ち据えたことが決め手となったのかもしれない。

 

『痛いです。痛いのに嬉しくて仕方ありません』

 

 彼女の想いに嘘がないことはお腹に刻まれた『支配』の証が示している。

 

『誓います。私はあなたのものになる。今後、愛するのはあなただけだと』

 

 四葉は一度の誓いで知尋を受け入れた。

 どこか誇らしげに宣言し、腹に『支配』の証を刻みこむ。

 その後は悪だくみ。

 鳳の動きを制するため、四葉の欲望を満たすために必要なことを話し合い、学園祭の準備を挟んで実行に移した。

 

 結果的には予想以上、思ったよりずっとうまくいったと言っていい。それだけ四葉の願望が強かったということなのだろうが……。

 切っ掛けを作り出した『願望暴露』が極めて危険だということも同時に証明された。

 

 ――時と場所が噛みあえば、この能力は容易に人を歪めてしまう。

 

「四葉が、こうなった責任は取るよ」

 

 自分に言い聞かせるように呟く。

 目の前の少女はそれを自分なりに解釈し、口元を綻ばせる。

 

「でしたら、ご主人様。私にご褒美をください」

「ご褒美?」

「はい」

 

 答えた四葉がスカートを捲る。

 控えめな茂みをたたえた股間が露わになる。本来ならそれを隠すためのショーツは先程、鳳への責めに使ってしまったために存在しない。

 あの時点でも十分すぎるほど濡れていたそこは今、溢れるほどに湿っている。

 

「抱いてください」

 

 潤んだ瞳が知尋を見つめる。

 彼女の胸中に迷いはない。ただ本人から破瓜を求めているのがわかった。

 それでも、儀式としてもう一度尋ねる。

 

「処女は一生に一度きりだよ」

「だからこそ、今、ここであなたに捧げます」

 

 迷いない言葉に知尋は頷いた。

 二人のやりとりにふっと笑った鈴が、室内の壁に設置された引き戸を開ける。雑然と置かれた道具の中に、投げ技練習用のマットが二枚。

 手早く敷いてやれば即席のベッドとしても機能する。

 

 鈴が気を利かせて壁に背を預ける。

 彼女に目で謝意を示し、知尋は四葉と至近距離で向かい合った。

 

 優雅な物腰。

 あらためて見ても、四葉はただの女の子ではない。仕草ひとつ、ただの立ち姿でさえお嬢様めいた風格を感じるし、制服の着こなしにも清潔感が見て取れる。

 すっきりと澄んだ瞳にはこれまでの理性的な光の代わりにどこか挑戦的な意志の光を感じるが、それがまたこれまでとは別の凛とした雰囲気を引き出している。

 

「ご主人様」

「四葉」

 

 右手を伸ばして彼女の髪を梳いた。

 琥珀色のカチューシャを着けたショートへア。きちんと手入れをしているらしく、質感は滑らかかつ艶やかだ。

 四葉はそれをうっとりと受け入れていたが、ふと、何かを思ったように鈴へ視線を走らせる。続いて投げかけられたのは知尋への問い。

 

「……髪は、長い方がお好きですか?」

「ん……どちらかというとそうかな」

「そうですか。では、私も伸ばすことにいたします」

 

 いじらしい言葉を聞きながら、彼女の髪から手を離した。

 両手で彼女の肩を抱くと、ぴくりと震える。

 

「んっ」

「大丈夫?」

「はい……。その、身体が敏感になりすぎているようで」

 

 鳳の時のような嫌悪はどこにもない。

 四葉を抱き寄せて唇を合わせる。彼女は初めてのキスにも動揺を見せず、知尋の胸に手を添え体重を預けてくる。従順な反応だ。

 無垢な少女の見せる淫らな反応に、遠慮なく舌を割り入れた。

 この娘の場合は多少、乱暴にした方が喜ぶだろう。そう思い、貪るようにその唇と口内を味わった。

 息をつく暇もないようなキス。

 唇を離した時には四葉の息は荒くなっていた。しかし同時に、その瞳には果てしない官能の色が宿っている。

 

 お姫様抱っこの要領で彼女の身体を持ち上げ、マットに押し倒した。

 

「きゃっ」

 

 可愛らしい悲鳴を聞きながら制服に手を伸ばし、素早く――生地やボタンを傷つけないように配慮しつつ――上着とブラウスをはだけさせる。

 上品にレースをあしらった黒いブラが現れる。

 デザイン的にもサイズ的にも真里亜に近いだろうか。どちらも真里亜よりはやや大人しいと言えるが。

 

「着やせするタイプなんだ」

「……姉が姉ですので」

「そういえば、そうだね」

 

 ブラのホックを外し、上にずらして直接胸を揉む。やはり、敢えて荒々しさを感じる手つきを心がけたが、四葉の反応に苦痛の色はなかった。

 被虐の快楽。

 加虐愛好者――サディストの本性を受け入れた彼女だが、だからこそ、主人である知尋からは嬲られたいのだろう。そうすることで支配、被支配の関係を好む自分自身を肯定することができるから。

 

 乳首を強めに抓り、股間に直接指を入れて膣癖を擦る。

 

「はぁん!」

 

 四葉は何度も何度も大きな喘ぎ声を漏らした。

 こういうところも姉に似ている。そう思ってちらりと鈴を見ると、彼女もどこか苦笑気味にこちらを見ていた。

 

 ――四葉を、いっぱい可愛がってあげて。

 ――はい、もちろんです。

 

 敏感になりすぎているというのも真実だったらしく、指と舌で嬲るうちに四葉は前後不覚なほど蕩けていた。

 

「これ以上待たせるのも悪いから、そろそろ挿れるよ」

「はぁ、はぁ……はい。お願いいたします」

 

 ズボンを下ろして下半身を露出させ、膜の残る四葉の膣内へと一気に突き立てた。

 かすかな抵抗を突き破り、肉の棒が奥まで侵入する。

 

「―――っ!?」

 

 声にならない叫びをあげた四葉に構わず、知尋はすぐにペニスを引き抜き再び挿入。全力でピストンを開始した。

 淫らな粘液の音、それから肉と肉が擦れる音、かすかな衣擦れ。

 そこに二人の息遣いが混ざり合い、淫らな世界を構築していく。

 

 射精は容赦なく膣内へと行った。

 

 初めてのセックスに流され、身を任せるのがやっとの四葉に精を注ぎ込んだ後はそのまま二回戦。

 ペニスを引き抜くこともないまま都合三度、膣内射精を行った後は、ぼんやりと開いた四葉の口に無理矢理突き入れフェラチオをさせた。

 四葉は、三度目の行為でようやく絶頂した。

 

 四回目の射精は顔面へ。どろどろの白濁で、容赦なく彼女の顔を汚す。

 どちらが主でどちらが奴隷か、彼女の心に刻み付けるように。

 

「……ありがとう、ございました」

 

 行為が終わった後、四葉は鈴がウェットティッシュ等で身体を拭ってくれるのに任せながら、知尋に感謝の言葉を口にした。

 

「これからもよろしくお願いいたします、ご主人様」

「うん。これからもよろしく、四葉」

 

 ……こうして、鈴と鳳、四葉を巡る騒動はひとまず収束した。

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