処女膜の再生自体は難しい行為ではない。
確か、通常の医学でも可能だと聞いた覚えがあるし――愛華のような『落とし物』の治癒能力を借りればもっと簡単に復元できる。
あとは真里亜だって、その気になれば自身の処女膜を『自己治癒』できるはずだ。
「……そう考えるとさ、初めてなんて何の意味もないみたいでちょっとヤだよね」
「ふふ。案外、姉さんも実はご主人様が初めてじゃなく、膜を再生したことがあったりするかもしれませんものね?」
「鈴さん?」
「なっ!? わ、わたしは本当に知尋くんが初めてだもん!」
鈴の瞳が「信じて欲しい」と全力で主張してくる。
それだけでは騙す意図があるかどうかイマイチわからなかったが、もともと、本気で疑うつもりもなかった。
もちろん、愛華や真里亜や李狐、華のことも。
……まあ、敢えて正直に言えば、真里亜なら一度や二度くらい、自慰で膜を破っていてもおかしくないとは思うが。
「いかがでしょうか、ご主人様?」
逸れかけた話を四葉が引き戻す。
ほんの少しだけ不安そうな表情を浮かべながら。
「もちろん、ご主人様に抱かれることには何の不満もございません。必要とあれば膣以外の場所をお好きにお使いくださっても構いません。ですから」
「……大丈夫」
知尋は数秒の間を置いてから答えた。
努めて優しい笑顔を作って四葉に告げる。
「反対しないよ。再生をしてくれて大丈夫」
「よろしい、のですか?」
「うん」
なおも心残りがあるように四葉。
それに一度頷いてから、息を吸って答える。
「……理事長と四葉がするのは正直、嫌だよ。僕の物になった子を、形だけとはいえ人に渡したくなんてない」
大切な物は独り占めしたい。
自分の女――というと多少気恥ずかしいが――を人に抱かせる趣味はない。主導権を四葉が握るとしても、できれば交わらないで欲しいのが本音だ。
加えて言えば、四葉の申し出は常識的にも正気ではない。
知尋との子を鳳の子だと偽る――それは婚約者である鳳に対する、これ以上ない裏切りだ。あるいは、「真実を伝えないこと」がせめてもの優しさだと言えるかもしれないが……。
既に四葉が、取り返しのつかないレベルで狂っていることは疑いようがない。
しかし。
「二回も処女を失うなんて辛いこと、自分で考えて、覚悟してくれたんだよね。……僕の、僕達のことを考えて」
許可するだけの知尋より実行する四葉の方が辛いのは当然。本当はしたくない、と彼女が思ってくれていることは態度でわかる。
鳳との行為、および破瓜が必要なのも確かだと思う。
二人が関係解消するなら不要だが、そうすると知尋達は鳳に対するアドバンテージの一部を失う。また、解消への道筋によっては鈴と同じく四葉も家から勘当され、逆上した鳳が知尋達を退学処分――なんて可能性もありうる。
鳳が四葉と関係を続けたいなら、そうさせてやった方がリスクは少ない。そのためには四葉が不貞を働いた証拠は不明瞭にしておく方がいい。
これを覆すには力が要る。
鳳を敵に回しても、四葉が家を追い出されても大丈夫と言える力が。
しかし、そんな力は今の知尋にはない。
なら、いったい何の文句が言えるだろう。
「……ご主人様」
せめて感謝を示そうと精一杯を口にした知尋に、四葉が涙を浮かべた。
「もちろん、嫌なものは嫌だ。だから、僕は限界ギリギリまで別の方法を考えると思う」
「はい。……いずれにせよ、今すぐの話ではありません。念のため膜の再生は早めに行うにせよ、実行するのは私の卒業後になる可能性が高いでしょう」
猶予はある、と。
泣きながら四葉が笑い、潤んだ瞳で知尋を見つめてくる。
そんな彼女に、思わず右手が伸びた。
……頭を撫でるのは嫌がられるだろうか。
年上であり、本質的にはSな彼女。
さすがに本格的な愛玩行為は避けるべきかと躊躇ったところ、四葉の方から頭を寄せてくれた。
子供のような甘え方をしてくる彼女の頭を優しく撫でる。
そんな光景を見た鈴が、目を細めて呟いた。
「四葉って、ちょっとファザコンなところあるもんね」
と、腕の中で、かすかにむっとする気配。
「姉さんにだけは言われたくありません」
「わたしはお父様のことそこまで好きじゃないもん。年上趣味はあったけど、今は年下の方が好きだし」
「……あはは」
反対側から胸を押し当てられた知尋は苦笑するしかない。
この姉妹、特にS性を開花させ攻撃的な性質を持つようになった四葉の扱いは、知尋にとっても未知の領域だ。
姉妹間でこれなのだから、真里亜達に引き合わせたらどうなるか思いやられる。
更なる精進の必要性を感じつつ、
「二人とも。用事もあるって言ってたけど」
「あ、うん」
「ええ、そうです。私と姉さんを、ご主人様に抱いていただきたいと思いまして」
これは殆ど予想できていた。
「いいけど……ここで?」
静まり返った生徒会室を見回す。
学園祭に向けて多少片付けもしたものの、ここは基本的に普段の雰囲気のまま。机や椅子の配置も、コーヒーメーカーの位置も、四葉ら生徒会メンバーが長い時間を過ごしてきた雰囲気そのものだ。
窓の外からは陽光が射し込み、学園祭を楽しむ人の姿を見ることもできるのに。
主に四葉に向けて尋ねると、問題ないとばかりに首肯が返ってくる。
頭を撫でられたままなのに気づいてバツが悪そうな表情を浮かべ、しかし離れようとはせずに彼女は言う。
「構いません。今の私は、生徒会長である前にご主人様の奴隷です。たとえ公衆の面前で服を脱げと言われても、従うのが務めだと認識しています」
誰かさんと違って、それで喜ぶ趣味はありませんが。
付け加えられた言葉に鈴が笑う。
ふわふわと、それでいて瞳には情欲の炎を宿らせながら。
「気持ちいいのに。……まあ、それはともかく。鍵は閉めたし、カーテンも閉めればいいだけでしょ? それに、ちょっとくらいドキドキする方が興奮するよ」
「それは同感です」
なおも息の合った掛け合いを見せつつ、姉妹は同時に知尋を見てくる。
「さあ、ご主人様」
「えっち、しよ?」
「……そこまで言われたら、断れるわけないですね」
カーテンを閉め、外からの視線を遮断。
屋外からにせよ他の窓からにせよ、距離的が離れているためそこまで心配はないはずなのだが、念のためである。
姉妹がうきうきと作業する間に、知尋はプレイの構想を練る。
鈴がいるから、羞恥寄りの方がいいだろうか。
「鈴さん、四葉。お互いの服を交換してくれるかな?」
「服を」
「交換、ですか?」
知尋の命令に顔を見合わせる二人。
四葉は当然ながら学園の制服姿だ。ブレザーにスカート、ブラウス、ワンポイントは臙脂色のリボン。
一方、鈴は私服。キャミソールの上からセーターを羽織り、下半身は動きやすいスウェット。豊かなボディライン的に色々ギリギリだが、持ち前のセンスか、鈴は近所からちょっと遊びに来ました的に着こなしている。
姉妹の身長差はそこそこ。
四葉も小さくはないが、鈴の背がかなり高いのだ。しかしまあ、なんとかなるだろうと思う。
「ちょっと面白そう」
「かしこまりました。仰せのままに」
鈴が楽しそうに、四葉は粛々と自らの服を脱いでいく。
先に脱ぎ終わったのは、やはり鈴の方だった。ボタンを外したりする手間がないのと、あとは当人がノリノリのせいだ。
「知尋くん、下着はどうするの?」
「サイズが大丈夫そうなら交換して欲しいです。欲を言えば靴まで」
「おっけー。四葉もいい?」
「ええ。……姉さんの服を着るのは少々不服ですけれど」
言いつつ、四葉も手を止める様子はなかった。
「む。わたしが四葉の下着つけるのは無理かも。しょうがないから、そこはキャミをそのままにするね」
ということで、上の下着はそのままに。
鈴は量販品のキャミソールで、色は淡い黄緑。
一方、四葉はふんだんにレースが使われた黒いブラだった。いつもの四葉の印象とはだいぶ違う、むしろ鈴や真里亜のような趣味。
下手をすればブラウスから透けてしまいそうだが。
「そっか、勝負下着かー」
「……別に、構わないでしょう。ご主人様にお見せするためです」
「いいと思うよ。でも、ゆーちゃんの趣味じゃなさそう」
「あの人は白の方が好きでしょうね。どうせ、そのうち『新しい私』に染めてみせますが」
言って、四葉は嗜虐的に笑った。
「さて、できたよ」
ブラ以外、ショーツまで交換した鈴と四葉が立つ。
鈴の服を着た四葉の方は問題なし。大きめのセーターとスウェット、肩から覗くブラ紐によってラフな印象を受けるのがなんだか新鮮だ。
制服を着た鈴の方は、どうしても窮屈だったらしい。ブラウスのボタンは三つ目までで断念し、ブレザーもボタンを留めずに羽織っている。お蔭でブラウスの隙間からは彼女の臍が覗く。
「私の制服で、そんなはしたない格好を」
「まあ、仕方ないよ。それじゃあ二人とも……」
「はい」
「うん」
むっとした四葉を宥めた後、プレイの方針を伝えれば、二人は多少目を丸くした後で了承してくれた。
「ふふ。なんだか、高校生に戻ったみたいでどきどきする」
生徒会室入り口正面、奥の椅子に腰かけた鈴が呟く。
普段は四葉が座る場所に別の人物がいるのは、生徒会に入って日が浅い知尋にも違和感を覚えさせた。
同じ制服、顔立ちだって似ているのに全然違う。
ブラウスを押し上げる胸や、軽く開いた足から見える黒いショーツが、鈴の色気を過剰なほど強調しているせいだ。
「知尋くん、しよ?」
無邪気に、妖しく鈴が誘う。
背後から深い、呆れたようなため息が聞こえた。
「自分だって生徒会長だった癖に」
四葉だ。
生徒会室の入り口に背を預けながら、自分の身体を抱きしめている。その瞳はじっと鈴に向けられている。
彼女が漏らした言葉の意味、それは。
「生徒会長って、誰が?」
「もう! わたしだってば! もう何年も前の話だけど!」
鈴が憤慨した。
「すみません。なんだか、ちょっと信じられなくて」
「ひどい。高校生の頃は真面目だったって前にも話したのに」
もちろん覚えている。
頭から疑っていたわけではないが半信半疑だった。
しかし、どうやら紛れもない事実らしい。
――姉妹揃って生徒会長で、学園の理事長と婚約。
四葉が生徒会長になった理由には、姉の後を追ったこともあるのではないか。
知尋はそんな風に思い、微笑ましさと胸の痛みを覚えて首を振った。
「知尋くん?」
「いえ、なんでも。……鈴さん、下着を脱いで足を開いてください」
「うん」
言われた通り、上履きを脱いでショーツを脱ぐ鈴。
脱いだショーツは無造作に制服のポケットへ。椅子に深く腰掛けて足を開き、斜め下に投げ出すようにする。
左右の親指と人差し指でスカートを捲り上げれば、陰毛に覆われた恥丘が露わになった。
「わたしも剃った方が良かったかな?」
「どっちでもいいですけど……あれ、その話しましたっけ?」
「ほら、昨日の夜。愛華ちゃんや李狐ちゃんがつるつるだったの見たの」
「……そうなのですね」
答える鈴に続いて四葉の声。
「今度、私も剃ってきます」
最初は李狐だけだった剃毛の習慣が広まっていく様に奇妙なおかしさを覚えながら、知尋も行為の準備。
借り物のスカートは汚れないよう外してテーブルに置き、ショーツを軽くずり下げてペニスを露出させる。
アイコンタクトで「挿れる」ことを伝達。
鈴が頬を染め、こくんと頷くのを確認後、迷いなく膣内へ突き入れた。
「ふぁっ」
甘い声。
そういえば前戯なしで挿れてしまったが、幸い、ある程度の潤滑は既に確保されていた。鈴が分泌させた愛液だ。
「相変わらず濡れやすいんですね」
「えっちな子は、嫌い?」
「好きですよ。可愛いです」
「……えへへ」
囁いてやると、膣がきゅっと軽く締まった。
やや不安定な体勢のまま、鈴と椅子が倒れないよう気をつけながら腰を動かす。生の膣肉を楽しむようにゆっくりと。
ぺろっと、すぐ近くにある鈴の唇から舌が飛び出す。
求められているのを察してキスをし、貪るように唇を押し付け合っては短時間で離す。
息継ぎの時間を確保しつつ焦らし焦らされ、もどかしさすら楽しみながら身をよじって性器に快感を送り込む。
鈴の顔は上気していた。
普通のセックスではなく、露出プレイを楽しんでいる時の表情。
彼女も生徒会長だったなら、この生徒会室に思い入れがあるはず。それを鈴は羞恥、興奮に変換しているのだ。
ピストンを続けるうちに膣からは愛液が溢れ、ペニスの動きに掻き出されて椅子や床を汚す。それすらもスパイスとなって交わりは激しさを増す。
ちらり、と、キスの合間に背後を見ると。
「ん……はぁ……っ」
四葉が、知尋達の行為を見つめて自慰をしていた。
左手で服の上から胸を揉み、右手はスウェットの下に潜り込んでいる。サイズの緩いスウェットは行為によってだんだんずり落ちているようで、黄緑色のショーツが半分、顔を覗かせてしまっている。
目が合うと、物足りない、という感情が伝わってくる。
心を読まれたことに気づいた四葉は恥ずかしそうに頬を染め、かすかに視線を知尋から逸らした。
しかし、自慰をする手は止めない。
貪欲なところも姉妹そっくりだと思った。
と、鈴の両手が伸びてきて顔の向きを正面に戻される。
「知尋くん。今は、わたしを見て?」
「すみません、鈴さん。マナー違反でしたね」
謝り、再び鈴にキス。
舌も絡めて淫らに唾液を交換し、こちらからもより速いペースで突き立てる。
喘ぎ声を上げる暇もない。
唇が塞がったまま二人は激しく交わり、愛液の雫を飛び散らせながら絶頂した。
射精の瞬間、知尋は鈴の膣を強く貫いた。
ここは生徒会室で、今、鈴が着ているのは四葉の制服。どちらも極力汚さないようにする必要があるため――だったのだが、それが強く官能を呼び起こしたらしい。鈴は強く身を震わせ、知尋に身体を押し付けてきた。
椅子ごと倒れそうになるのをなんとか堪えて。
絶頂の余韻に浸りながら身体を離す。
「……どうでした、鈴さん?」
「……えへへ。うん、気持ちよかった。人の服、着るのも案外興奮するんだね」
「そうですね」
この間、華の下着を穿かされたことを思い出しながら頷いた。まあ、異性間で行うのとは興奮のベクトルがまた違うのだろうが。
「あ、結構汚しちゃった。……ごめんね、四葉」
冷静になって椅子と床を確認した鈴が申し訳なさそうに言う。
これまでと違いからかう色のない発言に、息を荒くした四葉がとぎれとぎれに答えた。
「別に、構いません。でも、ちゃんと吹いておいてくださいね。私が……ご主人様に、抱いていただいている間に」
「……ふふ。うん、わかった」
鈴はにっこり笑って行為の後始末にかかる。
とりあえず、そちらは任せることにして、知尋はテーブルを迂回して四葉へと歩み寄った。
自慰で一度絶頂したのだろう、頬を赤く染めた四葉は軽く駆け寄るように身を寄せてきて、囁いてくる。
「ご主人様、私にもお慈悲をくださいませ」
「もちろん、言われるまでもないよ」