少女が、ドアに手を突いて尻を突き出す。
脱げかけだったスラックスが小さな音を立てて床に落ちる。黄緑色のショーツが剥き出しになり、クロッチ周辺にできた染みまではっきり見えた。
「外の音、聞こえる?」
「……聞こえます。少し遠くから賑やかな声が」
顔が触れそうなほどドアに近づいた四葉。彼女には入り口付近の様子がはっきりわかるはずだ。もし誰か通りかかればすぐわかる。
そうして、話し声や足音が四葉にスリルを生む。
鍵は閉めているから『ほぼ』危険はない。しかし、ルシル達生徒会メンバー等、用のある人間がノブに手をかけるかもしれない。また、職員室に置かれた合い鍵を使って誰かが入室してくる可能性だってある。
それが、興奮する。
他人に見せられない行為。
かつての鈴や、さっきの四葉が自慰にのめり込んだのも同じ。いけないこと、恥ずかしいことだから余計に気持ちいい。やめないといけないと思う気持ちが強い快楽を生み出す。
「もしこのドアが開いたら」
「……っ」
「四葉の姿、誰かに見られることになるね」
背後から囁いた知尋は、瞬間、四葉の頬が更に紅潮するのを見た。
指を伸ばす。
下着越しにクロッチをなぞり上げるとぴくりと震える。はぁ、と切なげな吐息が漏れるのも聞こえた。
「脱いだものを着るくらいはできるかもしれないけど、鈴さんと制服を交換する時間はないよ。生徒会長が、学園祭中に私服でいるのを見たらどう思うかな?」
「……見られ、たら」
今、四葉が穿いているのは鈴のショーツ。
ここに来る前に自慰をしていたというだけあって、ショーツの湿り具合はかなりのものだ。明らかに色の変わっている部分が広く存在している。
そこを押さえつけるように指を這わせた。
四葉の愛液をふんだんに染み込ませ、下着としての役割を奪う。くちゅくちゅと音が鳴り始めれば、音をより大きくしようと責めたてる。
「気持ちいい?」
「気持ちいい、ですっ……ご主人様」
尋ねると従順に答える。
「生徒会室で恥ずかしいことしてるのに? 誰かに見られたら軽蔑されるってわかってるのに、気持ちいい?」
「はい、気持ちいいですっ!」
ドア前に人がいれば聞こえてしまいそうな声量。
思えば、これほど素直に責めを受け入れてくれる相手は初めてかもしれない。真里亜はしてほしいことを割と口に出してくるし、李狐は奉仕を好むため行為の主導権を握ってくることも多い。華は、従順さという意味では論外。
Sっ気の強い四葉が最も従順だというのも不思議な話だ。
四葉が身体を、心を差し出せば差し出すだけ、知尋は責めのスピードを速くしていく。一度絶頂して敏感になっている身体は強い責めでも問題なく受け入れ、刺激を快感へと変換する。
次第に四葉の身体が強く震えはじめる。
重心が二本の足から両腕に移り、冷たいドアに額を押し付けるように体重を預ける。
「どうして欲しい?」
「……せてください」
「ごめん、聞こえなかった。もっと大きな声で」
「いかせてくださいっ。ご主人様の手で、四葉を絶頂させてくださいませっ」
淫らな懇願を聞いた知尋はラストスパートにかかった。
殆ど、ショーツへ指を突き立てるように秘所を刺激。空いているもう一方の手では四葉の尻肉を掴み、やわやわと揉みながら休まず責め続ける。
合間、四葉は何度も淫らな喘ぎ声を漏らした。
彼女は跳ねる身体を必死に抑え、ドアにもたれて快感に浸る。
そうなれば、絶頂の時はすぐそこだった。
「あ、ああああああっ!」
びくんっ。
ひときわ強く四葉の身体が跳ねると、腕が滑ってドアからずり落ちそうになる。慌てて抱き留めれば、四葉は知尋の腕の中でびくびくと絶頂を続けていた。
「あ、はぁ……」
恍惚の表情。
年上の女性が見せる淫らな顔に、ぞくぞくと嗜虐心が湧き上がる。鈴は行為中の顔もなぜか安心する印象が強いため、四葉のそれはまた気分が違った。
四葉を抱いたまま数歩の距離を移動。
絶頂の余韻が落ち着くのを待たずにテーブルへ横たえるとショーツを抜き取る。脱がせたショーツは、鈴が手を伸ばしてきたので手渡した。
「ご主人様……?」
ぼんやりと見上げてくる彼女に微笑みを返す。
「四葉は寝ているだけでいいから」
「え、や……っ」
先程までの行為により、とっくに勃起していたペニスを挿入する。
昨日ぶりの膣内。
一気に奥まで突き入れると嬌声が上がった。
「はあぁっ」
四葉が堪えきれないというように首を振り、テーブルの上で手を彷徨わせる。
「気持ちいいよ、四葉の中」
「あ、ありがとうございま……んんっ!」
会話の最中にピストンされ、彼女は言葉を途切れさせた。甘い声が恥ずかしいと思ったのだろう、片手を持ち上げて自身の口に押し当てる。
そんな仕草も可愛らしく、いじらしいと思う。
だからもっと喘がせたい。もっと鳴かせたい。
「まだ二回目だからかな。狭くて、キツいくらいだ」
「そんな、ことっ、言わないでくださいっ!」
口では拒否しながらも身体はきっちりと反応している。
愛液はとめどなく分泌されて乾く様子はないし、狭い膣内も知尋が入ってくるのを拒む様子はない。むしろ喜びから震えてペニスを締め付け、更なる快感を与えてくれていた。
「膜を治す前に、たっぷり味あわせてもらうよ……っ」
「は、はいっ。どうぞ、存分に、ご賞味くださいませっ」
懇願の声が上がった直後、きゅっと、ひときわ強く膣が収縮する。
格別の刺激により限界を迎えたペニスの先端から、とめどなく精液が溢れて四葉の膣内に注ぎ込まれた。
「あ、あああ、ぁふ……」
四葉もまた、ぐったりとテーブルに横たえたまま息を吐き出す。
心地よさそうにしながらも、さすがに絶頂には至らないかと思った直後、彼女はびくんと弾けるように声を上げた。
「ん、ふ、ああぁっ!?」
「っく」
再びペニスに強い締め付け。
どうやら、ワンテンポ遅れて絶頂を迎えたらしい。ということは、絶頂のトリガー、最後の一押しになったのはピストンではなく別のもの。
ふっ、と。
二人の行為を見守っていた鈴が笑みをこぼした。
「四葉ったら、精液出されてイっちゃったんだ」
膣内射精の感覚。
鈴の見立てでは、それが絶頂の切っ掛けだという。
物理的な刺激ではなく精神的な快感、喜びの感情が呼び起こしたもの。四葉が知尋に抱かれることを良しとしているある種の証明。
面と向かって尋ねれば否定するかもしれない。
あるいは本人もわかっていなかったかもしれない。
しかし、もし鈴の見立てが合っていたら嬉しいと思った。
「膣内射精(なかだし)じゃないと物足りなくなるくらい、躾けてあげるよ」
射精の収まったペニスを引き抜きながら囁くと、快楽に濁った瞳が知尋を見上げた。
強く深い忠誠心が知尋の胸に届く。
「はい。末永くよろしくお願いいたします、ご主人様」
刹那。独占欲が湧き上がって胸を焦がした。
今、この場で何度も精液を叩きつけ、子宮に注ぎこんで彼女を孕ませてしまいたい。腹が大きくなった彼女を鳳に見せつけ、もう手遅れだと言ってやりたい。
そんな、あさましく自分勝手な感情が荒れ狂う。
鳳と交わるという四葉の宣言を聞いたせいだ。
やっぱり、理屈では納得しても感情では納得できない。
考えよう。四葉を必要以上に汚さなくて済む方法を。
「四葉、まだ動ける?」
「あ……ええ。激しい行為で無ければ、問題ありません」
声をかけると、四葉は答えながらよろよろと身を起こす。
気怠そうな様子ではあるものの、確かにまだ大丈夫そうだ。
「じゃあ、その。鈴さんと一緒にしてほしいことがあるんだけど」
「?」
「?」
姉妹は良く似た表情で顔を見合わせた。
そうしてまずは軽い準備から。
この際、鈴と四葉には服を全部脱いで全裸になって貰う。そして、知尋は椅子をいくつか並べてそこに寝そべる。なお、もちろん足を投げ出すにあたって靴は脱いだ。
すると、膝立ちなら届くくらいの位置にペニスが屹立する。
「ふふ、これを」
「私達でご奉仕すればよろしいのですね……?」
膝立ち状態で、姉妹が近づけてくるのは――胸。
姉である鈴、それから真里亜にも劣るものの、四葉の胸もかなりのサイズを誇っている。それは、挟んで扱くには十分な大きさだと言える。
となれば一度、試してみたくなる。
豊かな胸を誇る二人の女、しかも姉妹である彼女達に、両方向から奉仕される。
ダブルパイズリ。あるいは姉妹パイズリとでも呼べばいいか。
「ん……」
「しょ」
左右から鈴と、四葉の胸が知尋のペニスを包み込んだ。
視線をそちらに向ければ、二人の胸がペニスを中心に押し付け合い、潰しあって形を変えているのが見えた。潰れた胸は僅かに縦方向の大きさを増して密着する面積を増やす。
ふにふにと。
柔らかな物の間で揉まれ、揺さぶられて快感が走る。
膣に比べると締め付けが足りず、オナホールの類よりも柔軟性が高い。
それだけに鈴達は強く胸を押し付けあわなければペニスを固定できず、しかし押し付けあえば押し付けあうだけ自身にも快感が走って集中できなくなる。
結果、頻繁に身をよじることで予期せぬ揺らぎが生まれ、それが刺激となっていた。
何よりもビジュアル的なインパクトが強い。
征服欲が満たされる。女性の、母性の象徴である乳房を二人分も、自己満足のためだけに使っている。
そんな行為で鈴達も喜びを、快感を得てくれている。
「いかがですか、ご主人様?」
「気持ちいい、知尋くん?」
「うん。凄く気持ちいいよ」
そう答えるだけで二人の顔がぱっと輝く。
「じゃあ」
「たくさん気持ちよくなってくださいませ」
言って、鈴達は競うように胸を動かし始めた。
上半身を近づけて押し合うだけでなく、両手も使って胸を支える。自分の胸を押すことで相手の胸も押し込み、それが結果的に扱くのともまた違った刺激を生み出す。
「んんっ」
「はあっ」
次第に鈴達自身も自慰の快感に浸っていく。
三人で、少しずつゆっくりと絶頂に上りつめていく。
しばらくの間、生徒会室には三人の淫らな声だけが響いた。
「ご主人様。私、もう……っ」
「ん。わたしもそろそろ限界」
「いいよ。じゃあ二人とも、胸をもっと激しく動かすんだ」
指示を受けた鈴と四葉がラストスパートに入る。
動きを続けることを考えない、短時間だけ持てばいいという激しさで。
「あ、イクっ」
「私も、ああ、もうっ」
「うん、僕も行くよっ」
直後、二人の絶頂の声と同時に白濁液が噴き上がった。
発射された精液は胸の合間、覗く先端部分から溢れ出して二人の肌を汚す。それをまず鈴が掬い、四葉も倣うようにして指にとって口に運んだ。
かなりの量があった精液も二人が奪い合うとあっという間になくなった。
はあ、と息を吐いた鈴が声を上げた。
「……四葉、もう一回テーブルに寝て?」
「? こう、ですか?」
「うん、そうそう。じゃあ、お邪魔するね」
「っ、何をっ」
慌てる四葉をよそに、鈴は妹の身体の上に完全に乗ってしまう。顔と顔を向かい合わせに、胸で胸を押しつぶすように。
とろとろの秘所は、立ち上がった知尋の側に向けられる。
「鈴さん、いいんですか?」
「うん。……挿れて。もう一回、したくなっちゃったから」
「わかりました」
頷いた知尋は遠慮なく鈴に挿入した。
「んっ。……気持ちいいっ」
軽く声を上げた鈴は、舌を伸ばして四葉の唇に触れる。
そのまま唇を舐め上げてから中に割り入れ、その口内を味わった。
「ん、んっ」
ちゅぱ、れろっ。ちゅぷちゅぷ……。
姉妹のレズキス、先程口にした精液の交換を見ながら知尋は腰を振り続け、鈴の膣内に子種を注ぎ込んだ。
☆ ☆ ☆
行為の後は、三人であらためて後始末をした。
できるだけ念入りに、くまなくチェックし、精液や愛液による汚れを拭った。併せて窓を開け換気も行った。外に射精したのは一度きりで、それもなるべく密閉していたお蔭か、テーブルや床の絨毯、衣服の汚れは大したことなかったのが幸いである。
知尋が身につけていた愛華の制服も無事だった。
知尋はショーツとスカートを履き直し、鈴と四葉も自分の服に着替え直した。衣服の乱れも気になるレベルではない。特に、鈴の服装はもともとラフなのであまり気にする必要もない。
気になるのは膣内に出した精液の始末か。
「二人とも、大丈夫そう? その、匂いとか」
普段、プレイしているのはマンションの寝室なので気にならないが、この生徒会室にはシャワーも着替えもない。
ウェットティッシュは備え付けのものがあったので使ったが、鈴達は入り口付近の汚れを清めただけでショーツを穿いていた。
それでどの程度匂うものなのか、奥から漏れたりしないのかはよくわからない。
いざとなれば、各種訓練場やグラウンド付近に設置されたシャワー室を利用した方がいいかもしれない。学園祭期間中のため開放されている施設は限られているだろうし、どうしても移動の必要はあるが。
「大丈夫だよ。いざとなったらわたしは『消えれば』いいし」
「姉さんの大丈夫は参考になりませんが……ご心配なく。挙動さえ不審でなければ、そうそう怪しまれることもありません」
「もしバレたら?」
「脅してでも言うことを聞かせればいいでしょう」
物凄く過激な発言だった。
「ああ、四葉もすっかり汚れちゃったね……」
「適当な嘆き方をしないでください。……ただ、一番大事なのは自分だと吹っ切れただけです。あの時、由司さんを嬲ったことで、私の中の『何か』が決定的に変わってしまったのでしょう」
以前の四葉も自分を蔑ろにしていたわけではないだろう。
しかし、誰かのためになろうと、少しでも力を尽くそうと思うあまり、優先順位が転倒しかけていたところはあったのかもしれない。
今はもう、他者のため無理をすることを止めた。
四葉は一瞬、自嘲めいた笑みを浮かべるとすぐに消し、代わりに堂々とした笑顔で宣言した。
「私の能力、時間は、私のためのものです。親しい人のために尽くすのは吝かではありませんし、結果的に賛同を得るためなら奉仕もしましょう。ですが、赤の他人のために無償で動く必要性は、もう感じていません。私が心から尽くしたいと思うのはご主人様だけです」
勝手でしょうか、と。
呟くように付け加えた彼女に鈴が笑顔で首を振った。
「いいんじゃない、勝手で。文句言われたら『自分のことは自分でやれ』とでも言ってあげたら?」
「……姉さん」
簡単に言ってのける姉を四葉が眩しそうに見つめる。
「もう『幸運』も取り戻したんでしょ?」
「ええ。……今日も、おまじないを求めてきた子はいましたけど」
「やってあげたの?」
「もちろん。ただのおまじないをして差し上げました」
「そっか」
微笑みあった二人は四葉の能力『幸運』『幸運分与』について教えてくれた。
「……なるほど。前に僕がしてもらったおまじないは」
「ええ。私の幸運の何十分の一か、百分の一かのお裾分け、です」
類稀な幸運でも、そこまで分割してしまえば気休めにもなるかわからない。
もともとおまじないの域を出ていなかったのだから、本当にただのおまじないになっても大差ない。
おまじないの効果が切れたと騒ぐ者もいないだろうし、そもそも切れた証明もできないというわけだ。
「でも、僕は四葉のおまじないに助けられたよ」
「そう、なのですか?」
「うん」
真里亜と愛華の喧嘩を止められたのには、あのおまじないの効果もあったと思っている。
すると、四葉は嬉しそうにくすりと笑った。
「でしたら、それはきっと気休め。ご主人様の気の持ちようの問題でしょう」
それから彼女は表情を改めて。
「もしお望みでしたら、あらためて、私の『幸運』の半分をお分けいたしますが」
「……半分、か」
四葉の『幸運分与』は、分け与える幸運の量を選ぶことができない。
誰かに分け与える場合は必ず、四葉も含めた人数割りになる。一人に幸運を与えれば四葉の運は半分に、二人に与えれば三分の一、九十九人に与えれば百分の一になってしまう。
実質、四葉自身が『幸運』の恩恵を得るには誰にも分けない、という選択しかない。
そう考え、知尋は首を振って答えた。
「いや、いいよ。四葉が傍に居て、自分の『幸運』で僕を助けてくれれば」
何も、能力を使って分け与えるだけが手助けではないだろう。
近くに居るだけで自然に、『幸運』が恩恵を、おこぼれを与えてくれることだってあるはずだ。
「……私の『幸運』の分、ご主人様が不幸を受けることもあるかもしれませんよ?」
「そうなったら、その時だよ」
どのみち、それが四葉のせいだと断定する術はない。
降りかかった火の粉は払わねばならないのだから、文句を言わずに払えばいい。知尋にとって、四葉はもう味方と決まっている。
決定的な確執や裏切りでも無いかぎりは彼女を信じるだろう。
ふう。
四葉が息を吐いて苦笑した。
「……敵いませんね、ご主人様には」
「うん。知尋くんはこういう子だから。四葉も覚悟しておいた方がいいよ」
「そのようですね」
何やら笑いあう姉妹。
どうやらダシにされたようだったが、なんだか悪い気はしなかった。
それから、知尋は鈴達を残して生徒会室を出た。
「ご主人様のシフトは終わりましたから、私が代わります」
「わたしも、もうちょっと四葉と話していくね」
「わかりました。それじゃあ、また」
廊下に出た後は、しばらく宛てもなく歩きながら行き先を考える。
愛華のいる医務室に顔を出してみようか。いや、それなら先に服を着替えた方がいいか。女装したまま歩くのはもう十分だ。
と、足を1-Cの教室、そしてそれより奥にある更衣室へと向けたところで。
「あ、和泉君!」
誰かに呼び止められて足を止めた。
そこに立っていたのは見知らぬ二年生。
いや、顔見知りだ。直接話したことは殆どないが、彼女は学園祭実行委員の一人。確か、委員会主催イベントの一つである――。
「和泉君も|ミスコン(・・・・)にエントリーさせてもらったから、よろしくねっ」
「……へ?」
生徒による生徒の人気投票、いわゆるミスコンの担当者だった。