※この作品はR-18です。

儚き異能は心を映す   作:緑茶わいん

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第百二十話 宴の一幕、姉と恋人と 3 ★

 楓は部屋に戻るとすぐ元の格好に戻った。

 ピザと一緒に購入したドリンクの残りをコップに注ぎ、楓はベッドの上に、知尋はテーブルの前に座って話を続ける。

 

「寮まで送った後、彼女の部屋で少しだけ話をした」

「愛華の部屋に入ったんだ」

「ああ。彼女に良く似合う小奇麗な部屋だった」

 

 知尋もまだ入っていないのに。

 つい芽生える嫉妬の感情を、今はそんな場合じゃないと抑え込む。

 

「短い時間だ。多くの言葉を交わしたわけではないが、ある意味では十分だった」

「ある意味?」

「私達は相いれないと、お互いに理解できたということだ」

 

 相いれない存在。

 

「敵同士、ってこと?」

「そう言ってもいい。共存ができない間柄ではないがな」

 

 楓はそう言ってコップに口を付ける。

 コップの中の液体が徐々に減っていくのを、知尋はただ黙ったまま見つめていた。

 やがて、ドリンクを完全に飲み干した楓が知尋を振り返る。

 

 お互いの顔が向き合った状態。

 なのに視線は合わない。

 楓の瞳を見ることができないから『読心』も発動しない。

 その事実に知尋は思わず歯噛みする。

 

「無駄だ」

 

 静かな声。

 

「昔から何度も試して、いい加減理解したと思っていたが」

「何か変わったかもしれない、と思ったんだ」

「変わった、か」

 

 楓が身を起こしてベッドを降りる。

 彼女はテーブルの上に空のコップを置くと、知尋の手にしているコップを取り上げた。そうして止める間もなく中身を口にし、それもテーブルに置く。

 

「何を――っ」

 

 一瞬の早業。

 コップをテーブルに置いた際の屈んだ姿勢のまま楓の腕が伸びてくる。身体が軽く引き寄せられて、唇が重なる。

 柔らかい。

 男っぽいところのある楓だが、彼女の唇は武骨な男のそれでは決してなかった。

 そして、それはほんのり香る彼女の匂いも。

 

 ……母の匂いに似ていると思った。

 

 本能的に安心する匂いに思考が落ちそうになる。その隙を突いて楓の舌が口腔に侵入、先程のドリンクが流れ込んでくる。

 思わぬ刺激に咳き込みそうになるのを堪えてなんとか飲み干す。

 そうして気づけば、いつの間にか楓に押し倒されていた。

 

「姉、さん?」

「知尋」

 

 姉の声はいつもと変わらない。

 なのに、どうしてか甘い状況に感じてしまう。

 

 血の繋がった肉親同士。

 彼女を抱くことなど一度も考えたことはない。もちろん、真里亜達と出会い、女の子を抱く喜びを知った後も含めて。

 実際に身体を重ねた経験ももちろんない。

 なのに、この状況はなんなのか。

 

「姉さん」

「何も言わなくていい」

 

 楓は左手で知尋の肩を押さえたまま、右手を股間へ伸ばしてくる。

 十分に鍛えられていながらも、独特のしなやかさを残している女性の指が、ズボン越しにペニスを撫でた。

 

 ――途端、下半身に甘い痺れ。

 

 身体が反射的にびくっと震える。

 反射が収まると唇から吐息が漏れた。そうしないと今の突発的な官能を処理できなかった。

 ただ服越しに一撫でされただけなのに。

 先の刺激はまるで、敏感になったペニスを直接舐められたようだった。

 

 錯覚だと思いたい。

 

 しかし。

 指が再び股間を這うと、先程と同じかそれ以上の快感が生まれた。一度目程の驚きはさすがになかったが、それでも身体の震えと吐息までは止められない。

 気持ちいい。

 知尋が関係を持ってきた幾人もの少女達。その中で最も『責め』に長けている少女、御宿華の手管もここまでではない。

 というか、誰かと比べることがそもそも間違っているのかもしれない。そう思ってしまうほどの快感だった。

 

「今夜は、私がお前を慰めてやろう」

 

 すぐ近くから声がした。

 女性からそんな風に囁かれれば、どうしたところで期待が生まれる。

 たとえ実の姉でも女は女。

 

 ――知尋は、生まれて初めて肉親に性欲を感じた。

 

 楓の言動からして行為の意思は明らか。

 おそらく主導権を渡してはくれないだろうが、彼女の指や肌に触れることができる。本来なら決して味わうことのできない快楽を貪ることを許される。

 今夜は。

 一夜限りなら、流されてしまっても構わないか。

 

「っ!」

 

 強く身をよじって衝動的な思考を振り払う。

 肩に乗せられた腕は振りほどけなかったが、圧力は緩んだ。両腕を無理矢理持ち上げて楓の身体を押しのけようとする。

 手のひらに触れる柔らかさについては考えないようにしながら。

 

「いらないし、そうなる理由がわからない」

「理由、か。確かにそうだな」

 

 だが、と呟く楓。

 右手が再び股間を撫でた。

 今度はより明確に、さわさわと何度も往復するように。

 

「だが、男と女が快楽を貪るのに理由が必要か?」

「ぁっ!?」

 

 声が我慢できなかった。

 知尋は己のペニスが硬くなり始めるのを感じた。また同時に両腕の力が緩み、そこを振り払われて押さえ込まれた。

 この体勢はまずい。

 股間、男性器は男にとって最大の急所である。女を責めるときは性感帯であり武器でもある器官だが、ひとたび責められる側に回れば、どうしようもない弱点へと成り下がる。

 手荒な方法でも形成を逆転しなければ取り返しがつかなくなる。

 思うも、知尋と楓の間に筋力差はあまりない。身長ではむしろ負けているし、女性とはいえ大人一人分の体重は決して軽くない。

 無理矢理ではどうにもならないのは今さっき証明されたばかり。

 

 ……せめて会話で場を繋ぐしか。

 

「姉さんは、こういうこと好きじゃないと思ってたけど」

「ああ、好きではない。処女ではないが、経験は二、三度だけだ。歳と比較すれば決して多い方ではないだろう」

「なら、どうして」

「お前はこういう方法が好きかと思ってな」

 

 言いながら、楓は指を這わせてくる。そうやって何気ない仕草で刺激される度に堪えがたい快感が走り思考が止まる。

 ファスナーを下ろしてペニスを取り出す気配がないのが救いだが、それでこれだけの責めができるのでは油断や慢心とは言い難い。

 回らない頭でなんとか返答を作り出す。

 

「僕の、ために?」

「お前を心変わりさせるために、だな」

 

 鈴を諦めないのは下半身的な事情からだ、とでも考えたのか。

 短絡的な発想だと言いたいところだが、実際のところそれはほぼ正解だ。知尋の気持ちは少し複雑ではあるものの、鈴が知尋から離れない理由としては身体の問題が大きなウェイトを占めているはず。

 ならば、すっきりさせてしまえば。

 他の女などどうでもよくなるくらいの快感を与えてしまえば、知尋から鈴を諦めることもあるかもしれない、と。

 無茶苦茶なようでいて、実現できればある意味有効な方法かもしれない。

 

 そして、おそらく楓には自信を持つだけのテクニックがある。

 

「経験は少ないが、お前のことは十分、満足させられるだろう」

 

 ハッタリだとは言えなかった。

 

「僕は姉さんの言いなりにはならない」

「なら、それでも構わない。言ったように、お前と彼女の関係を妨害する気はないのだから」

「なら、これは」

「これはあくまで姉弟のスキンシップ。誰憚るようなことではない」

 

 そんなもの、ただの言い訳に過ぎない。

 だが、楓はもしかしたら本気でそう思っているのかもしれない。

 

「心変わりする気がないなら抗う必要もないだろう」

「……わかった」

 

 しばらく考えてから、知尋はそう答えた。

 その返事を合図に本格的な責めが開始された。

 

「行くぞ」

 

 声と共に、楓の顔が落ちてくる。

 キスをされるのかと身構えれば、唇よりやや下、首筋あたりを舐められた。ぺろりと舌が動くたびに鋭い快感が背筋を駆け抜ける。

 片手間にズボンのホックが外されファスナーが下りる。

 下着からペニスが露出させられ、遂に生の指先が竿に触れた。

 

「ふあっ!」

 

 女の子のような声が上がった。

 先程までよりも更に一段鋭い刺激。どこまでも甘やかで直接的な快楽に、真里亜達からの奉仕によって感度の上がった知尋の身体は必要以上の反応を見せる。

 しかしもちろん、楓の責めはその程度で止まらない。

 さすさすと指先が竿を撫でる。舌が首筋を這い回る。空いた左手は服の合間から潜り込んで乳首を抓った。

 

「―――っ!」

 

 三点同時の責め。

 三人の雌奴隷から一斉に奉仕されても、ここまではならないだろうと思える暴力的な快感が溢れる。

 視界が白く染まり、責められている間は心臓すら止まっているのではないかと思える。軽度な絶頂を延々と味合わされているような天国と地獄。気づけばペニスは硬く勃起し、ひくひくとひとりでに震えていた。

 いつ射精してもおかしくない状態。

 

「好きに出していいぞ。下着とブラウスの替えは持ってきている。いくら汚そうが問題ない」

 

 喋っている間も他二点の責めは止まっていない。

 だから、知尋は楓に返事をすることすらままならなかった。

 気持ちいい。気持ちいい、気持ちいい気持ちいい……!

 

「あぁぁっ!」

 

 絶叫と共に白濁液が放出される。

 楓はそれを手で受けるでもなく放置し、飛び散るままに任せた。ペニスが暴れ回った結果、楓のブラウスやショーツ、そして知尋の服にいくつもの染みができた。

 楓の指にもいくらか付着していたが、彼女はそれをブラウスで無造作に拭った。

 

 はぁ、はぁ……。

 

 知尋は、一連の動作を荒い息と共に見ていた。

 思考が蕩けてまとまらない。先の射精量は普段のそれよりも大分多く、寝起きの一発目に相当する量だった。

 考えてみれば、今日はもう何度か精を吐き出しているはずなのだ。

 なのにこれほどの快感。

 しかも、全身が更なる快感を求めているのがわかった。射精しても快感の波が収まりきっていない。もっともっとと求め、次なる絶頂に向かおうとしているのだ。

 その証拠に、射精が収まったばかりのペニスがもう硬くなり始めている。

 

 何故だか、華と『ちさと』とのレズセックスを思い出した。

 

「いや……そうか。女の子の快感……」

「そういうことだ」

 

 通常、知尋が行為の際に感じている快感は、当然のことながら男性的な快感である。基本的に、身体のどこを刺激されようと波はペニスへ向かい、射精という形で放出される。

 しかし、楓が与えてきているのは女性的な快感。

 男の知尋には具体的な感覚を知る由もないが、男と違い『射精』という明確な現象を伴わない女性の快楽はあまり指向性を持たない。気持ちよさは全身を駆け巡り、身を震わせ、絶頂後も波は緩やかに引いていく。

 女の絶頂に理論上の回数制限はなく、男が射精後に感じる奇妙な覚醒感も存在しない。

 先程、知尋が感じたのはそういう「女の快感」なのだ。だから射精しても快感がなかなか引かないし、余韻でペニスが硬くなっていく。まるで何度でも射精できそうな心地よさが身体を包んでいる。

 

 ……男でも、乳首やアナルは女性的な快感に通じているという話は知っていた。しかし、それを味わう日は来ないと思っていたし来なくていいと思っていた。

 なのに、まさか手コキでそれを味わう日が来るとは。

 

「僕、別に女の子になる気はないんだけど」

「私もそんなつもりはないよ。もしそうなっても、お前を軽蔑したりは絶対にしないが」

 

 楓の身体がいったん離れる。

 しかし知尋の身体は快感に浸っており、思うようには動かない。倦怠感から身を横たえたままでいる間に、ぱっくりとペニスを口で咥えこまれた。

 

「な、に――」

 

 犯される。

 形としては口腔にペニスを突き入れている、つまりは犯している状態のはずなのに、まるで主客が逆転したような、仮想の膣に挿入されているような感覚が知尋を襲った。

 じゅるじゅると舌で舐められる感覚は、膣壁をペニスで擦られる感覚に。

 先端をつんつん突かれる感覚は、膣奥をペニスでノックされる感覚に。

 混乱する。

 何もわからなくなる。

 ただ、されるがままに身を任せ、言葉にならない喘ぎ声を絶え間なく漏らして、ほんの数分で絶頂した。

 今回も、楓は射精前に口を離した。二人の身体と着衣が再び精液で汚れていく。

 ただ、もう、そんなことを気にする余裕はないし、必要もないと感じた。

 

「ベッドに行こうか、知尋」

「う、ん」

 

 楓に抱き起され、支えられながらベッドに移動。ついでに着ていた服を全て脱がされ、また楓自身も服を脱ぎ捨てた。

 裸で抱き合う。

 ただそれだけで幸福な性感が走り抜けていく。セックスの後、愛華や李狐が蕩けた表情で抱き着いてくることがあるのは、こういう快感のためなのだろうか。

 

「もう、ペニスに触れる必要もなさそうだな」

 

 呟いた楓は知尋にキスをしてきた。

 唇が触れ合い、舌が絡まり合うと、その感触が何故か二重に感じられるような気がした。キスすると同時にキスされている。二倍が二乗となって全身を溶かす。

 空いた両手は、知尋の両手をきゅっと握った。

 

 ――本当に、どうしてしまったというのだろう。

 

 手を握り合わせただけの行為が酷く気持ちよかった。手のひらですら性感帯になるほど感じ切っているらしい。

 二人は手を握り合ったまま身体を密着させ、お互いの唇を貪った。

 そして、絶頂と射精。

 普段なら限界となる回数を迎えてもなお、ペニスは急速に勃起していく。

 

「まだ、できそうだな。……さすがに挿れさせてやるわけにはいかないが」

 

 握っていた手が解かれ、知尋の身体を持ち上げる。楓の身体が知尋の下に滑り込んで、両手が知尋の乳首に触れる。

 

「やっ」

「今度はここを責めてみようか。そうだな、お前が疲れて眠るまで」

「……そ」

 

 そんなの駄目だ。

 と、言う暇もなく責めが開始。途端に知尋は何も考えられなくなった。

 出るはずのない母乳が噴き出すような錯覚。存在しない乳房が揉み上げられるような性感。もはや完全に女の子のごとく責められ、知尋は息だけで絶叫した。

 

 白濁液が吐き出されると、楓はそれを指ですくって知尋の口元へ持っていく。されるがまま舐めると、もう味なんてわからなかった。

 ただ、全身を揺蕩う快感が、精液を舐める行為とリンクされていく。

 

「さあ、まだまだだ、知尋」

「―――!」

 

 後のことはもう、覚えていない。

 気が付いたら翌朝だった。

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