※この作品はR-18です。

儚き異能は心を映す   作:緑茶わいん

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番外編 淫蕩な製作者 4 ★

「ん……しょ」

 

 知尋と腕を触れ合わせたまま、七瀬がパンツを足から引き抜く。

 完全に脱いだら、彼女はそれを、ぽいっと適当に放り投げる。

 丁寧に片づけられても興ざめだが、それにしても適当だ。思わず苦笑すると、それに気づいた七瀬が似たような顔をした。

 

「ほら。目の前にセックスの相手がいるんだから、もう着飾る必要とかないでしょ?」

「男の気を引いて相手を見つけるために、着てたんですか?」

「そうだよー。もしかしたら、ばったり運命の人と会うかもしれないし。実際、こうやって可愛い男の子に会えたし」

 

 露わになったショーツはブラと同じブルーの、華やかなデザインだった。

 ジャケット、パンツも含め、目的を果たせば全部用済みらしい。

 

「……じゃあ、触りますね」

「ん」

 

 こくん、と七瀬が頷くのを見てから、右手をショーツに差し入れる。

 ゆっくり触れた指に、さわさわと毛の感触。

 それから、ぬるりと湿り気。

 既に分泌されていた少量の愛液を手探りで絡め、優しい手つきで秘部を撫でまわす。潤滑液が示す通り、身体はもう感じる準備ができているようで、七瀬から不快を示す反応は出てこなかった。

 ぴくっ、ぴくっと時折震え、小さな声と吐息を漏らす。

 くちゅくちゅと鳴る音がなんとなく耳に心地いい。

 

「ちーちゃん……っ」

「んむ……ちゅっ」

 

 堪えきれなくなった、というようにキスをされた。

 知尋は、舌を絡めあいながらも指の動きを止めなかった。継続する愛撫に七瀬が身をくねらせ、時には自分から腰を押し付けてくる。

 愛液がとろとろと溢れる。

 遠慮がいらないと察したからか、今度のキスは激しかった。二人の間で、激しく呼気と唾液が交換される。

 そんな、快感を求める動きがやがて途切れがちになる。

 その意味を察した知尋は、指を秘部に突き立て何度も出し入れした。

 激しいスパート。

 絶頂の瞬間、七瀬は可愛らしくも淫らに宣言した。

 

「あ、イク。イっちゃう……っ!」

 

 がくっと力を抜いた彼女がもたれかかってくるのを、慌てることなく支える。

 と、どこか気の抜けた声。

 

「んー、気持ちよかったあ……」

「満足しましたか?」

 

 そういえば、一般的に女性は何回くらい絶頂するものなのだろう。

 七瀬は出先から帰ってきたばかりだし、人恋しさがメインのセックスなら、必ずしも挿入に拘らないかもしれない。

 思う知尋に、にっこりと笑顔が返ってきて。

 

「うん。ちーちゃんに弄ってもらうのはこれくらいでいいかな」

「そうですか。良かったです――ん?」

「え?」

 

 首を傾げられた。

 ついついつられて首を傾げる。

 

「まだ、しますか?」

「え? まだ本番にもなってないよ?」

 

 ちゃんと性欲も強い方だったらしい。

 ……なんとなく、これからも知尋はいわゆる「普通の女の子」と交わることはない気がしてきた。

 なお、愛華は付き合い始めた時点で処女かつ性知識も少なかったので、常識という観点から普通の子から除外している。

 

 手淫は十分、と言った七瀬は口淫奉仕を希望した。甘やかしてあげるって言ったでしょ、とのことで、やはり他人が快楽に浸る姿が好きなようだ。

 後ろに手をつき、足を投げ出すようにした知尋の股間へ顔を近づけていく。

 スカートを捲られ、ショーツが脱がされる。

 

「なんか不思議な感じ。スカートからおちんちんが出てくるなんて」

「そ、そうですね……」

 

 七瀬が気にしていないのもあって、つい忘れかけていたものの、知尋は今、女装状態である。

 ウィッグを付けているし、化粧もしている。

 おまけに服も下着も女性用だ。

 どうしてこうなったかと言えば――割と自業自得な部分もあるのが悲しい。『ちさとモード』になっていないのがせめてもの幸いか。

 

 ……くぷ。

 たっぷりと唾液を溜めた七瀬の口がペニスを飲みこんだ。

 暖かな穴の中、しなやかな舌が触手のごとく蠢く。液体を絡め唇を動かし、様々な刺激を試みながら縦横無尽に愛撫する。

 

「ふあっ!?」

「あ、今の声可愛い」

 

 口を離した七瀬が呟いた。

 確かに、ついつい女の子みたいな声が漏れてしまった。

 不本意ではあるが。

 

「七瀬さんのフェラが気持ちよかったからです」

「……あはは。嬉しい」

 

 一瞬、面食らった様子を見せた七瀬は、すぐに笑顔を取り戻した。

 

「さ。じゃあ、いっぱい出してね?」

 

 フェラチオが再開。

 ここでも、やはり彼女独特のテクニックがふんだんに用いられた。

 七瀬は時折、上目遣いで知尋を見つめては、表情から知尋の感じ方を見る。ペニスの反応と合わせて感じるポイントを把握し、責めに組み込んでいるようだった。

 まずは焦らすように、敢えて少しだけ狙いを外す。

 すると、惜しいと思った直後に正しいポイントへ刺激が来る。弱めに――そうして物足りないと思わせ、即座により強い快感を与える。

 位置と強弱の見事なコントラスト。

 可能にしているのは豊富な経験――それも、タイプの違う相手と交わってきた経験だ。

 彼女は口淫を続けながら、どんどんその技術を洗練させていく。汎用的なフェラテクから対知尋用のテクを導き出し即座に応用する。

 知尋だけを相手に、特化したテクを身に着けた真里亜達とは別の境地。

 

 一定しないリズムが思考を蕩かす。

 強制的に射精させられるのでも、女の子を射精するための道具のように使うのでもなく――されるがまま、けれど心まで委ねながら絶頂する。

 吐き出された大量の精を、七瀬は笑顔で飲み干した。

 

「ちーちゃんのせーえき、美味しい」

 

 ペニスから口を離した七瀬がぼんやりと呟いた。

 潤んだ瞳、濡れて光る口もとが妙に艶めかしく、いったん減衰した射精欲がすぐさま回復し始める。

 

 知尋が呼吸を整える中、七瀬はブラを外して床へと投げた。

 自由になった乳房がペニスを包む。

 サイズ的にはギリギリ。竿をすっぽり包むには足りないが、そのせいか鈴や真里亜とは別の感触が生まれる。肉が余らない分、竿が逃げにくく、しっかり固定されたまま擦られるのだ。

 また、突き出した先端にはキスの雨が降った。

 時には鈴口をぺろりと舐められることも。

 熱心なパイズリにペニスは急速に硬度を増し――一応、我慢してみたものの、十分もかからず射精に導かれた。

 

「ん……若いから、凄く元気だね。それに、いっぱい」

 

 顔から胸元にかけて汚した白濁を、指で掬いとりながら七瀬。

 何度も指を往復して舐めとった後、彼女はほう、と息を吐いた。

 

「調子に乗って二回もしちゃった。……どうしよっか。ちょっと休憩する?」

 

 これで終わりにする選択肢はないらしい。

 まあ、知尋としてもここまでされてしまっては――。

 

「いえ。その、ここでお預けされると僕も苦しいです」

「あはは。いいなあ、そう言ってくれると嬉しい」

 

 微笑んだ七瀬が四つん這いになり、短い距離を移動。

 知尋の隣あたりにごろんと寝転がった。

 

「どうぞ。いっぱい、して?」

「ゴム、つけますか?」

「いらないよ。ピル飲んでるから」

 

 なら、遠慮する必要はない。

 知尋は七瀬の下半身側に移動した。すると、七瀬が自ら両足を開いて股を曝け出してくれる。

 綺麗に整えられた陰毛が、愛液に濡れきらきらと輝いている。

 

 すっと、七瀬の両手が動いて秘裂に触れた。

 左右から指が沈みこみ、ぱっくりと中の肉を開いて曝す。

 

「しよ?」

 

 直接的な誘惑。

 あまりのいやらしさに息が詰まった。

 

 彼女は年下が好みだと言っていた。それなら中には童貞だった者もいただろう。これまでも、そうした男に「ここに挿れて」と示してきたのだ。

 嘲りではなく慈愛から。

 そして、淫らな行為に自分自身が興奮するために。

 

「――はい」

 

 綺麗な女性が、自分の前で股を開いている。

 形容しきれない高揚を感じながら、知尋は七瀬の中へ身を沈めた。

 

「ちーちゃんは、私がリードしなくてもちゃんと入れられたね」

 

 柔らかな肉がペニスを優しく受け入れた。

 とろとろの膣内にゆっくり奥まで侵入すると、きゅっ、と軽く締め付けられる。

 顔を上げて七瀬の顔を見る。

 彼女は悪戯っぽく笑い、知尋に両手を伸ばして引き倒した。

 

「ぎゅーっ」

 

 全身も、ペニスも抱きしめられた。

 左右に開いていた足が持ち上げられ、知尋の腰に絡みつく。もうどこにも行かせない、というように。

 間近に迫った七瀬に尋ねる。

 

「……いつも、こうやってるんですか?」

「んーん、いつもじゃないよ。慣れてない子が相手の時は、あんまり抱きついちゃうと動きの邪魔になっちゃうし」

 

 だから特別、と囁いてくる。

 言い方が上手い。自尊心を傷つけず、むしろ的確に満足させてくる。

 

「ちーちゃんのこといっぱい甘やかして、ついでにいっぱい甘えちゃう」

「――いいですよ、もちろん」

 

 上半身に七瀬の身体を強く感じ、下半身も緩く拘束されながら腰を動かした。

 初めは、合わせようと動く七瀬とタイミングが合わなかったものの、少しずつ両者の呼吸が合っていく。

 浅く腰を引いては肉棒を打ち付け、膣内を犯す。

 お互いに余計なことは考えない。荒い呼吸と喘ぎ声が、他に誰もいない室内に響く。

 

「あんっ……このおちんちん、気持ちいいかも……っ」

「あはは。お世辞でも嬉しいです」

 

 そう言った知尋の頬に七瀬の唇が触れた。

 

「馬鹿。お世辞じゃないよ」

 

 結局、真偽の程はわからなかったが――身体が熱くなる。

 知尋は自分から七瀬の唇を奪った。フェラの後だから遠慮しているのか、七瀬は首を振って離れようとするものの、強引に舌を割り入れて口内を嬲った。

 そのうち、向こうからも求めてくれる。

 

 はぁっ……はぁっ……。

 

 熱が籠もる。

 お互いの体温が伝わりあい、運動によって更に熱が発生する。お蔭で余計に呼吸が荒くなるものの、二人とも動きを止めることはなかった。

 一夜限りの関係だというのに、精神的な充足を求めあう。

 激しく、何度も何度も出し入れして、やがて二人は同時に絶頂を迎えた。

 

「い……っ」

「くぅっ!」

 

 身を仰け反らせるのではなく、より強く相手を抱きしめる。

 びくびくという痙攣が二人分合わさり、長い快楽の余韻を生んだ。そのまま、眠りについてしまいたくなるほどに意識が蕩ける。

 波が引いた後も繋がったまま。

 

「……ああ、凄い。幸せ……」

 

 ぽつりと、七瀬。

 彼女の言葉には同意できると思ったが、しかしこんな行きずりのセックスで。

 

「七瀬さん。彼氏はいないんですか?」

「ん……いないよ」

 

 どこか切なげな顔でゆっくり首を振られた。

 

「セックスした人と付き合ったこともある……っていうか、だいたい付き合ったけど、長続きしないんだよね」

「そう、なんですか」

 

 こんなセックスをする人と別れるなんて。

 と、知尋の疑問が伝わったかのように、七瀬はぽつぽつと話してくれた。

 

 これまで何人もの相手と付き合った。

 好みの少年や、同年代、年上の男性。何人かは女の子もいた。身体の相性がいい相手もいたし、七瀬が筆おろしをした相手もいた。

 性行為は上手くいっていたが、皆、七瀬から離れていった。

 

 性格的な問題だった。

 七瀬はセックスが好きだし、プレイ中は甘えたいし甘えられたい。しかしクリエイターの性か、私生活まで束縛されるのを嫌う。

 

 二人で決めたデートの日以外にサプライズと称して訪問され、作りかけだった作品を放置する羽目になったり。

 上手くいっている相手から結婚を申し込まれたかと思ったら「こんな汚い家じゃなくていい家に引っ越そう」と言われたり。

 彼の家でセックスをした後、料理や洗濯を求められたり。

 

 趣味や仕事を馬鹿にされ、いいように扱われることに怒りを表明すれば――相手は相手で、セックス以外に興味がないような七瀬の態度をなじった。

 これ以上はついていけないと、静かに離れていった相手もいた。

 

「私が悪いんだって、わかってはいるんだけどね……。でも、好きなんだもん」

 

 物づくりが。

 だから、専らセフレ的な関係に終始する。短期間関係を持ってはすっぱり解消し、寂しくなったらまた新しい人を見つける。

 それでも、止められない。

 やっぱりセックスも好きだから。

 

「………」

 

 知尋は言葉に迷った。

 ままならないものだと思う。

 しかし、知尋の立場でいったい何が言えるというのか。

 聞いてはみたものの、重苦しいそれを正面から受け止めてやれるほどの責任を負うことは――。

 

「いっそ、僕の奴隷になっちゃいますか?」

 

 だから、明るく冗談としてそう口にした。

 さすがにそれは無理、と明るく笑い飛ばしてもらえるのを期待して。

 きっと、七瀬の性格ならそうしてくれると思ったのだが。

 

 彼女はきょとん、と瞬きを繰り返して。

 

「え、いいの?」

「え?」

 

 思いもよらないことを言い放った。

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