「……さて、誰からにしましょうか? やっぱ愛華さんかしら?」
「私は後でいいよ。誰か先にどうぞ」
「あれ、珍しいじゃん。愛華が譲るとか」
「ほら。その、どんな風になるのかちょっと怖いかなあ、なんて」
いつもの寝室に、マンションにいる全員が勢揃いしていた。
白く可愛らしいブラ、ショーツを身に着けた愛華。
首輪と、大人びたネグリジェを黒で統一した真里亜。
チョーカーを装着したメイド服姿の李狐。
シンプルな白のキャミソールに同色のショーツを合わせ、ピンク色の首輪を嵌めた華。
フリル付きの黒いブラ、ショーツを惜しげもなく晒す鈴。
(皆並ぶと、凄い眺めだよねぇ……)
知尋の中に戻ったちさとがしみじみと呟く。
仮初の身体を出したまま、プレイを客観視するのも悪くないが、この状態だと知尋の快感をちさとも受けられる――らしい。
女の子も好きだというのは嘘ではないようで、彼女の声にはわくわくするような響きがあった。
「あはは、そこまで変なことにはならないと思うけど」
『刺激増幅』と『刺激共有』。
どちらもストレートな効果が発揮されるはず。
「それでも怖いの。だから最初は見てる」
「じゃあ、和泉君が決めればいいんじゃないですか? 私は不参加でも全然いいですけど」
「わかった。じゃあ愛華以外の四人から選ぶよ」
華の言葉を一部無視しつつ頷いて、少し考える。
「じゃあ――真里亜。おいで」
「はい、知尋様」
ぱっと目を輝かせた黒の少女が、ベッド上の知尋に歩み寄ってきた。
怖がるどころか喜々とした様子の彼女を後ろから抱きしめ、指を這わせる。もちろん、新しい能力は両方とも使って。
「んっ……」
「……これは」
真里亜の小さな声と同時、知尋の身体にも快感が走った。羽箒に軽く触れられているような僅かな感触。
「あ……なんか、不思議な感じ」
残る四人も同様の刺激を感じたらしい。
他のメンバーを代表するような形で愛華が呟く。
真里亜が頭を動かして知尋を見上げた。
「私の快感も共有できるのですね」
「みたいだね。僕を対象に含めないとかできるのかな……と、できた」
「んんっ」
「ん、さっきよりちょっと強くなってるね」
首筋、脇、胸やお腹を愛撫しながら念じると、今度は先のような感覚が知尋を襲うことはなかった。
数割増しの快感が五等分され、少女達それぞれに与えられている。
「愛華、どう? 嫌じゃない?」
真里亜を責める手を止めずに尋ねる。
やや乱暴に胸を揉みしだいても、少女に苦痛の色は浮かばない。
「やっ……うん、嫌じゃないよ」
「でもこれ、慣れるまで大変そう」
愛華の答えに李狐が続けた。
自分が触られてもいないのに快感が走るのだから、無理もない。すると、こうして、真里亜が責められるところを見られるのは好都合だったか。
ふぅ……っ。
はぁ……。
室内にいくつもの吐息が木霊する。一人一人が得られる快感は微量ではあるものの、積み重なると効果は表れる。
「もどかしいです……知尋様」
真里亜が身をよじりながら伝えてくる。
触られているのに、いつもより快感の量が少ない――それが焦らしプレイのような効果を発揮していた。
ある意味、抱かれている人間が損をしているような。
使い方には少し気をつけないといけないか。
「じゃあ、もっと激しくしようか」
「あ……んっ」
ネグリジェの内側に手を伸ばし、無毛の股間へ指を直接滑り込ませる。どうやら真里亜はショーツを身に着けていなかったらしい。
十分な湿り気を感じつつ秘所を愛撫していると、ふと彼女の耳が目に入った。
……少し、悪戯してみようか。
ちゅっ。
小さな音を立てて右耳に口づける。
「んんっ!?」
不意打ちに真里亜がびくんと跳ねた。
こちらを振り返られるも、知尋は構わず舌を伸ばした。
表面をぺろりと舐める。かすかに汗の味。変な味や匂いはしないことから、手入れがきちんとされていることを感じた。
「知尋、様……っ。そこは汚いです」
「そんなことないよ。大丈夫」
微笑み返しながら、表面を舌でくまなくなぞった。
愛華達に目をやると、揃って右耳に手をやっていた。ただし、秘部への責めも止めていないので集中しきれない様子。
そんな彼女達を可愛いと思う。
耳穴に舌を差し入れた。ごくごく狭いそこでゆっくりと、極めて慎重に動き回る。これまで少女達からされた奉仕を思い出しつつ、耳責めを慣行。
「あ、ああっ……」
「真里亜、動いたら危ないよ」
「も、申し訳ありません……」
真里亜の顔は真っ赤だった。
刺激自体は分散されている分、さして強くないはずなのだが、普段あまりしない責め方が功を奏したか。
膣内、クリトリス、右耳の次は左耳と刺激を続け――。
「う、ああ……」
はぁ、はぁ、と真里亜は息を吐いている。
気持ちよさそうに表情は緩み、知尋のされるがままになっているが、なかなか絶頂する気配は見せなかった。
さすがに『刺激共有』したままでは刺激が足りないらしい。
中途半端な快感が揺蕩い、イクことも休むこともできないまま生殺しの状態。これはこれで調教としてアリな気もするが、今回の趣旨とは違う。
そう判断した知尋は対策を取ることにした。
「真里亜、イきたい?」
「……はい、イきたいです。知尋様、イかせてくださいませ」
漆黒の瞳が絶頂への欲求を素直に伝えてくる。
「うん。じゃあ、自分で挿れるんだ」
「っ。はい、かしこまりました」
端正な顔が欲情に歪んだ。
たっぷり焦らされた上での騎乗位セックス。
やや変態的な行為に対し、真里亜のM性が如何なく発揮され、彼女は躊躇うこともなく行為に及ぶ。
寝そべった知尋のペニスへと腰が沈み、少女達が揃って深い息を吐いた。
これは、思ったよりも面白いかもしれない。
知尋が一度に抱ける人数には限界がある。同時に挿入できるのは一人だし、指や舌をフル活用したところで二、三人がやっとだ。
身体が一つしかない以上は仕方ないが、人数が増えればそれだけ一人に使える時間が減るのも事実。家事を分担して自由時間を増やしたり、なるべくたくさん抱けるように工夫するのも限界がある。
『刺激共有』はそうした懸念への回答になりうる。
一人を抱きながら、他のメンバーにも快感を与えられる。
他人の快感を分け与えられるだけ、というのもそれはそれで欲求不満があるだろうが、全く何もないよりは格段に良いはず。特に、待ち時間の手持無沙汰が解消できるのは大きいだろう。
「さて……じゃあ、李狐。こっちに」
「へ? あ、う、うん」
真里亜と下半身で繋がったところで李狐を呼んだ。
メイド服のスカートが乱れないよう、気にしながらやってくる彼女に、知尋は顔面騎乗を命じる。
「あ……それって」
一人一人の刺激が足りなくなるなら、何人か同時に責めればいい。
さっきの思考とやや矛盾するというか錯綜する部分もあるが――意図を察した李狐が頬を染めた。
しかし、彼女は逆らわずにこくんと頷く。
メイド服を身に着けたままショーツ――意外にも白だった――を丁寧に脱ぎ、しゅるりとスカートをたくし上げて、知尋に跨ってくる。
無毛の股間が口元に押し付けられる直前で止まった。
「あ、でも……ご主人様。これって息できますか?」
李狐はこの場で唯一、脱いでいない。
メイド服のスカートのまま跨れば、知尋の視界はほぼ闇で覆われ、ついでに空気の循環も悪くなる。
「大丈夫。呼吸できないほどじゃないから」
「わかりました。じゃあ、行きますね」
そっと李狐の股間が顔に乗り、ふわりと周囲をスカートが覆った。
殆ど何も見えなくなった状態で、知尋は感覚に任せ舌を伸ばす。李狐が腰の位置を微調整してくれるのに感謝しつつ秘部を舐める。
「っ」
「あ……これ凄い」
「さすが和泉君。悪趣味です」
ギャラリーから声。
どういうことかと疑問に思えば、続く真里亜の声が説明してくれた。
「挿入されながら舐められているみたいで――っ」
相当アクロバットな体勢を取らない限り、通常ありえない感覚だ。
知尋に触れていない愛華達はもちろん、真里亜や李狐にしても片方は不意の刺激となり、徐々に身体を蝕まれていく。
(……あの、兄さん。私、真里亜さん達の快感受けてみたい)
(ちさと?)
(だって。凄く気持ちよさそうだから……)
頭の中に直接響く声は物凄く恥ずかしそうで、同時に欲情する雰囲気があった。
真里亜や鈴、それに知尋。こんな面々の影響を受けて生まれてきた彼女だから、淫らな行為に積極的なのは当然か。
(ええと。そう言っても、僕が共有したらすぐ射(だ)しちゃいそうだし)
どうしたものか。
考えたら知尋はある方法を思いつく。
(ちさとを『支配』することはできる……のかな?)
(わからないけど、やってみてもいい?)
(もちろん)
李狐の愛液を舐め、唾液を塗し、敏感な箇所を刺激。
リズミカルに腰を動かす真里亜に合わせ、時折ペニスを突き上げる。
そうした責めを続けながら、脳内でちさととの会話を続けた。
(じゃあ、ちさと)
(うん)
心の声で答えたちさとが幻影となり、生の声で宣誓してみせる。
「私は、兄さんの物です。これからずっと――兄さんに『いらない』って言われるまで、兄さんに仕えることを誓います」
「え」
「ちさとちゃん?」
驚いたらしい華達の声。
李狐も不意に腰を浮かせたので、知尋はスカートを捲ってちさとを見た。
妹は、白い裸身を晒しながら床に座り込んでいた。
ブラもショーツも首輪も見つけていない完全な裸。唯一、飾り気と呼べるのは下腹部に浮かぶ『刻印』だけだった。
やはり、アルファベットが折り重なった複雑な模様――ただし形はこれまで見たどれとも異なっている。
「……あはは。できたね、兄さん」
「触ってないと駄目だと思ってたけど、ちさとは特別なのかな」
頬を上気させながら言う彼女に微笑みを返した。
ちさとは右手を持ち上げると『刻印』のある場所に押し当てる。
「感じるよ。真里亜さんの中に入ってる兄さんを」
「そっか」
良かった、と言うのもなんとなく恥ずかしくて、知尋はそれだけを答えた。
新たに現れた裸の少女――BまたはCカップ程度の、バランスの良い肢体に、ペニスがより硬く大きくなるのが真里亜にはわかっただろう。
「当然の成り行き、ですけど少し妬けてしまいます」
呟きが聞こえ、中断していた腰の動きが再開される。
中断する前よりも激しく、大袈裟に動きながらペニスを強く締め付けてくる。
ちさとは、真里亜の下腹部に飲みこまれた知尋のペニスをぼうっと、熱っぽい視線で見つめていた。
「あ、あたしも……っ」
李狐の声がして、再び股間が顔に押し付けられた。
口の自由が利かなくなったため、内心だけで苦笑しつつ、知尋も責めを再開。とろとろの秘部を容赦なく愛撫する。
くちゅくちゅ。
ぴちゃぴちゃ。
はぁ、はぁ。
淫音と吐息の音が室内に響く。
音と声は知尋が責めれば責めるほど、真里亜が動けば動くほどはっきりと、より大きくなっていく。
下ろされたロングスカートの中には李狐の淫臭が満ちる。
股間は、すっかり知尋の形を覚え込んだ真里亜の膣にしっかりと咥えられ、じんじんと強烈な快感を放っている。
「わたし、もう我慢できないっ」
鈴の声だ。
もぞもぞと動く気配の後、真里亜と李狐がぴくんと跳ねる。
堪えきれなくなった鈴が自慰を始め――結果、少女達の得る快感が跳ねあがったのだと、見なくてもなんとなくわかった。
三人分の快感が、ちさとも含めた六人に。
しかし、単純に差し引き半分の気持ちよさとはならないはず。知尋の『刺激増幅』もあるし、それぞれ違う刺激が重複することで相乗効果も生まれる。
そして、残る少女達も。
「……高槻さん、私達もしませんか?」
「え。華ちゃ……んっ」
「嫌だったら振り払ってくださいね。……私も、もう我慢できないんです」
華が愛華を押し倒したらしい。
彼女のことだから、発端は無理矢理でもプレイ自体は優しく責めるはず。
程なくキスの音、二人の官能的な息遣いが聞こえ始めた。
「あ……あああっ!」
「や、これ、凄すぎっ……っ! 感じすぎちゃう……っ!」
六人中五人、幻影のため自慰が行えないちさとを除く、全員が快楽に耽り始めれば、それぞれの快感が六等分されて再分配される。
推定、等倍どころか二乗レベルの快感。
もし『支配』対象の人数が増えてプレイに参加すれば、あるいは個々人がもっと強烈なプレイを行えば、より強く。
「……あはは。これが癖になったら、皆、兄さんじゃないと駄目になっちゃうね」
ちさとの声も甘い。
全員がいつ、絶頂してもおかしくないレベルで昂ぶりながら、その絶頂を求めてより激しく行為を続ける。
ここまで来たら皆、一緒に。
思った知尋は舌とペニスの動きを高速化した。
「あ、ああああ――っ!」
果たして。
嬌声が六つ、重なり合うようにして防音の室内に満ちた。
同時に知尋の視界も白い光に包まれて揺れ、ペニスの先端が爆発するように大量の精を放った。
射精が完全に収まるまでには数十秒の時間がかかり。
「はぁ、はぁ……知尋様」
「ご主人様、凄すぎ。こんなの本当におかしくなるってば」
ペニスから身体を引き抜いた真里亜が左腕に。
跨る体勢をやめた李狐が右腕に縋りつく。
「あー、二人ともずるいー」
「本当だ。ほら、華ちゃんも行こう」
「え、いや、私は」
鈴がふらつく足取りでベッドに歩み寄り、右足に腕を絡めれば。
愛華が頬を染めながら知尋の胸に身体を押しあてる。残った華も渋々、知尋の左足に触れ。
(気持ちよかったよ、兄さん)
幻の身体を消したちさとがそっと、優しく囁いた。
たった一度の絶頂とは思えない快感と心地よい疲れに、皆、そのまま眠りへと落ちていった。