おずおずと両手が伸び、二つの手のひらが平らな形を作る。
知尋がそっと首輪を載せてやると、四葉は品物を顔の傍へと近づけた。
端正な唇からぽつりと言葉が漏れる。
「……首輪」
「安物だけど、ちゃんと新品だよ」
保管状態もそれなりに良かったので劣化も気にならないはず。
傷や汚れがないことは持ち出す前にも確認している。
「いただいてよろしいのですか?」
「もちろん」
真里亜と李狐、華は既にそれぞれの首輪を持っているし、愛華と鈴は奴隷ではない。ちさとは現状、装飾品をつけられないので、残るは四葉だけだ。
かなめ関連のごたごたもあり、首輪を渡していないことに気づいたのがついこの間。
何かの機会に渡せればと常備しておいたのが役に立った。
「四葉も僕の大事な奴隷だから」
「……ご主人様」
「いらなければ捨てるけど」
「そんな……っ。嬉しいです、ありがとうございます」
ぎゅっと、首輪が胸に抱きしめられる。
まるで宝物でも手に入れたように。
長い間、使い道もなく眠らせていた品だが、収まるべきところに収まったのだと思える。真里亜に薦められて買った三つの首輪が、まさか余ることも腐らせることもなく、それぞれ別の少女の手に渡るとは。
これは運命、なのだろうか。
「首輪はできるだけ肌身離さず持っていて欲しいな。でも、絶対に他の人には見つからないように」
形がある分、ある意味『刻印』よりも注意して扱う必要がある。
『刻印』は知尋が念じれば即座に消せるが、首輪は一度見つかれば隠しようがない。親にでも見つかって追及されれば、知尋との関係を解消するしかなくなるだろう。
そんなものを四葉自身に管理させるのは、本当は危ない。
それでも敢えて任せるのは信頼の証であり、同時に、責任を与えることで軽率な行動を封じる意味もある。
騒ぎが起きて困るのは四葉も同じだから、そうそう変な真似はしないだろう。
「かしこまりました。仰せの通りに」
「着けてみてくれるかな」
「はい」
こくりと、四葉が頷いた。
彼女は軽く巻いた状態から一度留め具を外すと、バックルを正面にして首に巻き付けた。ベルトを締めて留め具に通したら――。
「ああ……」
可憐な唇から恍惚の吐息が漏れ、少女はぺたんと床に尻餅をついた。
全裸のまま見上げてくるその姿に、知尋は、真里亜が初めて首輪を着けた時を思い出す。
四葉は真里亜と違い、絶頂まではいかなかったようだが――。
被虐心。
支配される感覚を全身で味わってくれていることがわかる。
と、ちさとが音を立てず歩み寄り、四葉の耳元に唇を寄せた。
「少しきつく締め付けられるのが、首輪を感じられて気持ちいいですよね」
「っ」
四葉の身体がびくっと震えた。
「ちさとって案外、Sっ気もあるんだね」
「私はMの気持ちが良く分かるから。気持ちいいポイントもなんとなくわかっちゃうんだよ」
時々、真里亜が妙に的確に同性を責めるのと同じか。
それにしても、無防備な姿の四葉は妙に嗜虐心をそそる。根はSである彼女をしっかり従える意味でも、このあたりで強めの調教をしておいてもいいだろうか。
「ちさと。ちょっと内緒話があるんだけど」
「うん、一度戻るね」
中に戻ってきたちさとと、四葉には絶対聞こえない形で相談する。
「それじゃあ、四葉。始めようか」
「あ……はい」
既に四葉の身体は興奮し始めていた。
一昨日の件で自慰に狂わされ、更に今、首輪までつけられた。そう考えれば無理もないが――主人に対してだけはMになる体質というのも難儀なものだ。
四葉の前に膝をつき、彼女の顎に指をかけながら知尋は思った。
そこへ、ちさとが再び実体化。
制服姿に戻った彼女は四葉の左にしゃがみこむ。
幻の身体なので、密着していても四葉の動きを邪魔することはない。それを横目で確認してから知尋は尋ねた。
「四葉は、どうして欲しい?」
「え……?」
予想外だったのか、返答は瞬きだけだった。
不思議そうに見上げてくる彼女をじっと見つめ返す。
「私が、決めていいのですか?」
本当は「私が決めないといけないのか」と言いたかっただろう問いに「そうだよ」と頷く。
自分への責めの内容を、自分で決めさせる。
これも調教の一環。
四葉をより知尋の色に染めるための手段だ。
「きちんとおねだりしないと、兄さんは何もしてくれない……っていうことですよ」
耳元でちさとが囁いた。
興奮に頬を染めながら、どこか楽しそうに四葉に告げる。
「どうしますか? おねだりするのが辛ければ、兄さんにオナニーを披露してもいいと思いますよ」
「……ぁ」
声自体は優しいが、四葉にとっては酷く残酷だっただろう。
何をして欲しいか言わないといけない。言わなければ何もしてもらえず、自慰をするしかない。
わざわざこうして時間を取ったのに。
首輪に浮かれていた心に冷水を浴びせかけられたような、そんな気分になったはず。
しかし、同時に。
四葉にM性があれば、この状況に倒錯的な快感を覚えるはず。
「………」
「何でもいいよ、四葉。難しく考えなくてもいい。どんなことでも僕は受け入れるし、受け止めるから」
逡巡する四葉に、せめてもの助けとして囁いてやる。
心を開放しろ、自分を曝け出せと。
言われた四葉は、はっとした表情を浮かべて知尋を見た。瞳の中の揺らぎが徐々に取り払われ、確固たる色を帯び始める。
それでも告げられた声は小さく、
「……犯して、くださいませ」
無理もない。
本来『犯す側』の性癖である彼女には精一杯のはず。
あるいはこうして、あらためて懇願するようなシチュエーションでなければ――彼女の処女を奪った時のように、高揚の中で求められたかもしれないが。
ふっと笑って知尋は尋ね返す。
敢えて意地悪に。無慈悲を装って。
「犯すって、具体的にどうすればいい?」
「何を、どこに、どうして欲しいのか、ちゃんと言わないと伝わりませんよ――四葉さん」
ちさとがすかさず援護射撃。
兄妹であり、事前打ち合わせまでしている彼女は完全に、知尋と息を合わせている。彼女はアメとムチを知尋と分担する役回り。
以前、真里亜が李狐にそうしたように、既に素直になっている奴隷が道を、お手本を示すことでより深く少女を堕としていく。
……はぁ。
複雑なため息を吐いた四葉が再び唇を動かした。
「ご主人様の、おちんちんを……私の中に」
「おちんぽ」
「……っ」
震える四葉に、ちさとは敢えて淡々と。
「おちんぽ、です。おちんちんなんて上品な言葉では駄目です」
「……ご、ご主人様のおちんぽ、を」
促されるまま繰り返す四葉。
元が知尋の命令であり、懇願できなければ快楽を得られない――そうなれば彼女に選択肢など存在しない。
ちさとに反抗するなど論外。知尋に従順に従うちさとを否定すれば、不要と判断されるのは果たして誰か。
「よくできました。じゃあ続きです。こちらも、きちんと『おまんこ』って言いましょうね」
「おまんこ」
上品な唇からその言葉が漏れると、知尋の背筋がぞくっと震えた。
泣きそうなほど瞳を潤ませ、羞恥から全身を震わせながら、四葉がちさとのアシストにより淫らなおねだりを発する。
「私のおまんこに、ご主人様のおちんぽを突っ込んで――ぐちゃぐちゃに掻き回して、中だしして妊娠させてくださいませ」
言った。
声は小さく、たどたどしい部分もあったが言い切った。
言葉を切った直後に涙が溢れ、同時に前のめりに倒れ込む彼女を慌てて支える。
「あ、ああ、ああああ――っ!」
膜を再生する前で良かった。
思いつつ、絶叫を上げる唇をキスで強引に塞ぎ、やや濡れ方の足りない膣へ強引にペニスをねじ込んだ。
目を見開いた四葉が多少の冷静さを取り戻す。
そんな彼女の耳元に低い声で囁いた。
「望み通り犯してあげるよ。何回も、四葉の中に射精すれば――もしかしたら妊娠だってするかもしれないね」
言い終わって腰を動かすと、くちゅりと水音。
今の囁きで興奮した四葉が新たに愛液を分泌したらしい。
数十秒間、口内をまんべんなく味わってから唇を離すと、四葉は甘い喘ぎ声を漏らした。
「あ、ああ……ご主人様」
「いい子だね、四葉」
「はいっ。ご主人様、ご主人様……ぁ」
水音を聞きながらリズミカルに腰を打ち付ける。
無毛の股間が、知尋のそれとぶつかってぱんぱんと音を立てる。痛みが走るほどではないはずだが、羞恥と興奮は否応なくかきたてられるだろう。
もちろん、四葉を抱く知尋自身も。
処女を奪ってからまだ数回。キツさの残る膣の感触と相まって、昂ぶりペニスへ血液を送り込んでいく。
「ああ、凄い……」
傍らのちさともまた夢心地だった。
彼女には今回、知尋と四葉、双方の感覚を共有している。
『刺激増幅』によって増えた四葉の快感の半分――割合、等倍に近い感覚に加え、知尋の男性的性感の半分が受けた彼女が、ある意味一番得をしているかもしれない。
しかし、事前の宣誓によって主従プレイに酔わされた四葉もまた、通常ならありえないレベルで快楽を貪っている。
知尋も、性感が半分になったせいで射精まで持っていきにくいものの、その分だけ長く四葉を味わえる。
と。
「あくっ!?」
不意に四葉の声が跳ね上がった。
顔には驚愕の色。それを見た知尋は小さく微笑んだ。
どうやら、期待していたことが現実になったらしい。
誰か――おそらくは鈴あたりが自慰を始め、その快感が四葉に流れ込んだのだ。
『刺激共有』の効果範囲を複雑に設定できないか、ぶっつけで試してみた結果である。現在、四葉は双方向ではなく一方通行、つまり自分の快感はそのままに、他の少女達の快感は半分ずつ得てしまう状態。
鈴達に連絡する暇はなかったので、彼女らが自分の感覚が鈍いことに気づき、そこから正確に連想してくれるかは賭けだったが。
「感じすぎて……ふぁあ!?」
恥も外聞もなく四葉が喘ぐ。
一昨日も似たような状態になっていたはずだが、一度や二度で簡単に慣れるようなものではない。
一人分以上の快楽に否応なく押し流される。
思考が蕩け、身体は理性でコントロールできなくなり、唇と腰が勝手に動いてしまう。
「四葉、体勢を変えるよ」
「あ、え……そんなっ……っ!?」
正常位で挿入した状態から腰を捻り、四葉の身体を逆転させる。
うつ伏せになった彼女の腰を軽く持ち上げ背後から犯した。
いわゆる寝バックという体勢。この方が腰の位置が高くなるため、下が硬い床の状況では動きやすい。
「ん、ふ、んううっ!?」
四葉は必死に声と快感を堪えようとしていた。
両手で口を押さえるも、完全な効果は上がっていない。
ちさとが悩ましげに息を吐き、四葉に囁いた。
「はぁ……。ふふ。いんですよ、四葉さん。ここには兄さんと私しかいません。どれだけいやらしくなっても、あなたを軽蔑する人なんていません」
また一段、堕ちようとしている少女にとって、その囁きは天使か悪魔か。
「むしろ、本当の四葉を見せて欲しい。それとも、僕にも見せられないかな?」
知尋もまた激しく、容赦なくペニスを突き立て――逆に優しく語り掛けた。
言葉が四葉の耳に、心にゆっくりと染み込む。
「っ。あぁ、ご主人様ぁっ」
「四葉。おまんこ気持ちいい?」
「はいっ、おまんこ気持ちいいですっ。四葉をもっと犯してくださいませっ!」
四葉が叫んだ。
顔を半ば床に押し付けたまま、彼女は腰を上げて尻を突き出す。
両手で軽く全身を支え、知尋が挿入しやすい体勢を作る。
きゅっ。
膣が締め付けられる感触に、知尋の射精欲も高まった。
「四葉さん。イク時は遠慮なくイってくださいね。兄さんもいっぱいあなたを犯しますから」
「はいっ。でも、怖いですっ。このままイってしまったら私、帰ってこれなく……っ!」
「いいよ」
不意に動きを止めて囁いてやる。
「気絶するまでイけばいい。ずっとそれを見ていてあげるから」
「―――っ」
そして。
ずん、と。深くペニスを突き立ててやる。
それが最後の一押しだった。
「あ、イ――あああぁぁぁっ!」
最後まで宣言するのも間に合わず。
残りはただの絶叫に変えて、四葉が身を震わせた。
個室。知尋と四葉とちさと以外いない部屋に声が響く中、知尋は更に動きを続けて四葉を犯した。
そうして、彼女の絶頂から遅れること数十秒。
「んあっ、ああっ、ふああっ!?」
「っ、射すよ、四葉っ」
どくん。
なおもイき続ける彼女の膣に白濁液を注ぎ込んだ。
すっぽりと嵌められた膣内は、知尋の精を余すことなくしっかりと受け止めた。数十秒かけて全てを注ぎ込むと、再び腰を動かし始める。
「やっ、ご主人様っ!」
「ほら、四葉さん。もっとイきましょう? 兄さんもまだまだ物足りないみたいです」
ちさとが恍惚の声で囁いた。
それから。
四葉は結局、一時間に満たない短い間に何回もイった。一度、絶頂して敏感になった身体は際限なく快感を受け入れ、イきっぱなしのごとく身を震わせた。
都合数回、知尋の精を膣に注ぎ込まれた彼女は、行為の後、しばらく動けない様子だった。
「ありがとうございました……ご主人様」
呼吸を整えながら見上げる四葉。
知尋は彼女をそっと抱きしめ、髪を撫でた。
少女の膣からは白濁した液体が少しずつ、外へと溢れ出していた。