※この作品はR-18です。

儚き異能は心を映す   作:緑茶わいん

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第百四十三話 ちさとと華のレズプレイ? ★

「……和泉君?」

 

 顔を覗かせたのは華だった。

 私服姿の彼女は、眼鏡越しに知尋の姿を映すと、目を細めて息を吐く。

 

「じゃ、ないですね。良かった」

 

 知尋も中にいるのだが――というのは言うだけ野暮か。

 華も理解しているはずの事柄を知尋も、そして身体の主導権を握るちさとも敢えて指摘はしなかった。

 ちさとは脚を動かしてベッドにぺたんと座りながら首を傾げた。

 

「華さん? どうしたんですか?」

 

 きょとん、とした表情なのが内側からでもなんとなくわかった。

 ペニスを見られるのに恥じらいは感じているものの、華の来訪自体は拒んでいない。微妙な心の機微が感じられる。

 華は、返事の前にドアを閉じ、ベッドに向かって歩いてきた。

 移動する間も二人の視線は外れない。ちさとを通して知尋の『読心』が発動し、華が抱いている感情が兄妹に伝わる。

 恋慕に似た淡い感情。

 なんと形容するのが適当か知尋は困ったが、強いて言えばバックに百合の花が咲き乱れている、といったところか。

 

「きっと、こういう感じになってるんだろうな、って思ったんです」

 

 ベッドを回り込み、傍らのチェストに眼鏡を置く華。

 余計な物を外した彼女は、あらためてベッドに身を乗り出した。

 

「和泉君にしろ、って言われたんですか? いいんですよ、命令だからって全部聞かなくたって」

 

 ゆっくりと、しかし止まらずに傍までやってくるとちさとの――というか知尋の――手を取る。

 未だべとべどの手のひらを見つめる目も声と同様に優しい。

 

「……せっかくの手をこんなにしちゃって」

 

 手がくいっと引かれたかと思うと、華が口を開く。

 ぺろっ。

 柔らかな舌が精液を舐めとった。苦みにかすかに顔をしかめつつも華は止めず、更に舌を動かして次々に指を清めていった。

 くすぐられるような、微妙な性感を覚えつつ見守ると、そのうちすっかり手のひらが綺麗になった。

 ほう。

 華は息を吐き、あらためてちさとと視線を合わせる。

 

「これで大丈夫ですよ」

「ありがとうございます。でも、これは私がしたくて」

「なら、もっと気持ちいいことしましょう?」

 

 身を乗り出すようにして、華がちさとにキスをした。

 

「んっ」

「ふ、あ……」

 

 突然のことにちさとは軽く目を見開いたものの、動きには逆らわなかった。

 唇を割り開かれ、腰に手を回されてもされるがまま。むしろ自分から舌を絡めながら、華の動きをサポートするようにベッドへ横たわった。

 ちさとの両腕が華の首に緩くかけられると、華はちさとの身体にゆっくりと覆いかぶさった。

 

 ちゅ、ちゅっ。

 

 約十数秒、口内を巡るようなキスが連続して振ってくる。

 都度、息継ぎのタイミングが設けられているため息苦しくはないのだが、目まぐるしい動作に思考が翻弄される。

 気持ちいい。

 同時に、華はキスの最中も目を開いたままだった。

 彼女の頬はかすかに赤く染まっている。きっと、ちさとも似たような状態だろう。羞恥を感じつつも構わず見つめあうのは、知尋自身だと少し躊躇してしまいそうだ。

 甘やかなレズキス。

 知尋が主導する主従のキスとも、華が主導する責めのキスとも違う優しいそれは、華のちさとへの愛情の表れだと思えた。

 

「華さぁん……」

「ふふ。可愛いです、ちさとちゃん」

 

 なおもキスが続く。

 一度ごとに数秒ずつ、唇が重なり合う時間が長くなる。

 そうすると時間に錯覚が生まれ、長いキスを刹那のものと思ってしまいそうになる。蕩けるような時間をもっと、もっとと際限なく求めてしまう。

 それが気持ちいい。

 少女達は身体を押し付け合いながら、互いの唇を貪った。

 

(あ……っていうか、兄さんを放置しちゃってるけど)

 

 行為の合間、ちさとが思念を送り込んでくる。

 

(ごめんね、そのまま夢中になっちゃいそうだった。今からでも代わる?)

(あはは。いいよ、そのまま続けて。これはこれで楽しいし)

 

 後で入れ替わりが発覚して華に恨まれたくはない。

 たまには、華にもこういう役得があってもいいだろう。今後は今まで以上に、彼女と過ごす時間も増えるのだろうし。

 思い、知尋はついでに『刺激共有』の範囲を調整した。

 他の少女達との共有をカットし、華と自分の間でだけ双方向に共有する。こうするとお互いの快感が混じり合い、溶けていくはず。

 

 女性器がなく男性器がある知尋の身体でも、少女の快感がきっと味わえる。

 

 現に、共有の仕方を変えたことで快感の質が変化した。

 姉、楓から無理矢理絶頂を与えられた時に似た、しかしそれよりずっと緩やかな波。自然と吐息や声が漏れてしまいそうな快感が痺れとなって身体を走る。

 ベッドに寝たままマッサージを受けている時に近いだろうか。

 ちさとの快感をただ受け入れる立場の知尋は、そのまま波に身を任せ、心を揺蕩わせた。

 

 数分後。少女達がキスを止めて言葉を交わす。

 

「はぁ……華さんってキス、上手いですよね」

「ありがとうございます。この間、高槻さんにも褒められましたよ」

 

 新しい能力を始めて性行為に使った時か。

 あの時の愛華は、華に愛撫されて可愛らしく喘いでいた。女の子同士のプレイにとやかく言うつもりはないものの、少しばかり嫉妬めいたものは感じてしまう。

 

「ふふ。それで、愛華姉様は兄さんより気持ちいいって言いましたか?」

「……いえ。知尋君とするキスの方が好き、って言われました」

 

 ちさとの問いにしゅん、として答える華。

 その答えに思わずほっとした。愛華に悪気がなくても、華と比べられて劣るとなったらへこまずにはいられない。

 しかし、もっとキスを練習しようと密かに思う。

 

「仕方ないですよ。愛華姉様と兄さんは恋人同士なんですから」

「じゃあ、ちさとちゃんはどうですか? 私と和泉君、どっちが好きですか?」

「それは、難しいですね。私は兄さんとキスできませんし」

 

 同じ身体に共存している以上、こればかりは仕方ない。

 ちさとは優しく笑い、続けて言った。

 

「恋人を作るつもりもありません。ただ、もし自分の身体があるのなら、兄さんの子供が欲しいなって思います」

「あ……」

 

 華の顔がさっと曇る。

 

「でも、華さんのことも大好きですよ」

「ちさとちゃん!」

 

 兄さんと一緒に、と続けたちさとの声を遮るように、華がちさとの身体に密着した。

 彼女はそれからいったん身を離すと、ちさとの上半身の着衣を脱がせ始める。

 

「あ、華さん。恥ずかしいです」

「大丈夫。ちさとちゃんの身体は綺麗ですから」

 

 かなりプレイに入り込んでいるが、これは後で振り返った時に華は死にたくならないだろうか。

 と、思うものの、指摘すれば知尋が殺されそうなので干渉はしない。

 セーターとブラはあっという間に脱がされ終わった。

 露わになるのは当然、知尋の平坦な胸。しかしそれでも華は愛おしそうに指を這わせてみせる。

 

「んっ」

 

 きゅっと乳首が抓まれ、ちさとが声を漏らす。

 

「ふふ。敏感ですね、ちさとちゃんの乳首」

 

 感度が高いとしたら、原因の大部分は華だろう。

 華は、男性ゆえに小さな乳首を指でこね回してしっかりと勃起させると、そこへふっと息を吹きかけた。

 

「ふぁっ」

 

 ぞくっと背筋が震える。

 そこへ彼女の顔が近づいてきて乳首を口に含んだ。

 舌先で転がされると、なんともいえない心地になる。同じ快感を味わっているちさとは、そうしないといられないという様子で華の身体に腕を回した。

 それでも責めは止まらない。

 ちさとの反応を見ながら、より弱い責め方を探るようにして舌が蠢く。

 

「あ、あああっ!?」

 

 やがて、ちさとが大きく身体をくねらせた。

 絶頂に似た軽い衝動が駆け抜ける。それを見た華は満足そうに微笑み、溜まった官能を吐き出すように息を吐いた。

 

「責めてる側も責められてる側も一緒に気持ちよくなれる……なんて、和泉君を褒めるのは癪ですけど、女の子同士にぴったりの能力ですよね」

 

 ちさとと快感を共有している華は、ちさとが得たのと同じだけの快感を得ていた。

 SとM、というか「タチとネコ」の関係性を変えないまま両者が気持ちよくなれる、という意味では確かに『刺激共有』はレズプレイと相性がいい。

 しかし、この行為はレズプレイでありながら、普通のレズとは明らかに異なる点がある。

 

「あの、華さん」

 

 ちさとが腰を持ち上げ、『それ』を華の下腹部へ押し付けるように主張する。

 

「私、あそこが切ないです」

 

 あそこ、と形容されたのは当然、女性器ではなくペニスだ。

 今、ちさとはショーツを穿いていないため、華には勃起したモノの感触が割合ダイレクトに伝わっているはず。

 それを複雑そうな表情で受け止めた華はちさとに尋ねる。

 

「したい、ですか? ちさとちゃん」

「はい。したいです。私、華さんの中に挿れたいです」

「……わかりました」

 

 しばしの逡巡の後、華は仕方なさそうに頷いた。

 両者の位置が逆転する。

 華がベッドの上に寝そべり、股を開く。ちさとは彼女の下半身に指を伸ばしてスカートを捲り、その内側にあるショーツへ手をかけた。

 前面とサイドで異なる色合いを持ち、正面にリボンのワンポイントがついた品。

 

「可愛い下着ですね。どこで買ったんですか?」

「駅前のランジェリーショップですよ。……って、なんだかちょっと恥ずかしいですけど」

 

 言いつつも華の表情は嬉しそうに見える。

 きっと、同じ内容でも、知尋から聞かれるのとは全然意味合いが違うのだろう。

 

「それじゃあ、華さん」

「……はい」

 

 いつになく華がしおらしい。

 素直に股を開いたまま、華はペニスの侵入を待ち受ける。瞳はどこか期待に潤んでいるようにも見えた。

 彼女の秘所も既に濡れ、期待に打ち震えている。

 

(ふふ。兄さん。ちょっとだけ役得だって思わない?)

(それは、まあ)

 

 こんな従順な華は普通なら見られないだろうし。

 

(でも、華さんが期待してるのは兄さんのおちんちんだから、っていうのもあると思うよ。だって)

 

 何度も受け入れてきて身体に馴染んだ形だから。

 続く言葉を敢えて告げず、ちさとはペニスを華へと宛がった。彼女がぐっと腰を沈めると、挿れる感触と挿れられる感触とが同時に襲ってくる。

 

「あ、これ……」

「思ったよりも……っ」

 

 少女二人がそれぞれに呟く。

 口を開きっぱなしにした華が吐息と共に毒づいた。

 

「こんなの……っ、ペニスの快感が癖になったら和泉君のせいですから……っ」

 

 言いながら、きゅっとシーツを掴む彼女の表情はどこまでも可愛らしい。

 

(ちさと、華をいっぱい気持ちよくしてあげて)

(うん、もちろん。言われなくてもそのつもりだよ)

 

 ちさとがゆっくりと腰を動かす。

 ペニスを根元まで挿入したら、先端付近まで引き抜く。少し動くたびに膣とペニス、双方の快感が襲ってきて、ちさとの身体が小さく震える。

 これではすぐに出てしまうのではないか。

 そんな思いが生まれたが、意外にもピストン運動は長めに続いた。

 

 どうやら、女の性感は直接射精には繋がらないらしい。

 ちさとが極力、制御できる範囲の動きに留めていることもあって、少女達は少しずつ淫らに蕩けていった。

 決して止まることはなく。

 身体の感覚が間接的なものに留まっている今の知尋には、自分が抱く側なのか抱かれる側なのかもわからなくなる。

 

「ちさとちゃあん……」

「華さん、可愛いです……」

 

 愛しさに切なさ、そういったものが溢れる。

 いつしか華も自ら腰を振り、この非日常的な快楽に溺れていく。

 ペニスには断続的に快感が送られ溜めこまれる。それは、全身を包む女の恍惚と共に二人、いや三人を蝕む。

 やがて。

 

「華さんっ、私、もうっ……」

「私も、もう駄目です、一緒に、一緒にイきましょうっ?」

 

 二人の動きが早まる。

 後先を考えない様子で下腹部をぶつけ合い、寝室にぱんぱんと音が響いた。それに混じって聞こえるのは二つの甘い喘ぎ声。

 男の介在しない独特の世界が、不意に均衡を崩し――。

 

「あ、あー――っ!」

 

 少女達が同時に叫んだ。

 身体の奥、女性なら子宮があるであろう辺りで何かが弾ける。ちさと、華がそれぞれ身を仰け反らせ、ペニスが限界を超えて爆発。

 どぷっ、どぷっと連続して多量の精液を吐き出していく。焦らされる形になった分だけ溜まっていたようだ。

 

 はぁ、はぁ……。

 

 呼吸を華と重なり合わせながら、ちさとがペニスを引き抜いた。

 

「……気持ちよかったです、とっても」

「良かった。ちさとちゃんが喜んでくれて」

 

 華はそう言うとゆっくり身を起こす。

 絶頂した直後なのだから横になっていればいいのに――と、彼女はおもむろにちさとのペニスへと手を伸ばす。

 

「これ、綺麗にしますね」

「あ、じゃあ、私にもさせてください」

 

 頷いたちさとが華を再び押し倒して69の体勢へ。

 少女達の交歓は、痺れを切らした李狐が呼びに来るまで続いた。

 

「二人とも、するのはいいけど、お風呂はちゃんと入ってよね! いつまでもご飯にできないでしょうが!」

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