「ん……しょ」
ご主人様の目になった知尋から命じられ、李狐は彼に跨った。
知尋は寝間着を脱いで全裸になり、ベッドの上で仰向けになっている。定期的に剃って毛を取り除いているペニスはまだ殆ど硬くならず、ぺたんと倒れたまま。
そこに、李狐はメイド服を身に着けたまま腰を下ろす形になった。
ふにっ。
「あ……っ」
ショーツ越しに柔らかなペニスを感じ、小さな声が漏れた。
ご奉仕。
李狐はペニスを手で扱いたり、フェラチオしたりといった行為のつもりで申し出たのだが、知尋から命じられたこれは。
「どうして、メイド服のまま素股、なんですか?」
「ん……興奮するから、かな」
答えになっているようでなっていない。
……こんな方法で本当にいいのだろうか。
李狐にしてもスカートのせいでペニスとの接触部がわかりづらいし、もし射精できたとしても服が汚れて――。
「あ」
だから、か。
何度も知尋に抱かれ、命令され、男子の心の機微も少しは分かってきている李狐は、そこでピンと来た。
綺麗な物を汚す。
メイドとしての李狐を征服する。それも李狐を本人の意思で動かし、肉棒に奉仕させて服ごと白濁に染める。そういうことなのだと。
――理解すると、羞恥と興奮から顔が赤くなる。
普段、真里亜や鈴のことをとやかく言ってはいるものの、李狐だって性癖的にはマゾだ。少なくとも、知尋を相手にしている時は。
他の男ならともかく、彼に支配されるのならそれは喜びになる。
「わかり、ました」
主人がそれを望むなら。
メイド服の一着や二着、どれだけ精液浸けになろうと構わない。特に――知尋は知らないだろうが――今日着ているのはもともと李狐の物だった一着だから、余計に被虐的な喜びがある。
李狐は潤んだ瞳を一瞬、知尋に送ってから奉仕を始めた。
ゆっくりと、ショーツに覆われた秘所を擦りつけるように動かす。
勃起していないペニスはふにゃふにゃで、強く押し付けても快感は得られない。指や口を使えるなら全体的な刺激で効率よく勃起させられるが、手を使わず素股で気持ちよくしようとするなら根気よくやるしかない。
強すぎないように、かといって弱すぎないように。
知尋の身体の左右に足をつき、膝立ちのような姿勢で奉仕。
「はぁ……っ」
もどかしい。
何度も、何度も股でペニスを擦っていると、言いようのないもやもやが身体に蓄積されていく。李狐が知尋に与えられる刺激と同様、素股で李狐が得られる快感も微量で、故に身体が快感を欲してしまうのだ。
はしたない自分。
それを自覚させられ、李狐は自分の頬をより赤く染めていく。
同時に、身体の奥から熱いものがこみ上げてくる。
とぷ、と。
秘所から少量の愛液が漏れだした。
「やだ……っ」
恥ずかしい。
しかし、奉仕を止めるわけにはいかない。
知尋のペニスはようやく少しずつ硬くなり始めたところ。一度射精させたわけでもなく、焦らすタイミングでもないのに小休止など、たとえ知尋が許しても李狐自身のプライドが許さない。
気づかれませんように。
そんなことを祈りながら、更に腰を動かしていく。
しゅる、しゅる……。
そこで、李狐は自身のメイド服による衣擦れの音に気付いた。
スカートが揺れて布地が擦れると同時に、スカートの裾が知尋の肌をくすぐっているようだ。
そうか。
素股――ショーツによる竿への奉仕であっても、快感のポイントになるのはそこだけではないのだ。
はぁっ。
李狐は身体に蓄積しつつある官能の一部を吐き出しつつ、知尋に囁いた。
「ご主人様ぁ……どうですか? メイド服でのご奉仕は……っ?」
恥ずかしいのを我慢して甘い声で囁く。
スカートの裾がくすぐったいような快感を生むのなら、言葉だって奉仕の材料になる。初歩的で、忘れがちだが大切なことだ。
ふっ、と、知尋が優しく微笑んで答える。
「うん。気持ちいいよ、李狐」
その返事に嘘はないだろう。
ただ、彼の声にかなり余裕があることにも同時に気づかされてしまう。気持ちよくても、その度合いが小さい。絶頂に達するにはかなりの時間がかかってしまう。
どうしたらいいんだろう。
焦るもの、でもないのかもしれない。
行為の間、知尋を感じていられると考えたらこのままでもいいのだが、他の少女達が長々と待ってくれるだろうか。
否、ある程度の時間を置いたらきっとこの寝室にやってくる。
李狐が逆の立場ならどうするかを考えればわかることだ。
なら。
「もっと、もっと気持ちよくなってください、ご主人様っ」
声を意識して蕩けさせる。
息を荒げながら腰のペースを上げていくと、だんだんそれが本当になっていく。心と身体がどうしようもなく興奮して――。
くちゅ。
溢れる愛液で濡れたショーツが音を立てた。
いやらしくてはしたないその音を、李狐は天の助けのように感じた。
もっと、もっと濡れて。
もっと音を立てて。
「わかりますか、ご主人様? あたしのあそこ、おまんこ、エッチな音がしちゃってますっ」
「李狐」
心なしかペニスの反応が良くなった。
だいぶ硬度を増したそれは、ショーツによる刺激に小刻みに感じてくれる。そして、李狐の身体に伝わる刺激もまた強くなった。
はっ、はっ、はっ。
衝動に身を任せて腰を振る。
やがて知尋のペニスが完全に屹立すると、李狐は動きに変化をつけた。表側と裏側を交互だったり数回おきに交代しながら、根元から先端へとなぞり上げる。
くちゅ、くちゅ。
行為の度に少しずつ愛液の分泌も増える。
淫音と喘ぎ声が止まらない。
「んっ、あっ、はぁっ」
快感が強くなった分、もどかしさは収まるはずなのに、一向に楽にならない。
「ご主人様っ、あたし、胸っ、触ってもいいですかっ?」
「んっ……いいよ、李狐」
「ありがとう、んっ、ございますっ」
主人の許しを得た李狐は、空いている両手を自身の胸に伸ばした。
手を服と下着越しに胸を押し当て、ゆっくりと揉み上げる。
「ふああっ」
切ない快感が脳を満たした。
自慰を続けながら奉仕する。そのうち、知尋も我慢できなくなってきたのか、李狐の動きに合わせて腰を突き上げるようになった。
「んんんっ!?」
びりびりと身体に電撃が走る。
挿入されていないのに、騎乗位でセックスしているみたいだった。
「ご主人様、ご主人様ぁっ!」
「李狐、いいよ。そのまま続けて……っ」
二人の吐息と嬌声が寝室内に満ちる。
気持ちいい。
気持ちよくて幸せで、何も考えられなくなっていくのに、自然と腰の動きは止まらない。その方が自分も知尋も、もっと幸せになれると理解しているからだ。
そして。
「あっ、ご主人様っ、あたし、そろそろ……」
「うん、李狐っ。僕も出すよっ」
どこか上ずった知尋の声を聞き、李狐は最後のスパートとしてスピードを上げた。
下から上だけでなく上から下にも、往復するようにショーツを、いや股そのものを擦りつける。ショーツとペニスの表面は愛液で濡れ、ぐちゅぐちゅと音を立てる。
「くっ」
「あ、ああぁぁぁっ!」
ずん、と。
知尋がペニスを深く、大きく突き上げた瞬間、李狐の中で何かが弾けた。
びくん、と身体が反り返り、股間への熱い感触と共に快感が駆け巡る。快感の波と知尋の射精が収まるのには数十秒を要した。
終わった後、李狐はぺたんと腰を落とした。
ぺちゃりと、精液に塗れたショーツが音を立てる。主人の身体を汚してしまったことに気づきはっとするも、知尋は穏やかに笑って首を振った。
「……ご主人様」
「ありがとう、李狐。どんなふうになったか、見せてもらっていいかな?」
きゅう、っと、胸の奥が締まった。
「はい、ご主人様」
従順に答えて再び膝立ちに。
スカートの裾を両手で抓み、捲り上げる。
よりダイレクトに空気を感じると共に、知尋の視線が股間に注がれるのがわかった。
「……っ」
羞恥を堪えて視線を下へ。
白濁液はショーツのクロッチから前側、更には李狐の臍の辺りにまで及んでいた。
自身の格好――メイド服のスカートを自分の手で捲り、体液に汚れた下半身を晒した姿――をあらためて思った李狐は、突如突き抜けた快感にぺたん、と尻餅をついた。
「あ……」
拍子で知尋のペニス、そしてその周辺が目に入る。
李狐の身体程ではないにせよ、精液による汚れが付着したそこへ、李狐は誘われるように顔を近づけた。
ゆっくりと口を開く。
はあ……っ。
嫌悪ではなく期待と興奮から息を吐き、舌を突き出して舐めた。
ぺろ、ぺろ。
「李狐……っ」
射精して間もないせいか敏感になっているのだろう。知尋が呻いて眉を動かすのを、上目遣いに確認しながら掃除を続けた。
口内に広がる精の味が心地よく、李狐の心に安心を呼んだ。
「李狐。今度は中でお願いしてもいいかな?」
「あ……はいっ」
お掃除が終了したあたりで知尋から命じられ、李狐はぱっと顔を上げた。
またも膝立ちになり、片手でスカートを捲りながらショーツを脱ぐ。脱いだショーツを床に放り投げようとして、
「………」
べったりと精液の付着したそれを見て躊躇した。
汚い、というより勿体ない気持ちが先に浮かんで、李狐は半ば無意識のままショーツを鼻先に近づけた。
すんすんと鼻を鳴らせば、少し生臭い独特の匂い。
知尋の精液の匂い。
「……ぁ」
舌を伸ばし、布地にこびりついた一部を舐めた。また、あの味が口に広がる。
それを見ていた知尋が苦笑しながら言ってくる。
「口に詰め込むか、いっそ被っちゃったらどうかな」
「……そんな、真里亜みたいなこと」
いや、あの少女でもそうそうやらないだろうか。
……でも。
倒錯した衝動に取りつかれた今の李狐には、自身のショーツが妙に「おいしそう」に見えてしまった。
とくん、とくん。
心臓の鼓動が早くなるのを感じながら、ショーツの表裏をひっくり返す。
表面が内側に来たそれを持ち上げ、逆さにして頭に近づけ。
「あ、あ……」
とくん。
被った瞬間、堕落の快感が走り抜ける。
布地の匂いと共に鼻腔をくすぐる精液の匂い。秘所が勝手に反応してしまうのを感じながら、李狐は身体をほんの少し前にずらした。
硬度を回復しているペニスに右手を這わせ、もう片方の手でスカートを捲りながら腰を落とす。
「あ、ふ……っ!」
とろとろの秘所がペニスを飲みこんだ。
初めての時は痛さしか感じなかったのに、今はもう気持ちよくて仕方ない。
「すごくいやらしい顔してるよ、李狐」
「……ご主人様ぁ」
知尋の言葉が嬉しい。
彼が言う通り、きっと今の自分は物凄く淫らな顔になっているだろう。
見たいような、見たらもっともっと乱れてしまいそうで怖いような。
クローゼットの裏――そこにある鏡を意識しないようにしつつ、李狐は騎乗位奉仕を開始した。
腰を持ち上げて、落とす。
行為としては単純な上下運動。先程の素股と比べても安定感がある分やりやすいが、秘所へのダイレクトな刺激は、素股とは比べものにならない快感をもたらす。
何とか意識を持っていかれないようにと呼吸すれば、ショーツからの精液の匂い。
「あ、これ……やばいかも」
自然と再び腰が浮く。
ペニスが抜けてしまわないギリギリのラインで止め、腰を落とす。快感が突き抜け、鼻からいやらしい匂いが入ってくる。
「あ、はぁ……っ」
意識を持っていかれた。
李狐は口を半開きにして知尋を見下ろす。目が合った途端、彼の身体がびくんと震えた。膣内にあるペニスもより硬く大きくなる。
嬉しかった。
「ごしゅじんさまぁ……」
「李、狐……っ」
視線を逸らそうとする彼を追いかける。
同時に腰を動かし、自身と知尋に気持ちよさを送り込む。
……あたしの気持ちよさも、全部感じて。
心の内を全部曝け出すつもりで、李狐は目を合わせたまま奉仕する。やがて諦めた知尋もまた、李狐の目を見つめたまま腰を振り始めた。
言葉はもう要らなかった。
知尋には今の李狐の心、止まらない性欲が全て伝わっている。後は獣のように、ただ互いの身体を貪るだけでいい。
ぱんぱんと、肌がぶつかる音さえ心地いい。
「あ、ああっ、ああああ――っ!」
あっけなく、李狐は二度目の絶頂を迎えた。
身体がびくびく痙攣し、膣がきゅっと収縮する。しかし、
「んんんんっ!?」
知尋の動きは止まらない。李狐もまた何かに突き動かされるように腰を止められず、数秒後、熱い精液が膣内に吐き出された。
「―――~~~っ!?」
更に絶頂。それでも二人は止まらない。
食後だというのも忘れて腰を振りあい、何度も絶頂した。短時間にも関わらず濃密な情交を終えて身を離すと、秘所から精液が溢れてベッドに染みを作った。
「ああ、ご主人様……」
「李狐」
知尋が身を起こそうとして、腕をがくっと折ってしまう。
主人が起き上がれそうにないと察した李狐は、自分から這うようにして彼の唇に顔を寄せた。
そして。
「李狐ちゃん。そろそろ知尋君も大丈……ぶ?」
「……李狐。あなた、何をしているの?」
寝室の扉を開けた愛華が絶句し、後ろから覗き込んだ真里亜が訝しげな――風を装いつつ、その実、羨ましそうな――声を上げる。
彼女達の視線を受け、李狐はようやく我に返った。
「あ、や、やだ。見ないでぇ!?」
パンツを被って男に覆いかぶさるメイドなんて、きっと、ただの変態にしか見えなかったことだろう。