あれから、真里亜達との行為は毎日続いている。
たまにどちらかが参加しないことはあったが、両方とも相手にしない日は一度もなし。真里亜達の手や口、膣を使っての精処理が、気づけばすっかり日課と化していた。
最初は身体がもつか心配したものだが、慣れれば慣れるものである。こちらに関しても回復能力の恩恵は大きい。
「……こういうのも、悪くないわね」
トレーニングウェアに覆われた手のひらがたっぷりのローションを馴染ませ、剥き出しのペニスをぴたりと覆う。
液体の冷たさと、素肌とは違う滑らかな質感が新鮮な刺激を知尋へ伝えてくる。
片方の手で竿をしごいたり袋を刺激し、もう一方の手で亀頭を重点的に責めたてられれば、いつもと違う真里亜の姿への興奮もあり、知尋は数分ともたずに射精してしまった。
どくどくと発射される精液を真里亜は両手を使って受け止め、たっぷりと指に絡めると舌を伸ばして舐めとっていく。
「ローション、口に入れても大丈夫なものにしておいて良かった」
夕食――ゲン担ぎでトンカツだった――の後、寝室に籠もり真里亜との情事に耽る。どうせ週末に洗濯するから、ということで、趣向を変えてトレーニングウェア姿の真里亜を抱くことになった。
メニューは、フルコース。
「じゃあ、次はこっちね」
唾液を溜めた口で直接肉棒を包まれる。二週間でかなり知尋のツボは把握されており、的確に、かつ緩急をつけてしゃぶられる。
ローションと唾液が混じりあっていつも以上に水気が多い。
まるで何か別の生き物に捕食されているような錯覚を覚えつつ、それでも確かな快感がペニスを勃起させ、絶頂へと導く。
口内へ射精された精液を真里亜は再びごくりと嚥下した。
嫌悪どころか歓喜に満ちた表情はサキュバスのごとき妖艶さで、従順に傅く仕草とのギャップが不思議な雰囲気を醸し出している。
「胸……は、少しやりにくそうだけど」
ウェアに包まれた胸の谷間にローションが垂らされる。
真里亜の胸は十分な張りと弾力を持っているものの、衣装の拘束力により全裸の状態ほどの膨らみにはなっていない。そのうえウェアが肌にぴったり張り付く素材なものだから、胸の位置を調整するのもなかなか難しい。
結果、ウェアごと強引に胸を寄せ、身体全体を使ってペニスを扱く形となった。
にゅち……くちゅ……。
真里亜の双丘に緩く挟まれながらローション塗れの生地に刺激される。変則的なパイズリは手コキやフェラチオのときよりも時間をかけ、じっくりと性感を高めるように行われた。
やがて知尋のペニスが硬く屹立すると、真里亜は先端を口に含んでせわしなく身体を上下させる。程なく放たれた白濁は三度、真里亜の喉を通って胃へと消えた。
「……っふ」
胸と口を離した真里亜が小さなげっぷを漏らす。
彼女は自分でもはしたないと思ったらしく、珍しく本当に恥ずかしそうな様子で頬を染め、次の奉仕へと移った。
精と唾液、ローションでどろどろになった肉棒を股間で扱く、トレーニングウェアによる素股。
「っ、はぁっ、あんっ」
何度も精を飲みこんだことで昂ぶった真里亜は、開始直後から荒い息をついて腰を激しく振り乱した。奉仕であることは忘れず知尋のペニスもきちんと刺激しているが、同時に膣やクリトリスに当たる部分を自ら重点的に擦りつけてくる。
いつの間にか汗もかいているようだ。
寝室は防音がしっかりしているため、その分気密性も高い。首から下をウェアで覆われていることも手伝って真里亜の身体は熱を帯びている。
ウェア越しに感じる秘所の質感も、かなり水気を含んだものになっていた。
「これじゃあ、洗っても匂いが残るかもしれないね」
「……ふふっ。そうなったら、周りの人に気づかれないよう訓練の度に緊張しないといけないわね」
真里亜が腰の動きを止めないまま嬉しそうに笑った。新しいものを用意する、という発想をしないあたりが彼女らしい。
「真里亜、そろそろイくよ」
「っ、待って、一緒にっ」
太腿をきゅっと絞り、三点を使って刺激される。同時に真里亜の側としても快感が伝わりやすくなったらしく、彼女は何度か小刻みに腰を動かすと、大きい動きで股間を肉棒へと押し付けた。
ウェアに覆われた股間が精液で白く染まる。
「っあああぁぁ!」
くたり、と落ちた身体がびくびくと痙攣する。
彼女は両胸を抱きしめるようにして快感を受け止め、およそ数分間も余韻に浸ると深く息を吐き出した。
「やっぱり、この拘束感……気持ちいい」
「確かに、独特だよね。そのうち、縄とかボンテージとかも着てみたい?」
「ええ。……さすがに高いから、簡単には手が出ないのが残念ね」
知尋も真里亜も、李狐もまだ高校生で気軽に散財できる身分ではない。学園の授業を考えると放課後にアルバイトするのも難しいので、コスチュームやアダルトグッズを含む娯楽の費用はネックだ。
真里亜はある程度、自由になるお金を持っているようだが、それに頼り過ぎるのも良くない。当面は生活費をやりくりするなどして捻出するしかない。
「和泉くんのランクが上がれば余裕も増えるかしら」
「EとDの助成金は大して変わらないんじゃなかったかな」
国に登録している『落とし物』は定期的にランク判定を受ける等の義務を負う代わりにランクに応じた助成金を国から受け取れる。
優秀な能力者を育成するための措置であるため、一山いくらのEランクの場合は雀の涙、Dランクでも多少はマシになる程度だ。無いよりはマシだが。
数秒沈黙し、考えを巡らせていた真里亜は首を振って微笑んだ。
「……まあ、道具なんてなくても楽しみ方はあるしね。それより続きをしましょう?」
「そうだね。……ええと、それ、一度脱ぐ?」
「いいえ、このままやりましょう」
言って、彼女は膝立ちになると大きく股を開く。身体にぴったりしたウェアを引っ張り、少しでも股間側に隙間を作るようにして、膣に生地を押し込んでいく。
ある程度押し込むことに成功すると指に付着した精液をぺろりと舐めた。
「……無理矢理だね」
「だから、いいんでしょう?」
言葉通り、期待と興奮に満ちた声で言い、真里亜がゆっくりと腰を下ろしてくる。せっかく押し込んだ生地が戻らないように注意しつつペニスを宛がい更に進めると、真里亜の処女を奪った時以上の抵抗があった。
「何、これ」
奇妙な密着感。
ウェアの素材は多少の伸縮性があるため痛くはない。真里亜が言っていたように適度な拘束感と、生地越しに感じる人の温かさ。
人を抱いているのにどこか作り物めいた、触れている部分は人工物なのに人の肉に包まれているような、快感。
気持ちいい。
初めて感じる気持ちよさだった。
「真里亜は痛くない?」
「ええ。内側も十分濡れているから大丈夫。……キツイのが癖になりそう」
「じゃあ、動くよ」
確認すると黙ったまま首肯が返ってくる。真里亜が知尋に覆いかぶさり、瞳をじっと向けてくる。
情欲が共有される。
まだ物足りない。もっと強く、激しく、たくさんの快感が欲しい。焦らされるのもいいけれど、同時に狂うくらい犯して欲しい、と。
「わかった」
声なき主張に短く答え、知尋は真里亜の中を動き始めた。
生地を挟んでいるせいで出し入れする動きは限定される。だからむしろ円を描いて掻き回したり、引くのではなく逆に突き上げたり。ぐりぐりと肉を圧迫したりして快感を与える。
「んああっ!」
真里亜もはしたない声を上げながら知尋の動きに合わせてくる。膣肉をひくひくと蠢かせ、きゅっと絞めつけて自分からも押し付けるようにしてペニスを包む。
先程出した精液も潤滑剤となり、二人の動きを助けてくれる。
止まらない。
知尋と真里亜は互いの首に腕を回し、ぎゅっと身体を押し付け合いながら動きを続け、まずは知尋が、ウェア越しの射精を受けて真里亜もまた絶頂を迎えた。
はぁ、はぁ……。
身体が落ち着くと、真里亜は繋がったまま知尋にそっと囁いた。
「ねえ、和泉くん。明日の戦いに勝算はあるの?」
睦言にしては色気のない話題だが、それが彼女らしくも思えた。
知尋はすぐには返答しなかった。代わりに真里亜の瞳を見つめる。嵐のような情欲は今はなりを潜め、深い海のように静かに揺蕩っていた。
「……なくはない、かな。もし勝てたとしても、まぐれには違いないと思う」
「……そう」
知尋の答えに、真里亜は目を細めて息を吐いた。
「うまくいくといいわね。試合自体じゃなくて、あなたの望みが」
神代から愛華を奪う。
それも身体ではなく心を、彼女の関心を。
「うん」
頷いて、知尋はふと疑問を浮かべた。
いい機会だと思い、そのままそれを口に出す。
「……真里亜は反対しないんだね。李狐に復讐した時も、今回のことも」
知尋が他の女の子へ気持ちを向けているのに、反対するどころか行動を後押ししてくれている。ご主人様と奴隷という関係を思えば、一般的な感情の機微を当てはめるのが間違いなのかもしれないが……。
普通なら、李狐達に嫉妬しても仕方ないのではないか。
しかし。
真里亜はくすりと笑って答えた。
「私はあなたを独占しようとは思っていないもの。むしろ、あなたが欲望のままに振る舞うならそれは喜ばしいことよ」
真里亜の抱える闇に、知尋が少しずつ近づいている証だから。
でもね、と。
首に回されたままの真里亜の腕へ、かすかに力が籠もる。
「もしも、あなたが私を『忘れようと』するのなら話は別よ。そうなったら、たとえどんな理由があろうと私はあなたを許さないし、あなたをそんな風にした『誰か』も絶対に許さない」
知尋と真里亜は契約を交わした。
共に闇に堕ちると誓い合った。
だから、今更一人だけ明るいところで生きることは許されない。
まるで愛の囁きのような甘い声で。
真里亜は知尋へ、強くて重い呪縛の鎖を与えていく。
「大丈夫、わかってるよ」
知尋もまた笑って頷いた。
元より彼女を忘れるつもりも、彼女から離れるつもりもない。
真里亜が知尋なしでは生きていけないように、知尋もまた真里亜なしでの生活が考えられなくなりつつある。
今、知尋の心が安らいでいること。
縛られることを心地いいと感じていることがその証拠だ。
「僕は高槻さんを新しい奴隷として加えたい。だから、そのために神代君と戦うんだ」
「……ええ、そうね。ごめんなさい、変なことを言ったわ」
真里亜はほんの少しだけ切なそうに眼を細めると、目を閉じた。
彼女の全身から力が抜けて知尋の胸に体重がかかる。知尋は抗わず、手を伸ばして真里亜の髪を撫でた。
性感を高めるためではなく、ただ愛でるように。
それからゆっくりと下へ。頬や首筋、胸や臍などを同じように撫でていく。
知尋の愛撫に真里亜が目を開くことはなかった。彼女はくすぐったそうに身をよじりつつもやがて呼吸を落ち着け、規則正しい寝息を立て始める。
その寝顔が安らかであることを確認すると、知尋も目を閉じた。
二人は繋がったまま眠り――朝、様子を見に来た李狐の大きな声で目を覚ました。
「あんた達、なんて格好して寝てるのよ!? 馬鹿じゃないの!?」