※この作品はR-18です。

儚き異能は心を映す   作:緑茶わいん

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第三話 初めての快楽 ★

「このマンションは防音だから、大きな声を出しても大丈夫よ。一階だから、下の人に聞かれる心配もなし」

 

 扉の一つが開かれ、真里亜と知尋を中に収めて閉じる。

 そこは寝室であり勉強部屋であり衣裳部屋、つまりは真里亜という個人の殆どが詰まった部屋だった。

 漂うのはどこか甘い女の子の匂い。

 内装の雰囲気は居間と変わらず、それが彼女の趣味なのだと理解できる。

 据え付けクローゼットの扉にはハンガーで制服がかかっていて、ここで先程、真里亜が着替えをしていたことも見て取れた。

 

「自分の部屋に男の子を入れたのは初めてよ。……ここに来てからはもちろん、生まれてからこれまでで、ね」

 

 真里亜は更に知尋を引っ張る。

 カーテンを閉じ、照明を操作して小さな明かりだけを灯す。

 そして、知尋は真里亜にベッドへと押し倒された。

 

「深海さん」

「真里亜」

 

 鼻に直接吐息がかかる。

 どうして、ただの息ですらいい匂いがするのだろう。

 部屋から、シーツから、枕から、そして真里亜からの匂いに酔わされ、知尋は思考が蕩けていくのを感じた。

 

「……真里亜。でもやっぱり、こんなのおかしいよ。僕には真里亜にそこまでしてもらえる理由がない」

 

 今更、ではあるものの。

 知尋はなけなしの理性を振り絞って言った。それは、完全に流されてしまう前に確かめておかなければならないことだったから。

 知尋の言葉に真里亜が目を丸くし、やがて微笑む。

 

「……何かと思ったら。理由ならあるわ」

「え?」

「あなたが最弱の読心能力者である、ということ」

 

 真里亜はずっと探していたらしい。日本各地にいる『落とし物』の情報を調べ、その中から自分の望みに合う能力者を。

 確かに知尋の言うように、読心能力が必要だというだけなら「知尋でなければならない」理由にはならな

い。しかし真里亜はただ読心能力者を探していたわけではなかった。

 

「自分の力にコンプレックスを抱いている。もっと強い力が欲しいと望んでいるような、そんな人じゃないと駄目だった。能力を利用してうまくやろう、なんて考えて事実実践できているような人じゃ、私の欲望は理解できないから」

 

 それでは足りない。

 心が読めても、真里亜に共感できるメンタリティが無ければ意味がない。真里亜の渇望が理解できない者では、きっと真里亜をいいように弄び、やがて尽きない真里亜の欲に恐怖して離れて行くだろう。

 そんなのは嫌だ。

 だから、形は違えど焦燥や絶望を抱いている者。弱い読心能力者を探した。

 

「それに、私があなたから貰うものだってあるのよ?」

 

 切なげに目を細めながら真里亜は言葉を続ける。

 

「私の欲は強すぎるの。強すぎて、私自身でも制御しきれない。今までは自分で発散したり、戦闘訓練のダメージで誤魔化してきたけど、いつまで続けられるかわからない」

 

 歯止めがきかなくなれば欲求が暴走する。

 家も学校も放り出して夜の街を出歩き、煙草やドラッグ、ハードなSMプレイに手を出し、すぐに身体欠損レベルの自傷にまで至る。

 ……最後は、死の快感を求めて自ら命を絶つ。

 

「でも、死んじゃったら終わり。私は長い間気持ちよくなりたいの。だから、私を支配して管理してくれるご主人様が欲しい。……そして、本当の意味でそれができるのは、この世界にあなた一人だけ」

 

 なるほど。

 確かに、真里亜の言い分は徹頭徹尾「自分の都合」だった。決して知尋に都合がいいだけの話ではないらしい。

 与えられるのは少女の生殺与奪権。

 代わりに知尋は少女の命を預かる。少女の果てしない欲求を理解したうえで、緩やかに少女を壊していく。「殺し続けていく」責任を負う。

 そんな。

 そんな途方もないことを、彼女は――深海真里亜は望んでいるのだ。

 きっと、もっと幼い頃から、ずっと。

 

「今までは自分で発散してた、って」

「ええ。だから、私は完全な処女よ? いつかたった一人のご主人様に捧げるために、必死で我慢してきたの」

 

 たった一人の相手。

 それが……知尋。

 

「まだ、何かある?」

「……いや」

 

 眼前にある少女の顔はやはり美しい。

 こんな少女から求められ、全てを捧げられる。

 これ以上、手を伸ばさずに我慢することなんて、できなかった。

 知尋はゆっくりと、自ら真里亜の瞳を見据えた。途端、真里亜の性欲が全身を襲うが、それに敢えて身を任せる。

 

 ――いいわ。全部あげるから、一緒に堕ちましょう?

 

 手を真里亜の肩に置き、自身と相手の位置を入れ替える。

 知尋を見上げる格好となった真里亜は瞳を潤ませ、かすかに震える声で呟いた。

 

「契約成立、ね」

 

 二人はどちらからともかく唇を合わせた。

 柔らかな感触に酔いしれた途端、真里亜が舌を割り入れてくる。普通の高校生らしいキスなどするつもりはないらしい。

 知尋も逆らわず、舌を差し出した。

 真里亜の舌と自分の舌を絡め、押し合い、時には逆に相手の口腔へ侵入する。多少の知識はあるものの初めて同士、不相応な欲求に急き立てられるままのぎこちないディープキスだった。

 しかし、それでも構わなかった。

 犯している。犯されているという実感こそが大切だった。

 本能のまま、ただ相手を貪ればいい。それでもやり方に迷ったら真里亜と視線を合わせればいい。そうすれば彼女が道を示してくれる。

 知尋と真里亜の欲求が、正反対のベクトルで一致する。

 

 初めての感覚だった。

 全てを曝け出してくれる相手。自分の全てを許容してくれる相手。

 行為が続くにつれ、余計な考えが頭から吹き飛んでいく。

 

 三十分以上もディープキスを続けたあと、二人は互いの服を脱がせあった。乱暴に、しかし破いたりはしないように相手の身体から剝ぎ取り、ベッドの外へと投げ捨てる。

 二人とも下着姿になると、今度は唇以外の部分、全身へ指と舌を這わせていく。最初は交互に行っていたが、やがて相手が責めている最中に額や首筋、脇などを責めていくように。

 

 真里亜の身体は柔らかくしなやかで、どれだけ味わっても飽きることはないだろうと思えた。女の子の身体がここまで気持ちのいいものだとは、実際に体験してみなければわからなかっただろう。

 

 唾液と汗で全身がべとべとになるまで続け、顔を見合わせたまま荒い息をつく。

 それぞれ邪魔な下着を脱ぎ捨てる。

 知尋が顔を下半身に落とし、控えめな茂みへ指を這わせると、真里亜が切なげに懇願してくる。

 

「待って、私にも……」

 

 上半身と下半身を互い違いに、いわゆる69の体勢になると相手の性器を指で愛撫する。真里亜の秘所は既に愛液で濡れ、軽く指をあてがうだけで水音が立つ。そこを最初はゆっくりと、徐々にスピードを上げて虐めた。

 同時に、真里亜の細い指が知尋のペニスを這いまわる。亀頭を、竿を、根元を優しく撫で、指で突き、そして扱き上げる。

 

 会話らしい会話は殆どなかった。

 口から漏れるのは息と、明確な文章にならない声だけ。互いが何の遠慮もなく欲望のままに振る舞うことを許容し、ただ動き続ける。

 

 極度の興奮が、性器を口に含むことさえも抵抗なく実行させる。

 舐め、しゃぶり、分泌された液を啜った。敏感な部分を刺激されると互いの身体がびくびくと震え、抑えきれない喘ぎ声が部屋に響く。

 一度目の射精は真里亜の口内だった。

 

「ふふ、くふぁい……」

 

 精液を口に溜めたまま嬉しそうに言った彼女は、口の中の白濁に何度か舌を絡めたあとごくりと飲み干した。

 はぁ、と艶めかしい吐息が漏れると、知尋はその唇に吸い寄せられるように身体の向きを戻し、再びキスをした。

 長い交歓のあと唇を離すと、唾液その他の混じりあったものが糸を引く。

 

「いい?」

 

 たった一言で意図は伝わったらしい。

 真里亜は頬を赤らめ、瞳を歓喜に潤ませながらこくんと頷いた。

 既にペニスは回復している。下手をすれば一度目よりも激しく勃起したそれを真里亜の秘所へ向け、突き入れようとする。

 しかし体液で滑るせいかうまく入らない。と、真里亜が視線で知尋を制した。

 彼女は両手で自分の股間に添えると、そっと割り開いて見せる。

 とても恥ずかしそうに、嬉しそうに。

 

 なら、知尋もそれに答えるしかない。

 

 今度こそ慎重にペニスの先端を宛がうと、全力を込めて勢いよく、真里亜の身体を貫いた。

 

「っああああぁぁぁぁ――っ!」

 

 絶叫と共に真里亜の身体がびくんと跳ねた。小さく痙攣しながら見上げる瞳がとろんとしているところを見ると、処女喪失の痛みで軽く絶頂したらしい。

 

「本当に、痛いのが好きなんだ」

「ええ、好きよ。大好き。そう言ったでしょう……?」

 

 聞いてはいたが、ここまでとは思わなかった。

 そんな言葉を知尋は飲み込み、代わりに肉棒を突き立てた。真里亜もそれに逆らわず、むしろ動きを合わせようと腰をくねらせ始める。

 ぐちゅぐちゅと粘液の擦れる音、ぱんぱんと肉のぶつかる音だけが響く。

 柔肉がペニスを包み、扱き、絡みつく。自分で自分のものを処理するのとは全く違う、思い通りにならない故の快感が知尋の全身を襲う。

 二度目の射精を迎えるのにそう時間はかからなかった。

 

 どくどくと脈打つ感覚が収まるのを待って腰を引こうとすると、真里亜が知尋の腰を掴んで体勢を入れ替えた。

 ベッドに組み伏せられた姿勢で、そっと耳元で囁かれる。

 

「一回中で出しただけで終わりなの……?」

 

 さっきまで処女だった少女の淫らすぎる言葉に、知尋のペニスはすぐさま回復した。

 敏感な性器を擦らせながら真里亜が腰を振る。

 三度目の射精は真里亜の絶頂と同時だった。引き抜くと今度はバック。それを済ませた後は、もはや体位など考えない絡み合い。

 引き抜いては入れ、あるいは身体のどこでも舐めあい、キスをした。

 後半はもう夢中で、何をしていたのか碌に認識すらしていなかった。ただ、都合五回以上は射精し、真里亜はその倍以上の回数絶頂していた。

 知尋は少女と抱き合ったまま意識を落とし、気づくと朝を迎えていた。

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