ちゅ、ちゅぷ、はぁ……はぁ……。
李狐と二人、ベッドに腰かけたままディープキスを交わす。パンとチーズの味がする口腔を舌で味わいながら、知尋はぼんやりと思った。
どうしてこうなったんだろう。
起きたら愛華がいて、話の流れで李狐を抱くことになった。当事者ながら意味がわからない。
「和泉。集中してよ」
「ごめん、李狐」
慌てて謝ると、彼女は上気した頬を更に赤く染めて呟いた。
「……本当に、全部見せるんだ」
愛華に、二人の情事を。
少し離れた場所でこちらを見守る愛華を見ると、彼女は「できれば」と言う。その顔も既に赤くなり始めているが……。
「うん。李狐の姿、全部見せて」
李狐の瞳に欲情と羞恥が渦巻いた。
「……はい、ご主人様」
「ぁ」
愛華が息を飲むのが視界の端にちらりと映った。
とろん、と表情を蕩けさせて唇を突き出してくる彼女と、再びキス。唾液を飲ませ合い、互いの舌を存分に求めあってから唇を離す。
李狐がベッドから床に降り、知尋のパジャマに手をかける。
下のパジャマを脱がされると、半ばまで勃起したペニスが露出する。
「っ」
知尋の正面方向、李狐からすれば背後で愛華がびくっとする。
「高槻さん。和泉のって大きいのかな? あたし、他の男のってあんまり見たことないんだけど」
「し、知らないよ!」
振り向かないままの李狐の問いに、愛華が大きめの声で答えた。
「高槻さん、ごめん。ここ男子寮だから声は抑えめで」
「あ……ごめんなさい」
しゅん、と謝る愛華。
一方、李狐はペニスにゆっくりと顔を近づけていく。
「ご奉仕、しますね」
ちゅ。
まずは亀頭に軽いキス。微妙に場所を変えながら何度もキスをされ、だんだんペニスの硬度が上がっていく。そうしたらちろちろと舐められ、竿や裏筋、玉を丹念に刺激される。
体毛を取り除いたせいか、より刺激がダイレクトに伝わる。
……そういえば、早速他の人に見られちゃったな。
無毛の股間を晒す恥ずかしさを覚えつつ、知尋は李狐の奉仕へと身を任せる。全部を見せる、という決定を忠実に守っているのか、自分の覚えている技術を全て見せようとするような、いつも以上に丹念な奉仕だった。
口淫はフェラチオに移行。十分に唾液をまぶされたペニスを咥え、音を立てながらしゃぶる。口では対抗意識をむき出しにしている割に、奉仕の動作には真里亜の意匠が含まれているのが不思議というか、感慨深い。
本格的な奉仕が始まってから数分後、一度目の射精が訪れた。
吐き出される精液を、李狐はペニスの根元を保持しつつ、敢えて竿を咥えずに口で受け止める。大きく口を開け、先端付近で待ち受け口の奥で受け止める。
射精が止まると一度口を閉じ、知尋を見上げたままくちゅくちゅと音を立てて味わう。ごくん、と飲みこんだのはその後だ。
「……嘘」
クラスメートの痴態に、愛華は信じられない、という様子。
ぽかんと口を開け、目を驚愕に見開きながらも視線は知尋達に向けたまま。
彼女が「もう止めて」と言わないのなら、まだ続けることになる。
「じゃあ、お返しをしようかな」
「はい、ご主人様」
愛華に見せつけるためか、李狐はいつも以上に従順な態度だ。
ごろん、とベッドに寝転がると身体を開き恭順を示す。知尋もぎし、とベッドに乗り、李狐の身体を挟むようにして座った。
丁寧に服を脱がせ、下着も外す。
思えばブラのホックを外すのにも慣れてしまった。
「……李狐ちゃん」
同性とはいえ、この歳で友人の全裸を見る機会なんてほぼないだろう。愛華が呆然と呟く気持ちもよくわかった。
ちゅ。
李狐の首筋に軽くキスをしてから愛撫を開始。
肩や二の腕、脇などを軽く撫で、徐々に身体の感度を高める。性感帯以外でも李狐が快感を得られるようになったら乳房に手を伸ばす。形のいいそれへ指を這わせ、押し込み、更に性感を育てていく。
「はぁ……気持ちいいです」
自分の気持ちを口にできるようになってきたのも、これまでの調教の成果。
乳首を弄り、舌で甘噛みしてみても李狐は嫌悪どころか喜びを示した。
「あ、あ、ああっ!」
思わず、といった様子で喘いだ李狐は、慌てて口を押さえ声を落とした。
愛撫を終えて口を離すと、両の乳房は知尋の唾液でべとべとになっていた。
愛華は、もう言葉もない様子。ただ黙って友人の痴態を見つめ続ける彼女を置いて、知尋は李狐の股間を刺激し始めた。
くち、くち。
念入りに、反応を見ながら敏感な個所を責めたてれば、李狐は身体を震わせ絶頂に達した。
「あ、いく、いきますっ……」
李狐はしっかりと宣言しながら絶頂し、その余韻が収まると愛華に微笑んだ。
「どう、高槻さん?」
名前を呼ばれた愛華がびくっと震える。
「いつも、こんなことしてる……の?」
おそるおそるの問いかけ。否定されることを期待しているのだろう。
しかし、李狐は笑顔で首を振る。
「ううん。いつもはもっとすごいことしてるよ」
愛華が目を見開いた。
そんな彼女の反応が楽しくて仕方ないのか、李狐は手を伸ばし、知尋の首筋に抱き着いてくる。
見せつけるつもりなのだ。
本当に、見せられる限りの自らの痴態を。こういった経験が全くないであろうクラスメートの少女に。
「ご主人様、あたしが上になってもいいですか」
「……うん」
李狐の意思を最大限に汲んでやることにする。
望んだのは愛華だ、と言い聞かせつつ、李狐と体勢を入れ替える。
「行きますね……」
足を開いた李狐が、秘部を指で軽く開きながら腰を沈めてくる。
コンドームもしないまま、騎乗位での挿入。
「あ、入っちゃった……」
幾度となく知尋のペニスを受け入れてきた李狐の膣は、だんだんと知尋の形に慣れつつある。異物感を快楽と受け取る土壌もまた。
ぬるぬると、液体で塗れた性器同士が緩やかに擦れあう。
ダイレクトに伝わる快感に李狐は身を震わせながら、動作の感触を少しずつ確かめ、動きを大きく正確に変えていく。
やがて、ぱん、ぱん、とリズミカルな音が響き始めると、知尋のペニスに伝わる快感もより大きなものになった。
囁くように李狐に尋ねる。
「李狐、気持ちいい?」
「はいっ、気持ちいいですっ」
「今、自分が何をしてるかわかる?」
「せっくすです。ご主人様とせっくすするところを、高槻さんに見られてますっ」
もともと、李狐は人に行為を見られることに多少慣れている。彼女を抱く時は大抵、傍に真里亜がいたからだ。とはいえ、真里亜は色々な意味で例外。一般人に見られるのは相応の羞恥を伴うはずだが――。
興奮と、愛華への優越感が、羞恥を受容させているらしい。
……この出来事は、案外李狐の調教にとってもいい影響になったかもしれない。
李狐に合わせてペニスを突き上げながら、知尋はそんなことを思った。
そして。
「ご主人様、いきますかっ? あたし、あたしはもうっ」
「うん。いくよ、李狐。一緒に」
「はい、一緒にっ。あ、いく、いくぅっ!」
自分で自分の口を押さえながら。
李狐は再び絶頂の声を上げ、膣内で知尋の精を受け止めた。
数秒で射精が止まると、李狐は身体を横たえ知尋に胸を押し付けてくる。知尋は、そんな彼女を抱きしめながら快感に浸った。
繋がったままのペニスが腰から引き抜かれたのは数分後のこと。
こぽりと、膣から溢れ出す精液に愛華の視線が注がれる。
「李狐ちゃん……避妊、しないと」
「え? ああ、あはは」
絞り出すような言葉に李狐は笑い、答える。
「大丈夫だよ」
どういう意味の「大丈夫」なのかは説明せず。
彼女は愛液と精液で汚れた知尋のペニスに舌を這わせ、一通り清めてからベッドに座り込んだ。
「どうだった、高槻さん?」
上から見下ろされた愛華は、はっと顔を上げて首を振る。
「駄目だよ、こんなの。恋人同士でもないのに」
ごく普通の倫理観から出たその言葉を、李狐はふっと鼻で笑った。
「いいじゃん、別に。あたしは納得してるんだし、恋人だからどうってわけでもないでしょ? それに」
「それに?」
「どうしても恋人じゃなきゃ駄目、って言うなら、高槻さんはそうすれば? あたしに言うんじゃなくてさ」
「……え」
虚を突かれたように、ぽかんと口を開ける愛華。
彼女の視線が横にそれ、知尋を見てすぐに逸らされた。真っ赤になった顔で俯き、彼女はぼそりと言う。
「わ、私、帰るねっ」
すっ、と。
返事も聞かずに立ち上がり、くるりと背を向ける。
その背中を、李狐がじっと見つめて言った。
「夜だから危ないと思うけど」
「大丈夫」
大丈夫とは言うが、この大丈夫は意地を張っているだけだろう。
『落とし物』の出現によって世界は一変し、それは日本の治安にも多少の影響を与えた。それでもこの国は十分すぎるほどに平和だが、だからといって用心するに越したことはない。
愛華は真里亜のように、戦闘用の能力を持っているわけでもないのだ。
「高槻さん、本当に一人だと……」
「大丈夫。外でタクシー呼ぶから」
そこまで言われてしまえば引き留められない。
玄関まで歩いていく愛華に、知尋は慌ててパジャマを纏いつつ後を追いかけた。
「なら、せめてタクシー代くらいは払わせて」
「……ありがとう」
札を一枚差し出せば、愛華は知尋と目を合わせないままそれを受け取った。
彼女はそのまま玄関の鍵を開け、扉を開き。
「和泉君」
振り向かないまま知尋に言った。
「今度、無茶して何かあったら、絶対私を呼んで。絶対、また治すから」
「……うん、約束する」
ばたん。
知尋の返答を聞いた愛華は、それ以上は何も言わず部屋を出ていった。
彼女の最後の言葉。
……あれは、いったいどういう意味だったのか。
考えても知尋にはわからなかった。
「和泉。とりあえずシャワー浴びよ」
「……ああ、そうだね」
さっぱりして、頭を切り替えないといけない。
傍に歩み寄ってきた李狐の言葉に頷いて、知尋は軽く微笑んだ。
――その時、ベッドに置きっぱなしになっていたスマホに一通のメールが着信したが、知尋がそれに気づいたのはシャワーから出た後のことだった。