入浴と食事を済ませ、やることが何も無くなった後。
知尋達は四人揃って寝室へ移動した。真里亜は最初からこういう状況を見越していたのだろう。大きなベッドはこの多人数で腰かけても狭苦しさを感じない。
「……本当に、和泉君って趣味悪いですよね」
呟いたのは華だ。
彼女は首にピンクの首輪を巻き、他には何も身に着けない状態で不満顔をしている。彼女は入浴後、夕食前からずっとこの格好だった。
――奴隷たるもの、それに相応しい見た目は大事。
真里亜の主張による措置だが、少女の矛先が向かうのは当然、知尋になる。
華が見つめるのは、肌を晒した真里亜と李狐の臍。そこに浮かぶ、知尋との主従の証、奴隷の痣だった。痣、と呼び続けるのも格好悪いので、知尋達は刻印と呼ぶことにしたが。
「アルファベットなら、もっと筆記体で、綺麗に文字を並べればいいのに」
刻印自体を否定するんじゃないのか。
突っ込みたくなるのを堪えて知尋は苦笑。細かい意匠は勝手に決まったもので、別に知尋が決めたわけではないのだ。
「これ、華も入れない?」
「名前で呼ばないでください」
華はつん、と顔を背けて言ってから知尋に答えた。
「どうせ、私の行動を制限する目的なんでしょう? 見え見えですよ」
「いや、変な行動を取らなければ制限しないよ」
「本当ですか?」
「うん」
これは嘘ではない。やることなすこと普段通りにいかず不調気味になるとか、かなり地味だが厳しい嫌がらせだ。
快楽責めや、セックスのための拘束ならともかく、ただ単に華を害するだけの行為に今更興味はない。
……ついでに、少しばかり華に塩を送ってやる。
「刻印があると、正面から僕を殺すのは難しくなるだろうけど。不意打ちで殺すつもりなら楽になるんじゃないかな」
「……ふむ。確かにそうですね。わかりました、納得しておきましょう」
刻印を入れることを了承した華と手を繋ぐ。
能力の発動には肉体的接触があればいいので、必ずしもキスや挿入は必要ない。
後は華が念じるだけだったが、ここで華が何度も失敗した。口約束のようなものであっても、知尋に従うと意識するのは難しかったらしい。
たっぷり十分近くを使ってようやく、華のお腹にも奴隷の刻印が刻まれた。
「どう、華さん? 気分の方は?」
「ええと……確かに気分がいいです。ドーピングでもされてるみたい」
手でグーとパーを交互に作ったり、腕を回したりした華が頷いた。
それから知尋の方へ顔だけ振り向いて、
「で? 何からするんです?」
奴隷とは思えない態度で尋ねられる。そういう意味では、華の言動は割と新鮮だ。
彼女の泣き顔が見たい。容赦ない責めで快楽漬けにして謝らせたい。そんな嗜虐的な感情が湧き上がってくる。
「そうだね……」
知尋は少し考えてから今日の方針を告げた。
「李狐。華の両手を拘束してくるかな? それと、口もボールギャグで塞いで」
「はい、ご主人様」
華を虐めるのは望むところだったのだろう。李狐はにっと笑い、プレイ道具をしまってあるチェストへと近づいていく。
「懲りずに拘束ですか」
「まあね」
睨んでくる華には軽く答えて真里亜を手招き。
這うように身を寄せてくる少女の身体を遠慮なく抱きしめ、その唇にキスをした。敢えてキスの間も目は閉じず、真里亜の黒い瞳を見下ろしてお互いの性欲を高めていく。
従順に身を委ね、積極的に舌を求める真里亜の姿は、華が調教を試みた際にはなかったものだろう。
だから、見せつけるように長々と口づけを続ける。
その間に李狐は道具を揃え、華を拘束していった。ここで逆らえば後で真里亜を抱けなくなる……そう理解している華は渋々ながら逆らわずに身を差し出す。こうして一年生トップの能力者は、いとも簡単に虜囚の身へと落ちた。
後ろ手に拘束され、ボールギャグに言葉も封じられた華の姿を確認すると、知尋は真里亜から唇を離した。
「はぁ……ご主人様、お願いします。お慈悲をくださいませ」
「うん。でも、その前に」
華を徹底的に気持ちよくさせるよう李狐に指示を出す。李狐はこくりと頷くと、すぐさま華を責め始めた。
「あは。真里亜とする前に疲れちゃわないといいね」
「む。むー、むー!」
今更じたばたしたところで遅い。手を使えない華は簡単に抑え込まれてしまう。
李狐は知尋の命じた意図を正しく理解しているようで、後ろから抱きかかえるような姿勢で指を使いながら、華に知尋達の姿を見せつける。
くすり。
笑みをこぼした真里亜が知尋に耳を寄せる。
「華さんは辛いでしょうね。きっと、死ぬほど」
言いながらとても楽しそうなあたり、やはりこの少女も重症だ。目で許可を求めてくる彼女に頷いてやると、真里亜は知尋のペニスに自ら身体を沈めた。
「はあ……ご主人様のおちんちん、最高です……」
普段よりも積極的に淫語を口にしながら、激しく腰を振る。時折ちらりと華に視線を向けつつも動きは止めず、むしろどんどん早めていく。
ぱん、ぱん、と高速で腰を打ち付けながらもペニスが抜けないのは経験の賜物。
真里亜の身体が知尋との行為用に最適化され、技術を積み重ねた証だ。
「真里亜、出すよ」
「はい、ご主人様。私にご主人様の精液、たっぷりくださいませ」
膣内がきゅ、きゅ、と収縮する。真里亜もかなり感じているらしい。
それが最後の一押しとなり、知尋のペニスがぷっくりと膨れ上がる。
「……ふふ」
と、真里亜は敢えて射精するペニスから膣を離した。支えを失った肉棒は暴れながら白い精液をまき散らし、真里亜の全身を汚す。その様は、さながらマーキング。
「あ、はあ……!」
歓喜の声と共に真里亜がびくんと身体を震わせた。
膣内射精をされたわけでもないのに、精液をかけられたことで絶頂のトリガーが引かれたらしい。
知尋の身体を汚さないためか、その場で座り込んで余韻を味わうと、ペニスの先端を含んで残った精液を掃除する。
「ご主人様。まだまだ、私は物足りません。続きをしてもよろしいですか?」
「もちろん。真里亜の気が済むまでしていいよ」
「ありがとうございます。では……」
真里亜が騎乗位での奉仕を再開。
膣肉の感触に深い快感を味わいながら華に目を向けると、彼女も李狐の手によって快楽漬けにされていた。
「んむー!」
口内に溜まった唾を為すすべなく垂れ流しながら、乳首とクリトリスを刺激されて絶頂する。一度イっても休む時間は殆ど与えられず、李狐に再び敏感な箇所を弄られて身悶える。
「ほら、気持ちいいでしょ? 気持ちいいよね? 幸せだよね? 遠慮せずいっぱいイっていいよ?」
李狐の責めは的確で、容赦がなかった。さすが、元は嬲る側にいた少女だ。抵抗できない相手にはとことん攻める。同性なので快感のツボを探り当てやすいこと、この間の調教でさんざん嬲った相手であることも手伝って、物凄いはまり役だった。
行為はそのままペアを変えずに続いた。
知尋は合計三回射精し、真里亜は全ての精を自らの身体で受け止めた。そうして真里亜が絶頂した回数と、華が李狐にイカされた回数は三回どころでは済まなかった。
「李狐、ありがとう。そろそろいいよ」
「ん……おっけ」
真里亜から身体を離してペアチェンジ。
ぐったりと横向きに寝転がる華に近づき、手の拘束とボールギャグを外す。華の口元は彼女自身の涎でぐちゃぐちゃになっていた。
華の身体を仰向けに倒す。
そっと顔を覗き込むと、虚ろな瞳は凪いでいて感情を読み取れなかった。どうやら本当にぼうっとしているらしい。
なら、と、べたべたの口元にキスをして華の唾液を舐めとる。びく、と身体が震えて目が見開かれた。
「何、するんですか」
「このままじゃ気持ち悪いかなって」
「そのままの方が百倍マシです」
「そっか」
答えて唇を離す。
代わりに華の秘所へと目を落とし、指を沈めて濡れ具合を確認する。潤滑液は十二分。李狐が執拗に愛撫し続けたのと、レズプレイで感じる華の性癖のせいだろう。
おかげで遠慮なく抱くことができる。
「行くよ、華」
「……どうぞ、お好きなように」
ごろん、と腕をベッドに広げると華は目を閉じる。自分から動く気はおろか、行為を見届けるつもりすらないという意思表示。
人形、あるいは置物のように動かない彼女に構わず、知尋はどろどろの秘所へとペニスを挿入した。
……その一方、李狐は真里亜からねっとりとした愛撫を受けていた。
「疲れたでしょう? せめて、私が労ってあげる」
「え、と。あたし、女を虐めるのはともかく責められるのはあんまり好きじゃないんだけど……」
「そう言わないの。これから、こういうことも増えるだろうし……」
「やっ……もう、この変態」
聞こえてくる声は楽しげで、まるで友人同士が単にじゃれているかのようだった。
黙って知尋の行為を受け入れる華が、目を瞑ったまま顔をしかめているのは李狐達のやり取りのせいかもしれない。
思いつつ、知尋はピストンを続けた。
「んっ……」
程なく華が小さく声を漏らすのを聞き、してやった気分になる。
いくら心で嫌がろうと、開発され、快感に蕩かされた身体では抗うことはできない。
挿入の合間には乳首や脇腹などを優しく撫で、時折漏れる甘い声は敢えて指摘しないまま、何度か華の膣内に精を放った。
……はぁ。
ずるりとペニスを引き抜くと、同時に華が深い吐息を漏らした。
「お疲れ様でした。体力の無駄でしたね」
「……ん」
あくまで皮肉っぽい台詞にも文句は言わないでおいた。
……華自身も、知尋とのセックスで感じていたこと。絶頂の瞬間には口を引き結んで声を抑えていたことはわかっているから、それで十分だ。
「じゃあ、私は真里亜ちゃんとさせてもらいますね」
よろよろと身を起こす華。
「身体、大丈夫?」
「余計なお世話です。何のためにここに来たと思っているんですか」
ゆっくりと這っていく先には、李狐と抱き合って恍惚とする真里亜の姿があった。なんだかんだ、いつの間にかイかせあいに発展していたらしい。
「真里亜ちゃん、私としましょう?」
「……ええと、華さん。私も今は割と満足なんだけれど」
「嫌です。しましょう」
性行為を露骨に嫌がる真里亜というのも珍しい絵面だった。
「いいわ。なら、思う存分イかせてあげる」
「え、あの。私もう受けはお腹いっぱい……きゃっ」
起き上がった真里亜に押し倒された華は、言葉では嫌がりつつも嬉しそうだった。
しばらく眺めていると、李狐が呆れ半分、といった感じの笑顔で知尋の方に這ってきた。
「知尋。しよ?」
「いいけど、李狐も身体は大丈夫?」
「そりゃ疲れてるけど、明日から夏休みだもん。いくら寝てても怒られないよ」
抱きつきながらそう言ってくる。確かにその通りだった。李狐がこれだけ貪欲なのも、元はといえば知尋と真里亜がよってたかって染めたせいだし。
「わかった。じゃあ、のんびりしようか」
「ん、スローセックス、ってやつ? いいかも」
李狐と繋がったまま抱きしめあったり、キスをしたり、頭を撫でたりしていると、いつの間にか真里亜と華のセックスは終わっていた。というか、やっぱり華の体力が限界だったらしい。
「一、二回いかせてあげたら寝ちゃったわ」
「そっか。じゃあ、ゆっくり寝かせてあげよう」
華の身体をティッシュで軽く掃除したあと、三人で真里亜の部屋のベッドへ運んだ。それでも起きることなくぐっすり眠る彼女に布団をかけ、寝室に戻ってベッドに寝そべる。
「真里亜。ご主人様とするのはあたしだからね」
「ふふ。……ええ、私はもう満足したもの」
さすがに今夜は物凄く疲れた。
ここひと月ちょっとの慣れと、能力による高速回復のおかげでなんとかなったが、三人の少女を一晩で相手にするのはこれが初めてだった。
……さすがに明日は寝過ごすかもしれない。
李狐の膣に優しく包まれ、彼女の身体を上に乗せる。更に真里亜の胸を右腕に感じながら、知尋はやがて幸せな眠りへ落ちていった。
☆ ☆ ☆
目が覚めると早朝だった。
案の定、ずっしりとした疲労感というか倦怠感がまだ身体に残っていた。真里亜や李狐もまだ知尋の傍で寝息を立てていたので、そのまま二度寝に入る。
結局、三人が起床したのは、普段なら一限目がとっくに始まっている時間だった。朝食――というかもはや早めの昼食を始められたのはそれから小一時間も過ぎた後のことである。
この一件は、知尋達の夏休みを暗示しているようだった。
なお、華は昼前に起きてきた挙げ句、真里亜をちゃんと抱けなかったと文句を言ってきた。もうしばらく滞在を勧めるとそれを了承し、結局一週間近くマンションに泊まった。
――彼女は滞在中、だいたい夜に無茶をして気絶するように眠り、昼間寝過ごすサイクルを繰り返していたことを付け加えておく。
知尋は体調を見つつ、学園での訓練と夏休みの宿題を進めた。
李狐はたまに知尋と一緒に訓練に出たり、宿題に挑戦しては頭を抱える日々。
真里亜は早々に宿題を終わらせると、後は華を適当にあしらったり、ノートPCを弄ったりと気ままに過ごしていた。
そして、夏休みがしばらく過ぎて。
愛華と遊びに行く約束を果たす日が、あっという間にやってきた。