※この作品はR-18です。

儚き異能は心を映す   作:緑茶わいん

66 / 223
第六十二話 愛華との初体験<前編> ★

 愛華はシャワーの後、また元の服に着替えたらしかった。

 半袖ブラウスにスカートという夏制服姿。普段はボリュームのある髪は湯上りなので「ぺたっ」としているものの、きちんとドライヤーを当てたらしく湿り気は感じない。

 彼女は知尋を見てかすかにはにかんだ後、室内を見渡して息を吐いた。

 

「すごい部屋だね……」

「うん。僕も最初はびっくりしたよ」

 

 主に、巨大なベッドを見つめて驚く愛華。

 用途を思うと素直に感心できない様子だが、それでも嫌悪よりは興味が先に立つらしく歩み寄ってベッドを手で押す。

 

「あれ、案外固い?」

「あ、端のあたりはそんなにふわふわしないよ。ほら、大きいからあんまり柔らかいと」

「そっか」

 

 頷き、愛華はベッドへそっと膝を乗せた。

 体重を預けながら一歩這うように動くと、ほんのかすかな軋みと共にマットレスが沈み込む。

 

「あ、気持ちいい……」

 

 目を細めて呟いた。

 実際、このベッドは寝心地もかなりいい。おそらくはそこそこ高級な品なのだろう。マットレスが身体を優しく受け止めてくれ、少人数で寝ている場合は広さも手伝ってぐっすり眠れる。

 楽しそうにベッドに触れている愛華を微笑ましく思いつつ、知尋はベッドサイドに腰かけた。

 上半身と首で振り返って彼女を見つめる。

 

「……その、愛華。あらためてありがとう。僕を選んでくれて」

 

 それを聞いた愛華は動きを止め、ベッドの中央あたりに腰を落ち着けた。

 

「……うん。私も、ありがとう。私のこと、戦ってまで欲しがってくれて」

 

 あの戦いに応じたこと。

 勝って権利を手に入れたことは、愛華にとっても大きな出来事だったらしい。

 そう思うと嬉しさがこみ上げる。

 

 同時に。

 少しズルいやり方をしてしまったという引け目も感じた。

 

「……いつか、神代君ともう一度戦わないとな」

 

 戦って勝ち取るというなら、本来それが必要だ。

 愛華が何度か目を瞬いた。

 数秒の後、彼女は知尋に尋ねてくる。

 

「それって、男の子の意地?」

「そう、なるのかな」

 

 ――六月の判定を控えたあの日、知尋は神代に負けた。あの時のリベンジをしなくては、この引け目はきっと消えない。

 

「そっか。でもさ」

 

 再びベッドに手をつき、知尋の傍に近寄りながら。

 

「私は別にそんなの気にしないよ? だって、私はもう知尋君の彼女なんだから。例えば神代君が和泉君にもう一回勝っても、何も変わらないよ」

 

 一度決めた気持ちは簡単に覆らない。

 強い方が愛華を得るルールでもない。

 だから、愛華のために勝ちたいと思うなら、それはただの自己満足だ。

 ……もちろん、それだけが神代に挑みたい理由ではないが。ふっと気持ちが軽くなるのも事実だった。

 

「どうして僕を……なんて、聞いちゃ駄目かな」

 

 呟けば、くすりと小さな笑み。

 

「そうだね。もっと自信持ってほしいかな。でも……教えてあげる」

 

 少女が知尋の隣に腰かける。

 知尋をちらりと横目で見ると、彼女はぼんやりと天井を見上げた。その視線を追おうかとも思ったが、我慢して顔を正面に向けた。

 声だけがすぐ傍から耳に入ってくる。

 

「神代君は凄いよ。強いし、格好いいし優しい。誰でも憧れると思う。でもね、知尋君は放っておけないの」

 

 そういえば、前にもそんなことを言われた気がする。

 

「……気になり始めたのは、知尋君が神代君と試合をした時かな」

 

 ぼろぼろになっても諦めない知尋を見て、何でそこまで頑張るのか不思議だった。

 ただの個人的な試合で、明確に賭けたものがあったわけでもない。なのに知尋は必死で神代に食らいついた。

 力の差は歴然。

 敵うわけがないとギャラリーが何人も口に出していたし、正直言って愛華もそう思っていた。

 しかし、知尋は見事に一矢報いた。

 神代に本気を出させ――代償に大きなダメージを負った。

 

「危なっかしいなって思ったの。それまでは大人しい子だと思ってたけど……考えてみたら前にも治してあげたことがあったし」

 

 知尋は頼りない。

 だからこそ気になった。

 あの時の治癒が切っ掛けでランクCに昇格すると、気持ちは更に強くなった。

 いつの間にか知尋を目で追うことが増えた頃、好きだと告げられた。

 

「かと思ったら李狐ちゃんと『あんな事』してるし」

「……あはは」

 

 興味が憤りに変わり、それでも嫌いにはなれなかった。

 体育祭での活躍も見ていた。

 借り物競争の時は誰を指名していいのかわからなくて、でも知尋を抜かすこともできなくて、知尋と神代にじゃんけんをさせた。

 結局、気恥ずかしさから舞阪を選んで誤魔化してしまったが。

 終業式の後で遊びに誘われて、プールで真里亜達三人を見て、昼食時に思いもしないことを言われて。

 

「李狐ちゃん達に嫉妬してることに気がついちゃった。だって皆いい顔してたから。私も知尋君の傍にいてあげたいって思った」

 

 この人は一生懸命なんだ。一生懸命で、でも危なっかしくて。だから皆、傍にいてあげたくなる。

 ――彼にはきっと私が必要なんだ、と。

 そう考えたら想いを堪えきれなくなった。自分から奴隷になろうとは思えなかったけれど、奴隷の李狐達を否定するのは止めようと思った。

 

「……それで、こんな感じ」

 

 顔を下ろした愛華が知尋を振り返った。

 それに倣うと、至近距離から見つめあう形になる。

 

 触れそうで触れない距離。

 

 真里亜ならもっと挑発的に出るだろう。李狐ならとっくに触れてきている。華ならそもそもこんな状況になったりしない。

 何かを期待していながら口に出さず、曖昧な距離を保ったまま。

 

「嘘かどうか、わかるよね?」

 

 愛華の想いが流れ込んでくる。

 愛情。

 暖かくて切ない気持ちが溢れた。それは知尋自身の気持ちと混ざり合い、果てしない量となって胸を焦がしていく。

 

「愛華」

「知尋君」

 

 二人はそっと顔を近づけ、軽く触れ合うようにキスをした。

 

「……恥ずかしいね」

 

 顔を離した愛華が微笑む。

 こういうことに慣れていないのだと、あらためて感じる。知尋だって、恋人とこんな風にするのは初めてだ。

 こちらからも微笑みを返しながら囁く。

 

「好きだよ」

「うん……私も」

 

 どうしようもなくなる。

 知尋は愛華に向かって腕を伸ばした。彼女も逆らわずに身を預けてくれる。

 ぎゅっ、と。

 制服に包まれた身体を抱きしめた途端、バランスが崩れてベッドに倒れ込む。

 知尋が下で、愛華が上。

 髪や首筋からはシャンプーとボディソープの匂い。使っている銘柄が異なるせいか、、今まで嗅いだ愛華の匂いとは印象が違った。

 ――数秒間、愛華の暖かさと柔らかさを味わってから手を離す。

 無理強いはしたくないと思ったからだが、すると愛華は少しむっとして自分から抱き着いてきた。

 

「どきどきしてるの、わかる?」

「……もちろん」

 

 お互いに心臓が高速で脈打っている。

 二人はもう一度キスをした。

 相手の身体に緩く腕を回したまま、さっきよりも深く口づける。

 

「ん、ふ……」

 

 舌は入れなかった。

 けれど数秒単位でキスしたことで、愛華の呼吸が感じられた。きっと本人は恥ずかしかっただろうが、そういうものを感じられることが嬉しい。

 唇を離して尋ねる。

 

「いい?」

「………」

 

 こくん、と。

 言葉の代わりに小さな頷きが返ってきた。

 愛華が一度、知尋から身を離す。

 

「皺に、なっちゃうから」

「……ん」

 

 知尋も頷き、準備をするためベッドから降りた。

 寝室の窓に歩み寄ってカーテンを閉める。二重になった窓の内側は曇り硝子のため、外から中が見えることはないのだが、昼間である今はそうしないと明るすぎる。

 戻ると、ブラウスのボタンを外し終えた愛華が目で謝意を伝えてきた。

 彼女はブラウスを羽織った状態のままスカートのホックを外す。ぱさ、ぱさと立て続けに軽い音がして、下着に包まれた裸身が露わになった。

 小さなリボンをあしらった、上下ペアの白い下着。

 無地ではないがシンプルなデザインで、高校生らしさと清楚さを同時に感じた。真里亜の下着は妙に艶めかしいものが多いため新鮮に映る。

 

「一応ね、可愛いのを着けてきたんだけど……」

 

 知尋の沈黙をどう受け取ったのか、おずおずと告げてくる姿も可愛らしい。

 

「綺麗だよ、すごく」

 

 ぱっと愛華の表情が華やいだ。

 それが少しは緊張を和らげる役目を果たしたらしい。彼女はゆっくりと、しかし止まらずにベッドへ歩み寄ってくる。

 

「あ、制服、畳んだ方がいいかな」

「そのままでいいと思うよ。ここなら踏むこともないだろうし」

「そうだね。でも、ちょっとはしたない感じ……」

 

 言いながらも、愛華は戻って制服を拾おうとはしなかった。

 ほんのちょっとした背徳感も行為のスパイス。

 そうして知尋のすぐ傍まで来た彼女は足を止めて。

 

「どうしたら、いい?」

 

 主導権を知尋に委ねた。

 ――知尋はベッドに腰かけた状態で、愛華を膝の上に座らせた。向かい合わせではなく同じ方向を向いた体勢。

 

「重くない?」

 

 首だけを向けて尋ねてくる彼女に微笑んで首を振る。

 

「そんなことないよ」

 

 人一人分の重みが軽いということもないが、愛華の体格はいたって平均的。それに、好きな人の重みを嫌だなどと思うはずがない。

 

「良かった」

 

 微笑むその唇にまた軽くキス。

 

「あ……もう」

 

 口では抗議してくるものの表情は甘い。

 抵抗がないことを見て取った知尋は腕で愛華の身体を優しく抱きながら、更に何度もついばむようなキスをした。

 愛情表現のためだけに、こんなに沢山唇を合わせるのは初めてかもしれない。

 

 ……経験のない愛華にはこうして気分を高めることが大事だ。

 初めての子を普通に抱いたことのない知尋だがそれくらいはわかる。焦らず、じっくりと。やりすぎて痛みや羞恥が強くなりすぎないように、できれば夢心地のまま行為を終わらせてやらなければいけない。

 

「愛華、触るよ」

「……うん」

 

 返事を待ってから、お腹あたりに置いていた手を持ち上げる。

 触れるのはブラに包まれた胸だ。

 今まで男に触れられたことがないであろうそこを優しく手で包む。力は殆ど入れない。ただ乗せるように、かすかな感触だけを伝える。

 

「あ……」

 

 それでも愛華はくすぐったそうに声を漏らす。

 無理もない。いくら心の準備ができていても、実際に行う段になれば緊張で頭がいっぱいになるのは自然なこと。

 だから。

 

「大丈夫だよ」

 

 耳元で囁いてやる。

 仕草で、声で、触れ合った身体で。

 愛情を伝えて心を解きほぐす。

 そうしてブラの表面、その奥にある胸をゆっくりと撫でる。

 何度も。子犬や子猫を可愛がるのと同じように。

 

「ふ……」

 

 時折、愛華は息を漏らす。

 最初は遠慮がちだった身体が、だんだん知尋にしっかりともたれかかってくる。安心と信頼が高まっていることを感じる。

 ちゅっ、ちゅっ。

 とろんとした目を覗き込み、甘い感情を覚えながらキスも続けた。

 たっぷりと時間をかけてから指の力を少しだけ増やしてブラに指を沈ませる。

 

「んっ」

 

 ぴくん、と。

 愛華の身体が小さく跳ねた。

 

「愛華は感じやすいのかな」

「そんなこと……わかんないよぉ」

 

 他人と比べた経験などないだろう。

 同時に、他の少女との関係を匂わせた知尋は軽く睨まれる。失言だったと反省しつつ、謝意をこめて指を動かす。

 僅かに指を沈ませては戻すことの繰り返し。

 気持ちいい、というよりはくすぐったいに近い感覚だろう。しかしそれで構わない。

 くすぐったさも一種の快感だ。友人など心を許した相手から与えられる分には、生まれる反応は「笑い」。つまり嫌悪を生み出すものではなく、快か不快かで言えば快に属する。

 触られても大丈夫。

 怖くないと刷り込むことで先への扉を開くことができる。

 愛華の反応を見ながら力の加減を調整し、やがて指が胸の形を明確に変え始めると。

 

「知尋君って上手いんだね」

 

 愛華から小さく囁かれた。

 

「ええと……」

 

 ごめんと言うべきか迷っていると、笑顔と共に首を振られた。

 

「違うの。責めてないよ。知尋君が優しくてあったかいから……本当に嬉しいの」

「……ありがとう」

 

 短く伝えて、後は愛撫に気持ちをこめた。

 ブラの上から乳首を撫でる。フェザータッチから指の腹で擦るように動かし、愛華が慣れてきたら爪の先でそっとひっかくような動きを加える。

 

「あ、知尋、君……」

「もし我慢できなかったら、声、出してもいいよ」

 

 愛華は先程からぴくぴくと小刻みに震わせている。

 だんだん、性感を覚え始めているのかもしれない。調教で覚えたテクニックが役に立っているというのも皮肉な話だが。

 

 今、この娘を愛するために、使えるものは全て使おう。

 

 胸以外の場所にも愛撫を加えていく。キスをしながら、まだ秘所は避けて――お腹や脇腹、腕、首筋などへも手と指を滑らせる。

 女の子の肌は敏感で、それは興奮している時なら猶更のこと。

 一般的に性感帯と呼ばれる場所以外でも快感を与えられる。むしろ淫らなイメージに繋がりにくい分、素直に受け入れて貰える面もある。

 

「ブラ、外すね」

 

 少しだけ身体を離してホックに手をかけ、上半身の下着を脱がせる。

 露わになった胸に愛華が頬を染めるので、安心させるために再び後ろから抱きしめた。

 たっぷり数十秒をかけ、愛華がまた身体を預けてくれたのを確認する。

 

 手を胸において直接愛撫。

 布一枚分の隔たりがなくなったことにより、指に伝わる感触は大きく変わった。そしてそれは愛華の側も同じはずだ。

 撫でて、揉んで、摘まむ。

 そんな何気ない動作でも、先程よりも強い快楽に変わる。

 

「ふあっ」

 

 折を見て乳首をこりっと弄ると、愛華が大きめの声を上げた。

 

「気持ちいい?」

「う、うん」

「そっか。じゃあ、我慢しなくていいよ」

 

 キスをする。

 意識を唇に向けながら指の動きを続行。何度も小さく跳ねる身体を抱えたまま、念入りに快感を送り込んでいく。

 好きだと。

 気持ちよくなって欲しいという願いは通じたのか。

 

「ん、んーーっ!」

 

 触れ合っていた唇を離し、愛華が堪えきれずに叫んだ。

 びくんっ、と。彼女の身体がひときわ大きく跳ねた。

 それを確認した知尋は乳首から指を離し、愛華の肌を優しく撫でる。快感の波が急に引きすぎるのを避けるために。甘やかな心地が少しでも長く続くように。

 一分以上もの時間が流れた後。

 ぽつりと愛華が言った。

 

「私、今……」

 

 イってしまったのか。

 言外の意味を察した知尋は微笑んで頷く。

 

「うん、多分そうだと思う」

「そっか……」

 

 彼女は恥ずかしそうに顔を俯かせた。

 

「まだ、途中だったのに。ごめんね」

 

 ……ごめん、か。

 謝ることなんて何もないのに、と。

 右手を愛華の頭に伸ばして髪を撫でつける。

 

「いいんだよ。愛華に気持ちよくなって欲しくてやったんだから。……それに」

「それに?」

「愛華さえ良ければ、このまま続けてもいいんだから」

 

 どちらかが絶頂したら終わりなんてルールはないのだ。

 むしろ、女の子は何度でも、思う存分絶頂すればいいと知尋は思う。

 彼女達の柔らかくて暖かい肌に触れるだけで、甘い声を聞くだけで、男にとってはこの上ない喜びなのだから。

 

「……じゃあ」

 

 しばらくの間、考えこんだ後で愛華は知尋に告げた。

 

「続き……お願いしても、いい?」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。