「続き……お願いしても、いい?」
愛華の言葉に知尋は「もちろん」と答えた。
そっと、少女の身体を持ち上げてベッドに下ろす。
そうして自分もベッドに上がると愛華の下半身へ顔と手を近づけた。
「足、開いてもらってもいい?」
「え、と。……恥ずかしいよ」
「大丈夫。愛華は綺麗だよ。ゆっくりでいいから、全部見せて欲しい」
「う、ん」
少し時間がかかったものの、足がゆっくりと開かれた。
純白のショーツに覆われた割れ目。そこをあらためて観察すると、かすかに体液による染みができていた。
感じて、濡れてくれているのだ。
指を伸ばしてクロッチをなぞる。使う指は一本だけ。往復ではなく一方向への動きを何度も繰り返す。
「なんか、変な感じ……」
「痛くないなら、できる範囲で受け止めてみてくれると嬉しい」
「……うん」
愛華が目を瞑る。
彼女は脚を軽く開いたまま上半身をベッドに横たえた。
はあ、はあ、と少し早めに呼吸しながら知尋の指を受ける。
くち。
するとそのうち、二人の耳に聞こえる大きさで愛華の秘所から水音が響いた。
「やぁ……」
たまらない、というように漏れる悲鳴。
股間を異性に晒しているのだから恥ずかしさは格別のはず。
それでも心配ないと伝えるため、知尋はショーツ越しに愛華の秘所へ口づけた。
「え……っ」
目を見開く愛華。
しかし、知尋が視線を向けるとすぐに表情を和らげ、再び身体を委ねてくれる。
愛撫を再開。
水音がコンスタントに聞こえるまで繰り返し、愛華の息が荒くなったところで下着の端に指をかけた。
「脱がせるよ」
「……っ」
もう返事もできなさそうだったが、それでも抵抗はなかった。
ショーツをするりと脱がせると、やや濃い目の茂みが露わになる。脱がせたショーツをどうするか少し悩んだが、結局、ベッドの端の方に二つ折りにして置いた。
と。
「やっぱり、変?」
「? 何が?」
「私の、あそこ。知尋君は李狐ちゃんみたいな方が好きなのかなって」
陰毛の話か。
愛華の目の前でセックスをした際、李狐は股間の毛を綺麗に剃っていた。それ以来、慣れると有る方が気持ち悪いと言って剃毛状態は継続中だ。
ついでに言うと、真里亜も本人の希望で同じように毛を剃っている。
「なんだ、そんなことか」
「わ、笑うのは酷くない?」
ふっと吹き出すと、わざわざ身を起こして睨まれた。
「ごめん。そんなこと気にしなくていいのに、と思って」
ここまで来て体毛一つで白けたりしない。
それを示すように秘所へと指を宛がうと、愛華はふっと身体の力を抜いてくれた。
「良かった」
その声を聞きながら指を動かす。
濡れた秘所の入り口で指を動かして慣らしていく。くち、と、抵抗感なく指を飲みこんでくれるようになったら本格的に愛撫する。
秘裂をなぞって刺激する。沈めた指で円を描くようにして広げる。
「あっ、あんっ……」
頃合いを見て左手を使いクリトリスも刺激した。
あまり自慰の経験もないのか、ピンク色のそれは勃起してなお小さくて可愛らしい。ここも乳首と要領は同じだ。
気持ちを高めたうえで優しく触れれば必ず反応は返ってくる。
そうして、十分にこね回してから突起を抓ってやる。
「―――っ!?」
愛華が再び絶頂に達した。
くたりと身体を横たえると、慣れない絶頂を二度も経験して疲れただろう。彼女は足を閉じてそのままぐったりと寝そべってしまった。
……今日は終わりかな。
すぐ傍から愛華の全身を見下ろしながら思った。
無理はさせたくない。まあ正直、知尋の股間はもうはちきれそうな状態で、許されるなら今この場でオナニーしたいくらいだが。
申し訳ないものの、後で真里亜達に処理してもらおうか――。
「……て」
「?」
かすかな呟きが聞こえた。
「最後まで、して」
愛華が知尋を見上げて小さく告げてきていた。
その声からしても、もうあまり気力は残っていないような気がするが。
「愛華。無理しなくてもまた今度」
「嫌」
弱々しい、けれどはっきりした声が知尋の台詞を遮った。
「今日じゃないと駄目なの。後回しにしたら怖くなっちゃうかもしれないし――それに、知尋君に愛して貰った証が欲しいの」
目が合う。
伝わってきた感情は不安、だった。
真里亜に李狐、二人の少女を侍らせる知尋から離れることへの。
「だから、お願い」
「……わかった」
愛華の不安は知尋のせいだ。
だから、知尋自身の行動で拭ってやらなければならない。
知尋はズボンとパンツを脱いで下半身を露出させた。脱いだ服は愛華の制服があるのと逆側に放る。
「ゴム、着けた方がいいよね?」
「いらないよ」
「でも」
「大丈夫。一回でできちゃったら逆に縁起よさそうだし。……それに、初めてはそのままでしたいの」
そう言われれば、強硬に反対することはできなかった。
屹立したペニスを近づけると、愛華はびくっと震えた。この震えは快感によるものではないはずだ。
……しかし、これはどうしてあげることもできない。
「優しくするから」
言ってペニスを秘裂にあてがう。
ぐ、と。
抵抗感の中、慎重に肉を押し広げていくのも初めての経験だ。
「っ」
きゅっと唇を引き結んだ愛華が両手でシーツを掴む。
知尋はゆっくりと、しかし制止することなく彼女の中に腰を沈めていった。
やがて一際の抵抗感。
「行くよ、愛華」
「うん、来て。知尋君……」
ずぶり。
竿の先端が処女膜を突き破った。
「っ!?」
破瓜の瞬間、愛華は声を上げなかった。
激しく息を吐き、きゅっと目を瞑ったものの、明確な音にはせず痛みを堪える。
……李狐によれば、処女喪失は相当な激痛らしい。
『凄く痛くてさ、自分が変わっちゃった……変えられちゃったんだって思った。まあ、あたしの場合はレイプだったのもあるだろうけど』
無理矢理と合意の上で度合いに差こそあれ基本的に違いはないはず。
いじらしい態度に胸が熱くなる。
また、同時に愛華の身体が心配になった。痛みが引くまで待つべきか?
いや。長引かせるよりは動いて、早く終わらせることにした。
「愛華、あと少しだけ我慢してくれる?」
「う、うん」
「……ありがとう」
気丈に微笑んでくれる彼女に感謝しつつ腰を動かす。
「っ。っくああっ!」
丁寧に、なるべく愛華への痛みを軽減しつつ、自身のペニスへ快感を送り込む。幸い膣内はキツキツの上、愛華が強く締め付けてくるのでどの道長くは持たない。
早すぎるのも男としては複雑だが――。
「いくよ、愛華」
「うんっ、来て、知尋君っ」
シーツから手を離した愛華が抱擁を求めてくる。
彼女を抱きしめキスをしながら、知尋は膣内へと射精した。
どくんっ。
第一射と共に精液が後から溢れ出すのがわかる。
それらは全て、愛華に注がれている。
彼女の初めてを貰い、その身体を染めているのだ。
そう思うと幸福感と達成感で満たされる。たった一回の射精だが心に不満はなかった。
はぁ……。
知尋の肩に顔を寄せた愛華が溜め息を吐く。
安堵と恍惚の入り混じったそれを聞きながら、知尋はゆっくりとペニスを引き抜いた。どろりと、血が混ざってピンク色になった精液が流れ出す。
「ありがとう、愛華。お疲れ様」
「うん。私もありがとう、知尋君」
もう一度だけキスをして、知尋は愛華の傍に座った。ゆっくり頭を撫でてやると、愛華はやがて目を閉じ寝息を立て始める。
今は夏休みだし、もし寝過ごしたら泊まっていってもらえばいい。
「ゆっくり休んで」
彼女に囁いてから、知尋も隣に寝転がって目を閉じた。
☆ ☆ ☆
シャワーを浴びた愛華が寝室に移動してからしばらく。
居間にて二人、ぼんやり時を過ごしていると、不意に真里亜が呟いた。
「少し、意外な気がするわ」
「何が?」
スマートフォンを操作する手を止めて顔を上げる。
発言した当人はノートパソコンへ視線を送ったままだった。
「あなたが、高槻さんを許容することが……よ」
……ただの雑談か。
李狐を見る様子もないことから話の重要性を察し、少々落胆する。
しかしまあ、それならそれで構わない。
雑談なら雑談で、こちらも気軽に話すまでだ。
「意外って言っても、あたしは別にあの子のこと嫌いって程でもないし」
好きでもないが。
「それに高槻さんは『奴隷』じゃなくて『彼女』でしょ。だったら完全に仲間ってわけでもないじゃん」
「だからこそ、嫌だとは思わないの?」
知尋が恋人を作った。そしてそれは李狐でも真里亜でも、華でもなかった。
それでも不満はないのか、と。
「……んー」
真里亜の指摘はある意味鋭い。
普通の質問すぎて逆に意外だったが。
「別にないかな。あたしは知尋の彼女になるつもりはないし、なれるとも思わないから」
あっさりその座を奪っていった愛華に嫉妬はする。
李狐達を抱く回数が減るだろうことにも不満というか、嫌だなという気持ちはある。
だが、それは奴隷が増えるのでも一緒。
李狐は別に愛華の立ち位置が欲しいわけではない。
愛華が自分達と共存していくつもりなら、愛華が知尋の彼女になること自体は……言い方は悪いが、割とどうでもいい。
「それに、今の高槻さんは前より付き合い易い気がするんだよね」
「そう?」
真里亜がようやく手を止めて顔を上げた。
「うん。あんまりいい子ぶってないからかな」
「それを褒められるというのも、本人としては複雑だと思うけれど。……私も、それは同感かもしれないわ」
良くも悪くも形振り構わなくなった。
その結果、知尋に対して「李狐達との決別」を要求したのは気に入らないが、そういう自分を隠さない態度には好感が持てる。
李狐も、真里亜も極めて利己的な性格で、だからこそ善人よりは等身大の人間の方が相対しやすい。
知尋の傍にいたい、と。
本気で彼女が思い続けるのなら、それを妨げる気はないし協力もできる。
「っていうか、あんたはいいわけ?」
「私?」
「そ。……あんただって、知尋のことは好きでしょ?」
こちらから指摘するのも癪ではあるが。
今更この少女との間に隠し事をしたところで仕方がない。ならばいっそ、正面から尋ねてしまった方がすっきりする。
すると、漆黒の髪を持つ美貌の少女は微笑みを浮かべて答えた。
「もちろん、和泉君は私の大事なご主人様よ。だからこそ、私はご主人様の望みを邪魔しないし、それを助けたいとも思うわ」
「……ふうん」
ある意味、教科書通りの答えだ。
無私の献身。
そう言えば聞こえがいいが、この少女がそんな物わかりのいい人間だろうか。
と。
「それに、高槻さんの治癒能力はとても素敵だと思うの」
「は?」
「だってそうでしょう? 傷が癒せるのならSMプレイが捗るわ」
叩いたり締め付けたりする行為が多いSMは、通常はどうしても奴隷の体調を見ながらになりやすい。短期間に立て続けに行うと腫れや擦り傷、裂傷が残りやすいし、傷の痛みは精神を消耗させる。
プレイの最中は興奮から痛みを忘れられても、終了後冷静になってからあまりの痛みに泣き叫ぶ……なんてことも珍しくないのだとか。
「もちろん、それも醍醐味なのだけれど。皆が皆、そこまで割り切れるものでもないでしょう? その点、彼女がいれば負担を和らげられるわ」
「……いや、あんたは自分で治せるでしょ」
「あら。私の能力だって疲れはたまるもの。癒せる限界はあるわ」
「自前じゃ足りないってわけ!?」
思わず大きな声が出た。
はあ、と、李狐は深いため息を吐く。
やはりこの少女は真心なんかで動いてはいなかった。そのことに安心すると同時に、妙な脱力感を覚えてしまった。
……あるいは、単に今は「気づいていない」だけなのかもしれないが。
「まあ、なんにせよ一件落着?」
「そうね。とりあえずは、これでのんびりできるかしら」
明日から帰省して、帰ってきてもまだ夏休みはしばらく続く。
明ければ二学期が始まるわけだが、ある種の平穏を楽しむ余裕はある。
真里亜や華、愛華と言い合いをしつつも料理や洗濯、掃除をこなし、知尋に抱かれる。気が向いたら買い物とか、あと一回くらいどこかに遊びに行ってもいいかもしれないい。
「これからもよろしく、李狐」
「へ? どうしたのよ急に」
「別に。ただ言いたくなっただけよ」
言って再びディスプレイに戻る真里亜。彼女の黒い瞳を見つめても、知尋ではないので心は読み取れない。
まあ、いいか。
「ん。じゃ、こっちこそよろしくってことで」
軽く笑って、李狐は真里亜にそう答えた。