大きなベッドに身体を預ける。
知尋が下になり、愛華の体重を受け止めながら再度ディープキスを交わす。互いの唾液で口元がべとべとになっても構わずに。
愛華はキスを好む。
愛撫や奉仕、セックスも嫌っているわけではない。むしろ自分から求めてくることもあるが、一方で、たっぷりとキスができれば他がおざなりでも満足してしまう傾向にある。
以前、どうしてなのかと尋ねたところ、
『うーん……キスは対等だから、かな』
胸や性器には男女のどうしようも無い差があるが、口や舌にはそれが無い。
男女関係なく同じように相手を愛し、同じように求めることができるから、キスをするのが好きなのだと愛華は語った。
恋人同士、対等に拘った彼女らしい考え方だと知尋は思う。
だから、愛華の気持ちはなるべく尊重している。
何度もキスを続けつつ服の上から愛撫する。
唇を合わせ、舌を絡めながらの愛撫だと愛華は何倍も感じるのだ。服越しの愛撫でもどんどん表情が蕩け、自分から知尋を求めてくる。
更にキスをしながら服を脱がして下着姿の愛華と抱き合う。
剥き出しになった愛華の臍には刻印が浮かんでいる。『支配』の能力について説明したところ、李狐達だけずるいという話になったのだ。
『知尋君。私にもそれ、頂戴?』
『え。高槻さん。あたし達とお揃いになるけどいいの?』
『う。じゃ、じゃあ絵柄だけ変えてくれないかな?』
そんな無茶な……と思いつつ、一応試してみたところなんと成功した。
文字がいくつも重なりあった痣なのは同じだが、組み合わさり方が違うため別の意匠に見える。
これについてはデザインを知尋のイメージ次第で変えられるか、あるいは受ける側の心持ちの問題だろう、というのが真里亜の見解である。
「それ、入れてから体調はどう?」
「うん。とっても調子がいいよ。治癒の効率もちょっと上がった気がする」
「そっか、良かった」
ほっとしつつ、ついでに判定への影響についても説明してみる。
李狐に言ったのと同じように、一度刻印を外すかどうか確認すると、愛華はやはり首を横に振った。
「私も李狐ちゃんと同じかな。ずっと入れっぱなしならズルにはならないもん」
間接的に「知尋と別れる気はない」という意味にもなる。
知尋としてはどちらかというとそちらが嬉しくてつい笑顔になってしまった。
と、愛華の腕にぎゅっと力が籠もる。
「それより……もっとキスして」
「ん……」
今日だけでもう、何度目かわからないキスを交わす。
キスといえば、愛華からもう一つ言われていることがある。
『知尋君。学校ではなるべくキスしないでね』
『いいけど、どうして?』
『だって、そういう気分になっちゃったら大変でしょ?』
毎回これだけ前戯として口づけていれば、否応なく身体に条件付けされる。
人の多い場所でキスする時も反射的に舌を入れてしまったり、感じてショーツを濡らしてしまったら恥ずかしい……ということだ。
もちろんこれは了承した。
求められれば吝かではないが、わざわざ見せつける必要もない。知尋達の仲は既に十分、周囲に伝わっているはずだ。
その分、このマンションでは遠慮しない。
真里亜や李狐、華に見られる分には今更だ。というか、むしろ愛華は彼女達に対しては見せつけようとしているように思う。
そういう雰囲気にあてられた真里亜達――特に李狐がいつも以上にはりきって大変だったりはするが、それはまあ、嬉しい悲鳴だ。
くち。
愛華の桃色のショーツに指を這わせると小さな水音。
愛華との行為は『調教』ではないので緩やかだが、それでも少しずつ身体の開発は進んでいる。
だんだん興奮しやすく、また濡れやすくなっている。
……そのうち、キスだけでイかせてみたいな。
そんなことを思いながら丁寧に秘所を愛撫していると、やがて愛華がキスを止めて知尋に囁いた。
「知尋君、私もう」
「……ん」
こくん、と頷いて身体を離す。
腹のあたりに座ってぼうっと見下ろしてくる愛華に、知尋はそっと願い出た。
「愛華。口でしてくれないかな?」
「うん……いいよ」
素直に返事をした愛華は身体を動かし、知尋の脚の間へと陣取る。
彼女はズボンのベルト、それからホックを外すとファスナーを下ろしていく。それが終わるとズボン自体に手をかけてゆっくり引きずり下ろした。
『する時に邪魔になるから……』
二度目にフェラチオをした時から、彼女はそんなことを言って知尋のズボンと下着を完全に脱がすようになっていた。
ちなみにこの場合の『する時』というのは正常位でのセックスのこと。
挿入される際、足に服が当たって気になるのだという。
……こういう細かな点は自分では気づきづらいのでありがたい。特に真里亜や李狐は奴隷という立場上、気づいても飲みこんでしまったり、それはそれで受け入れてしまいがちな部分がある。
「じゃあ、するね?」
軽くかき上げながら根元を支え、先端に舌を這わせる愛華。
ちろ、と軽く撫でられるだけでびくっと身体が跳ねた。
『知尋、高槻さんだからって贔屓してない?』
李狐からそんな風に指摘されたこともあるが、愛華にフェラチオされるとどうしても反応してしまう。
技術云々ではなく、恋人にそうしてもらう事実が単純に嬉しい。
「少しは……慣れてきたでしょ?」
愛華の動きはまだ稚拙だが、一生懸命に舌を動かしてくれる。
アイスか何かのようにぺろぺろと舐めたり、先端を口に含んで出し入れしたり。根元に舌を触れさせ先端まで舐め上げたり。
『高槻さん。もっと思い切って舐めた方が知尋は気持ちいいよ』
『そ、そんなこと言われたって……!』
李狐に指摘された時は声を荒げていたが、指摘自体は素直に聞いている。少しずつ、自分なりに上手くなろうと頑張ってくれているのがわかる。
懸命な奉仕にだんだんと性感は高まっていき――。
「愛華、出すよっ」
少し早めに呼びかけると、愛華はぴくりと反応する。
両手でペニスの根元に指を添えるとぱっくり咥えこんで射精を待ち受けた。無意識に指へ籠もった力で竿が少し苦しい。
びゅく、びゅるっ。
「きゃっ……」
せっかく固定していたのも空しく、射精の勢いに驚いた愛華は白濁液の半分ほどを顔で受け止めることになった。
口内で受け止めた半分もけほけほと咳き込んでしまい、うまく飲みこめなかった様子。
それでも少量をこくんと嚥下すると涙目で言ってくる。
「……ごめんなさい」
「気にしないでいいよ」
「でも……」
微笑んで告げても愛華は浮かない顔のまま。
異物を口に入れるのだから得手、不得手は仕方ないと思うのだが。李狐達への対抗意識から気がはやるのだろう。
……何かいい方法はないだろうか。
少し考えて、ふと、ある案を思いついた。
「愛華、ちょっと来てくれる?」
「? うん」
顔にべっとりと精液を付けたままの愛華を手招きし、その顔にそっとキスをした。
ちゅっ……ぺろ……じゅる。
体液を啜り、自分の口内へと溜めこむ。
――フェラチオ後の李狐や真里亜にキスをすることはあっても、自分から精液を舐めとるのはこれが初めてだった。
自分自身の体液であるせいかもしれないが、直に感じると想像以上に生臭い。
こんなものを皆、飲んでくれているのか。
あらためて感謝の念が湧き上がる。
「ち、知尋君!?」
口に精液を溜めたまま、驚く愛華の身体を抱き寄せた。
そうして半ば強引にキス。
「!?」
一瞬、愛華は抵抗しようとするも、そこを優しく抱きしめてやると大人しくなった。素直に口を開いて知尋の舌と唾液、そして精液を受け入れる。
「っ」
舌が精液に触れた瞬間、軽く彼女の身体が震えた。
しかし明確な変化はそれだけ。精液を互いの唾液と絡めると、愛華はそれを少しずつ嚥下していった。
こくん。
何度目かに喉が鳴った時点で、二人の口内から精は全て無くなった。
「頑張ったね」
「もう、知尋君」
頭を撫でてやると、むっとしたように軽く睨まれた。
「そんなもの口に入れちゃ駄目だよ。病気になったらどうするの?」
「え、いや」
じゃあ愛華達はどうなるのか。
思ってそのまま口に出すと、つん、と顔を背けてしまう。
「私達はいいの」
どういう理屈なのか。
ぽかん、とする知尋だったが、愛華はすぐに顔を戻してはにかんだ。
「……なんて。ごめんね、ありがとう。嬉しかった」
そうして彼女は自ら下着に手をかける。
ぷち。しゅる……。
すぐにブラとショーツが外され、愛華の裸身が露わになった。
――気にしていた股間の茂みは手入れされて無毛になっている。
恥ずかしいからと処理を手伝わせてはくれなかったが、自分の寮で綺麗に剃ってきてくれたのだ。
『友達とお風呂入る時とか……ちょっと恥ずかしいけど』
軽く頬を染めて微笑む姿に思わず抱きしめてしまったのも思い出だ。
「知尋君……して」
愛華は知尋の手を引いて身を起こさせると、代わりに自分が寝転がって股を開いた。
「……うん」
知尋は頷き、寝室内のチェストからコンドームを取り出した。包装を破って中のゴムをペニスに装着する。
……初回以降、愛華とは念のため避妊するようにしていた。
奴隷である真里亜達と、恋人である愛華とでは『責任』の取り方も変わってくる。この歳で出産に結婚となると、進路とかそういう面で二人とも困る。
軽く、愛華の両足に手を添える。
そうしてペニスを濡れた秘所にあてがうと、知尋はぐっと身を沈みこませた。
「ああ……っ」
膣内の締め付けは相変わらず。
しかし、もう愛華の表情に苦痛の色はほぼ存在しない。
そこに知尋を受け入れることに慣れ、快感を得ることを覚え始めている。
「ゆっくり行くからね」
「……うんっ」
根元までゆっくりと挿入したら、逆方向にゆっくりと引く。
先端がぎりぎり抜けないラインで一瞬止めて再び挿入。敢えて単調なリズムでそれを繰り返す。
絶頂に導く快感には激しい刺激と、それから緩急をつけることが大事だ。
しかし、それらは慣れた人間向けの話。
開発途上の愛華には、次にどんな快感が予想し待ち受けやすい方がいい。
更に言えば乳首やクリトリスを同時に愛撫する方が性感は開きやすいだろうが、折角の機会なので色々な方法を試してみている。
すぅ……はぁ……ぁ。
愛華が呼吸を整えまがらペニスの感触に集中する中、知尋も努めて一定を保ったままピストンを続ける。
キツく締め付けられながら膣肉を擦ると、それだけで射精欲が高まっていくが、我慢。
「あ……はぁ」
次第に愛華の呼吸が乱れ始める。
膣から出し入れされるペニスの感触が、だんだんと快感に変わってきたのだ。
そうしたら少しペースアップ。
「あ、ああっ」
明確に甘い声が上がり始めた。
ここまで来れば愛華でも、強い刺激を感じ取りやすくなる。
ぱん、ぱん、と。
リズムを更に早めて腰を強く打ち付ける。動き方はやはり一定だが。
「んううぅ!?」
恥ずかしがりながら喘ぐ姿はとても愛らしい。
愛華は口を半開きにし、額に汗を浮かべながら顔を左右に振っている。快感が抑えきれないラインに達し始めたのだ。
知尋はそれを見下ろしながら腰を振り続ける。
「ちひろ、君っ……私、もう……っ」
「イク?」
「う、うんっ……イクっ……イクぅっ!」
びくんっ。
愛華の身体が大きく跳ね、彼女は自身の身体を抱きしめる。
口が大きく開き、お腹に溜まった空気を全部吐き出すと、今度は吸いながら身体をベッドに下ろしていく。
絶頂時、きゅうっと締め付けられた膣の圧力により、知尋もコンドームの中に精を放った。
……はぁっ。
大きく息を吐いた愛華が両手を持ち上げ、腕で自身の顔を覆った。
人前で絶頂を晒すのは、やはりまだ恥ずかしいらしい。
「可愛かったよ、愛華」
だから、あまり多くを語るのは避けて一言だけ声をかける。
しかし、それでも恥ずかしかったのか、愛華は小さく身体を震わせた。
「……知尋君」
「?」
「ありがとうね」
「……こちらこそ」
顔を隠したまま呟かれた言葉に、知尋はふっと笑って優しく答えた。